2018年12月01日

〜JFMA公共インフラマネジメント連続シンポジウム報告(1)〜

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特非)社会基盤ライフサイクルマネジメント研究会(SLIM Japan)
                    副理事長 鈴木 泉


“第1回平成30年9月15日(土)、第2回10月13日(土)と、主催JFMA公共タスクフォース主催、SLIM Japan(講師、パネリスト)、インフラメンテナンス国民会議市民参画フォーラム協力による公共インフラマネジメント連続シンポジウムが開催された。このシンポジウムは、自治体に関係する皆様にとって公共施設等総合管理計画を実行に移す際に参考となる知識や情報を取得できる勉強会である。実際に現場を経験された講師による講演と、続いてパネルディスカッション、会場とのトークセッションを行う全員参加型での連続4回のシンポジウムで、今回は、前半2回の開催報告をする。
第1回は、「市民協働の公共インフラメンテナンスとは」をテーマとして、まず、蟲明眞一郎氏(元京都市役技術吏員、SLIM Japan理事)より「住民主体の街づくり」のタイトルで基調講演、続いて世古一穂氏(特定非営利活動法人NPO研修・情報センター代表理事)、小林達也氏(NPO法人長野NPOセンター)田子裕子氏(インフラメンテナンス国民会議、大日本印刷株式会社)の3人のパネリストを加え、コーディネーター鈴木泉(SLIM Japan副理事長)の進行でパネルディスカッションを行った。

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第1回パネリスト紹介

基調講演では、1、「まちづくり」は地域社会づくりと「街づくり」は都市基盤施設づくりと分けて使うことが大事。2、住民主体で考え、白紙から始めて住民の手で運営するなど、合意形成手法としてのいくつかの成功ポイントを強調された。パネルディスカッションでは、「インフラメンテナンスの分野に市民協働をどう進めれば良いか」にフォーカスした。世古氏からは、市民協働の本質として気仙沼の街づくりの成功事例が上げられた。「市民参加の街づくり」から、「震災復興の街づくり」に変わり、この先100年繋がっていく人(街づくりコーディネーター)を一緒に育てた。小林氏からは、長野市では、32の住民自治協議会のワークショップに予算を付けて市民の意見を聞いている。「住民に当事者意識を持つきっかけにはなったが、白紙から未来を語るという形ではなかった」の意見。田子氏からは、自社の持つ技術を社会インフラの老朽化に役立てたいとして国民会議に異業種参画し、インフラを知らない人たちに、知ってもらうイベント開催等の取組みをしているなど国民会議について紹介、続いて「現状の問題点、課題は何か」の議論となった。

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会場とのトークセッション

焦点としての「インフラメンテナンスをどう進めるか」の議論では。田子氏より、「市民をやらされ感なく愛着心やモチベーションを上げられるような活動をしていきたい」、小林氏からは、「長野市を担う若者に、交流会等を企画し町歩きワークショップを行った。愛着が湧いたなど好評だった」、世古氏からは、「ボランティアとしてみんなで掃除、点検作業だけで終わっていては、市民協働は進まない」との意見。会場からは、「どうやって市民を振り向かせたら良いか」「自治会の活動は盛んだが、もっと行政との接点が必要と気付いた」、「建設・点検に携ってきたが、今まで市民協働を考えたことがなかった」など多数の意見があった。今回のシンポジウムでは、市民協働の本質の考え方を、実体験に基づく知識と情報を共有しながら、「インフラメンテナンス分野にどう進めることができるか」、参加者全員で本音の意見交換が出来たことが大きな成果となった。

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第2回基調講演

第2回目シンポジウムでは、地方を知る「地方の公共インフラの現状と課題」をテーマとして、山中鷹志氏(元日本道路公団、SLIM Japan理事)より多くの現場経験から現状を見るという視点で「徒歩で川を遡行し橋の現況を診る」のタイトルで基調講演、続いて前線の施設管理者から中谷孔右氏(静岡県田子の浦港湾事務所所長)、澤健男氏(元国交省)、市民の目線で山崎エリナ氏(世界を旅する写真家)の3人のパネリストを加えパネルディスカッションを行った。
講演では、退職後、健康のための河川ウォーキングにスキルを活かして独自の視点から橋の現況調査を始めたこと、約10年間歩いた実績から地域インフラの現状を語った。5年毎の近接目視調査をすべしとの声を聴いてから、再び歩き同じ橋を前回と比較してみた。はたして全橋を5年毎に近接目視する必要はあるのかと実感した。続いてパネルディスカッションでは、中谷氏より、静岡県の土木関係の予算推移から管理者、管理体制の状況を話題提供、道路予算に占める維持補修は10年前の2倍。人口の少ない市町村は、管理施設数あたりの技術者数が少ない。若い技術者は、ほとんどデスクワークで現場を知らないなどの多くの課題が上げられた。澤氏からは、前線の維持管理の経験から、自然災害リスクの増大で本来の維持管理予算が少なく、予防保全に影響あること、一方では、メンテナンスには費用が掛かることを社会が認知するような努力が足りないことなど、技術者の意識に関する問題点も強調された。山崎氏は、写真家としてなぜインフラメンテナンス写真展を開催したか、「インフラを陰で支えてくれている人がいる。この仕事を多くの一般の市民の方に特に若者にこの感動を強く伝えたいと思った」と語った。「何が問題か、何に変えるか、望ましい状態にどう変えるか」と具体的議論となった。
会場の意見:「現状予算でどこまで出来るのか、本来目指す予算はいくらなのかオモテに出てこない。」「世論形成、情報開示が足りない」「市民にきちんと説明すれば理解する素地は整っていると感じる」「公共施設等総合管理計画は作ったが、市民に伝わっていないと反省した。」など、幅広い多くの意見が出た。第2回目のシンポジウムは、地方の土木インフラに関わる現状をいろいろな視点で前線の本音を知り議論、望ましい状態を共有出来たことに大きな意味があったと思う。
今後の後半の連続シンポジウムでは、より向上性のある解決策の議論に期待したい。尚、SLIM Japanは、このようなコンパクトなシンポジウム、出前セミナー勉強会での講師、パネリスト派遣含めた最適な企画を事業として活動していく予定です。

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パネルディスカッション
posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | 地域社会等