2019年01月01日

地方創生のキーワード “元気なジィジィ、バァバァ”

(特非)シビルNPO連携プラットフォーム 理事
宇奈月観光大使
株式会社 熊谷組 社友・顧問
大田 弘
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“60年前に“過疎”、40年前には“中山間地”、そして20年前には“限界集落”という言葉が生まれた。高度経済成長の副作用として東京などへの一極集中が過度に進行し、この数年、地方創生が叫ばれているが、一筋縄では行かないようである。
少子化の進行に伴う人口減少によって、存続が困難になると予測されている自治体。「日本創成会議」人口減少問題検討分科会が、2040年までに全国約1,800市町村のうち約半数(896市町村)が消滅する恐れがある、と発表した。(2014年5月:通称「増田レポート」)

私の郷里・富山県では朝日町(人口:約1万人/森林面積85%/高齢化率42%)が消滅都市の“指定”を受けた。
この町は、貨幣的価値(大きな企業はない)や文化的価値(コンサートホールはない)は県内他市町村に比べ劣勢であるが、環境的価値(白馬連峰〜里山〜里海)や人間関係的価値が自慢である。そして、この町の標語・キャッチフレーズが「消えてたまるか!朝日町」である。
増田レポートを機に奮起した町民は様々な活性化運動(地元産の商品化、公民館活動の復活など)を行っており、少しずつではあるが、移住者が年々増加している。かつ移住者はすべて若者である。
彼らに移住を決意させた理由は「元気な、(彼らに言わせると)カッコイイ、ジィジィ、バァバァが一杯いた」ことだ。世話好きの方々が多く、いろいろと相談に乗ってくれ、応援をしてくれるとのこと。そんなことをやってもしょうがない!あれやるな!これはダメ!との注文は一切付けないとのことだ。

かつて、田舎の人間関係の複雑さや“ねっとり感”は若者を都会へと駆り立てる一因となったが、その反省を踏まえて?の“さわやか感”や“躍動感”を感じさせる新たな人間関係的価値の創造が功を奏しているようである。
将来、農山村に暮らしたいと考えている60代、70代の熟年層は20%、20代、30代の若者では50%とのNHK他の調査結果がある。この若者の志向は東日本大震災以降、増加傾向にあるという。かつて地方から東京に出た世代は都会での永住を決め込んでいるが、その子供たちの農山村志向、つまり“孫ターン”が増えてくるとの指摘がある。
成熟社会を迎え、生き方の物差しが我々の世代とは異なり多様化してきている。いろんなことがきっかけでその土地に惚れた若者の中には、その地で自ら創業し雇用を生み出す変わり者も出てきている。

全国各地の農山村の実情に向き合い、地域の人々の声に耳を傾けてきた明治大学教授 小田切徳美氏は「都市農村共生社会の創造」を提起している。
同氏によれば、戦後の高度成長期以来続いた「キャッチアップ型の開発主義」からの脱却という非常に大きな流れの中で「田園回帰」の変化があり、分水嶺・分岐点に来ているという。また、地域の価値をネガティブに捉え、人の悪口や陰口などに終始している農山村・地方には、移住者は行かず、“地域の価値”に気付いたところに移住者が入ってくるという。

国家や地域、人は本質的には多様である。経済効率や経済成長を優先するあまりに、多様であるべき文化や価値観があくなき利潤を追求するグローバル市場になぎ倒され、様々な矛盾が顕在化してきているのではないか?地方創生や一億総活躍、女性活躍などの目的が経済再成長を促すためではなく、それぞれが、かけがえのない人生を送れる価値観(多様な座標軸)を持てる国へと豊かさの質を転換するための方策であってもらいたいと思う。

成熟社会は一見、多様化を実現しつつあるようにみえる。
しかし、それが目先の経済的な損得に重きをおいた無味乾燥な「個人化」の進展であれば、幸せとはほど遠い社会が到来する。
多様な価値観とは何でもありではない。それぞれの判断で人生を設計し、それぞれの責任で歩まなければならない。それは決して容易なことではない。これまで先人たちが力を合わせて築き上げてきた智慧から学ぶことの大切さを思い起こしつつ、社会全体での約束事(利他心/道義心)を土台とし、そのうえで個々人の価値観を際立たせることができる社会を目指すべきではないだろうか。
まさに“多様性”が地方創生の追い風になるような気がする。期待もこめて。

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涅槃団子作り(中央が筆者)

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囲炉裏体験学習(黒部市農村文化伝承館)
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改めて「土木は市民工学」

(特非)シビルNPO連携プラットフォーム
代表理事 山本 卓朗
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明けましておめでとうございます。
一昨年からCNCP活動の見直しを行ってきましたが、NPOとしては、より市民に近い立場で土木の活動をみていくべきだという議論になり「土木と市民社会をつなぐ」というテーマを基本に据えることにしました。そして、土木、どぼく、土木工学、シビルエンジニアリング・・・などについて意見を交わす機会も増えています。
平成30年5月のCNCP通信から巻頭シリーズで、土木学会広報センター次長の小松 淳氏の執筆になる「土木ということば」を連載しています。土木という言葉のルーツとして、中国春秋時代の淮南子にある“築土構木”がしばしば引用されてきましたが、辞典でほんの数行でしか書かれていない土木・どぼく項目でその本質を説明することはまったく不可能であり、あらためて土木の言葉のルーツ探しをやってきた詳細な成果がコンパクトに報告されています。今回シリーズはごく少ない字数でさわりのみの記載ですので、難解な漢字の羅列になっていますが、いずれ解説付きの論文が出されるものと期待しています。
さて違った観点から土木・土木工学を見てみますと、ローマ時代のインフラ整備はほとんどが軍事目的であり、「すべての道はローマに通ず」というのも軍用道路にほかなりません。時代が進み、上水道などのインフラは、市民生活のためにつくられるようになっていきます。すなわち軍事工学military engineeringに対する非軍事工学civil engineeringの誕生です。その後ヨーロッパの学問が進む中で、civil engineeringから冶金、金属、電気、機械、化学などが次々に分化していきました。そのなかで土木工学はcivil engineeringを継承してきました。こういう歴史から土木の先人は、工学のルーツである土木の総合性を誇りとして、工学の細分化がもたらす弊害を諌めています。土木学会の初代会長古市公威は、学会設立時の訓戒として「余ハ極端ナル専門分業ニ反対スルモノナリ」と述べたと言われています。このような歴史を考えたとき、土木工学すなわち市民工学である、と言い切っても良いのではないかと思います。
現実に私たちが取り組んでいる土木工学分野も、土木学会に数十の調査研究委員会があるように、限りなく細分化していきますが、“土木のもつ市民社会との本質的なつながり”をしっかりと認識して行動すべきだと改めて考えたいと思います。
本年も引き続き、皆さまのご支援よろしくお願いいたします。
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−初級ファシリテーター養成講座開講−

(特非)CNCPサポーター インフラメンテ研究会
(特非)社会基盤ライフサイクルマネジメント研究会理事
足立 忠郎
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1.講座の主旨
インフラメンテナンス国民会議 市民参画フォーラムにおいては、「日常的に市民と行政がインフラメンテナンスに関わっている」ことを目標に活動している。下部組織のWG-2「協働コーディネートWG」では、@インフラメンテナンスに関わる協働を全国へ展開する実施計画の作成、Aファシリテーターの養成、B協働におけるプラットフォームの構築に関する活動を開始した。
上記活動の一環として、「初級ファシリテーター養成講座」を開催したので報告する。

2.第1回初級ファシリテーター養成講座の概要
・日時:2018年9月4日(火)12:30〜16:30
・会場:東京都市大学 渋谷サテライトクラス
・講師:世古一穂(NPO研修・情報センター代表理事、元金沢大学大学院教授、CNCP理事)
・参加者数:16名(民間:7名、官庁:1名、大学:5名、NPO:3名)
 主催:インフラメンテナンス国民会議
 共催:シビル NPO 連携プラットフォーム
後援:土木学会 教育企画・人材成委員会
協力:社会基盤ライフサクルマネジメント研究会
公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会
※土木学会認定 CPD(継続教育)プログラムである。

3.初級ファシリテーター養成講座の内容
最初に、アイスブレーキングを行った。アイスブレーキングとはワークショップの最初に行う、初対面の緊張感(アイス)を一気に壊して(ブレイク)いくゲームである。誕生日順に出席者が1列に並び、その順番でチーム分けを行った。メンバーが互いの誕生日を確認する過程で、自然と場が和んでいくことを感じた。
世古講師から、「参加のデザイン」「協働コーディネーター・ファシリテーター_」「市民参加の8つのはしご」などについて具体的な説明を受けた。市民参加の形態として、現状はお知らせや意見聴取などの「形としての市民参加」が多く、「市民の力が生かされる市民参加」までは至っていないという状況を理解した。
講義の内容の中から受講生の関心が高かった「市民セクターと行政セクターの諸相」について紹介する。
市民セクターと行政セクターの諸相の概念図
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A) 市民セクターが主体的に活動を行う領域
B) 市民セクターが主となり、行政セクターが支援する形で協働する領域

C) 行政セクターと市民セクターが対等の責任で協働する領域
D) 行政セクターが主となり、市民セクターが支援する形で協働する領域
E) 行政セクターが主体的に活動を行う領域
協働領域は図のように5つに分けられるが、NPOと行政の「協働」とは行政が一方的に”支援”するのではなく、互いに支援し合う仕組みであることを理解した。
グループワークの最初のテーマは「Wish Poem」。インフラメンテナンスの望ましいイメージについて、各メンバーが1行の詩を作成し、次にチームごとに各メンバーの詩を繋ぎ合せて一つの詩を完成させた。作業を通じてメンバー間で、課題の抽出、数回の合意形成、情報共有を行うことができた。
二番目のテーマでは、ワークショップやファシリテーターに関する疑問点をチームごとにまとめた。写真のように、3階層程度に構造化することがポイントである。構造化の作業を通じて他のメンバーの考えを理解し合意することができ、チームの考えをワークシートにわかりやすく表現することができた。

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講義の様子1


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講義の様子2


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グループワークの様子


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階層化されたワークシート


4.まとめ
受講者からは、「住民と行政の関係の話は、目からうろこでした。」「上のレベルの講座に興味がある。」などの声が聞かれた。
協働の考え方や、ファシリテーターの技能は1度講座を受講しただけで習得できるものではない。初級ファシリテーター養成講座の習得目標レベルは毎回同一であるが、内容が毎回異なるため複数回受講しても新鮮な感覚で受講できる。より深く学びたい方や、十分に内容を消化しきれなかった方へは複数回の受講をお勧めしている。また、より高いレベルの講座開催も計画している。

5.開催実績と今後の予定
第2回初級ファシリテーター養成講座:11月2日(金)開催済
第3回初級ファシリテーター養成講座:12月14日(金)開催済
第4回初級ファシリテーター養成講座:1月26日 開催予定
中級ファシリテーター養成講座の開催を計画中である。受講資格は初級を受講済みであること。
さらに上級コースでは協働コーディネーターを養成する。
協働コーディネーターとは、参加型協働社会を拓く新しい職能である。
協働コーディネーターの役割は次の3つがある。1つ目はファシリテーター、2つ目はコーディネーター、3つ目は協働性の評価をするアセッサーである。
関心のある方の積極的な参加をお願いいたします。
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