2019年03月01日

一周遅れの先頭

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シビルNPO連携プラットフォーム法人正会員 
NPO法人道路の安全性向上協議会
専務理事 吉川 良一


(1) 失われた20年
久し振りの同窓会の場で、友人がいきり立って私に詰め寄ってきた。彼は、私が今も高速道路に関わっていると思って、「先日、高速道路を安全運転で走っていたのに、パトカーに止められて、キップを切られた。追越車線を走る車は、追越後は走行車線に戻らなければ違反になると言うんだ。そんな馬鹿なこと、世界の何処にもないぞ。」彼は欧米での生活が長く、日本の道路交通法を知らなくとも無理はないと思い、丁寧に説明したのだが、納得しない。確かに、欧米では、幹線道路や環状道路は片側3車線以上が当り前で、日本のように右側車線を追越車線としているのは、幹線道路でも片側2車線しかないが故の対応に他ならない。
バブル終焉後の経済が低迷している時に、更に追討ちを掛けるようにインフラ投資は抑制された。高速道路はもう十分に整備された、高速道路を造り続けるのは、土建業者を儲けさせるためだとするフェイクな報道や一部評論家によって、世間が惑わされた結果、高速道路事業費は闇雲に3割カットの憂き目に遭った。それでも、必要なものは必要であり、やらねばならない事は持続させねばとの思いで、高速道路の暫定2車線区間の増加や税金による直轄高速道路が生まれてきたのである。
(2) 暫定2車線高速道路
高速道路の供用延長は別表―1のとおりである。実に、供用延長の約4割が暫定2車線区間である。果たして、暫定2車線が高速道路と言えるのかどうか。地方に均しく高速道路の恩恵を行き渡らせるために、限られた財源で供用延長を伸ばしてきたとは言え、アジアの開発途上国でも高速道路は片側3車線が常識である。10数年前に韓国に行った際、ソウル近郊の高速道路は片側5車線だった。アジアからの道路視察団が日本に来ても、見せるものは、綺麗になったサービスエリアか道の駅しかない現状は早く打破されなくてはならない。
そこで、折からの低金利の効果が呼び水となって、超長期の財政融資(40年・固定)1兆円を追加し、想定金利との差額分7,000億円を余力として活用し、有料の対面交通暫定2車線区間1,600Kmの中から順に4車線化等を行うこととなった。
ようやく、ガラパゴス的進化を遂げてきた日本の高速道路も世界の仲間入りが出来る時が来たのである。
(3) 一周遅れの先頭
日本の高速道路は、要素技術それぞれは素晴らしく、世界に冠たるものであり、トップランナーとしての自負心は強い。
高速道路 供用延長
うち暫定2車線
有料 9,437km 2,591 km(約3割)
無料 2,229 km 1,808 km(約8割)
計 11,666 km 4,399 km(約4割)
しかし、それらの完成品となると、世界のグラウンドでは一周遅れの先頭を走っているに過ぎない。今回の投資が行われたとしても、国際的には高速道路と呼べない暫定2車線の区間が有料・無料合わせて3,000Km程度も残る。また、無料の高速道路の維持管理にかかる費用を、将来にわたっても税金で負担していくのかという問題もある。
これらの課題を解決するためには、無料区間の有料化、有料道路事業を活用した4車線化が必要になると思われる。個別の路線が供用した時点では無料であっても、高速道路のネットワークが形成された時点で有料化し、お客様サービスや渋滞対策の観点からも、有料・無料が混在する状態を解消することが必要と思われる。

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表 1 高速道路の供用延長(2018年10月1日現在)
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世界の古代文明を継承する日本文化について

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シビルNPO連携プラットフォーム 個人正会員
(NPO法人 関西ミニウイングス 事務局長)
山下 正章


1. はじめに
NPO活動で知り合いになった外国人の方々が、「日本の文化に接すると、何故か穏やかさや懐かしさを感じる。」と言います。また、どこで覚えたのか「一期一会」「経世済民」などの四文字熟語や工事現場での標語「安全第一」「品質第二」「生産第三」の意味を学んでいて、「日本が安全で美しい国である」ことが理解できるとも言います。その理由を探るために日本文化のルーツについて考えてみました。
2. 話し言葉・文字(日本語のルーツ)
世界の言語は、@孤立語(中国語等)、A屈折語(欧米語等)、B膠着語(日本語等)等に分類されています。これらの言語は、古代のメソポタミア文明の地域で話されていた言葉が変化したと考えられています。膠着語は古代の中東でのシュメール語が最も古く、トルコ語、モンゴル語、朝鮮語、日本語などに変化したと考えられています。
文字については、黄河文明での甲骨文字から生まれた漢字が伝わり、大和言葉と融合しつつ新たな仮名が創作され、日本独特の話し言葉や和歌等の文学が生まれたようです。伝統ある和歌の神髄は、本当に伝えたいことをあえて隠し、相手に察してもらうところにあるそうです。だからこそ和歌を学ぶと相手の心を「察する」習慣が身につき「思いやり」や「おもてなしの心」といった、日本文化特有の美徳が育まれるのだそうです。
3. 宗教と哲学(精神文化のルーツ)
世界の一神教はメソポタミアで聖書として体系化され、西方にはキリスト教、東方には原始キリスト教(ユダヤ教・景教)として世界中に伝承されたと考えられています。日本には弥生時代末期に渡来人により原始キリスト教の教えが伝わり、縄文時代からの自然信仰や神話と融合する形で古代神道になったという説があります。日本書記の神話の物語と聖書の物語が類似していることや伊勢神宮の建築様式、式年遷宮のしきたりなどが類似していることなどが多くあることが根拠だそうです。
その後、インドで生まれた仏教が伝わり、古代神道と仏教が融合します。日本では宗教的な意味よりも哲学的な意味を重視していたのだと思います。すなわち、人の生きる道は修行して身に着けるという教えで、働くことが人の道を極めるという考え方です。
4. ものづくり(職人技術のルーツ)
縄文文明におけるものづくり技術は、石器・土器製造、石の加工や研磨などの技術、及び巨木建築、木工、竹細工、藁や麻の加工、貝殻や獣の骨の加工などの生活するための基礎技術であったと考えられます。いずれも世界最古の技術です。
その後弥生時代になると、渡来人により製紙技術や絹織物技術(黄河文明)、鉄などの金属製造技術(メソポタミア文明)などが伝わり、日本の職人が日々改良するとともに後輩に伝授してきました。現在では、先端的な科学技術立国の一つになっています。
5. おわりに
縄文文明を基軸として、世界の文明で生み出されたものを吟味した後に取り入れ、融合・改良してきたものが日本文化ということになります。あらゆる古い文明を破壊することなく継承してきたことは、世界に例がないのかも知れません。
元号も新しくなり、地政学的に恵まれた日本列島で暮らしている日本人がその文化を護りつつ、世界の人々に恩返しをする時代になったように思います。
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