2019年05月14日

NPOは大学を未来につなぐパートナー

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シビルNPO連携プラットフォーム 常務理事
シビルサポートネットワーク代表理事 辻田 満


NPO本来の存在意義を知る
NPOの第一人者として知られているレスター・サラモン教授は、NPOが世界のさまざまな舞台で台頭してきている局面を、世界的非営利革命と呼び、19世紀後半の国民国家の成立に匹敵するインパクトを持つと主張したことは有名です。2010年に全米文系学生の就職先人気ランキングで、GoogleやAppleをおさえて1位となったのは、NPO組織のTEACH FOR AMERICA」(教育NPO)でした。米国では就職先が、「企業」、「行政」の2択から、NPOが加わった3択となったことを世に知らしめました。

「社産学官」の4つの柱
わが国の社会づくりの指標となった「新しい公共・共助社会」には、NPO組織がおおきな役割を期待されています。これからの社会構造は、従来の3つのセクター「産学官」にNPO(これを「社」と称する)を加えて、「社産学官」の4つの柱が必要とされています。

「大学の知」を社会に還元
従来、大学は研究活動で得られた「大学の知」を学会で発表するか、もしくは産学連携の名のもとに産業界で生かしてきたケースが大多数でしたがここにきて産学連携の枠をこえて「大学の知」を直接社会に還元する必要性が顕著になってきています。具体的には大学内部にNPO組織を立ちあげる、地域のNPOと連携する、授業の一環での学生中心のNPO活動や授業から自立したNPO活動、大学の先生が個人の立場でNPO組織の一員として活動するなど、さまざまな試行がなされ始めています。

大学とNPOが協働する「社学連携」
「ソーシャルキャピタル」とは、人々が協働することにより社会の公共性を高める概念と理解できます。NPOは、個人・組織・地域とさまざまなレベルで「ソーシャルキャピタル」を創出する役割を担っています。大学とNPOが協働する「社学連携」が実現すれば、「大学の知」が直接社会に還元され「ソーシャルキャピタル」として社会の公共性がおおいに高められるのではないでしょうか。 

大学経営におけるCSVとは
共通価値の創造(CSV:Creating Shared Value)とは、M・E・ポーター教授が提唱している概念で、「企業が事業を営む地域社会の経済条件や社会状況を改善しながら、みずからの競争力を高める活動」と定義しています。これは、企業のみならず大学経営にもずばりあてはまります。大学経営として、CSVとは何かを考える時にまさに至ったのではないでしょうか。大学のCSVの取り組みにおいてNPOは良きパートナーと成り得ます。

わたしの提言
  「NPOは大学を未来につなぐパートナー」として、下記の5つの具体的提言をします。  
@NPOとのかかわりを、大学の文化として広く醸成させる。A大学は、NPOとの協働の核となるプラットフォームを社会に提供する。B大学生のNPO組織へのインターンシップ制度を、一部の学部にとどまらず全学部に拡大する。C「大学の知」をより活かすために、社会に還元するだけではなく、NPO活動を支援する。D大学としてのCSV活動を、NPOと連携して積極的に取りくむことで「地方創生」などの社会的課題の解決にも貢献する。
タグ:NPOの技術
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市民が楽しむ土木空間は継続する―中村良夫先生の言葉

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シビルNPO連携プラットフォーム サポーター
(芝浦工業大学土木工学科教授) 岩倉成志


桃の花が咲き誇る古河公方公園を3月末に訪ねました.子供たちが生き物と触れあい,自由に遊べる空間が都会にほんとうに少ないと長い間疑問を感じている私にとって,求めていた公園がまさにそこにありました.世界の文化景観の保護と管理活動の顕著な功績をたたえるユネスコの「メリナ・メルクーリ国際賞」をアジアで初めて受賞した公園です.

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桃まつりで楽しむ親子連れ

この公園,景観工学の大家である中村良夫東京工業大学名誉教授が設計し,今も市民とともに作り続けられています.私はこの数年,土木技術者のレジリエンス能力の研究をしていて,中村良夫先生に幼少から現在までの20時間以上におよぶインタビューにご協力いただきました.数々の教えの中から,市民自治という文脈でほんの一部をご紹介します.
 中村先生は青山生まれですが,終戦前年の6 才の頃,強制疎開で古河に移られました.都会的な生活とはまるで別世界の生活は十年つづき,谷戸と家の隣の浄善寺が中村少年の遊び場でした.夏は裸足で生活し,鶏が卵を産むのに感動し,近所の子供と魚を釣ったり,虫を捕って,溢れるような生命観の中で楽しく過ごされたそうです.その後,鈴木忠義先生と出会い,景観工学の道を拓き,フランス留学を経て,広島太田川護岸をデザインされた後,偶然にもゆかりのある御所沼の再生を古河市長の小倉さんから依頼されました.耕作地として戦後,沼が埋め立てられ,その後放棄されてしまった湿地の転生に先生は取り組まれました.パークマスター制度という市民参加活動をけん引する制度をつくれられ,現在まで30年間も先生は継続的に関わられています.

市民参加とはプロジェクトの決定過程で意見を言うというのもあるのでしょうが,専門家がつくった空間に市民が意味づけをするという参加の仕方もあるのですと中村先生はおしゃいます.それがないとせっかく形を造っても生きてこない,古河公方公園は市民が利用することで新しい意味を発見したり,解釈したり,デザインを創造していく部分があって,市民がそこで自由に楽しくやる自主的な基盤となっていつまでも継続するのだそうです.

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沼に潜む魚や両生類に遭遇
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ファッションの後ろでがんばる土木を伝えたい

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シビルNPO連携プラットフォーム サポーター        
一般社団法人Water-n 代表理事 奥田早希子


飲む水には敏感なのに…
筆者は9年ほど前まで、「環境新聞」という専門紙で約11年間、水ビジネス担当の記者として勤めていた。当時はちょうど環境志向が高まり始めた頃で、「エコ」「環境に優しい」といった用語が多く使われるようになっていた。一種の「流行」として環境が語られ、とらえられていた時代と言える。
その頃、一般紙や報道番組を賑わした言葉が「環境ホルモン」と「ダイオキシン」である。環境ホルモンは体内の内分泌代謝に悪影響を及ぼすとして、ダイオキシンは猛毒として、化学物質への不信感が一気に膨らんだ。食品添加物を含まない自然派食品や、有機野菜などが脚光を浴びた。
同時に、水道水に含まれる塩素化合物などの化学物質にも過敏な反応が起こった。水道水に背を向け、ペットボトル水を選択する傾向が強まったのだ。ペットボトルにフックを付けてベルトにぶら下げる若者が増えた。フランス産のボトル水は、特に好まれていたように記憶している。「volvic」という横文字のボトル水をぶら下げていることが、エコでおしゃれだったのだろう。
使った後の水には無関心…なんで?
それらブームに踊って「エコ」だとか「自然派」だとか言っていた人たちは、自分たちが使った後の水がどうなるのかをおそらく想像したことがない。自分たちの口に入るものには細心の注意を払うのに、自分たちが汚した水の行方には関心がない。そのことに覚えた強烈な違和感は、今になっても薄まっていない。
かねてより下水道分野を取材し続けてきた。汚れた水をきれいにして還す。このシステムが無ければ衛生的で安心な暮らしは実現しない。しかし、相手にするのが汚水であるからこそ、その仕事の現場は過酷である。イメージも決して良くはない。だから学生が働く魅力を見出しにくい。結果として、下水道業界は人材不足に頭を抱えることになる。
今ではSDGsやESG投資などを背景として水への配慮が企業経営の要諦になろうとしているのに、こと水問題と聞いて多くの市民がイメージするのは、海や川など公共用水域の水質、不衛生な水のせいで亡くなっていく途上国の多くの子ども達ではないか。きれいな海の裏に、安心して飲める水の背景に、下水道をはじめとする排水処理設備があることにはなかなか思いをはせてくれない。
市民の環境志向は高まっているのに、土木が一翼を担っている水を還す工程への意識は薄い。そのギャップを埋めたいという思いはつまり、本連載のタイトルである「土木と市民社会をつなぐ」ということと同義だと思う。

デニム、スイーツ…身近なところに土木の入り口を作ろう
「つなぐ」という言葉の選定は素晴らしい。下水道をPRするために関係者で組織された任意団体「下水道広報プラットホーム」にも所属しているが、下水道関係者は熱意がありすぎるからか、とかく「市民は下水道を知るべきだ」という一方通行の広報意識に陥りやすい。情報の押し売りは市民との溝を深めるだけだ。ともに考え、ともに行動する。そのためにCNCPが市民と土木をつなぐ“糊”のような役割を果たせればと思う。
筆者が代表理事を務める一般社団法人Water-nの法人名には「水を還す=Water Return」という思いを込めており、「水を還す」ことを考えるきっかけづくりに取り組んでいる。年に2回『水を還すヒト・コト・モノマガジン「Water-n」』を発行し、全国の大学・高専の環境衛生系の教授を中心に約1,800カ所・約7000部を無料頒布している。「DENIM」「OUTDOOR」など学生の身近にあるものを入り口として、デニム製造で出た排水処理の話、キャンプ場の汚水処理の設備などへと導線を引いている。おしゃれや遊びの話と思って読んでいたら水の勉強になった、そんな編集を心掛けている。
「土木を知るべきだ」という思いが土木側にあると、逆に土木は一般の人には伝わらない。「土木とは。。。」というアプローチではなく、日常生活の身近なところに土木への入り口を作るところから「つなぐ」が始まるのではないだろうか。

冊子「Water-n」
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創刊号の特集はDENIM

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2号の特集はOUTDOOR

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3号の特集はHair Styling

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4号の特集はAquarium

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5号の特集はFOOD

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冊子「Water-n」はサイトでご覧になれます(https://water-n.com/page-5/
posted by CNCP事務局 at 10:00| Comment(0) | 地域社会等