NPO本来の存在意義を知る
NPOの第一人者として知られているレスター・サラモン教授は、NPOが世界のさまざまな舞台で台頭してきている局面を、世界的非営利革命と呼び、19世紀後半の国民国家の成立に匹敵するインパクトを持つと主張したことは有名です。2010年に全米文系学生の就職先人気ランキングで、GoogleやAppleをおさえて1位となったのは、NPO組織のTEACH FOR AMERICA」(教育NPO)でした。米国では就職先が、「企業」、「行政」の2択から、NPOが加わった3択となったことを世に知らしめました。
「社産学官」の4つの柱
わが国の社会づくりの指標となった「新しい公共・共助社会」には、NPO組織がおおきな役割を期待されています。これからの社会構造は、従来の3つのセクター「産学官」にNPO(これを「社」と称する)を加えて、「社産学官」の4つの柱が必要とされています。
「大学の知」を社会に還元
従来、大学は研究活動で得られた「大学の知」を学会で発表するか、もしくは産学連携の名のもとに産業界で生かしてきたケースが大多数でしたがここにきて産学連携の枠をこえて「大学の知」を直接社会に還元する必要性が顕著になってきています。具体的には大学内部にNPO組織を立ちあげる、地域のNPOと連携する、授業の一環での学生中心のNPO活動や授業から自立したNPO活動、大学の先生が個人の立場でNPO組織の一員として活動するなど、さまざまな試行がなされ始めています。
大学とNPOが協働する「社学連携」
「ソーシャルキャピタル」とは、人々が協働することにより社会の公共性を高める概念と理解できます。NPOは、個人・組織・地域とさまざまなレベルで「ソーシャルキャピタル」を創出する役割を担っています。大学とNPOが協働する「社学連携」が実現すれば、「大学の知」が直接社会に還元され「ソーシャルキャピタル」として社会の公共性がおおいに高められるのではないでしょうか。
大学経営におけるCSVとは
共通価値の創造(CSV:Creating Shared Value)とは、M・E・ポーター教授が提唱している概念で、「企業が事業を営む地域社会の経済条件や社会状況を改善しながら、みずからの競争力を高める活動」と定義しています。これは、企業のみならず大学経営にもずばりあてはまります。大学経営として、CSVとは何かを考える時にまさに至ったのではないでしょうか。大学のCSVの取り組みにおいてNPOは良きパートナーと成り得ます。
わたしの提言
「NPOは大学を未来につなぐパートナー」として、下記の5つの具体的提言をします。
@NPOとのかかわりを、大学の文化として広く醸成させる。A大学は、NPOとの協働の核となるプラットフォームを社会に提供する。B大学生のNPO組織へのインターンシップ制度を、一部の学部にとどまらず全学部に拡大する。C「大学の知」をより活かすために、社会に還元するだけではなく、NPO活動を支援する。D大学としてのCSV活動を、NPOと連携して積極的に取りくむことで「地方創生」などの社会的課題の解決にも貢献する。
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