2019年07月09日

白馬駅前の無電柱化で北アルプスが世界に誇れる景観に!

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NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク
理事 兼 事務局長  井上 利一


「長野県白馬村は、JR白馬駅から真っ直ぐに延びる県道約350mとJR大糸線と並行する国道約480mを対象に無電柱化する方針を明らかにした。無電柱化は2019年度中に電線埋設の設計を終え、2024年頃までの工事完了を目指している。総事業費は14億円になる見込みだ」(『日経新聞電子版』6/20より)
白馬村は、1998年の長野オリンピック後に国内の観光客が減少。一方で、海外の観光客が増加している。JAPOW(ジャパウ)と呼ばれる日本独特の極上のパウダースノーと、山岳景観を求めて年間10万人以上のインバウンドが訪れている。しかも、この地を気に入って移住する外国人も増え、今では白馬村の人口9,000人中500人が移住者という。

白馬村とのご縁は2012年に遡る。当NPO発行の『電柱のないまちづくり』(学芸出版社)を読んだ「白馬駅前の無電柱化を考える会」の松沢斉氏より、相談に乗って欲しいという依頼を受けた。その後2012年6月、同会主催の無電柱化勉強会に講師として招かれた。当日は多くの村民や行政関係者が集った。その当時から、村民の無電柱化にかける思いはたいへん熱いものがあった。その2年後、今度は当NPO主催のまちづくりフォーラム(右の写真参照)で松沢氏に小池百合子東京都知事と共にパネリストとして登壇していただいた。この時も松沢氏の「無電柱化にかける思い」は全く衰えるどころか、益々燃える思いを聴衆に訴えた。

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2017年に白馬駅前整備検討委員会(全6回)、10月に倉本聰氏をゲストに招いてシンポジウムを行い、村民の景観意識向上を進めた。


こうした熱心な村民の活動を受けて、長野県知事や白馬村村長も無電柱化へ向けた動きを加速させることとなる。その甲斐もあり、長野県景観条例の流れから、白馬村景観条例ができ、2018年の景観むらづくり100年白馬ワークショップ(全3回)を経て、村民念願の白馬村無電柱化推進条例が6月に議会に提出された。無電柱化に伴う街並整備事業計画も整えられ、完成後のグランドデザイン(下記図)も公表されている。このような経緯を受けての今回の報道である。嬉しさも一入だ。
昨年12月、11月10日の無電柱化の日に合せて発行した当NPO編著の『見あげたい日本の空☆復活へのシナリオ 無電柱化の時代へ』発刊記念トークイベントに松沢氏をパネリストで招聘した。その席で、松沢氏は「白馬村は、世界の山岳リゾートと比較すると、山々や周りの自然は遜色ないにも関わらず、麓に降りての街並みをみると大敗です」と、自虐的に語ったが、その表情には、無電柱化実現への自信も滲ませた。それは、無電柱化推進条例の成立といったことだけでなく、長年の活動の成果が「白馬村グランドデザイン」(下記パース参照)という形でまさに結実を目前に控えていることにもあるのであろう。
白馬村は間違いなく、日本有数のスキーリゾートであり、その住民の熱い思いは、電柱をも引っこ抜くパワーがあると、実感した次第である。白馬駅周辺の無電柱化によって、本家ヨーロッパの景観に勝るとも劣らない日がまもなく訪れることを期待し、今後も応援していきたい。

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閑話休題

事務局長 内藤 堅一


CNCP通信では、「土木と市民社会をつなぐ」シリーズを2019年1月から6月まで6回発行してきました。シビルNPO連携プラットフォーム(CNCP)では、2018年の見直しワーキングで、そのミッションとして「土木と市民社会をつなぐ」を掲げました。これに沿った具体の行動として、事業化推進部門では従来の「市民社会を築く建設大賞2018」の表彰の後、新規募集をお休みにして、「土木と市民社会をつなぐ事業研究会」を立ち上げ、何が活動として相応しいのか検討を進めています。また、土木学会連携部門では土木学会内に「土木と市民社会をつなぐフォーラム」を立ち上げる準備を進めています。
これらの活動とは別に、会員並びこの問題に関心を持っておられる皆さんにご意見を投稿して頂こうということでこのシリーズを始めました。掲載内容はCNCPのホームページ(URL:HTTP://npo-cncp.org/)から全て見ることができます。

第1回〜第6回までの掲載内容は以下のとおりです。
@ Vol.57(1/8発行) 山本卓朗代表理事 シリーズ開始にあたって
A Vol.58(2/12発行) 世古一穂理事   防潮堤問題にみる土木と市民社会
B Vol.59(3/12発行) 田中努常務理事  土木と市民社会の溝はどうしてできる?
C Vol.60(4/9発行) 三井元子理事  制度設計をも変える市民の科学
D Vol.61(5/14発行) 奥田早希子SP ファッションの後ろでがんばる土木を伝えたい
E Vol.62(6/11発行) 岩佐宏一常務理事防災減災につながる日常的な活動

今まではCNCPの理事やサポーターの方に執筆していただきました。今後は市民の皆さんはじめ各界のご意見を投稿して頂けるように考えています。
本シリーズの編集打合せでは、土木以外の分野の方に執筆いただく中で「土木に関する質問」があれば、投げかけて頂こうということになりました。質問によって、山本代表理事か内藤事務局長が回答することになっています。

Vol.64以降の執筆者を募集しています。現在お二人に投稿をお願いしています。投稿して頂ける方は、事務局長までご連絡ください。
執筆要領
・「土木と市民をつなぐ」活動事例、将来の活動などについて記載する。
・分量はA4 2枚程度、A4 1枚には写真、図表等と文字1,000字程度
・土木に関する質問を記載して頂ければ、Q&Aとして回答する予定。
・執筆の謝礼
会員、サポーターは無料、外部の方には規定により原稿料を支払います。
A4 1枚4,500円
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質問コーナー

土木に関するみなさまのご質問にCNCPがお答えします

「閑話休題」の項に書きましたように、土木以外の分野の方からの質問に山本代表理事か内藤事務局長が回答します。今回は2件の質問に山本代表理事が回答します。この回答に別の面から見たご意見があればお寄せ下さい。また専門家の図解があればなお助かります。意見や図解は紙面に順次掲載していきます。

質問 1 土木事業を、行う人はどういう構造になっていますか?よく元請け、下請けということばを耳にしますが、どういう違いがありますか?

お答え 土木や建築などの事業は、事業者が発注して建設会社が受注して現地で橋や建物を作るという形が一般的です。受注した建設会社がいわゆる元請け(もとうけ)ですが、実務は土工事、鉄筋型枠工事、コンクリート工事など専門とするいわゆる下請会社に請け負わせます。ただし地域に限定した小さな工事は、もっと簡略した形で実施されています。課題として、下請けが一次下請け・・・・3次下請けなど重層構造になっていて、最下端は一人親方というケースもありますから、担い手不足が顕著になっている昨今では、時代にそぐわない面も多く、様々な構造改革が模索されています。

質問2 今、一番気になっていることですが、辺野古の海の埋め立てで杭が何本も使われていますが、浮き上がつて駄目だとききます。辺野古の海を埋め立てることはまちがいなのではないですか?

お答え 辺野古の埋め立ては、ホットな政治課題でもありますから、ここでは軟弱な地層での埋め立てや構造物の建造について少しお話しましょう。

ネットで検索しますと、辺野古の工事は、何万本の杭とか90Mの深さとか様々な記事が見られるように、たいへん難しい工事であると思われます。一般的な話ですが、我が国の地層は地表に固い岩盤が露出しているようなところはほとんどなく、ある深さまで杭を打ったり、軟弱な地盤を改良したりしますので、基礎工事には苦労が付きまといます。辺野古で採用されるのはコンクリート杭とか鋼管杭ではなく、サンドドレーンという砂杭です。軟弱地盤上に盛土をすることは可能ですが、対策をしないと完成後に長期間にわたり軟弱地盤が圧密と言ってゆっくりと沈下をします。それで工事中に圧密を促進するために砂杭を打って軟弱地盤の圧密を促進して、供用後の沈下を抑えようという工法で軟弱地盤に盛土をするときの一般的な工法です。効果は期待できますが、辺野古のような大規模な砂杭工法の採用は珍しいといえます。
ちなみに復元工事で有名になった東京駅赤レンガの本屋は、大正時代の建造ですが、当時の記録では、60cm間隔で5M前後の松丸太杭が1万本以上打ち込まれたそうで、その一部が丸ビルのホールに展示されているというプログもありますから、ぜひご覧になってください。現代はもちろん最新工法を駆使して難工事に挑みますが、巨大災害が頻発する時代でもあります。土木や建築の工事や工法に多くの方が関心を持っていただくことはたいへん有難いことです。
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