2019年07月09日

土木と市民社会をつなぐ活動

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CNCP 常務理事/土木学会連携部門長
土木学会/教育企画・人材育成委員会/シビルNPO推進小委員会 委員長
メトロ設計梶@技術顧問
田中 努


「土木と市民社会をつなぐ」活動は、CNCP全体の基本テーマですが、土木学会も同様の課題認識を持っているので、「土木学会連携部門」が先頭に立ち、他の部門と連携して進めています。
以下に、今、取り組んでいる2つの活動を紹介します。

■「土木と市民社会をつなぐフォーラム準備会」の設立
「土木」の仕事は、道路・鉄道・上下水道・電気等の社会インフラの整備・維持・更新と防災・減災ですから、「土木」は「市民社会」に不可欠で、「土木」と関わらないで生きる市民はいません。しかし、「土木」は、同時に次のような問題も抱えています。
●問題1:「土木」は、同じように市民生活と密接な農業や漁業と違って、一部の自然環境や住環境を破壊しながら、全体最適を目指しています。したがって、犠牲を強いられる市民と利害関係のある市民に理解していただくことが必要です。

●問題2:近年の、人口の減少・税収の減少・インフラの老朽化・地震の活発化・豪雨の増強化等の問題山積の前では、「土木」が従来と同等の利便性や快適さ、安全や安心を維持するのは難しくなるので、市民に我慢してもらう必要があります。税負担と優先順位、不便さやリスクとどういうバランスで暮らしていくかを考えて貰う必要があります。

●問題3:「土木」の世界で働きたいと思う学生の減少があります。農業や漁業もなり手が居ませんが、インフラ施設や防災施設は輸入できません。ロボットや外国人の協力を得ても、国や地域の目指すべき将来像を構想し、具体化の計画をし、マネジメントするしっかりした技術者が必要です。
だから、「土木界」に居る産官学民と「市民社会」とが、互いの情報を共有し、共に考え、共に最適解を生み出していくことが望まれますが、CNCP通信59号に書いたような「溝」があります。
「土木と市民社会をつなぐ活動」は、土木学会では「土木広報アクションプラン『伝える』から『伝わる』へ【最終報告書】2013年7 月31 日(インターネットでダウンロード可能)」をまとめ、「土木広報センター」を設立して精力的な活動を展開しています。国・自治体・インフラ事業者・大学・企業・協会・NPO等の市民団体による様々な取り組みも、多数行われています。
それでも上記の問題1〜3が残り続けているので、志を同じくする仲間が集まって、連携・協働を一層し易くし、「市民社会」への発信力を増強させる「フォーラム」という「場」を作ります。
私たちと土木学会の小委員会が、1年間準備して、この7月に「土木と市民社会をつなぐフォーラム設立準備会」を発足させます。今後、活動状況を、CNCP通信とホームページで紹介していきますので、皆さんも、どうぞ、フォーラムにご参加ください。

■「CNCPボランティアガイド」として土木学会の「つなぐ活動」を支援
土木学会の土木広報センターでは、市民向けに下記の2つのイベントを行っています。ここではいろいろな展示物をいくつかの委員会が担当していますが、《特別企画展 1964東京オリンピック》というコーナーの説明をCNCPに要請されました。
CNCPでは、このような活動は、シニアのシビルNPOに向いていると思いますので、「土木と市民社会をつなぐ活動」の1つとして、「CNCPボランティアガイド」という支援活動に取り組もうと考えています。例えば、次のような「講師・ガイド」があると思います。
・イベント会場で用意されたパネル・模型・動画・簡単な実験などの説明等
・大学・学校の教室や講演会場での講演・WSの支援等
・社会資本施設・建設現場・災害現場・土木遺産などでの解説等
さらに、CNCP自身が取り組むイベントの他、CNCPの会員、および社会のシビルNPO・企業・土木学会等の団体・組織が「土木と市民社会をつなぐ活動」を行う際、シビル系(建設系)の技術者を必要とした場合に支援することも、次のステップとして考えています。
なお、NPOはボランティアではありませんが、イベントの性格と予算・収益の具合によって、報酬の多寡は様々と思います。
CNCPの会員とサポーターの皆さま、一緒に「ボランティアガイド」をして見ませんか? 一人でも多くの方のご参加をお願いします。お問い合わせは、CNCP事務局まで。


●オープンキャンパス土木学会2019
日時:2019/7/6(土)10:30〜16:00
場所:公益社団法人 土木学会 ●土木コレクション2019
日時:2019/11/14(木)〜17(日)8〜21時
場所:新宿駅西口広場イベントコーナー

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土木学会調査研究委員会活動を通じた市民とのつながり

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シビルNPO連携プラットフォーム サポーター
(鉄建建設株式会社) 酒井 喜市郎


シビルNPO連携プラットフォーム代表理事である山本卓朗氏が、鉄建建設社長を務めてこられた頃からの関係で、現在当NPOにサポーターとして参加しています。また長らく土木学会地下空間研究委員会の幹事長として委員会活動を牽引してきましたが、委員会活動でも市民とのつながりを意識しながら活動を行ってきました。今回はその内容を紹介し、皆さんの活動の参考になればと考えています。
土木学会というと、関係者から見ても少々近づきがたい存在ですが、一般の市民から見れば別世界の集団と見られがちです。しかし土木工学が「Civil Engineering:市民工学」であることを考えれば、これは市民から見れば大きな損失です。我々土木技術者が研究し、答えを出してきたことをもっと実社会に役立てることが必要だという考えから、委員会では活動成果の一般市民への「普及」に力を入れてきました。活動の柱は大きく分類して3種類、それぞれ取り組み方は異なるものの、対象を一般市民として行う活動という意味では方向性は同じです。

(1) 夏休み親子見学会の実施
これは通常の見学会とは異なり、「みんなで触れよう、考えよう、想像しよう こんなにおもしろい地下空間」と題し、参加学習型の方式をとっており、修了者には「地下空間こども博士」を授与しています。あわせて土木技術者の裾野を広げることも目的としており、これまで12回開催し、今年も13回目の計画を進めています。

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(2) 無料市民セミナー実施
地下空間の防災、人の行動心理、維持管理を中心とした市民向けのセミナーを全国各地で開催し、委員会活動で得られた知見を広く一般社会に開示し、市民との意見交換を含めて展開しています。特に人が係わる地下空間では、工学的な見地だけでは問題解決が不可能なことも多く、利用する市民の意識や行動にまで及んだ議論を交わしています。これまでに21回の開催を数え、これからも継続して行く予定です。

(3) マスメディアを利用した普及活動
テレビや新聞、書籍による地下空間の普及活動に力を入れています。地下空間への関心の高まりにより、各マスメディアからの協力要請が多く届き、その都度対応しています。特にこども向け題材については、地下空間への関心向上と、正しい理解を促すため力を入れて実施しており、これまで18回の協力を実施し、これからも継続していく予定です。

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多自然川づくりご存じですか

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国土交通省 水管理・国土保全局 前 河川環境課長
(現 内閣府大臣官房審議官(併)経済産業省資源エネルギー庁
原子力災害対策本部廃炉・汚染水対策チーム事務局長補佐) 光成 政和


皆様は、「川のイメージは?」と聞かれたらどのような川の姿を思い浮かべますか。自然豊かな川、速い流れ遅い流れが組み合わされた曲線で構成された川ですか。コンクリートで囲まれた川、直線の川、あるいは川には関心がないのでイメージできないというお答えかもしれません。
近年の日本の川は、治水への社会的要請に対応するため、洪水を安全に流下させることを主眼に、コンクリートで囲んだまっすぐな断面での河川整備が多く進められました。このような環境への配慮が十分でない河川整備や、都市化の進展等により水質が著しく悪化した時期もあり、川から人々の関心が離れてしまいました。先ほど後者のイメージを持たれた方は、このことに原因があるのかもしれません。

このような時期を経て、平成2年から、河川が本来有している生物の良好な生息・生育環境に配慮し、あわせて美しい自然景観を保全あるいは創出する「多自然型川づくり」が始まり、現在では、「多自然川づくり」として一級河川から準用河川に至るまでの全国すべての川づくりおいて取組を進めています(特別なモデル事業であるかのような誤解を与えないように「型」は外れております)。
※多自然川づくりの定義:河川全体の自然の営みを視野に入れ、地域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮し、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観を保全・創出するために、河川管理を行うことをいう。

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来年度で30年を迎える多自然川づくりが広く一般の方々に認識、理解されているかというとまだまだ十分ではありません。平成29年に市民団体等に行ったアンケート「Q.多自然川づくりの概念は市民へ浸透していると思われるか?」では、約3/4の方から「浸透していない」と回答いただいております。
これまでの多自然川づくりは、「河川法改正20年 多自然川づくり推進委員会」(山岸哲委員長)によりレビューがなされ、今後の方向性が提言「持続性ある実践的多自然川づくりに向けて」として、まとめられました。この中では、多自然川づくりの周知に関して、「多自然川づくりの基本的な考え方や治水・環境両面の役割と効果について、広く一般の市民に浸透させるためのわかりやすい説明を工夫し、発信する内容や対象などに応じ、現地における表示なども含め、様々な手段を用いて周知を図る。」とのご意見をいただいています。

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これまで国土交通省では、関係者と連携し、河川管理者向けにマニュアルや、一般の方向けに写真集を作成し、多自然川づくりの普及に努めてきました。
国土交通省として今後も工夫をしながら周知を図ってまいりますが、市民サイドから、市民目線でわかりやすい周知が図られることも望ましいと考えています。CNCP通信Vol.62号で紹介されていた「うなぎ持続可能プロジェクトSEFI(Sustainable Eel Farming Infrastructure)」の多自然川づくりを取り入れたゲームアプリの開発のアイデアは、これまで行政にはなかったアイデアであり、市民サイドからこのような多自然川づくりの周知に資する取組が出てきたことをきっかけとして、多自然川づくりがより多くの方から認識、理解されることを期待しています。

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posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | 災害、危機管理等