2019年07月09日

土木学会調査研究委員会活動を通じた市民とのつながり

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シビルNPO連携プラットフォーム サポーター
(鉄建建設株式会社) 酒井 喜市郎


シビルNPO連携プラットフォーム代表理事である山本卓朗氏が、鉄建建設社長を務めてこられた頃からの関係で、現在当NPOにサポーターとして参加しています。また長らく土木学会地下空間研究委員会の幹事長として委員会活動を牽引してきましたが、委員会活動でも市民とのつながりを意識しながら活動を行ってきました。今回はその内容を紹介し、皆さんの活動の参考になればと考えています。
土木学会というと、関係者から見ても少々近づきがたい存在ですが、一般の市民から見れば別世界の集団と見られがちです。しかし土木工学が「Civil Engineering:市民工学」であることを考えれば、これは市民から見れば大きな損失です。我々土木技術者が研究し、答えを出してきたことをもっと実社会に役立てることが必要だという考えから、委員会では活動成果の一般市民への「普及」に力を入れてきました。活動の柱は大きく分類して3種類、それぞれ取り組み方は異なるものの、対象を一般市民として行う活動という意味では方向性は同じです。

(1) 夏休み親子見学会の実施
これは通常の見学会とは異なり、「みんなで触れよう、考えよう、想像しよう こんなにおもしろい地下空間」と題し、参加学習型の方式をとっており、修了者には「地下空間こども博士」を授与しています。あわせて土木技術者の裾野を広げることも目的としており、これまで12回開催し、今年も13回目の計画を進めています。

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(2) 無料市民セミナー実施
地下空間の防災、人の行動心理、維持管理を中心とした市民向けのセミナーを全国各地で開催し、委員会活動で得られた知見を広く一般社会に開示し、市民との意見交換を含めて展開しています。特に人が係わる地下空間では、工学的な見地だけでは問題解決が不可能なことも多く、利用する市民の意識や行動にまで及んだ議論を交わしています。これまでに21回の開催を数え、これからも継続して行く予定です。

(3) マスメディアを利用した普及活動
テレビや新聞、書籍による地下空間の普及活動に力を入れています。地下空間への関心の高まりにより、各マスメディアからの協力要請が多く届き、その都度対応しています。特にこども向け題材については、地下空間への関心向上と、正しい理解を促すため力を入れて実施しており、これまで18回の協力を実施し、これからも継続していく予定です。

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白馬駅前の無電柱化で北アルプスが世界に誇れる景観に!

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NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク
理事 兼 事務局長  井上 利一


「長野県白馬村は、JR白馬駅から真っ直ぐに延びる県道約350mとJR大糸線と並行する国道約480mを対象に無電柱化する方針を明らかにした。無電柱化は2019年度中に電線埋設の設計を終え、2024年頃までの工事完了を目指している。総事業費は14億円になる見込みだ」(『日経新聞電子版』6/20より)
白馬村は、1998年の長野オリンピック後に国内の観光客が減少。一方で、海外の観光客が増加している。JAPOW(ジャパウ)と呼ばれる日本独特の極上のパウダースノーと、山岳景観を求めて年間10万人以上のインバウンドが訪れている。しかも、この地を気に入って移住する外国人も増え、今では白馬村の人口9,000人中500人が移住者という。

白馬村とのご縁は2012年に遡る。当NPO発行の『電柱のないまちづくり』(学芸出版社)を読んだ「白馬駅前の無電柱化を考える会」の松沢斉氏より、相談に乗って欲しいという依頼を受けた。その後2012年6月、同会主催の無電柱化勉強会に講師として招かれた。当日は多くの村民や行政関係者が集った。その当時から、村民の無電柱化にかける思いはたいへん熱いものがあった。その2年後、今度は当NPO主催のまちづくりフォーラム(右の写真参照)で松沢氏に小池百合子東京都知事と共にパネリストとして登壇していただいた。この時も松沢氏の「無電柱化にかける思い」は全く衰えるどころか、益々燃える思いを聴衆に訴えた。

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2017年に白馬駅前整備検討委員会(全6回)、10月に倉本聰氏をゲストに招いてシンポジウムを行い、村民の景観意識向上を進めた。


こうした熱心な村民の活動を受けて、長野県知事や白馬村村長も無電柱化へ向けた動きを加速させることとなる。その甲斐もあり、長野県景観条例の流れから、白馬村景観条例ができ、2018年の景観むらづくり100年白馬ワークショップ(全3回)を経て、村民念願の白馬村無電柱化推進条例が6月に議会に提出された。無電柱化に伴う街並整備事業計画も整えられ、完成後のグランドデザイン(下記図)も公表されている。このような経緯を受けての今回の報道である。嬉しさも一入だ。
昨年12月、11月10日の無電柱化の日に合せて発行した当NPO編著の『見あげたい日本の空☆復活へのシナリオ 無電柱化の時代へ』発刊記念トークイベントに松沢氏をパネリストで招聘した。その席で、松沢氏は「白馬村は、世界の山岳リゾートと比較すると、山々や周りの自然は遜色ないにも関わらず、麓に降りての街並みをみると大敗です」と、自虐的に語ったが、その表情には、無電柱化実現への自信も滲ませた。それは、無電柱化推進条例の成立といったことだけでなく、長年の活動の成果が「白馬村グランドデザイン」(下記パース参照)という形でまさに結実を目前に控えていることにもあるのであろう。
白馬村は間違いなく、日本有数のスキーリゾートであり、その住民の熱い思いは、電柱をも引っこ抜くパワーがあると、実感した次第である。白馬駅周辺の無電柱化によって、本家ヨーロッパの景観に勝るとも劣らない日がまもなく訪れることを期待し、今後も応援していきたい。

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多自然川づくりご存じですか

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国土交通省 水管理・国土保全局 前 河川環境課長
(現 内閣府大臣官房審議官(併)経済産業省資源エネルギー庁
原子力災害対策本部廃炉・汚染水対策チーム事務局長補佐) 光成 政和


皆様は、「川のイメージは?」と聞かれたらどのような川の姿を思い浮かべますか。自然豊かな川、速い流れ遅い流れが組み合わされた曲線で構成された川ですか。コンクリートで囲まれた川、直線の川、あるいは川には関心がないのでイメージできないというお答えかもしれません。
近年の日本の川は、治水への社会的要請に対応するため、洪水を安全に流下させることを主眼に、コンクリートで囲んだまっすぐな断面での河川整備が多く進められました。このような環境への配慮が十分でない河川整備や、都市化の進展等により水質が著しく悪化した時期もあり、川から人々の関心が離れてしまいました。先ほど後者のイメージを持たれた方は、このことに原因があるのかもしれません。

このような時期を経て、平成2年から、河川が本来有している生物の良好な生息・生育環境に配慮し、あわせて美しい自然景観を保全あるいは創出する「多自然型川づくり」が始まり、現在では、「多自然川づくり」として一級河川から準用河川に至るまでの全国すべての川づくりおいて取組を進めています(特別なモデル事業であるかのような誤解を与えないように「型」は外れております)。
※多自然川づくりの定義:河川全体の自然の営みを視野に入れ、地域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮し、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観を保全・創出するために、河川管理を行うことをいう。

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来年度で30年を迎える多自然川づくりが広く一般の方々に認識、理解されているかというとまだまだ十分ではありません。平成29年に市民団体等に行ったアンケート「Q.多自然川づくりの概念は市民へ浸透していると思われるか?」では、約3/4の方から「浸透していない」と回答いただいております。
これまでの多自然川づくりは、「河川法改正20年 多自然川づくり推進委員会」(山岸哲委員長)によりレビューがなされ、今後の方向性が提言「持続性ある実践的多自然川づくりに向けて」として、まとめられました。この中では、多自然川づくりの周知に関して、「多自然川づくりの基本的な考え方や治水・環境両面の役割と効果について、広く一般の市民に浸透させるためのわかりやすい説明を工夫し、発信する内容や対象などに応じ、現地における表示なども含め、様々な手段を用いて周知を図る。」とのご意見をいただいています。

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これまで国土交通省では、関係者と連携し、河川管理者向けにマニュアルや、一般の方向けに写真集を作成し、多自然川づくりの普及に努めてきました。
国土交通省として今後も工夫をしながら周知を図ってまいりますが、市民サイドから、市民目線でわかりやすい周知が図られることも望ましいと考えています。CNCP通信Vol.62号で紹介されていた「うなぎ持続可能プロジェクトSEFI(Sustainable Eel Farming Infrastructure)」の多自然川づくりを取り入れたゲームアプリの開発のアイデアは、これまで行政にはなかったアイデアであり、市民サイドからこのような多自然川づくりの周知に資する取組が出てきたことをきっかけとして、多自然川づくりがより多くの方から認識、理解されることを期待しています。

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