2019年08月01日

土木と市民社会をつなぐ〜NPOとボランティアと連携プラットフォーム〜

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CNCP 常務理事/土木学会連携部門長
土木学会/教育企画・人材育成委員会/シビルNPO推進小委員会委員長
メトロ設計梶@技術顧問
田中 努


「土木と市民をつなぐ」は、賦に落ちるまで、判りにくい話です。土木と市民との溝に関する私の考えを、CNCP通信Vol.59の「土木と市民社会をつなぐ」シリーズに書きました。その後、いろいろな人と話をして、少し違った視点から、次のような考えや行動が大事だと考えています。

■やりたいこと・出来ること・求められること
個人でも組織でも、自分の「やりたいこと」がありますが、それをやるには、知識・スキル・パワー・経験・資金・周りの支援等が必要ですから、「やりたいこと」と「出来ること」には差があります。
「やりたいこと」が、趣味の範囲を越えると、さらに、周囲や社会から求められるか否かが問題になります。「やりたいこと」が社会のニーズとずれていたり、「出来ること」の質や量が不足だと、社会から賛同や期待が無く、実現させるチャンスがありません。
【右図】の3つの積集合の面積が広いほど、「やりたいこと」が実現できるという訳です。
会社では、社内の人材育成と研究開発、社外の出来る人材や組織との連携・協働により、会社の「出来ること」を拡大し、社会のニーズを調査・把握し、会社の「出来ること」をPRして、少しずつ実績を積み重ね、社会からの信頼を得て、「やりたいこと」を実現して行きます。
これは、個人でもNPOでも同じです。待っていては、「出来ること」は質的・量的に限られ、社会に知られなければ声が届かず、ニーズとずれていれば声が掛からず、「やりたいこと」は実現できません。皆さんが「連携プラットフォーム」で「やりたいこと」は何でしょうか?

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■「やりたいこと」をやった成果の報酬は?
個人でも会社でも、何かをする時、その対価が妥当であればするし、割に合わなければ辞退しますね。しかし【下表】のように、個人も会社も、十分な報酬がなくても、行う仕事や活動があります。

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それは、お金の他に得るものがあり、それが、その個人や会社にとって価値があるからですね。

私は、大学4年生の時に土木学会の会員になり、その後約45年間、個人会費を払い続け、計65万円くらいになるかなと思います。その間、いつも何かの委員会で活動していて、会社は「行ってこい」と業務扱いをしてくれました。業務のノルマは減らないので私は忙しくなるのですが、私も会社もそうするだけの価値があると考えていたということです。

■生計を立てる仕事と余力を活かす仕事
個人が何かを「やりたい」と考え、それが社会にとって有益であればあるほど、その活動は継続的でパワフルで、さらにより確実でより効果的であることが望まれます。個人が暇な時にする程度では社会の期待に応えられず、仲間を増やして組織化することになります。単発のイベントは、志を同じくするボランティアの協力で具現化できそうですが、継続的で確実でとなると、継続的に計画しマネジメントする職員が必要です。すると、その人の生計はどうやって立てましょうか。ボランティアでは、家族にも霞を食わせないと・・。

■例えば「土木コレクション」のボランティアガイド
「土木と市民をつなぐ活動」として、土木学会からCNCPに、【右図】の「土木コレクション」への協力が求められています。新宿西口広場のイベントコーナーに土木学会のコレクション資料を展示して、訪れた市民(8000人/日)に説明します。朝8時〜夜9時×4日間(笑)。
これを1人でやるなら、会社の業務命令でもイヤですね。しかし、土曜の午後だけとか、木金の6時以降だけとかだったら、出来るでしょう? 若い現役・学生の男女、親子連れに、土木の面白さや重要さを知ってもらえるなら・・、やる価値はありますよね。報酬がなければ・・とか言いませんよね。ただし、これは個人の価値観。同じ価値観の仲間が集まれば、問題ないですね。
少し話は変わりますが、自治体にNPOやボランティアへの支援センターがありますが、自治体職員を配置せずにNPOに運営を委託する所が多いようです。
自治体職員を1人配置するのでは質的・量的に合わないのです。NPOなら同じ人が毎日7時間という仕事の仕方はしませんね。NPOの仲間たちが「寄って集って少しずつ」の取り組みが上手く合うのです。

■連携プラットフォームのやるべきこと
CNCPが、既存のNPOと同じような活動をしたら、NPOが1つ増えるだけです。土木学会がNPOのプラットフォームを作ったのですから、土木と市民をつなぐための、勉強と外の人・組織との連携・協働、市民のニーズの把握、市民と潜在的な仲間へのPR、それらを積み重ねて・・。そういう行動を「寄って集って少しずつ」が大事なんだと思います。

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posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | シビルNPOの現況と課題

「住民が主役、高校生も目覚める橋点検」

(株)アイ・エス・エス 浅野 和香奈
日本大学工学部 客員研究員


「“土木と市民社会をつなぐ”を謳うCNCPが関わっている「住民主体の橋点検」について紹介する。以下は、日大郡山岩城研究室と(株)アイ・エス・エス(CNCP会員)が取り組む事例である。

1.村の橋を自ら点検・清掃する
福島県平田村では、住民でも点検できる「簡易橋梁点検チェックシート」を用いた日常的な橋の清掃や点検が行われている。初年度の2015年度は村の管理橋梁全63橋中8橋のみで点検が行われたが、現在は60橋で住民によって点検と清掃が行われている。年4回の行政区ごとのごみ拾いや草刈り活動の2回に近隣の橋梁の点検と清掃を付随させている。最初は簡易橋梁点検チェックシートのみを提出していたが、徐々に住民の意識が高まり、現在では行政区長自らが点検報告書を作成し、簡易橋梁点検チェックシートと一緒に提出している。
住民による点検結果から、橋の上にどの程度の汚れが溜まっているかが分かる「橋マップ・ひらた」を作成した。橋マップは地図上の橋の位置にプロットされているピンの色で橋の上の汚れ具合が分かるものであり、汚れが多いほど暖色系、汚れが少ないほど寒色系の色でプロットされ、色は5段階に分かれている。ピンをクリックすると、「橋長」、「竣工年」、前回の「点検日」、「点検結果」、「コメント」、の他、過去の報告書や写真の閲覧ができ、今年度からは定期点検による判定がVとWの橋に対する対応についても見ることができる。橋マップは一般公開されており、住民による点検・清掃時前には各行政区長に配布されている。

2.高校生への広がり―黒川高校での出前授業と現場学習
本取組みは、住民だけでなく高校生にも広まっている。土木工学を学ぶ黒川高校は課題研究の授業の教材としてチェックシートを導入し、橋梁の構造や損傷事例を学びながら旧黒川郡の橋梁を点検している。2016年度は大和町,2017年度は富谷市,2018年度は大衡村で取組み,3年間で3市町村の全管理橋梁165橋の点検と清掃を完了した。
今年度は、大郷町での橋梁点検を実施するにあたり、地元の中学生にもインフラの現状を学んでもらおうと考え、2019年6月10日に「産学官連携事業『橋守活動』を知って自己の将来を考える学習会」が大郷中学校で開催された。2学年の66名の生徒は1時間目〜4時間目まで午前中いっぱい橋について学んだ。学年全体で老朽化問題や、劣化する要因、橋守活動についての講義を行い、橋の劣化要因は「水」が大きく関係することを学んだ後、現場での橋守活動と校内でのペーパークラフト作成に分かれてクラスごとに授業を行った。現場での橋守活動では、中学校の近くにある「宮田橋」に移動し、簡易橋梁点検チェックシートでの点検を体験し、道路脇に生えている草や土砂を清掃し排水機能を確保した。校内では、橋の構造を学ぶために作成した教材、「橋のペーパークラフト」を組み立てながら橋の部材やその役割を学んだ。最後に、産学官それぞれの立場から職業人講話を行った。この取組みは、地元新聞やテレビでも大きく取上げられた。

3.生徒からの反響
学習会後に実施した振り返りシートとアンケートから今回の学習会が生徒に与えた影響を考える。「当たり前のように橋を使っていたけど、今日僕たちが当たり前のように安全に使えるようにしてくれる人たちの努力と気持ちが伝わった」、「ペーパークラフトでは、橋の上からは見えないけど、橋を工夫して壊れにくいようにしていることが分かった」といった感想が寄せられた。さらに、振り返りシートに「橋に関する仕事をしたい、してみたい」と書いた生徒は11人、「橋守活動をしたい、しなければならないと思う」と書いた生徒は19人に上った。また、アンケートの記述欄には、「落橋した橋はどこが悪くなってしまっていたんですか。」、「橋の点検などをしていて一番難しかった場所や橋など体験話を聞きたいです。」といった橋に関する48個もの質問が寄せられ、生徒が橋に関して多くの関心を抱いたことが分かる。以上から、授業に参加した生徒が橋に対する意識が高まった様子が伺え、今回の学習会により、中学生の橋への理解を深めることができた。
地域住民や高校生、中学生など幅広い年代の市民と土木をつなぐべく、引き続き活動を展開していく。

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簡易橋梁点検チェックシート

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橋マップ・ひらた

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posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | 地域社会等

土木と市民社会をつなぐ 〜NPOとボランティアと連携プラットフォーム〜

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CNCP 常務理事/土木学会連携部門長
土木学会/教育企画・人材育成委員会/シビルNPO推進小委員会委員長
メトロ設計梶@技術顧問
田中 努


「土木と市民をつなぐ」は、賦に落ちるまで、判りにくい話です。土木と市民との溝に関する私の考えを、CNCP通信Vol.59の「土木と市民社会をつなぐ」シリーズに書きました。その後、いろいろな人と話をして、少し違った視点から、次のような考えや行動が大事だと考えています。

■やりたいこと・出来ること・求められること
個人でも組織でも、自分の「やりたいこと」がありますが、それをやるには、知識・スキル・パワー・経験・資金・周りの支援等が必要ですから、「やりたいこと」と「出来ること」には差があります。
「やりたいこと」が、趣味の範囲を越えると、さらに、周囲や社会から求められるか否かが問題になります。「やりたいこと」が社会のニーズとずれていたり、「出来ること」の質や量が不足だと、社会から賛同や期待が無く、実現させるチャンスがありません。
【右図】の3つの積集合の面積が広いほど、「やりたいこと」が実現できるという訳です。
会社では、社内の人材育成と研究開発、社外の出来る人材や組織との連携・協働により、会社の「出来ること」を拡大し、社会のニーズを調査・把握し、会社の「出来ること」をPRして、少しずつ実績を積み重ね、社会からの信頼を得て、「やりたいこと」を実現して行きます。
これは、個人でもNPOでも同じです。待っていては、「出来ること」は質的・量的に限られ、社会に知られなければ声が届かず、ニーズとずれていれば声が掛からず、「やりたいこと」は実現できません。皆さんが「連携プラットフォーム」で「やりたいこと」は何でしょうか?

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■「やりたいこと」をやった成果の報酬は?
個人でも会社でも、何かをする時、その対価が妥当であればするし、割に合わなければ辞退しますね。しかし【下表】のように、個人も会社も、十分な報酬がなくても、行う仕事や活動があります。

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それは、お金の他に得るものがあり、それが、その個人や会社にとって価値があるからですね。

私は、大学4年生の時に土木学会の会員になり、その後約45年間、個人会費を払い続け、計65万円くらいになるかなと思います。その間、いつも何かの委員会で活動していて、会社は「行ってこい」と業務扱いをしてくれました。業務のノルマは減らないので私は忙しくなるのですが、私も会社もそうするだけの価値があると考えていたということです。

■生計を立てる仕事と余力を活かす仕事
個人が何かを「やりたい」と考え、それが社会にとって有益であればあるほど、その活動は継続的でパワフルで、さらにより確実でより効果的であることが望まれます。個人が暇な時にする程度では社会の期待に応えられず、仲間を増やして組織化することになります。単発のイベントは、志を同じくするボランティアの協力で具現化できそうですが、継続的で確実でとなると、継続的に計画しマネジメントする職員が必要です。すると、その人の生計はどうやって立てましょうか。ボランティアでは、家族にも霞を食わせないと・・。

■例えば「土木コレクション」のボランティアガイド
「土木と市民をつなぐ活動」として、土木学会からCNCPに、【右図】の「土木コレクション」への協力が求められています。新宿西口広場のイベントコーナーに土木学会のコレクション資料を展示して、訪れた市民(8000人/日)に説明します。朝8時〜夜9時×4日間(笑)。
これを1人でやるなら、会社の業務命令でもイヤですね。しかし、土曜の午後だけとか、木金の6時以降だけとかだったら、出来るでしょう? 若い現役・学生の男女、親子連れに、土木の面白さや重要さを知ってもらえるなら・・、やる価値はありますよね。報酬がなければ・・とか言いませんよね。ただし、これは個人の価値観。同じ価値観の仲間が集まれば、問題ないですね。
少し話は変わりますが、自治体にNPOやボランティアへの支援センターがありますが、自治体職員を配置せずにNPOに運営を委託する所が多いようです。
自治体職員を1人配置するのでは質的・量的に合わないのです。NPOなら同じ人が毎日7時間という仕事の仕方はしませんね。NPOの仲間たちが「寄って集って少しずつ」の取り組みが上手く合うのです。

■連携プラットフォームのやるべきこと
CNCPが、既存のNPOと同じような活動をしたら、NPOが1つ増えるだけです。土木学会がNPOのプラットフォームを作ったのですから、土木と市民をつなぐための、勉強と外の人・組織との連携・協働、市民のニーズの把握、市民と潜在的な仲間へのPR、それらを積み重ねて・・。そういう行動を「寄って集って少しずつ」が大事なんだと思います。

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