2019年08月01日

正義の味方ヅラをするメディアの真相

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シビルNPO連携プラットフォーム 理事
 世古 一穂


●「新聞記者」という映画
「新聞記者」という映画がヒットしている
東京新聞記者・望月衣塑子のベストセラー「新聞記者」を原案に、政権がひた隠そうとする権力中枢の闇に迫ろうとする女性記者と、理想に燃え公務員の道を選んだある若いエリート官僚との対峙・葛藤をオリジナルストーリーで描いた衝撃作。東都新聞記者・吉岡のもとに、大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届く。日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち、ある強い思いを秘めて日本の新聞社で働いている彼女は、真相を究明すべく調査をはじめる。一方、内閣情報調査室の官僚・杉原「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、与えられた任務は現政権に不都合なニュースのコントロール。ある日彼は、久々に尊敬する昔の上司・神崎と再会するのだが、その数日後、神崎はビルの屋上から身を投げてしまう。真実に迫ろうともがく若き新聞記者。闇の存在に気付き、選択を迫られるエリート官僚。二人の人生が交差するとき、衝撃の事実が明らかになる

●メディアには闇の存在が跋扈する?
新聞やメディア業界も正義の味方づらをしているが内実は日常化しているセクハラ、パワハラ他の世間にしられたくないことのもみ消しを社をあげてやっていることは周知の事実だ。

土木業界も闇の存在が、跋扈する?
映画「新聞記者記者」をみて市民社会と
土木業界について考えるのも一興では?

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第16回「土木工学」ということば

Civil Engineeringは、明治七年(1874年)『工学寮学課並諸規則(工部省)』に「土木学」と初めて記された、と第8回に書いた。現在の一般的な訳はというと「土木工学」であり、Engineeringは「工学」である。
遡ること四年、鉄道建築師長(Engineer in Chief)エドモンド・モレルによる「建築局と建築学校設置」建議をもとに明治三年(1870年)閏十月二十日、大隈重信、伊藤博文らに主導されて「工部省」が建置された。この提案が途中で中国官制の六部の一つ「工部」にならったであろう「工部院建置の議」に変わっていなければ、明治政府の殖産興業をつかさどる省が「建築省」となっていたかもしれない。翌明治四年七月の「工部学校取設ノ儀」を経て、八月十四日に工部省は10寮1司の編成となり、技術教育機関「工学寮」が新設され、山尾庸三が工学頭になった。翌明治五年一月二十四日制定の『工部省職制並事務章程』の事務章程には「工学ヲ開明スル事」とあり「工学」が開明すべき新しい学問として初めて記された。また「鉄道電信灯台礁標等ヲ建築修繕スル事」という記述もあり、当時「鉄道」「電信」「灯台」は「建築」するものだった。
「土木工学」は、旧「開成所」の流れをくむ「東京開成学校」の教育課程『東京開成學校一覧』(明治八年(1875年)二月)の諸藝學(ポリテクニツク)第二年本科中級に「土木工學(シビールエンジニール)及實験」として出てくる。「工学」が確立したためか、「土木学」ではなく「土木工学」と訳されている。
なお、「土木学会」の前身の「工学会」は工学寮卒業生の同窓会が基である。
(土木学会土木広報センター次長 小松 淳)
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NPO法人LIME Japan 第17回啓発セミナー

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法人正会員 NPO法人LIME Japan理事
シビルNPO連携プラットフォーム 個人正会員
有岡 正樹


去る7月18日午後市ヶ谷の私学会館で開催の標記セミナーに参加した。例年通り100名を
超す参加者を集めての盛会で、以下の二部に分かれてのプログラムに3時間半に及ぶの有意な
ひとときをを過ごした。


第一部:基調講演
「インフラ整備の戦略的アセットマネジメント」
小林潔司 氏(京都大学名誉教授・日本アセットマネジメント協会会長)
「市民社会からみたインフラ整備の在り方」
山本卓朗 氏(NPO法人シビルNPO連携 プラットフォーム代表理事)

第二部:パネルディスカッション
「これまでの10 年、これからの10 年のインフラ整備を考える」
〇コーディネーター NPO齋藤宏保副理事長 (元NHK 解説主幹)
〇パネリスト
基調講演者 + NPO阪田憲次理事長の3名

1.はじめに

2009年9月の設立総会で本NPO法人を立ち上げて丁度10年ということで、これまでの分野ごとにテーマを決めてのインフラメンテナンスに関してではなく、標記に示すような総論的な課題を3名の歴代土木学会会長が意見交換するセミナーを開催することになった。設立1年半後の2011年東日本大震災に端を発する様々な災害の頻発もあって、我が国のインフラを取り巻く状況は複雑かつ極めて厳しいものがあったし、これからもその整備課題は山積していく一途のいま、この機会の持つ意味は大きい。

2.基調講演
(1)インフラ整備戦略的アセットマネジメント
小林氏からは、日本アセットマネジメント協会設立2年目の新しい組織のなかで取り組んでいる、PFI/PPPといった事業化の視点での戦略的アセットマネジメントについて紹介があった。昨今とくに地方において定着してきているPFIに関して、地方金融が疲弊していく中で地域のアセットをどう守っていくか、例えば現在活動している京都府においては外郭団体(サポートセンター)を設立して、それが周辺の市町村を支援し、取りまとめて事業化するといったやり方を研究している。いくつかの自治体を束ねて、より効率的にお金が回っていく仕組みを検討していこというものである。それに関係しての財務、契約、アセット評価、補修引当金、割引率、減価償却、繰延維持管理会計など多くの土木技術者にとっては初耳の用語が相次ぎ、これからのこうした業際化的な取り組みが避けて通れないとの思いに駆られた参加者も多かったと思われた。その前提として、欧米諸国では一般的な積算士(Quantity Surveyor)やインフラファンド評価鑑定士といった資格制度が焦眉の課題であろう。
(2)市民社会から見たインフラ整備の在り方
山本氏は、鉄道事業に長年関わった後、土工協・全建協、ゼネコンさらには土木学会といった建設に関わる多様な組織の指導者として50余年を過ごされたが、現在はシビル
NPO法人連携プラットフォームの代表理事として「土木と市民社会をつなぐ」をキーワードに社会貢献活動に関わっておられる。その背景には、かねてより土木は「市民工学」であるとの強い信念の下、とくに阪神および東日本という2つの大震災を経験しての「社会安全」に対する強い思い入れがある。講演では、戦後75年の前半は「もの」が「こころ」に卓越し、後半にはその関係が逆転していくことを背景に、@豊かさと貧しさ、A国際比較で、B多様なインフラ別に、という3つの視点で市民とインフラの関係をどのように考えるかをわかり易く説明があった。とくに国際比較については、‘幸せを感じているか’といった極めて基本的な点、‘国民一人当たりの道路延長’、‘国民の時間当たりの移動距離’といった土木的関心事項、さらには働き方や安全保障といった国策に関わる事象に至るまで20項目について日本の国際的位置づけを紹介され、それをもとに、「これまでの10年」と、下図を用い「これからの10年(過去30年相当)として総括があった。

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3.パネルディスカッション
「これまでの10 年、これからの10 年のインフラ整備を考える」
コーディネーターの齋藤宏保氏は、建設系NPO法人では数少ない文系のメンバーだが、34年前NHKに入社し建設省記者クラブに配属になったのを皮切りに、以後30余年ジャーナリストとして建設関係に深く関わってこられた。その間根付いてきた、‘インフラ整備の必要性が国民に本当に理解されてきたのか’との疑念を頭の片隅におきながら、以下の視点で3人の元土木学会会長が議論を展開した。
1. これまでの10年、必要なインフラ整備は進んだのか。
2. 計画通りに進まなかったのはなぜか。どうすればよかったのか。
3. これからの10年、必要なインフラ整備をどう進めればいいのか。
4. 少子高齢化、税収が減る中で、一般市民の理解は得られるのか。
80分という限られた時間での意見交換でもあり、これらを上記1.〜4.に分けて整理することは難しいので、1.と2.をまとめて「これまで10年の総括」、また3.と4.をまとめて「これからの10年へのヒント」として、代表的な論点を以下の通り紹介しておきたい。

(1) これまで10年の総括
・情報インフラの飛躍的利用、安全面での革新的技術、災害発生時での対応といった、市民目線でのインフラ整備は飛躍的に進んでいるが、これはあくまでも大都市圏での話であり、地方での課題先送りによるギャップの拡大は国全体の悪循環を招いている。そういう意味で市民目線での理解というと都市を中心とした一般市民対象のように捉えてしまうが、地方では‘家に帰れば普通の市民’的な暮らしの目線にまで及ぶことが重要である。広報という視点では、前者が話し側の伝える目線であり、後者は地域市民が知りたがっていることを‘ひろげる、つなぐ’目線である。
・太平洋戦争後75年の前半と後半の話があったが、その倍のタームで日本の近代史を見てみると、明治150年の後半という意味での戦後75年は民主主義とインフラ整備という青写真の上に成り立った近代国家というコンセンサスが前提であった。そして今は新しい価値観の世代に移ろうとしているが、その区切りにふさわしい青写真が描き切れていない。多様な技術と価値観をどう最大公約数的、あるいは最小公倍数的に描いていくかが問われている。インフレでいえば造ることから今あるものをどうマネジメントしていくかという価値観である。
・より具体的にということで、@時代のニーズに合った長寿命化・強靭化の視点でのインフラ整備が不十分、A地球温暖化による災害の頻発と巨大化に対応できるインフラの強靭化的更新の必要性、B少子高齢化と税収減少に対応するための人材と財政の限界、といったこれからの日本が避けられないジレンマにどう対峙していくのか、課題は深刻である。
(2) これからの10年へのヒント
・受け手側がどう認識したかを理解し、その課題を乗り越えて、重要な事象を取りまとめていくコミュニケーションとコーディネーションという一対の力が重要となる。失敗を恐れて外科手術的な対応が遅れ、重要事象を先送りしてしまう。とくに地方の行政と金融機関が優先順位を見極め、リスクを伴っての事業化を決断することが、地域疲弊の悪循環を断ち切っていくことにつながる。
・インフラメンテナンスにしても、5年ごとの点検が一巡して、すぐにも修理、更新の必要なインフラは全体の0.1%のオーダーと報告されている。‘乾いたタオルをさらに絞って’での対応ではなく、破棄も含めてインフラ全体の最適化を大胆に行う時期に来ている。個々のニーズではなく、総量としてのシーズをベースにしたアセットマネジメントへの変革が求められる。

・10年でこれまでの30年分に相当するようなスピードで時代が変わっていく。ただ。長期計画がこれまでの全総計画から、国土形成計画という理念先行で具体的な財政計画を伴わない現況では、建設業の後ろ向き体質は払しょくされない。企画、設計といった事業の上流部分を自らからの企業風土に取り入れて、社会的企業として脱請負のスケールの大きな事業主体に変革していく10年にすることができるかどうか、にかかっている。

4.あとがき
最後に司会の齋藤宏保氏が、阪神大震災の10年前の1983年に出版された彼の自著である小説「重い遺産―コンクリート構造物大崩壊迫る」のあとがきで‘それまでに建設してきたインフラが、近い将来あちこちで同時多発に痛みはじめ、次から次へと補修が必要となるのは目に見えている。補修費はいったい誰が面倒見よというのか’と問うているとの逸話を紹介し、それに“生きている以上は、次の世代に安全・安心で快適な社会を引き継ぎたいと思っていくことが重要”とのメッセージを添えて、セミナーは終わった。

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パネルメンバー(左より齋藤宏保、阪田憲次、山本卓郎、
小林潔司の各氏)

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土木と市民社会をつなぐ〜NPOとボランティアと連携プラットフォーム〜

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CNCP 常務理事/土木学会連携部門長
土木学会/教育企画・人材育成委員会/シビルNPO推進小委員会委員長
メトロ設計梶@技術顧問
田中 努


「土木と市民をつなぐ」は、賦に落ちるまで、判りにくい話です。土木と市民との溝に関する私の考えを、CNCP通信Vol.59の「土木と市民社会をつなぐ」シリーズに書きました。その後、いろいろな人と話をして、少し違った視点から、次のような考えや行動が大事だと考えています。

■やりたいこと・出来ること・求められること
個人でも組織でも、自分の「やりたいこと」がありますが、それをやるには、知識・スキル・パワー・経験・資金・周りの支援等が必要ですから、「やりたいこと」と「出来ること」には差があります。
「やりたいこと」が、趣味の範囲を越えると、さらに、周囲や社会から求められるか否かが問題になります。「やりたいこと」が社会のニーズとずれていたり、「出来ること」の質や量が不足だと、社会から賛同や期待が無く、実現させるチャンスがありません。
【右図】の3つの積集合の面積が広いほど、「やりたいこと」が実現できるという訳です。
会社では、社内の人材育成と研究開発、社外の出来る人材や組織との連携・協働により、会社の「出来ること」を拡大し、社会のニーズを調査・把握し、会社の「出来ること」をPRして、少しずつ実績を積み重ね、社会からの信頼を得て、「やりたいこと」を実現して行きます。
これは、個人でもNPOでも同じです。待っていては、「出来ること」は質的・量的に限られ、社会に知られなければ声が届かず、ニーズとずれていれば声が掛からず、「やりたいこと」は実現できません。皆さんが「連携プラットフォーム」で「やりたいこと」は何でしょうか?

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■「やりたいこと」をやった成果の報酬は?
個人でも会社でも、何かをする時、その対価が妥当であればするし、割に合わなければ辞退しますね。しかし【下表】のように、個人も会社も、十分な報酬がなくても、行う仕事や活動があります。

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それは、お金の他に得るものがあり、それが、その個人や会社にとって価値があるからですね。

私は、大学4年生の時に土木学会の会員になり、その後約45年間、個人会費を払い続け、計65万円くらいになるかなと思います。その間、いつも何かの委員会で活動していて、会社は「行ってこい」と業務扱いをしてくれました。業務のノルマは減らないので私は忙しくなるのですが、私も会社もそうするだけの価値があると考えていたということです。

■生計を立てる仕事と余力を活かす仕事
個人が何かを「やりたい」と考え、それが社会にとって有益であればあるほど、その活動は継続的でパワフルで、さらにより確実でより効果的であることが望まれます。個人が暇な時にする程度では社会の期待に応えられず、仲間を増やして組織化することになります。単発のイベントは、志を同じくするボランティアの協力で具現化できそうですが、継続的で確実でとなると、継続的に計画しマネジメントする職員が必要です。すると、その人の生計はどうやって立てましょうか。ボランティアでは、家族にも霞を食わせないと・・。

■例えば「土木コレクション」のボランティアガイド
「土木と市民をつなぐ活動」として、土木学会からCNCPに、【右図】の「土木コレクション」への協力が求められています。新宿西口広場のイベントコーナーに土木学会のコレクション資料を展示して、訪れた市民(8000人/日)に説明します。朝8時〜夜9時×4日間(笑)。
これを1人でやるなら、会社の業務命令でもイヤですね。しかし、土曜の午後だけとか、木金の6時以降だけとかだったら、出来るでしょう? 若い現役・学生の男女、親子連れに、土木の面白さや重要さを知ってもらえるなら・・、やる価値はありますよね。報酬がなければ・・とか言いませんよね。ただし、これは個人の価値観。同じ価値観の仲間が集まれば、問題ないですね。
少し話は変わりますが、自治体にNPOやボランティアへの支援センターがありますが、自治体職員を配置せずにNPOに運営を委託する所が多いようです。
自治体職員を1人配置するのでは質的・量的に合わないのです。NPOなら同じ人が毎日7時間という仕事の仕方はしませんね。NPOの仲間たちが「寄って集って少しずつ」の取り組みが上手く合うのです。

■連携プラットフォームのやるべきこと
CNCPが、既存のNPOと同じような活動をしたら、NPOが1つ増えるだけです。土木学会がNPOのプラットフォームを作ったのですから、土木と市民をつなぐための、勉強と外の人・組織との連携・協働、市民のニーズの把握、市民と潜在的な仲間へのPR、それらを積み重ねて・・。そういう行動を「寄って集って少しずつ」が大事なんだと思います。

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「住民が主役、高校生も目覚める橋点検」

(株)アイ・エス・エス 浅野 和香奈
日本大学工学部 客員研究員


「“土木と市民社会をつなぐ”を謳うCNCPが関わっている「住民主体の橋点検」について紹介する。以下は、日大郡山岩城研究室と(株)アイ・エス・エス(CNCP会員)が取り組む事例である。

1.村の橋を自ら点検・清掃する
福島県平田村では、住民でも点検できる「簡易橋梁点検チェックシート」を用いた日常的な橋の清掃や点検が行われている。初年度の2015年度は村の管理橋梁全63橋中8橋のみで点検が行われたが、現在は60橋で住民によって点検と清掃が行われている。年4回の行政区ごとのごみ拾いや草刈り活動の2回に近隣の橋梁の点検と清掃を付随させている。最初は簡易橋梁点検チェックシートのみを提出していたが、徐々に住民の意識が高まり、現在では行政区長自らが点検報告書を作成し、簡易橋梁点検チェックシートと一緒に提出している。
住民による点検結果から、橋の上にどの程度の汚れが溜まっているかが分かる「橋マップ・ひらた」を作成した。橋マップは地図上の橋の位置にプロットされているピンの色で橋の上の汚れ具合が分かるものであり、汚れが多いほど暖色系、汚れが少ないほど寒色系の色でプロットされ、色は5段階に分かれている。ピンをクリックすると、「橋長」、「竣工年」、前回の「点検日」、「点検結果」、「コメント」、の他、過去の報告書や写真の閲覧ができ、今年度からは定期点検による判定がVとWの橋に対する対応についても見ることができる。橋マップは一般公開されており、住民による点検・清掃時前には各行政区長に配布されている。

2.高校生への広がり―黒川高校での出前授業と現場学習
本取組みは、住民だけでなく高校生にも広まっている。土木工学を学ぶ黒川高校は課題研究の授業の教材としてチェックシートを導入し、橋梁の構造や損傷事例を学びながら旧黒川郡の橋梁を点検している。2016年度は大和町,2017年度は富谷市,2018年度は大衡村で取組み,3年間で3市町村の全管理橋梁165橋の点検と清掃を完了した。
今年度は、大郷町での橋梁点検を実施するにあたり、地元の中学生にもインフラの現状を学んでもらおうと考え、2019年6月10日に「産学官連携事業『橋守活動』を知って自己の将来を考える学習会」が大郷中学校で開催された。2学年の66名の生徒は1時間目〜4時間目まで午前中いっぱい橋について学んだ。学年全体で老朽化問題や、劣化する要因、橋守活動についての講義を行い、橋の劣化要因は「水」が大きく関係することを学んだ後、現場での橋守活動と校内でのペーパークラフト作成に分かれてクラスごとに授業を行った。現場での橋守活動では、中学校の近くにある「宮田橋」に移動し、簡易橋梁点検チェックシートでの点検を体験し、道路脇に生えている草や土砂を清掃し排水機能を確保した。校内では、橋の構造を学ぶために作成した教材、「橋のペーパークラフト」を組み立てながら橋の部材やその役割を学んだ。最後に、産学官それぞれの立場から職業人講話を行った。この取組みは、地元新聞やテレビでも大きく取上げられた。

3.生徒からの反響
学習会後に実施した振り返りシートとアンケートから今回の学習会が生徒に与えた影響を考える。「当たり前のように橋を使っていたけど、今日僕たちが当たり前のように安全に使えるようにしてくれる人たちの努力と気持ちが伝わった」、「ペーパークラフトでは、橋の上からは見えないけど、橋を工夫して壊れにくいようにしていることが分かった」といった感想が寄せられた。さらに、振り返りシートに「橋に関する仕事をしたい、してみたい」と書いた生徒は11人、「橋守活動をしたい、しなければならないと思う」と書いた生徒は19人に上った。また、アンケートの記述欄には、「落橋した橋はどこが悪くなってしまっていたんですか。」、「橋の点検などをしていて一番難しかった場所や橋など体験話を聞きたいです。」といった橋に関する48個もの質問が寄せられ、生徒が橋に関して多くの関心を抱いたことが分かる。以上から、授業に参加した生徒が橋に対する意識が高まった様子が伺え、今回の学習会により、中学生の橋への理解を深めることができた。
地域住民や高校生、中学生など幅広い年代の市民と土木をつなぐべく、引き続き活動を展開していく。

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簡易橋梁点検チェックシート

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橋マップ・ひらた

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土木と市民社会をつなぐ 〜NPOとボランティアと連携プラットフォーム〜

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CNCP 常務理事/土木学会連携部門長
土木学会/教育企画・人材育成委員会/シビルNPO推進小委員会委員長
メトロ設計梶@技術顧問
田中 努


「土木と市民をつなぐ」は、賦に落ちるまで、判りにくい話です。土木と市民との溝に関する私の考えを、CNCP通信Vol.59の「土木と市民社会をつなぐ」シリーズに書きました。その後、いろいろな人と話をして、少し違った視点から、次のような考えや行動が大事だと考えています。

■やりたいこと・出来ること・求められること
個人でも組織でも、自分の「やりたいこと」がありますが、それをやるには、知識・スキル・パワー・経験・資金・周りの支援等が必要ですから、「やりたいこと」と「出来ること」には差があります。
「やりたいこと」が、趣味の範囲を越えると、さらに、周囲や社会から求められるか否かが問題になります。「やりたいこと」が社会のニーズとずれていたり、「出来ること」の質や量が不足だと、社会から賛同や期待が無く、実現させるチャンスがありません。
【右図】の3つの積集合の面積が広いほど、「やりたいこと」が実現できるという訳です。
会社では、社内の人材育成と研究開発、社外の出来る人材や組織との連携・協働により、会社の「出来ること」を拡大し、社会のニーズを調査・把握し、会社の「出来ること」をPRして、少しずつ実績を積み重ね、社会からの信頼を得て、「やりたいこと」を実現して行きます。
これは、個人でもNPOでも同じです。待っていては、「出来ること」は質的・量的に限られ、社会に知られなければ声が届かず、ニーズとずれていれば声が掛からず、「やりたいこと」は実現できません。皆さんが「連携プラットフォーム」で「やりたいこと」は何でしょうか?

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■「やりたいこと」をやった成果の報酬は?
個人でも会社でも、何かをする時、その対価が妥当であればするし、割に合わなければ辞退しますね。しかし【下表】のように、個人も会社も、十分な報酬がなくても、行う仕事や活動があります。

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それは、お金の他に得るものがあり、それが、その個人や会社にとって価値があるからですね。

私は、大学4年生の時に土木学会の会員になり、その後約45年間、個人会費を払い続け、計65万円くらいになるかなと思います。その間、いつも何かの委員会で活動していて、会社は「行ってこい」と業務扱いをしてくれました。業務のノルマは減らないので私は忙しくなるのですが、私も会社もそうするだけの価値があると考えていたということです。

■生計を立てる仕事と余力を活かす仕事
個人が何かを「やりたい」と考え、それが社会にとって有益であればあるほど、その活動は継続的でパワフルで、さらにより確実でより効果的であることが望まれます。個人が暇な時にする程度では社会の期待に応えられず、仲間を増やして組織化することになります。単発のイベントは、志を同じくするボランティアの協力で具現化できそうですが、継続的で確実でとなると、継続的に計画しマネジメントする職員が必要です。すると、その人の生計はどうやって立てましょうか。ボランティアでは、家族にも霞を食わせないと・・。

■例えば「土木コレクション」のボランティアガイド
「土木と市民をつなぐ活動」として、土木学会からCNCPに、【右図】の「土木コレクション」への協力が求められています。新宿西口広場のイベントコーナーに土木学会のコレクション資料を展示して、訪れた市民(8000人/日)に説明します。朝8時〜夜9時×4日間(笑)。
これを1人でやるなら、会社の業務命令でもイヤですね。しかし、土曜の午後だけとか、木金の6時以降だけとかだったら、出来るでしょう? 若い現役・学生の男女、親子連れに、土木の面白さや重要さを知ってもらえるなら・・、やる価値はありますよね。報酬がなければ・・とか言いませんよね。ただし、これは個人の価値観。同じ価値観の仲間が集まれば、問題ないですね。
少し話は変わりますが、自治体にNPOやボランティアへの支援センターがありますが、自治体職員を配置せずにNPOに運営を委託する所が多いようです。
自治体職員を1人配置するのでは質的・量的に合わないのです。NPOなら同じ人が毎日7時間という仕事の仕方はしませんね。NPOの仲間たちが「寄って集って少しずつ」の取り組みが上手く合うのです。

■連携プラットフォームのやるべきこと
CNCPが、既存のNPOと同じような活動をしたら、NPOが1つ増えるだけです。土木学会がNPOのプラットフォームを作ったのですから、土木と市民をつなぐための、勉強と外の人・組織との連携・協働、市民のニーズの把握、市民と潜在的な仲間へのPR、それらを積み重ねて・・。そういう行動を「寄って集って少しずつ」が大事なんだと思います。

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当たり前の重み

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NPO研修情報センター理事
千葉経済大学非常勤講師 岡室 美恵子


中国の人って土木のことどう思ってる?CNCPの理事さんから聞かれた。中国の社会開発や市民社会支援の事業に長い間従事した経験から、約14億の民に対しステレオタイプで答えるには勇気がいる。しかし、大きく外さないだろうと確信できる答えが1つある。多くの中国の人が恐らく今でも、土木は“国家の大計”と思っているだろうということだ。
1989年2月、作家の戴晴(当時は新聞記者)が三峡ダム建設計画に対する“反対派”の論点をまとめた『長江長江―三峡工程論争』が刊行された。翌月の全国人民代表大会で272 名の代表が建設の早期実施に反対し、姚依林副首相(当時)は最低5年間の延期を表明した。しかし、天安門事件が起こると戴晴は逮捕され、本は発禁、反対派の一部は「右派」とみなされ失脚へ。土木は国家の仕事、土木は政治、市民が登場する余地はなかった。
市民が登場するのは2000年に入ってからだ。01年3月、中国初の“公聴会”が開かれた。“”としたのは、主催者が政府ではなかったからだ。北京市は、汚染と施設の老朽化のため市内の河川、湖沼の治水工事に着手していた。昆玉河の工事もその1つで、土手や土底をコンクリート水路に置き換えていく。生態環境への影響を心配したのは「自然の友」「地球村」「緑家園」という“純民間”の環境三団体。社会主義体制下では、従来、人も企業も事業体も社会組織もみな国のもの。しかし、市場経済化の進展とともに社はパブリックヒアリングという仕組みがあるらしい…北京政府や関係者を招へいし意見交換したらどうか…。後に公聴会は政府や起業者が開くものと知り、「対話会」と名を改めたそうだ。会の終盤、副市長が「非合法組織の組織活動」と一声を発し、その場でメディア各社に報道禁止を言い渡した。
同年、市民参加と環境の重視を条件に「08北京五輪」の開催が決定すると、活動家による “声を公にしていく”ための少々手荒なアクションが増えていった。当時、環境団体は自然や野生動物の保護、ゴミ分別の普及などを主な活動に掲げており、環境は政治から最も遠い分野だった。よって当局は”認めず、近寄らず、取り締まらず”。 裏を返せば、NGOが政府との接点を持つことは極めて困難だった。活動家達は国際会議などの機会を利用して、時には場を占拠するような行動を起こし、訴え、主張を叫んだ。かくいう私も、某パネル討論会の席上「日本のODAで建設中のダムの影響をどう思うか」と突然やられたことがある。

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それが国や地方政府による土木事業に影響を与えていくアドボカシー活動“へと徐々に発展していく。2004年、国内のNGOが協力し、雲南省の怒江(サルウィン川上流。03年に世界遺産)のダム建設計画に対し反対運動を展開、世界ダム大会で国際世論を味方につけ、温家宝首相(当時)は工事の棚上げを発表した。強力なサポーターも後押しした。改革・開放を牽引してきた経済、建設部門と違い、社会のコストを扱う環境保護総局(現生体環境省)は、“ゴム印(法的な権限のみで実権なし)”と軽視されていた。地元の政治経済を環境部門でさえ優先する地方政府との軋轢もあった。NGOを環境同盟軍として「環保暴風(環境保護ストーム)」を吹き荒らし、30の国家プロジェクトの停止・見直しを要求した。
2005年、公式には中国初となる「円明園ビニールシート工事」公聴会が開催された。「人民日報」「新華通信社」がネットで生中継し、主要メディアも大々的に報道した。清代に造営された離宮の遺構にある湖に観光船を走らせるため、湖底にビールシートを敷く工事がほぼ完了という頃、偶然観光に来ていた造園学の専門家が憂慮し、メディアにリークしたのがきっかけだった。01年の「対話会」では、政府側が「専門家が科学的プロセスを用いて論証した。一般大衆はよく理解するように」を強調するのみだったという。しかし、05年の「公聴会」では、出席者は専門家、企業、市民にかかわらず、参加し自らの態度を発表することが求められた。生態系への影響だけでなく施行に至るプロセスは合法か?起業者や施工者の関係は?予算は適切か?市民の意識も向上していた。環境保護総局は工事の全面見直しを要求する一方、市民参加の意義について見解を表明し、翌06年「環境影響評価公衆参加暫定規則」が制定された。
2015年、25年ぶりに改訂された「環境保護法」は、情報公開と公衆参加を明記し、また「環境公益訴訟」の原告適格に“条件を満たす環境NGO”を含めた。日本では未導入の環境公益訴訟は、環境利益が侵害された場合、社会の共同利益を守るために法律で適格とされた機関・団体が訴訟を起こすことができる制度である。
社会主義体制下での市民と国家の関係に懐疑的な見方もあるだろう。徐々に築かれてきたしくみやチャネルの存在を知らない市民も依然として多いだろう。起業者に長期的な理がある場合もあるだろう。しかし、接点をさぐり、溝を埋めるチャネルをつかむことは当たり前ではなかった。しくみや制度の結実は「無」から創りだすことの重みでもある。
土木と市民をつなぐ上で、日本では“当たり前”すぎて、いつのまにか儀礼や休眠状態にさせてしまっていることはないだろうか。令和の時代に再考してはどうか。
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正義の味方ヅラをするメディアの真相

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シビルNPO連携プラットフォーム 理事
 世古 一穂


●「新聞記者」という映画
「新聞記者」という映画がヒットしている
東京新聞記者・望月衣塑子のベストセラー「新聞記者」を原案に、政権がひた隠そうとする権力中枢の闇に迫ろうとする女性記者と、理想に燃え公務員の道を選んだある若いエリート官僚との対峙・葛藤をオリジナルストーリーで描いた衝撃作。東都新聞記者・吉岡のもとに、大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届く。日本人の父と韓国人の母のもとアメリカで育ち、ある強い思いを秘めて日本の新聞社で働いている彼女は、真相を究明すべく調査をはじめる。一方、内閣情報調査室の官僚・杉原「国民に尽くす」という信念とは裏腹に、与えられた任務は現政権に不都合なニュースのコントロール。ある日彼は、久々に尊敬する昔の上司・神崎と再会するのだが、その数日後、神崎はビルの屋上から身を投げてしまう。真実に迫ろうともがく若き新聞記者。闇の存在に気付き、選択を迫られるエリート官僚。二人の人生が交差するとき、衝撃の事実が明らかになる

●メディアには闇の存在が跋扈する?
新聞やメディア業界も正義の味方づらをしているが内実は日常化しているセクハラ、パワハラ他の世間にしられたくないことのもみ消しを社をあげてやっていることは周知の事実だ。

土木業界も闇の存在が、跋扈する?
映画「新聞記者記者」をみて市民社会と
土木業界について考えるのも一興では?

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「住民が主役、高校生も目覚める橋点検」

(株)アイ・エス・エス 浅野 和香奈
日本大学工学部 客員研究員


「“土木と市民社会をつなぐ”を謳うCNCPが関わっている「住民主体の橋点検」について紹介する。以下は、日大郡山岩城研究室と(株)アイ・エス・エス(CNCP会員)が取り組む事例である。

1.村の橋を自ら点検・清掃する
福島県平田村では、住民でも点検できる「簡易橋梁点検チェックシート」を用いた日常的な橋の清掃や点検が行われている。初年度の2015年度は村の管理橋梁全63橋中8橋のみで点検が行われたが、現在は60橋で住民によって点検と清掃が行われている。年4回の行政区ごとのごみ拾いや草刈り活動の2回に近隣の橋梁の点検と清掃を付随させている。最初は簡易橋梁点検チェックシートのみを提出していたが、徐々に住民の意識が高まり、現在では行政区長自らが点検報告書を作成し、簡易橋梁点検チェックシートと一緒に提出している。
住民による点検結果から、橋の上にどの程度の汚れが溜まっているかが分かる「橋マップ・ひらた」を作成した。橋マップは地図上の橋の位置にプロットされているピンの色で橋の上の汚れ具合が分かるものであり、汚れが多いほど暖色系、汚れが少ないほど寒色系の色でプロットされ、色は5段階に分かれている。ピンをクリックすると、「橋長」、「竣工年」、前回の「点検日」、「点検結果」、「コメント」、の他、過去の報告書や写真の閲覧ができ、今年度からは定期点検による判定がVとWの橋に対する対応についても見ることができる。橋マップは一般公開されており、住民による点検・清掃時前には各行政区長に配布されている。

2.高校生への広がり―黒川高校での出前授業と現場学習
本取組みは、住民だけでなく高校生にも広まっている。土木工学を学ぶ黒川高校は課題研究の授業の教材としてチェックシートを導入し、橋梁の構造や損傷事例を学びながら旧黒川郡の橋梁を点検している。2016年度は大和町,2017年度は富谷市,2018年度は大衡村で取組み,3年間で3市町村の全管理橋梁165橋の点検と清掃を完了した。
今年度は、大郷町での橋梁点検を実施するにあたり、地元の中学生にもインフラの現状を学んでもらおうと考え、2019年6月10日に「産学官連携事業『橋守活動』を知って自己の将来を考える学習会」が大郷中学校で開催された。2学年の66名の生徒は1時間目〜4時間目まで午前中いっぱい橋について学んだ。学年全体で老朽化問題や、劣化する要因、橋守活動についての講義を行い、橋の劣化要因は「水」が大きく関係することを学んだ後、現場での橋守活動と校内でのペーパークラフト作成に分かれてクラスごとに授業を行った。現場での橋守活動では、中学校の近くにある「宮田橋」に移動し、簡易橋梁点検チェックシートでの点検を体験し、道路脇に生えている草や土砂を清掃し排水機能を確保した。校内では、橋の構造を学ぶために作成した教材、「橋のペーパークラフト」を組み立てながら橋の部材やその役割を学んだ。最後に、産学官それぞれの立場から職業人講話を行った。この取組みは、地元新聞やテレビでも大きく取上げられた。

3.生徒からの反響
学習会後に実施した振り返りシートとアンケートから今回の学習会が生徒に与えた影響を考える。「当たり前のように橋を使っていたけど、今日僕たちが当たり前のように安全に使えるようにしてくれる人たちの努力と気持ちが伝わった」、「ペーパークラフトでは、橋の上からは見えないけど、橋を工夫して壊れにくいようにしていることが分かった」といった感想が寄せられた。さらに、振り返りシートに「橋に関する仕事をしたい、してみたい」と書いた生徒は11人、「橋守活動をしたい、しなければならないと思う」と書いた生徒は19人に上った。また、アンケートの記述欄には、「落橋した橋はどこが悪くなってしまっていたんですか。」、「橋の点検などをしていて一番難しかった場所や橋など体験話を聞きたいです。」といった橋に関する48個もの質問が寄せられ、生徒が橋に関して多くの関心を抱いたことが分かる。以上から、授業に参加した生徒が橋に対する意識が高まった様子が伺え、今回の学習会により、中学生の橋への理解を深めることができた。
地域住民や高校生、中学生など幅広い年代の市民と土木をつなぐべく、引き続き活動を展開していく。

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簡易橋梁点検チェックシート

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橋マップ・ひらた

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NPO法人LIME Japan 第17回啓発セミナー開催報告 「インフラ整備〜これまでの10年とこれからの10年」

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法人正会員 NPO法人LIME Japan理事
シビルNPO連携プラットフォーム 個人正会員
有岡 正樹


去る7月18日午後市ヶ谷の私学会館で開催の標記セミナーに参加した。例年通り100名を
超す参加者を集めての盛会で、以下の二部に分かれてのプログラムに3時間半に及ぶの有意な
ひとときをを過ごした。


第一部:基調講演
「インフラ整備の戦略的アセットマネジメント」
小林潔司 氏(京都大学名誉教授・日本アセットマネジメント協会会長)
「市民社会からみたインフラ整備の在り方」
山本卓朗 氏(NPO法人シビルNPO連携 プラットフォーム代表理事)

第二部:パネルディスカッション
「これまでの10 年、これからの10 年のインフラ整備を考える」
〇コーディネーター NPO齋藤宏保副理事長 (元NHK 解説主幹)
〇パネリスト
基調講演者 + NPO阪田憲次理事長の3名

1.はじめに

2009年9月の設立総会で本NPO法人を立ち上げて丁度10年ということで、これまでの分野ごとにテーマを決めてのインフラメンテナンスに関してではなく、標記に示すような総論的な課題を3名の歴代土木学会会長が意見交換するセミナーを開催することになった。設立1年半後の2011年東日本大震災に端を発する様々な災害の頻発もあって、我が国のインフラを取り巻く状況は複雑かつ極めて厳しいものがあったし、これからもその整備課題は山積していく一途のいま、この機会の持つ意味は大きい。

2.基調講演
(1)インフラ整備戦略的アセットマネジメント
小林氏からは、日本アセットマネジメント協会設立2年目の新しい組織のなかで取り組んでいる、PFI/PPPといった事業化の視点での戦略的アセットマネジメントについて紹介があった。昨今とくに地方において定着してきているPFIに関して、地方金融が疲弊していく中で地域のアセットをどう守っていくか、例えば現在活動している京都府においては外郭団体(サポートセンター)を設立して、それが周辺の市町村を支援し、取りまとめて事業化するといったやり方を研究している。いくつかの自治体を束ねて、より効率的にお金が回っていく仕組みを検討していこというものである。それに関係しての財務、契約、アセット評価、補修引当金、割引率、減価償却、繰延維持管理会計など多くの土木技術者にとっては初耳の用語が相次ぎ、これからのこうした業際化的な取り組みが避けて通れないとの思いに駆られた参加者も多かったと思われた。その前提として、欧米諸国では一般的な積算士(Quantity Surveyor)やインフラファンド評価鑑定士といった資格制度が焦眉の課題であろう。
(2)市民社会から見たインフラ整備の在り方
山本氏は、鉄道事業に長年関わった後、土工協・全建協、ゼネコンさらには土木学会といった建設に関わる多様な組織の指導者として50余年を過ごされたが、現在はシビル
NPO法人連携プラットフォームの代表理事として「土木と市民社会をつなぐ」をキーワードに社会貢献活動に関わっておられる。その背景には、かねてより土木は「市民工学」であるとの強い信念の下、とくに阪神および東日本という2つの大震災を経験しての「社会安全」に対する強い思い入れがある。講演では、戦後75年の前半は「もの」が「こころ」に卓越し、後半にはその関係が逆転していくことを背景に、@豊かさと貧しさ、A国際比較で、B多様なインフラ別に、という3つの視点で市民とインフラの関係をどのように考えるかをわかり易く説明があった。とくに国際比較については、‘幸せを感じているか’といった極めて基本的な点、‘国民一人当たりの道路延長’、‘国民の時間当たりの移動距離’といった土木的関心事項、さらには働き方や安全保障といった国策に関わる事象に至るまで20項目について日本の国際的位置づけを紹介され、それをもとに、「これまでの10年」と、下図を用い「これからの10年(過去30年相当)として総括があった。

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3.パネルディスカッション
「これまでの10 年、これからの10 年のインフラ整備を考える」
コーディネーターの齋藤宏保氏は、建設系NPO法人では数少ない文系のメンバーだが、34年前NHKに入社し建設省記者クラブに配属になったのを皮切りに、以後30余年ジャーナリストとして建設関係に深く関わってこられた。その間根付いてきた、‘インフラ整備の必要性が国民に本当に理解されてきたのか’との疑念を頭の片隅におきながら、以下の視点で3人の元土木学会会長が議論を展開した。
1. これまでの10年、必要なインフラ整備は進んだのか。
2. 計画通りに進まなかったのはなぜか。どうすればよかったのか。
3. これからの10年、必要なインフラ整備をどう進めればいいのか。
4. 少子高齢化、税収が減る中で、一般市民の理解は得られるのか。
80分という限られた時間での意見交換でもあり、これらを上記1.〜4.に分けて整理することは難しいので、1.と2.をまとめて「これまで10年の総括」、また3.と4.をまとめて「これからの10年へのヒント」として、代表的な論点を以下の通り紹介しておきたい。

(1) これまで10年の総括
・情報インフラの飛躍的利用、安全面での革新的技術、災害発生時での対応といった、市民目線でのインフラ整備は飛躍的に進んでいるが、これはあくまでも大都市圏での話であり、地方での課題先送りによるギャップの拡大は国全体の悪循環を招いている。そういう意味で市民目線での理解というと都市を中心とした一般市民対象のように捉えてしまうが、地方では‘家に帰れば普通の市民’的な暮らしの目線にまで及ぶことが重要である。広報という視点では、前者が話し側の伝える目線であり、後者は地域市民が知りたがっていることを‘ひろげる、つなぐ’目線である。
・太平洋戦争後75年の前半と後半の話があったが、その倍のタームで日本の近代史を見てみると、明治150年の後半という意味での戦後75年は民主主義とインフラ整備という青写真の上に成り立った近代国家というコンセンサスが前提であった。そして今は新しい価値観の世代に移ろうとしているが、その区切りにふさわしい青写真が描き切れていない。多様な技術と価値観をどう最大公約数的、あるいは最小公倍数的に描いていくかが問われている。インフレでいえば造ることから今あるものをどうマネジメントしていくかという価値観である。
・より具体的にということで、@時代のニーズに合った長寿命化・強靭化の視点でのインフラ整備が不十分、A地球温暖化による災害の頻発と巨大化に対応できるインフラの強靭化的更新の必要性、B少子高齢化と税収減少に対応するための人材と財政の限界、といったこれからの日本が避けられないジレンマにどう対峙していくのか、課題は深刻である。
(2) これからの10年へのヒント
・受け手側がどう認識したかを理解し、その課題を乗り越えて、重要な事象を取りまとめていくコミュニケーションとコーディネーションという一対の力が重要となる。失敗を恐れて外科手術的な対応が遅れ、重要事象を先送りしてしまう。とくに地方の行政と金融機関が優先順位を見極め、リスクを伴っての事業化を決断することが、地域疲弊の悪循環を断ち切っていくことにつながる。
・インフラメンテナンスにしても、5年ごとの点検が一巡して、すぐにも修理、更新の必要なインフラは全体の0.1%のオーダーと報告されている。‘乾いたタオルをさらに絞って’での対応ではなく、破棄も含めてインフラ全体の最適化を大胆に行う時期に来ている。個々のニーズではなく、総量としてのシーズをベースにしたアセットマネジメントへの変革が求められる。

・10年でこれまでの30年分に相当するようなスピードで時代が変わっていく。ただ。長期計画がこれまでの全総計画から、国土形成計画という理念先行で具体的な財政計画を伴わない現況では、建設業の後ろ向き体質は払しょくされない。企画、設計といった事業の上流部分を自らからの企業風土に取り入れて、社会的企業として脱請負のスケールの大きな事業主体に変革していく10年にすることができるかどうか、にかかっている。

4.あとがき
最後に司会の齋藤宏保氏が、阪神大震災の10年前の1983年に出版された彼の自著である小説「重い遺産―コンクリート構造物大崩壊迫る」のあとがきで‘それまでに建設してきたインフラが、近い将来あちこちで同時多発に痛みはじめ、次から次へと補修が必要となるのは目に見えている。補修費はいったい誰が面倒見よというのか’と問うているとの逸話を紹介し、それに“生きている以上は、次の世代に安全・安心で快適な社会を引き継ぎたいと思っていくことが重要”とのメッセージを添えて、セミナーは終わった。

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パネルメンバー(左より齋藤宏保、阪田憲次、山本卓郎、
小林潔司の各氏)

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