「土木工学」は『東京開成學校一覧』(明治八年(1875年)二月)の「土木工學(シビールエンジニール)及實験」が初出と前回書いた。
明治十年(1877年)、東京開成学校は東京大学となり、理学部工学科課程の最後学年に機械工学科と土木工学科に分かれる学科編成となった。翌年(1878年)に第二回卒業式があり、三名が初めての「土木工学」科卒業生となった。
工部大学校の第一回卒業式は明治十二年(1879年)、南清と石橋絢彦が初めての「土木学」工学士となった。證書は「工部大學校ニ於テ土木學ヲ修メ定規ノ如ク其業ヲ卒ヘ試験高點ヲ得テ第一等ノ科第ニ登ル乃チ授クルニ工學士ノ位ヲ以テス因テ名ヲ署シ印ヲ鈴シ以テ永ク其榮譽ヲ證ス」とあり、第一等の成績優秀者だけが工学士を授与された。
明治十九年(1886年)『帝國大學令』が公布され、前年に工部省から文部省に移管されていた工部大学校も東京大学に合併された。法科、医科、工科、文科、理科の五分科大学の工科大学学科課程に「土木工学」科が設置され、同時期の専門英和辞典『工学字彙』には「Civil engineering. 土木工學」と記述され、教育制度と同じく用語の統一がなされることとなった。
後の『大日本国語辞典』(大正六年(1917年))では、「【土木學】(名)土木に關する事項を研究する學問。【土木工學】(英 Civil engineering)(名)工學の一科。道路・橋梁・鐡道・港湾・河川・運河・衛生工学等、公共的性質の工事に關するもの。」とされ、「土木学」ということばは徐々に衰退していった。
(土木学会土木広報センター次長 小松 淳)
2019年09月01日
第17回 「土木工学」ということば(つづき)
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エコで持続可能な「空石積み」の技術
生きた知恵としての
農家の土木技術
最近、「石積み」に関心があります。中山間地域の棚田・段畑(段畑)の石垣、沖縄のサンゴの石垣、八丈島の玉石垣など、景観の美しさだけでなく、生業や生活を守るために生まれた技術の奥深さを感じています。週末にわか農民を二十数年つづけていることもあって、とくに惹かれるのは農家の土木作業として行われてきた棚田・段畑の「空石積み」です。
私の知る関東平野の水郷地帯には石垣棚田はなく、田んぼ周りの養生として行われるのは、田植え前の「畦塗り」。畦塗りは、田んぼの周りに土の壁を作って水が外にもれるのを防ぐ作業で、いわば畦(畦畔)の舗装です。田の土を持ち上げて法面を固めるので、環境への負荷はほとんどありません。また、人力であれ機械力であれ、生産者自らの手で行え、修復・再生ができることも良い点です。
石積みを
自分で積むことはできる?
中山間地で目にする棚田・段畑も環境に負荷をかけない農家の土木技術ではないかと思い、以前調べたことがあります。そのときは棚田の持つ多様な機能や文化的価値、景観の美しさ、耕作放棄地の増加などについて書かれたものか研究論文で、棚田の造成や維持管理についてはわかりませんでした。素人が棚田・段畑を作れるのか、工事業者に頼むとしたらそれは農家の土木技術ではないのか……、疑問を残したまま時が経ちました。
今年に入り、石積みの風景とそれを支える技術の継承を目的として活動している「石積み学校」をインターネットで知り、疑問が解けてきました。

石積みの棚田(福岡県八女市星野村)。西日本に多い法面を野面石で積んだ棚田。
この石積み学校を立ち上げた真田純子さんは、石積みの技術を知る人が減り修復が困難になっている現代に、徳島県の山あいの村で石積み技術を習得した研究者。その真田さんが昨年末に出版した『図解 誰でもできる石積み入門』(農文協)によると、農地の石積みは、敵の浸入を防ぐためすき間をつくらない城郭の石垣とは異なり、農地の空石積みはすき間を空けたまま積むそうです。また、その土地にある野面石を材料とし、修復の際は崩した石を再利用するため地域資源を循環させる持続可能な工法であること。しかも棚田・段畑がある地域では地域の人たちが石積みをしてきたので、職人でなくてもルールとコツをつかめば習得可能な技術であること、地域の人たちがグループできる小さな工事であることなどが語られています。
持続可能な土木技術の
普及を
もちろん本を読むだけで実際的な技術を習得できるわけではないので、石積み学校が開催しているワークショップに近々参加したいと思います。
石積み学校はもともと「石積みを習いたい人、技術を持つ人、直してほしい人をマッチングし、直してほしい人の田んぼや畑を修復しながら技術の継承を行う仕組み」として2013年に設立されたそうです。ワークショップの開催数、参加者の広がりに市民の関心の高さがうかがえます。他人任せ、公共任せの消費から生産・創造へと市民の思考がシフトしてきているのではないでしょうか。
持続可能な地球環境や社会システムについて、その価値が人々に共有されている今、生業や生活の中で営々と培われてきた土木技術は、今後も市民から注目されていくと思います。経済合理性を名目に護岸をコンクリートで固めるのを止め、環境への負荷の少ない持続可能な技術を研究・普及してくださることを望みます。

土坡の棚田(千葉県鴨川市大山千枚田)。関東では野面石が少ないため、土で法面を固めた棚田が多い。
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働きたい、働き方改革本当にいけるか・・・
シビルNPO連携プラットフォーム 個人正会員
NPO法人 あそ地下足袋倶楽部 理事長 木村 達夫
NPO法人 あそ地下足袋倶楽部 理事長 木村 達夫
令和元(2019)年6月7日参院・本会議において、安部総理自らアベノミクスの柱と提唱している働き方改革推進の改正品確法が全会一致で可決・成立した。前々日に成立した改正建設業法、改正入契法と合わせて新・担い手3法の成立が成し遂げられた。
そこで、働きたい人の「働き方改革」は、一億総活躍社会のスローガンの下で、働き手の目線で生産性の向上の成長戦略で、19年4月1日をもって適用が開始されていた。
その「働き方改革」のそもそもの狙いは二つあるのではないかと思う。
その一つ目は、専門家の間で種々話題になっている日本人の労働生産性の低さだ、なぜ低いか、それは勤務時間中にどうしても形式的にやる仕事の割合に結構時間を費やしていることだ。どっぷりと職場の空気に浸かりきっている人はピンとこないと思われるが決裁のサイン・印をもらうために上司等に一つ一つ時間をかけ丁寧に説明し持ち回るあの稟議だ。他には何のために・何でやるのか分からない全く内容の無い、ただ時間だけを浪費する厄介者の会議だ、泥沼に嵌らないうちに会議の時間を減らせば、時間の余裕も出来るのではないか。
二つ目は青天井だった長時間労働&残業を減らし、女性&高齢者等に働きやすい職場環境を整え、働き手が減っても女性が今まで通り同じ職場で仕事ができ、また、長年同じ職場で勤め続け、その職場で仕事を知り尽くしている退職者(高齢者)等に待遇面等でいろいろとあるとは思うが退職しても65〜70才くらいまでは気楽に働けるようにすることで一時的にではあるが人手不足を補うことなどが出来るが、長期的なことを考えてこそ本当の働き方改革ではないか。
しかし、この改革にはマイナス面も出ているという、それは相変わらず仕事の総量は減っていない問題がある。本来それらは人員増でカバーしないといけない問題だが如何ともし難い問題だ。いまだに、何か我が国の立法を司る国会まで真夜中までやっていることや、会社における上司らの目だ、残業しない奴は・・・など、残業を美化する風土も間違いなくある。
また、あるコメンテーターが言っていたが、今の人手不足は偽りの人手不足で、それは、給料を上げないと人が来てくれない人手不足で、給料を上げれば人は集まる、なーんてノー天気に本当のことを言うコメンテーターもいるが・・・。青天井の長時間労働・残業の見直しで、過労死・自殺の問題も解決できれば・・・。早く、この働き方改革で問題等が起こらずに成果が出ることを期待してやまない。これから諸問題も起こり得る労働行政の大変を改めて知るところだ、しかし大いに期待もしている。
これを書いている時に、この働き方改革を取り仕切り・旗振り役の厚生労働省関係の問題がテレビのテロップに流れた同省・政務官の、口利きでの見返り?疑惑で辞任、また数日前には働き方改革に取組む若手チームが厚労省大臣に直談判で「人生の墓場に入った・・」と、長時間労働やパワハラ、セクハラ問題などを提言したようだ。それは当然のことで同省は中央省庁で長時間労働が5年連続ワースト1で、ある生保会社の調査でも過労死の危険を6割近い職員感じたことがあるという調査の結果も出ているという。
厚生労働省は中央省庁再編の2001年(平成13年)1月に当時の厚生省と同労働省を廃止・統合して誕生した行政機関である。主な政策分野も国民の健康・医療、子ども・子育て、福祉・介護、雇用・労働、年金等多く、人間がママの腹の中に入っている時から、産声を上げ、学校に行き成人し、仕事をし、引退し、そして最期を迎えるまで、その間の子育て・医療・雇用など人間の一生に関わっている役所の中の役所といっても過言ではない。
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