2019年10月01日

スポーツボランティアについて考える

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シビルNPO連携プラットフォーム サポーター
CSN理事 和久 昭正


先日(7/20)、日本大学法学部10号館で行われた「日本社会関係学会」に参加した。そこで扱われたテーマが表題の「スポーツ・ボランテイアについて考える」であった。
話題提供された講師は、大阪大学 山内直人教授、東北大学岡田彩准教授及び笹川スポーツ財団澁谷茂樹氏等である。一方、参加者もざっと見わたしたところ経済・経営学部の関係者が多かった。彼らは「社会関係学」という耳慣れない学問の専門家集団であった。
この「スポーツ・ボランティアについて考える」という話題は、もちろん東京オリンピック・パラピックに向けたボランテイアのありかたを見据えてのテーマ設定である。背景には、東京マラソンが市民ボランテイアの活躍によって運営され、成功している事例がある。この東京マラソンは、市民がトップランナーと一緒に走ることができる市民マラソンでもある。そこで議論されたテーマは、つぎの2点であった。
1)東京オリパラとボランテイアの役割(岡田彩 東北大学准教授,山内直人 大阪大学教授)
2)スポーツボランティアの現状と展望(笹川スポーツ財団 澁谷茂樹氏)

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1)は、短期間のボランティアである。このボランティアは定期的なボランティア活動ではなく、単発的な大きなイベントにおけるボランテイア活動である。アンケート結果では、このボランテイアの経験者は「またやりたい」と答えた人が80%を超えているとのことであった。
2)は、地域のスポーツイベントの運営と世話、日常的な団体・クラブの運営、スポーツの指導等である。私は、学生・社会人を通じてサッカー選手として活動した経験があったので、息子が小学生になった時点から地域のスポーツ少年団のサッカーチームを指導していた。そのため、2)について大いに関心をもって聴講した。
講演内容は、地域のスポーツボランテイアは「地域貢献の一環である」という趣旨のもとに議論が展開されていた。しかし、この点が私の考え方と異なっていた。そこでフロアーからの意見として次のような私の考えを述べた。
私は少年団の指導者をしていたが、“地域活動のボランテイア活動”という意識は少なく、“自分の持っているサッカーの技術を子供たちに伝えたい”という気持ちが強かった。すなわちノウハウの伝承である。極論すればその気持ち一点で、少年団の指導に当たっていた。ボールの蹴り方、トラップ、ドリブル、フェイント、タックル等の基本技術、そして攻撃の仕方や守り方等を子供たちに教えたい、そして良い選手を育てたいという気持ちが強かった。     雨の日や合宿では、左図に示す自作のテキスト「サッカーの戦術とルール」を使って講義を行った。
どんな競技でもスポーツの指導者は「子供たちを強くしたい」という気持ちは同じであると思う。これが結果的には地域活性化のためのボランテイア活動につながる。それでよいのではないかと思う。講師の澁谷氏も、意外な意見が出たとしてメモっておられた。なおこの学会は、現在、正式設立を目指して着々と準備を進めているとのことであった。 [以上] 
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「インフラ70」は、未来に向けたメッセージ

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シビルNPO連携プラットフォーム理事
一般社団法人建設コンサルタンツ協会副会長 酒井利夫


一般社団法人建設コンサルタンツ協会では、昨年9月から月一回のペースで「インフラ70」と称した講演会を開催しています。今日は、そのご紹介をしたいと思います。

1,講演会の趣旨
戦後、様々なインフラが整備されその後の日本の発展を支え、多大な効果を生み出し、今もその役割を果たしていますが、それらのプロジェクトの多くは今やインフラに携わる技術者はもとより一般国民からも忘れ去られています。
インフラの老朽化対策、都市再生、国土強靱化等今後の日本の様々な課題に立ち向かおうとする現在の技術者にとって過去における技術者たちの先見性、困難への対処、心構えやそのプロジェクトの意義等について知ることは極めて有意義であると考えます。
そこで、(一社)建設コンサルタンツ協会(以下「協会」という)は、関係者の多大なご協力のもと、各プロジェクトに直接間接に関わった関係者から直接講演いただく機会を定期的に設け、その記録を残し、随時広く公開する事業を「インフラ70講演会」と称して開始しました。
この事業により、協会会員技術者だけではなく、他の多くの技術者、学生はもとより広く国民各層にもインフラそのものへの理解をより深めて戴くためにも有益であると考えているところです。

2,これまでの状況
具体的なプロジェクトは 「協会」に設けた「戦後インフラ整備事業研究会(中村英夫委員長)」で、インフラ関係各分野から100プロジェクト程度を目途に幅広く選定し、併せて個別プロジェクト毎にその講演について取り仕切る主査(監督)を指名・依頼し、講演内容(シナリオ、演出)、講演者(俳優)の選定、そのとりまとめ等をその主査(監督)にお願いしています。
講演会は概ね2時間程度とし、その成果を「プロジェクト記録」としてとりまとめ、原則WEB上で公開するとともに当協会機関誌「Consultant」の別冊として出版する他、この趣旨に賛同頂いた雑誌や新聞等でも既に公表掲載いただいています。
昨年9月に第1回として「黒四ダム」を取り上げ、以降本年9月の「佐久間ダム」まで既に13回を数えたところですが、各回とも、関係者の皆様の多大なるご協力により満員御礼の盛会の状況です。

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3,舞台は「過去」だが、心は「未来」
 この事業開始前には、一部の関係者から、「過去の事を取り上げても、今となっては古い技術の紹介になるだけではないか」「わずか2時間では語り尽くせないのではないか」「関係者が多くまとまらないのではないか」等のご心配もいただきました。
しかし開催してみるとそれは杞憂でした。 毎回毎回、それぞれの主査や講演者等関係者のご努力のもと、各プロジェクトへのスポットライトの当て方が適切で、短い時間の中で、時代背景や、解決に至る過程、心意気等のご紹介があり、いずれの回も感動あり、共感あり、そして未来に向かってのメッセージありです。また講演会終了後の交流会での意見交換も好評をいただいています。また、参加者の多くは建設関係者ではありますが、中には、一般の会社の方で何回も聴講されている方もいらっしゃいます。
これまで取り上げたテーマの中には、プロジェクトそのものが密接に関連する地域での再講演を望まれたものもあり、今年の7月には、「黒四ダム」、9月27日には「京阪鉄道延伸」についての再講演を大阪で開催しました。今後、テーマによっては、関係者のご協力がいただければ東京以外でも開催できればと思っております。
また、この「インフラ70」をもっと広く多くの皆様にも知って頂けるよう多方面に発信していきたいと思います。引き続き多くの皆様のご協力とご支援をいただきながら続けて参ります。
このCNCP通信をご覧の皆様、是非 講演会にご参加ください。きっとそれぞれのお立場で心に響くものがあるものと確信しています。
よろしくお願いいたします。

参考:建コン協ホームページ
https://www.jcca.or.jp/infra70/

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第18回 国語辞典の「土木」の現在

「土木とは」とGoogle検索すると「どぼく【土木】木材・鉄材・石材などを使ってする、家屋・道路・鉄道・河川・港湾などの工事。」(『岩波国語辞典第七版』)と最初に表示される。100年以上前の国語辞典『辭林』(1907年4月、三省堂)の「ど-ぼく〔土木〕家屋の土臺・堤防・道路・鐵道・橋梁等すべて木材・鐵材・土石などを使用する工事の稱。」以来、ほとんど変わりがない。
この『辭林』の直系の後継である『大辞林』(三省堂)の第四版が2019年9月5日に発売された。この『大辞林第四版』では「ど ぼく【土木】〔古く「とぼく」とも〕@ 土と木。また、飾り気のないことのたとえ。 →形骸(けいがい)を土木にす(「形骸」の句項目)。A 道路・橋梁(きょうりょう)・鉄道・港湾・堤防・河川・上下水道など、あらゆる産業・経済・社会等人間生活の基盤となるインフラを造り、維持・整備してゆく活動。〔古代・中世においては「造作」などとともに建築工事の意で用いられたが、以降江戸時代まで「作事」「普請」が使われ、明治になってから再び「土木」が「建設」「建築」とともに使われるようになった〕」となって、13年前の『大辞林第三版』(2006年10月)「〔古く「とぼく」とも〕@ 土と木。A 土石・木材・鉄材などを使用して、道路・橋梁(きょうりょう)・鉄道・港湾・堤防・河川・上下水道などを造る建設工事の総称。〔従来は家屋などの建築を含んだ〕→ 建築」から、画期的ともいえる大きな改訂(下線と二重取り消し線で異同を表現した)が施された。
これなら「大辞林第四版によると土木とは……」と使ってもいいのでは。
(土木学会土木広報センター次長 小松 淳)
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