2019年11月01日

土木と市民社会をつなぐ活動

CNCP 常務理事 土木学会連携部門長 田中 努


「土木学会連携部門」では、土木学会のシビルNPO推進小委員会と協働で、「土木と市民社会をつなぐ活動」をしています。
現在は、@「土木と市民社会をつなぐフォーラム」の設立準備と、A土木学会の「土木コレクション」のボランティアガイドの呼びかけと組織化の2つに取り組んでいます。

■土木と市民社会をつなぐフォーラム
「土木と市民社会をつなぐフォーラム」については、CNCP通信のVol.55、59、63に書きましたが、その後の進展をご紹介します。
現在は、冒頭の小委員会の他の土木学会委員会とCNCPの賛同者と共に、「土木と市民社会をつなぐフォーラム準備会」を設立して、活動をしています。
シビルNPO推進小委員会の外から加わった方たちは、皆、既に「土木と市民社会をつなぐ活動」を実践されている方たちですが、皆、それぞれ自分たちの活動を展開する先に、市民や子供が居たという状態なので、自ら「土木と市民社会をつなごう」と考えていた訳ではありません。そのため、この「フォーラムがめざす姿(つながった結果、どうなれば良いのか)」についての認識は、共有されていませんでした。
そこで、準備会を立ち上げた7月のキックオフは「ワールドカフェ方式」のWSで、@土木と市民社会の間に溝がある事例とA溝が無い事例をあげて、意見交換をしました。

その結果、次のような「フォーラムがめざす姿」にまとまりました。
◎市民が土木の全体を(事業も人も、良いところも悪いところも)概ね正しく理解し、様々なことに、市民が自分の意見を言えて、それらがある程度、インフラ整備(維持・更新)や防災・環境整備等の事業に反映されていく状態。
◎さらに、土木のファンがいて、楽しんだり、自ら土木に関係する仕事に就く人が居る状態。
「土木と市民社会をつなぐ」という活動は、わが国の土木界の全ての組織・人(国・自治体・大学・企業・NPO・市民組織・個人等々)と全ての国民をつなぐことを考えているので、このような広い言い方になります。
しかし、フォーラムの仲間になってくれる人に説明し共感してもらうために、もう少しブレイクダウン&具体化した説明も必要と考えています。例えば、
【イメージ】「土木」への誤解や「知らない」がなく、概ね正しくイメージされている。
【インフラ】インフラの見学会やメンテ活動に参加したり、インフラの計画や設計に関する市民の意思決定の場に参画している。
【防災】地域の避難計画やヒヤリマップの作成、災害復旧を通じた土木施設やまちづくりへの関心・理解が高まっている。
【コミュニケーション】土木界の技術者個人が、周囲の市民・子供に、土木事業の事実を分かり易く、また土木界で働く想いなどを、伝わるように話し、市民の興味や疑問、誤解の実態を理解している。
【観光や趣味の対象】インフラツーリズムや、ダムマニアやマンホーラーなどの活動に、土木界の人が参画し、質的・量的に拡大している。
【土木教育】土木学会の長年の働きかけで、学習指導要領に「防災」が加わり、教科書に土木の関わりが記述されるようになったが、これを機に、記述範囲が拡大し、子供たちの土木に対する認識が変わってきている。
【土木界への就労】大学に「土木工学科」が復活しなくても良いが、「土木工学」を学ぶ学生が増え、土木界や関連する仕事に就こうとする若者が増えている。
「フォーラム」では、こんな社会をめざそうと考えています。次のステップでは、「それでは、フォーラムでは何をするのが良いか」を整理すること、その次はそれを実行することです。
CNCPに参画されている皆さま、一緒に活動しませんか?

■「土木コレクション」のボランティアガイド
「土木コレクション」については、CNCP通信のVol.60に書きました。
来週の11/14(木)〜17(日)の8〜21時に、新宿駅西口広場イベントコーナーで開催されます。昨年まで、広場を東京都の建設局と半々で使用しましたが、今年は、全域、土木学会の「土木コレクション」です。したがって、「土木」の分かる説明を必要とし、CNCPに協力を依頼されました。
CNCPでは、先のCNCP通信Vol.60とメールで協力を呼びかけましたが、残念ながらどなたからも応募や問い合わせがありませんでした。そこで、個人的な伝を使って、JR東と首都高と都立大のOB会と前職の会社と土木学会の委員会の仲間が少し、協力してくれることになりました。
「土木と市民社会をつなぐ」は、土木界にとっても市民にとっても重要な活動だと思います。そして、労働人口が減って世界一の高齢社会になった今、「土木と市民社会をつなぐ活動」を現役に期待して見守るのではなく、土木関係のOB・OGが、自ら可能な範囲で支援をすべきではないでしょうか。しかし、暇なシニアでも出来ることは限られています。本業を持つ人は割ける時間が限られています。だから、「みんなで・寄って集って・少しずつ」です。
例えば、この「土木コレクション」。朝8時から夜9時まで4日間もあります。とても1人では無理ですが、1人が3時間だけなら出来ますよね。17人集まればOKです。地域で活動している多くのNPOの仕事も似ていると思います。

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posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | 地域社会等

講演会報告「シビルエンジニアリングに求めるもの」

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NCP 常務理事 土木学会連携部門長
土木学会 教育企画・人材育成委員会 シビルNPO推進小委員会 委員長
メトロ設計梶@技術顧問
田中 努


先月10月1日、CNCPの「令和元年度通常総会」に続いて、講演会を開催しましたので、ご報告します。

【日時】令和元年10月1日(火)
15:30〜17:00
【場所】土木学会講堂
【題目】シビルエンジニアリングに求めるもの ―時代はどこへ向かっているのか―
【講師】青山彰久氏(ジャーナリスト/中央大学経済学部非常勤講師・総務省過疎問題懇談会委員・土木学会論説委員会アドバイザー/元読売新聞東京本社編集委員)
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■講演内容
青山さんから詳しいレジュメを頂きましたので、全文を載せます。講演の内容や話の展開がうかがえると思います。
1.はじめに
(1)混迷する大都市・東京の目指す姿――五輪・パラリンピック後に何が残るのか
(2)総合的な「知」としてのCivil Engineering のミッション
2.住み心地のいい都市を求めて
(1)渋谷の再開発は何を表現したいのか
(2)都市の再生とは高層ビルを建てることか
・都市再生特別措置法のもたらした都市空間
(3)人口増から人口減へという「歴史の峠」
・「工業化・人口増・都市化」から「ポスト工業化・人口減・逆都市化」へ
・「もっとお金を、もっと便利に」から「もっと美しく、もっと充実した生を」へ
・「コンクリートと鉄」から「水・土・緑」へ、「拡大型社会」から「定常型社会」へ、「従属」から「自治」へ
(4)都市とは何かを考える
・Lewis Mumford(1895-1990)のCulture of Cities(1938)では
アクセプト 都市は、人間が意識してつくった芸術作品、都市は、言語と並んで人類が作り上げた偉大な芸術作品
アクセプト 人間の精神は都市において形成される。都市の様式が人間の精神のありようを決める
アクセプト 都市とは、集団で生活するための物理的施設であると同時に、人々が好ましいと感じる環境の下で、人々が集団として掲げた目標と合意の象徴である
(5)歴史の地層を大切にする
・明治神宮の森と神宮外苑、関東大震災後の隅田川の架橋、築地卸売市場、多摩ニュータウン、新宿西口広場
(6)現代都市をめぐる2つの潮流を考える
・世界都市(Global City)……グローバル化した世界経済の司令塔を目指す(ニューヨーク、ロンドン)
・維持可能な都市(Sustainable City)……地球環境保全を足元から考える(フライブルク、ポートランド)

3.「グリーン・インフラ」への共感
(1)玉川上水の再発見
・江戸に水を供給した玉川上水(1653年完成)を皇居の外濠と内濠に連結させる計画へ
(2)宮城・気仙沼の津波防潮堤
・1500人の死者を出しながら「海と生きる」と掲げた気仙沼。最も歴史ある内湾地区の防潮堤を、4年にわたる住民参加の議論の末にT.P.4.1m(平時には閉まっている1mのフラップゲートをつけて)に抑えた
(3)グリーン・インフラという思想の登場
・1993年の米国ミシシッピ川の大氾濫で米政府が提起(人口的な構造物に頼りすぎず湿地帯を回復する)
・2004年のインド洋大津波で国連が提起(マングローブやサンゴ礁の生態系を津波から守る盾として再生する)
・2013年に欧州連合が「グリーン・インフラストラクチャー戦略」として都市整備への発展を提起(都市農地・緑地帯・遊水池など、自然・生態系の機能を使い、災害時には被害抑制に、平時には景観・アメニティの向上に)
(4)生物学・社会学・歴史学・政治学との横断的な協働
・歴史遺産・地形・自治を重視し、旧来型のインフラ(グレー・インフラ)技術を補完する新しい技術思想に期待

■講演の感想
青山さんは、早大の仏文科を出られたジャーナリストですが、地方自治、地域政策、都市問題・農山漁村問題にお詳しいだけでなく、人が暮らす都市や鉄道での旅が好きな土木に関心をお持ちの方で、「土木」に対する期待も大きいものでした。現在、土木学会の論説委員会のアドバイザーもされておりますが、「土木と市民をつなぐ」をメインテーマに掲げるCNCPとも、意見交換をさせて頂きたい方です。

「1.はじめに」でお話しされた2点が、「土木」への問題提起と期待です。
私たち(高齢者)が若かった1964年の東京オリンピックの頃は、高速道路・新幹線・高層ビル街など、先進国並の都市基盤ができるのをワクワク見ていましたが、2020年のオリンピックを前に、今の現役の若者達が期待することは異なるのでは?という問いかけです。最先端の施設のある都市を作るのではなく、人々にとって住み心地の良い都市をつくることではないかと。
「2.住み心地のいい都市を求めて」では、渋谷や丸の内の最近の再開発などに見られる問題点、「工業化・人口増・都市化」は1つの現象の3つの側面であること、人間の精神は都市において形成されることなど、「土木屋」は、普通考えないような視点に気づかされました。さらに「歴史の地層」という言葉で、先人たちが、何を考え何を想って都市を構造物をつくって来たか・・、建設時の人々の住まい方や都市のあり方を考えてみる大切さをお話しされました。
「3.グリーン・インフラへの共感」の「グリーンインフラ」とは、自然が持つ機能を社会における様々な課題解決に活用しようとする考え方で、海外では既に取組まれています。日本でも検討されつつあり、玉川上水の流れを復活させて日本橋川を浄化させようという案や、気仙沼の市民が「海と生きる」という選択をしたことなどが紹介されました。「土木」が、技術を駆使して困難な工事を実現させ、便利な施設や都市をつくるだけでなく、生物学・社会学・歴史学・政治学等との横断的な協働を考え、旧来型の「グレー・インフラ」技術を補完する新しい技術思想として期待されていました。
総合的な「知」としての「土木」=「Civil Engineering」は、心地よい都市の基盤を作る総合技術ですと・・
posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | シビルNPOの現況と課題

土木と市民社会をつなぐ活動

CNCP 常務理事 土木学会連携部門長 田中 努


「土木学会連携部門」では、土木学会のシビルNPO推進小委員会と協働で、「土木と市民社会をつなぐ活動」をしています。
現在は、@「土木と市民社会をつなぐフォーラム」の設立準備と、A土木学会の「土木コレクション」のボランティアガイドの呼びかけと組織化の2つに取り組んでいます。

■土木と市民社会をつなぐフォーラム
「土木と市民社会をつなぐフォーラム」については、CNCP通信のVol.55、59、63に書きましたが、その後の進展をご紹介します。
現在は、冒頭の小委員会の他の土木学会委員会とCNCPの賛同者と共に、「土木と市民社会をつなぐフォーラム準備会」を設立して、活動をしています。
シビルNPO推進小委員会の外から加わった方たちは、皆、既に「土木と市民社会をつなぐ活動」を実践されている方たちですが、皆、それぞれ自分たちの活動を展開する先に、市民や子供が居たという状態なので、自ら「土木と市民社会をつなごう」と考えていた訳ではありません。そのため、この「フォーラムがめざす姿(つながった結果、どうなれば良いのか)」についての認識は、共有されていませんでした。
そこで、準備会を立ち上げた7月のキックオフは「ワールドカフェ方式」のWSで、@土木と市民社会の間に溝がある事例とA溝が無い事例をあげて、意見交換をしました。

その結果、次のような「フォーラムがめざす姿」にまとまりました。
◎市民が土木の全体を(事業も人も、良いところも悪いところも)概ね正しく理解し、様々なことに、市民が自分の意見を言えて、それらがある程度、インフラ整備(維持・更新)や防災・環境整備等の事業に反映されていく状態。
◎さらに、土木のファンがいて、楽しんだり、自ら土木に関係する仕事に就く人が居る状態。
「土木と市民社会をつなぐ」という活動は、わが国の土木界の全ての組織・人(国・自治体・大学・企業・NPO・市民組織・個人等々)と全ての国民をつなぐことを考えているので、このような広い言い方になります。
しかし、フォーラムの仲間になってくれる人に説明し共感してもらうために、もう少しブレイクダウン&具体化した説明も必要と考えています。例えば、
【イメージ】「土木」への誤解や「知らない」がなく、概ね正しくイメージされている。
【インフラ】インフラの見学会やメンテ活動に参加したり、インフラの計画や設計に関する市民の意思決定の場に参画している。
【防災】地域の避難計画やヒヤリマップの作成、災害復旧を通じた土木施設やまちづくりへの関心・理解が高まっている。
【コミュニケーション】土木界の技術者個人が、周囲の市民・子供に、土木事業の事実を分かり易く、また土木界で働く想いなどを、伝わるように話し、市民の興味や疑問、誤解の実態を理解している。
【観光や趣味の対象】インフラツーリズムや、ダムマニアやマンホーラーなどの活動に、土木界の人が参画し、質的・量的に拡大している。
【土木教育】土木学会の長年の働きかけで、学習指導要領に「防災」が加わり、教科書に土木の関わりが記述されるようになったが、これを機に、記述範囲が拡大し、子供たちの土木に対する認識が変わってきている。
【土木界への就労】大学に「土木工学科」が復活しなくても良いが、「土木工学」を学ぶ学生が増え、土木界や関連する仕事に就こうとする若者が増えている。
「フォーラム」では、こんな社会をめざそうと考えています。次のステップでは、「それでは、フォーラムでは何をするのが良いか」を整理すること、その次はそれを実行することです。
CNCPに参画されている皆さま、一緒に活動しませんか?

■「土木コレクション」のボランティアガイド
「土木コレクション」については、CNCP通信のVol.60に書きました。
来週の11/14(木)〜17(日)の8〜21時に、新宿駅西口広場イベントコーナーで開催されます。昨年まで、広場を東京都の建設局と半々で使用しましたが、今年は、全域、土木学会の「土木コレクション」です。したがって、「土木」の分かる説明を必要とし、CNCPに協力を依頼されました。
CNCPでは、先のCNCP通信Vol.60とメールで協力を呼びかけましたが、残念ながらどなたからも応募や問い合わせがありませんでした。そこで、個人的な伝を使って、JR東と首都高と都立大のOB会と前職の会社と土木学会の委員会の仲間が少し、協力してくれることになりました。
「土木と市民社会をつなぐ」は、土木界にとっても市民にとっても重要な活動だと思います。そして、労働人口が減って世界一の高齢社会になった今、「土木と市民社会をつなぐ活動」を現役に期待して見守るのではなく、土木関係のOB・OGが、自ら可能な範囲で支援をすべきではないでしょうか。しかし、暇なシニアでも出来ることは限られています。本業を持つ人は割ける時間が限られています。だから、「みんなで・寄って集って・少しずつ」です。
例えば、この「土木コレクション」。朝8時から夜9時まで4日間もあります。とても1人では無理ですが、1人が3時間だけなら出来ますよね。17人集まればOKです。地域で活動している多くのNPOの仕事も似ていると思います。

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posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | シビルNPOの現況と課題