2019年11月01日

台風19号災害の被災地・水戸の現場から

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シビルNPO連携プラットフォーム 理事
茨城の暮らしと景観を考える会 代表理事
               三上 靖彦


大型で強い勢力を保ったまま上陸した台風19号は、東海、関東地方を中心に激しい雨を長時間降らせ、日降水量の国内1位を更新、各地で記録的な豪雨となった。その影響で、河川の氾濫や土砂災害など、広範囲に大きな傷痕を残した。
台風19号は10月12日(土)午後7時前、伊豆半島に上陸、その後は関東地方と福島県を縦断し、13日(日)正午に三陸沖東部で温帯低気圧に変わった。
茨城県内では12日から13日未明にかけ、大雨特別警報が発表される記録的な豪雨が降った。那珂川や久慈川などが堤防決壊や越水などで氾濫し、大規模な浸水被害が発生した。水戸市でも那珂川に流れ込む藤井川や田野川が溢れ、那珂川沿岸の飯富町や岩根町の広い範囲が浸水、水戸北スマートIC付近では最大7m以上の浸水で、知り合いの中華料理店も水没した。
茨城県測量・建設コンサルタント協会(茨測協)に属する私の会社には、14日(月)の早朝、茨城県水戸土木事務所の河川整備課より災害復旧調査の要請があり、体育の日の休日であったにも関わらず、多くの社員が被災箇所の調査に出向いた。一方で水戸市建設部からも被災道路の応急復旧についての相談があった。そうこうしているうちに、その日の夕刻、茨城県土木部河川課からドローンによる浸水区域の撮影要請があって協議が始まった。
翌15日(火)は早朝より被災道路の応急復旧絡みで国の常陸河川国道事務所と協議。その一方で、茨測協に属する会社に電話にてドローン撮影の協力要請。各社には合計で50機ほどのドローンがあるはずだが、国からの要請で早々に出払っていたり、ドローンはあっても浸水の痕跡調査などに追われ、パイロットを含む撮影チームが編成できない、などの理由で、確保できたのはたったの4班。翌日には少し増えて7班。これでは要請のあった茨城県管理の県内32河川を週末までに撮り切るのは不可能。やっと半分ほどの撮影が終わったところで翌週になり、水位も下がったので今度は浸水区域の撮影ではなく、被災箇所の撮影に要請内容が変わる。対象河川も2倍に増えたところで、21日(月)には茨測協の役員会を開催、体制を強化し、22日(火)以降、10班体制で対応することとなる。
さて、通常、国庫負担対象となる工事費を決定するための災害査定は、災害発生から2ヶ月以内に実施することが原則である。それに先立ち、国への災害報告は、箇所数確定は10日以内、申請額報告は30日以内。しかし、申請額報告は、査定時に著しい差のないようにする必要があるので、査定に必要な資料は概ね30日以内に全て準備しておかなければならない。査定資料準備は、被災施設の管理者(県や市町村)と測量・建設コンサルタント会社などの作業機関で実施することとなる。
茨城県や水戸市では、被災状況の調査結果を踏まえ、16日(水)までに災害査定対象の絞り込みを実施。17日(木)には朝から水戸市道路建設課と、被災道路の災害査定設計に向けた協議。午後は水戸土木事務所の河川整備課と被災堤防の災害査定設計に向けた協議。翌18日(金)の朝から水戸市内、茨城県内の会社との役割分担を決め、その日の夕方に水戸市と水戸土木事務所にそれぞれ体制を報告。各社、担当被災箇所の現況を把握した上で、査定設計に取り掛かる。この際、応急復旧の対象となっている被災箇所については、応急復旧のための図面も必要で、また応急復旧されてしまうと被災状況が確認出来なくなってしまうので、迅速な対応が求められた。19日(土)には水戸土木事務所から国道123号の査定設計の要請もあった。既に応急復旧は済んでいるところである。
21日(月)や23日(水)もドローン撮影を継続しつつ、断続的に茨城県や水戸市と協議。24日(木)の夕方には査定スケジュールが示された。主に県の重要案件が先で、市町村分はその後。少し余裕が生まれる。その間も茨城港湾事務所から大洗港の沖防波堤の、翌25日(金)には日立港の東防波堤の復旧調査・査定設計の要請も舞い込んできた。
ここまでの対応は、県や市、それに私たちコンサルタントも、東日本大震災や関東・東北豪雨での鬼怒川水害の教訓、経験が生かされた。水戸市には早い段階から国のテック・フォースが入り、初動調査から査定設計に向けた段取りは、極めて円滑であった。私たちコンサルタントは、茨城県や水戸市と災害協定を結んでおり、大規模災害発生時には協会へ被害調査の要請が入ることになっている。査定設計についても、各社とも経験済みのスタッフを抱えている。

また、東日本大震災の時は、調査や査定設計をする私たちも被災者であったので、それこそ大変であった。しかし今回は、多くの会社や社員が被災者ではない。その反面、弊害もある。通常業務、通常イベントが、当たり前のように「通常」に進められていることだ。一方で災害対応を進めながら、一方でお祝い事や懇親会、水戸漫遊マラソン、業務打ち合わせなどが予定通り実施される。地域全体として当事者意識が希薄だ。それ故、個人個人の日頃からの志の様なものが試される。社員一人ひとりの、この危機に対する心の持ちよう、行動に感謝したい。
と、ここまで書いたところで、関東では25日(金)、千葉県を中心に災害級の大雨となった。雨が降ればドローンは飛べないが、それ以上に冠水や河川の増水、土砂災害への警戒が続いた。茨城県でも鹿行、県南、県西方面の河川で新たな氾濫が発生した。浸水区域の把握のため、急遽、26日(土)、27日(日)にもドローンを飛ばした。
『巨大台風、「堤防神話」崩す』というタイトルの記事を見た。『今回のように甚大な被害をもたらす巨大台風は今後も恒常的に襲来する恐れがあり、専門家は「堤防神話」からの脱却を訴える・・』。原発の『安全神話』とか、水害が防げるはずという『堤防神話』とか。そもそも「神話」なんて、おとぎ話みたいなものだから、信じてはいけない。明治維新以降、私たちが築いてきた近代土木技術の限界・・。そんな事を考えながら、まだまだ災害対応は続く。

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水戸北スマートIC周辺の様子(令和元年10月13日)
posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | 災害、危機管理等