2019年11月01日

『世のため人のため』

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シビルNPO連携プラットフォーム 理事
 山ア 晶


10月の総会にて前任の大田からの交代ということで、理事に選任された山ア晶です。小生、昭和33年7月生まれで、大学を卒業し熊谷組に入社し、現在土木事業本部所属で国内・海外の営業を担当しています。大田の部下として土木界のトップの方の謦咳に触れることが多く、その中で山本代表やCNCPを知り、様々なご縁を頂くこととなりました。
小生、土木の道を歩んだのは、子供の頃の家の庭でのトンネル掘りの楽しさや、映画「黒部の太陽」を見ての高揚感からだったと思います。先日、建築界のトップの方と黒四ダムを訪問しました。その際、その方から「土木の方は皆、公共心が強いですね」と言われました。確かに我々、仕事をするのは家族を養い毎日の生活をするためですが、その中での誇りや生き甲斐は金儲けや出世などではなく、いいものが出来た・世のため人のためにお役に立つ仕事ができたということが大きいと思います。その意味で、建築の先生の言われた「公共心」、自らの事としてよく理解できます。
世間が右肩上がりの状況ではなくなり、土木を取り巻く環境も、維持更新事業の増大や就業者の減少、インハウスエンジニアの不足、地方地域の機能維持等、様々な社会的な課題が急激に増え、その解決が必要となっています。CSVを念頭に立ち上がった「土木と市民社会をつなぐ事業研究会」は、正にこれを見据えているとお聞きしました。企業がその活動の一環として社会的課題解決を図り、その対価として幾ばくかの利益を頂戴するのは、極めて真っ当なことで今後の時代に必須の活動と思います。CNCPは中間支援組織であり、各企業や事業者との関わり方に工夫が必要でしょうが、CNCPと土木学会の繋がりは極めて深く、この点は各組織との連携の大きなポイントと思います。事業研究会の活動、先の公共心に繋がる事項で、大変重要と思います。
CNCPを拝見していると、様々なフィールドでキーマンとして活動している方々を中心に、世のため人のために実に様々な活動を展開されていると感じ、頭が下がります。以上のことは皆様方には釈迦に説法でしたでしょうが、小生もCNCPの実践活動の仲間入りをさせて頂き、微力でもCNCPの発展に寄与したいと心しております。どうか宜しくお願い致します。

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「市民の信頼を得るには、理念・哲学の構築と生活感が重要!」

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ジャーナリスト(元NHK解説主幹) 齋藤 宏保


2016年の震度7を観測した熊本地震、2017年には九州北部豪雨、2018年は7月に西日本豪雨、9月に北海道胆振東部地震、そして今年は9月に千葉県に大きな被害を与えた台風15号、10月に平成最悪の水害という台風19号に台風21号と、この4年間、地震と台風・豪雨災害に限っても大災害が頻発、大災害時代の幕開けのような不気味さを覚えます。
折しも今年に入り、オーストラリアのシンクタンクが「気候変動で、2050年には最悪の場合、人類文明が終焉に向かうかも知れない」という衝撃的な報告書を発表したのを始め、「2055年には世界の人口が100億人を超え資源枯渇・食糧難が深刻に」、さらに国内でも「今後30年以内にマグニチュード8クラスの南海トラフ地震が発生する確率は70〜80%、その間、マグニチュード7クラスの地震が頻発」、インフラの老朽化も一気に進み、「2033年には建設後50年以上経過する道路橋が約67%、トンネルが約50%、下水道管きょが約50%に」と、先行き不安な予測が次々に出ています。
こうした中で、「土木と市民社会とつなぐ」ことを目的に、地域社会・市民社会の様々な課題解決をめざすCNCPは、こうした時代の動きを読み解き、そのためにはどんな対策が必要なのか、一般市民に向けて訴えかけたのでしょうか。少なくとも私にはメッセージが届いていません。なぜなのか、約40年近くにわたる取材体験を踏まえ、まとめてみました。

私とインフラとの出会いは、コンクリート。人間が作ったものは一体、どの位持つのかというのが動機でした。1982年に社会部記者として初めて取材、1983年にNHK土曜リポート「警告!コンクリート崩壊・忍び寄る腐食」、1984年にNHK特集「コンクリート・クライシス」、1985年から3年間、旧建設省記者クラブに常駐、1993年にNHKスペシャル「テクノパワー〜知られざる建設技術の世界〜」5回シリーズを制作、2000年にはNHKスペシャル「コンクリート高齢化社会への警告」を解説委員として監修。この間、土木学会を始め、旧建設省や、大学、建設会社、セメント業界、鉄筋製造会社、砂利採取現場、生コン工場、施工現場などを取材、なぜ半永久的に持つはずのコンクリートが異常に早く劣化するのか、徹底的に調べました。しかし問題の核心に迫ろうとすると、はぐらかされたり、取材を拒否されたりの連続でした。
また日本では起こりえないとされた「アルカリ骨材反応によるひび割れ」が全国で続発、阪神・淡路大震災では絶対に倒壊しないはずの高速道路が横倒しになるなど新幹線やビルなどコンクリート構造物が大きな被害を受けました。更に東海道新幹線を設計した国鉄幹部からは「ルートは人家のないところ。30年持てばというのが、当時の雰囲気だった」、大手建設会社のトップからは「地価高騰の影響で建設費が削られ、大地震が起きたら建物が大丈夫か心配だ」、大手住宅メーカーのトップからは「30年以上持つものを作ったら我々の業界はやっていけない」など、耳を疑うような生の声も直に聞き、衝撃を受けました。

2012年の笹子トンネルの天井板落下事故は構造的欠陥が原因なのにも関わらず知らんふり。今回の台風19号でも、被害がなぜ増大したのか、治山治水・市街化・下水処理能力・気候変動等を踏まえ総合的に解説する専門家はいませんでした。
また高齢者の運転ミスによる人身事故の急増に対しては、高齢ドライバーに対する批判はあってもインフラの構造上の問題を指摘する声はありません。首都高中央環状線山手トンネルは、照明が暗い上に情報が乏しく、高齢者や外国人のドライバーには運転が容易ではありません。
昨今、凍結防止剤の散布量が増えるのに伴い、道路橋の劣化だけではなく周辺への塩害が深刻になりつつありますが、大きな社会問題になっていません。
なぜなのか、私は主な理由として3つあげたいと思います。第一に、何のため誰のためのインフラなのか理念・哲学が見えず、しかも生活に身近なインフラに関心が薄いことです。

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阪神淡路大震災 横転した高速道路

10月に亡くなった日本人初の国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子さんがこだわったのが「現場主義」。「橋守」はまだ一部の地域に過ぎません。これでは説得力がなく心に響きません。第二に、大事故や大災害が起きると“想定外”だと言い訳したり、“不都合な真実”に目をつぶったり、困難に立ち向かう気概・覚悟が見られないことです。第三は、公共事業の目的はインフラを作ることではなく、所要のサービスの提供ですが、肝心のユーザーや生活者の視点がないことです。こうしたことが積み重なって、皆さんの思いが市民に届かないのだと思います。
「萬象二天意ヲ覚ル者ハ幸ナリ」「人類ノ為メ国ノ為メ」は、信濃川補修工事竣工記念碑(1931年に建立)に刻まれた、土木技術者・青山士さんの言葉です。
土木と市民社会の橋渡し役として期待されるCNCP。多難な未来が待ち受ける次世代に対し、確固たる理念と哲学の下、安全・安心の指針を示してほしいと思います。(了)

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阪神淡路大震災 横倒しのビル

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阪神淡路大震災 落下した橋梁
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「市民の信頼を得るには、理念・哲学の構築と生活感が重要!」

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ジャーナリスト(元NHK解説主幹) 齋藤 宏保


2016年の震度7を観測した熊本地震、2017年には九州北部豪雨、2018年は7月に西日本豪雨、9月に北海道胆振東部地震、そして今年は9月に千葉県に大きな被害を与えた台風15号、10月に平成最悪の水害という台風19号に台風21号と、この4年間、地震と台風・豪雨災害に限っても大災害が頻発、大災害時代の幕開けのような不気味さを覚えます。
折しも今年に入り、オーストラリアのシンクタンクが「気候変動で、2050年には最悪の場合、人類文明が終焉に向かうかも知れない」という衝撃的な報告書を発表したのを始め、「2055年には世界の人口が100億人を超え資源枯渇・食糧難が深刻に」、さらに国内でも「今後30年以内にマグニチュード8クラスの南海トラフ地震が発生する確率は70〜80%、その間、マグニチュード7クラスの地震が頻発」、インフラの老朽化も一気に進み、「2033年には建設後50年以上経過する道路橋が約67%、トンネルが約50%、下水道管きょが約50%に」と、先行き不安な予測が次々に出ています。
こうした中で、「土木と市民社会とつなぐ」ことを目的に、地域社会・市民社会の様々な課題解決をめざすCNCPは、こうした時代の動きを読み解き、そのためにはどんな対策が必要なのか、一般市民に向けて訴えかけたのでしょうか。少なくとも私にはメッセージが届いていません。なぜなのか、約40年近くにわたる取材体験を踏まえ、まとめてみました。

私とインフラとの出会いは、コンクリート。人間が作ったものは一体、どの位持つのかというのが動機でした。1982年に社会部記者として初めて取材、1983年にNHK土曜リポート「警告!コンクリート崩壊・忍び寄る腐食」、1984年にNHK特集「コンクリート・クライシス」、1985年から3年間、旧建設省記者クラブに常駐、1993年にNHKスペシャル「テクノパワー〜知られざる建設技術の世界〜」5回シリーズを制作、2000年にはNHKスペシャル「コンクリート高齢化社会への警告」を解説委員として監修。この間、土木学会を始め、旧建設省や、大学、建設会社、セメント業界、鉄筋製造会社、砂利採取現場、生コン工場、施工現場などを取材、なぜ半永久的に持つはずのコンクリートが異常に早く劣化するのか、徹底的に調べました。しかし問題の核心に迫ろうとすると、はぐらかされたり、取材を拒否されたりの連続でした。
また日本では起こりえないとされた「アルカリ骨材反応によるひび割れ」が全国で続発、阪神・淡路大震災では絶対に倒壊しないはずの高速道路が横倒しになるなど新幹線やビルなどコンクリート構造物が大きな被害を受けました。更に東海道新幹線を設計した国鉄幹部からは「ルートは人家のないところ。30年持てばというのが、当時の雰囲気だった」、大手建設会社のトップからは「地価高騰の影響で建設費が削られ、大地震が起きたら建物が大丈夫か心配だ」、大手住宅メーカーのトップからは「30年以上持つものを作ったら我々の業界はやっていけない」など、耳を疑うような生の声も直に聞き、衝撃を受けました。

2012年の笹子トンネルの天井板落下事故は構造的欠陥が原因なのにも関わらず知らんふり。今回の台風19号でも、被害がなぜ増大したのか、治山治水・市街化・下水処理能力・気候変動等を踏まえ総合的に解説する専門家はいませんでした。
また高齢者の運転ミスによる人身事故の急増に対しては、高齢ドライバーに対する批判はあってもインフラの構造上の問題を指摘する声はありません。首都高中央環状線山手トンネルは、照明が暗い上に情報が乏しく、高齢者や外国人のドライバーには運転が容易ではありません。
昨今、凍結防止剤の散布量が増えるのに伴い、道路橋の劣化だけではなく周辺への塩害が深刻になりつつありますが、大きな社会問題になっていません。
なぜなのか、私は主な理由として3つあげたいと思います。第一に、何のため誰のためのインフラなのか理念・哲学が見えず、しかも生活に身近なインフラに関心が薄いことです。

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阪神淡路大震災 横転した高速道路

10月に亡くなった日本人初の国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子さんがこだわったのが「現場主義」。「橋守」はまだ一部の地域に過ぎません。これでは説得力がなく心に響きません。第二に、大事故や大災害が起きると“想定外”だと言い訳したり、“不都合な真実”に目をつぶったり、困難に立ち向かう気概・覚悟が見られないことです。第三は、公共事業の目的はインフラを作ることではなく、所要のサービスの提供ですが、肝心のユーザーや生活者の視点がないことです。こうしたことが積み重なって、皆さんの思いが市民に届かないのだと思います。
「萬象二天意ヲ覚ル者ハ幸ナリ」「人類ノ為メ国ノ為メ」は、信濃川補修工事竣工記念碑(1931年に建立)に刻まれた、土木技術者・青山士さんの言葉です。
土木と市民社会の橋渡し役として期待されるCNCP。多難な未来が待ち受ける次世代に対し、確固たる理念と哲学の下、安全・安心の指針を示してほしいと思います。(了)

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阪神淡路大震災 横倒しのビル

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阪神淡路大震災 落下した橋梁
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土木と市民社会をつなぐ活動

CNCP 常務理事 土木学会連携部門長 田中 努


「土木学会連携部門」では、土木学会のシビルNPO推進小委員会と協働で、「土木と市民社会をつなぐ活動」をしています。
現在は、@「土木と市民社会をつなぐフォーラム」の設立準備と、A土木学会の「土木コレクション」のボランティアガイドの呼びかけと組織化の2つに取り組んでいます。

■土木と市民社会をつなぐフォーラム
「土木と市民社会をつなぐフォーラム」については、CNCP通信のVol.55、59、63に書きましたが、その後の進展をご紹介します。
現在は、冒頭の小委員会の他の土木学会委員会とCNCPの賛同者と共に、「土木と市民社会をつなぐフォーラム準備会」を設立して、活動をしています。
シビルNPO推進小委員会の外から加わった方たちは、皆、既に「土木と市民社会をつなぐ活動」を実践されている方たちですが、皆、それぞれ自分たちの活動を展開する先に、市民や子供が居たという状態なので、自ら「土木と市民社会をつなごう」と考えていた訳ではありません。そのため、この「フォーラムがめざす姿(つながった結果、どうなれば良いのか)」についての認識は、共有されていませんでした。
そこで、準備会を立ち上げた7月のキックオフは「ワールドカフェ方式」のWSで、@土木と市民社会の間に溝がある事例とA溝が無い事例をあげて、意見交換をしました。

その結果、次のような「フォーラムがめざす姿」にまとまりました。
◎市民が土木の全体を(事業も人も、良いところも悪いところも)概ね正しく理解し、様々なことに、市民が自分の意見を言えて、それらがある程度、インフラ整備(維持・更新)や防災・環境整備等の事業に反映されていく状態。
◎さらに、土木のファンがいて、楽しんだり、自ら土木に関係する仕事に就く人が居る状態。
「土木と市民社会をつなぐ」という活動は、わが国の土木界の全ての組織・人(国・自治体・大学・企業・NPO・市民組織・個人等々)と全ての国民をつなぐことを考えているので、このような広い言い方になります。
しかし、フォーラムの仲間になってくれる人に説明し共感してもらうために、もう少しブレイクダウン&具体化した説明も必要と考えています。例えば、
【イメージ】「土木」への誤解や「知らない」がなく、概ね正しくイメージされている。
【インフラ】インフラの見学会やメンテ活動に参加したり、インフラの計画や設計に関する市民の意思決定の場に参画している。
【防災】地域の避難計画やヒヤリマップの作成、災害復旧を通じた土木施設やまちづくりへの関心・理解が高まっている。
【コミュニケーション】土木界の技術者個人が、周囲の市民・子供に、土木事業の事実を分かり易く、また土木界で働く想いなどを、伝わるように話し、市民の興味や疑問、誤解の実態を理解している。
【観光や趣味の対象】インフラツーリズムや、ダムマニアやマンホーラーなどの活動に、土木界の人が参画し、質的・量的に拡大している。
【土木教育】土木学会の長年の働きかけで、学習指導要領に「防災」が加わり、教科書に土木の関わりが記述されるようになったが、これを機に、記述範囲が拡大し、子供たちの土木に対する認識が変わってきている。
【土木界への就労】大学に「土木工学科」が復活しなくても良いが、「土木工学」を学ぶ学生が増え、土木界や関連する仕事に就こうとする若者が増えている。
「フォーラム」では、こんな社会をめざそうと考えています。次のステップでは、「それでは、フォーラムでは何をするのが良いか」を整理すること、その次はそれを実行することです。
CNCPに参画されている皆さま、一緒に活動しませんか?

■「土木コレクション」のボランティアガイド
「土木コレクション」については、CNCP通信のVol.60に書きました。
来週の11/14(木)〜17(日)の8〜21時に、新宿駅西口広場イベントコーナーで開催されます。昨年まで、広場を東京都の建設局と半々で使用しましたが、今年は、全域、土木学会の「土木コレクション」です。したがって、「土木」の分かる説明を必要とし、CNCPに協力を依頼されました。
CNCPでは、先のCNCP通信Vol.60とメールで協力を呼びかけましたが、残念ながらどなたからも応募や問い合わせがありませんでした。そこで、個人的な伝を使って、JR東と首都高と都立大のOB会と前職の会社と土木学会の委員会の仲間が少し、協力してくれることになりました。
「土木と市民社会をつなぐ」は、土木界にとっても市民にとっても重要な活動だと思います。そして、労働人口が減って世界一の高齢社会になった今、「土木と市民社会をつなぐ活動」を現役に期待して見守るのではなく、土木関係のOB・OGが、自ら可能な範囲で支援をすべきではないでしょうか。しかし、暇なシニアでも出来ることは限られています。本業を持つ人は割ける時間が限られています。だから、「みんなで・寄って集って・少しずつ」です。
例えば、この「土木コレクション」。朝8時から夜9時まで4日間もあります。とても1人では無理ですが、1人が3時間だけなら出来ますよね。17人集まればOKです。地域で活動している多くのNPOの仕事も似ていると思います。

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posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | 地域社会等

講演会報告「シビルエンジニアリングに求めるもの」

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NCP 常務理事 土木学会連携部門長
土木学会 教育企画・人材育成委員会 シビルNPO推進小委員会 委員長
メトロ設計梶@技術顧問
田中 努


先月10月1日、CNCPの「令和元年度通常総会」に続いて、講演会を開催しましたので、ご報告します。

【日時】令和元年10月1日(火)
15:30〜17:00
【場所】土木学会講堂
【題目】シビルエンジニアリングに求めるもの ―時代はどこへ向かっているのか―
【講師】青山彰久氏(ジャーナリスト/中央大学経済学部非常勤講師・総務省過疎問題懇談会委員・土木学会論説委員会アドバイザー/元読売新聞東京本社編集委員)
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■講演内容
青山さんから詳しいレジュメを頂きましたので、全文を載せます。講演の内容や話の展開がうかがえると思います。
1.はじめに
(1)混迷する大都市・東京の目指す姿――五輪・パラリンピック後に何が残るのか
(2)総合的な「知」としてのCivil Engineering のミッション
2.住み心地のいい都市を求めて
(1)渋谷の再開発は何を表現したいのか
(2)都市の再生とは高層ビルを建てることか
・都市再生特別措置法のもたらした都市空間
(3)人口増から人口減へという「歴史の峠」
・「工業化・人口増・都市化」から「ポスト工業化・人口減・逆都市化」へ
・「もっとお金を、もっと便利に」から「もっと美しく、もっと充実した生を」へ
・「コンクリートと鉄」から「水・土・緑」へ、「拡大型社会」から「定常型社会」へ、「従属」から「自治」へ
(4)都市とは何かを考える
・Lewis Mumford(1895-1990)のCulture of Cities(1938)では
アクセプト 都市は、人間が意識してつくった芸術作品、都市は、言語と並んで人類が作り上げた偉大な芸術作品
アクセプト 人間の精神は都市において形成される。都市の様式が人間の精神のありようを決める
アクセプト 都市とは、集団で生活するための物理的施設であると同時に、人々が好ましいと感じる環境の下で、人々が集団として掲げた目標と合意の象徴である
(5)歴史の地層を大切にする
・明治神宮の森と神宮外苑、関東大震災後の隅田川の架橋、築地卸売市場、多摩ニュータウン、新宿西口広場
(6)現代都市をめぐる2つの潮流を考える
・世界都市(Global City)……グローバル化した世界経済の司令塔を目指す(ニューヨーク、ロンドン)
・維持可能な都市(Sustainable City)……地球環境保全を足元から考える(フライブルク、ポートランド)

3.「グリーン・インフラ」への共感
(1)玉川上水の再発見
・江戸に水を供給した玉川上水(1653年完成)を皇居の外濠と内濠に連結させる計画へ
(2)宮城・気仙沼の津波防潮堤
・1500人の死者を出しながら「海と生きる」と掲げた気仙沼。最も歴史ある内湾地区の防潮堤を、4年にわたる住民参加の議論の末にT.P.4.1m(平時には閉まっている1mのフラップゲートをつけて)に抑えた
(3)グリーン・インフラという思想の登場
・1993年の米国ミシシッピ川の大氾濫で米政府が提起(人口的な構造物に頼りすぎず湿地帯を回復する)
・2004年のインド洋大津波で国連が提起(マングローブやサンゴ礁の生態系を津波から守る盾として再生する)
・2013年に欧州連合が「グリーン・インフラストラクチャー戦略」として都市整備への発展を提起(都市農地・緑地帯・遊水池など、自然・生態系の機能を使い、災害時には被害抑制に、平時には景観・アメニティの向上に)
(4)生物学・社会学・歴史学・政治学との横断的な協働
・歴史遺産・地形・自治を重視し、旧来型のインフラ(グレー・インフラ)技術を補完する新しい技術思想に期待

■講演の感想
青山さんは、早大の仏文科を出られたジャーナリストですが、地方自治、地域政策、都市問題・農山漁村問題にお詳しいだけでなく、人が暮らす都市や鉄道での旅が好きな土木に関心をお持ちの方で、「土木」に対する期待も大きいものでした。現在、土木学会の論説委員会のアドバイザーもされておりますが、「土木と市民をつなぐ」をメインテーマに掲げるCNCPとも、意見交換をさせて頂きたい方です。

「1.はじめに」でお話しされた2点が、「土木」への問題提起と期待です。
私たち(高齢者)が若かった1964年の東京オリンピックの頃は、高速道路・新幹線・高層ビル街など、先進国並の都市基盤ができるのをワクワク見ていましたが、2020年のオリンピックを前に、今の現役の若者達が期待することは異なるのでは?という問いかけです。最先端の施設のある都市を作るのではなく、人々にとって住み心地の良い都市をつくることではないかと。
「2.住み心地のいい都市を求めて」では、渋谷や丸の内の最近の再開発などに見られる問題点、「工業化・人口増・都市化」は1つの現象の3つの側面であること、人間の精神は都市において形成されることなど、「土木屋」は、普通考えないような視点に気づかされました。さらに「歴史の地層」という言葉で、先人たちが、何を考え何を想って都市を構造物をつくって来たか・・、建設時の人々の住まい方や都市のあり方を考えてみる大切さをお話しされました。
「3.グリーン・インフラへの共感」の「グリーンインフラ」とは、自然が持つ機能を社会における様々な課題解決に活用しようとする考え方で、海外では既に取組まれています。日本でも検討されつつあり、玉川上水の流れを復活させて日本橋川を浄化させようという案や、気仙沼の市民が「海と生きる」という選択をしたことなどが紹介されました。「土木」が、技術を駆使して困難な工事を実現させ、便利な施設や都市をつくるだけでなく、生物学・社会学・歴史学・政治学等との横断的な協働を考え、旧来型の「グレー・インフラ」技術を補完する新しい技術思想として期待されていました。
総合的な「知」としての「土木」=「Civil Engineering」は、心地よい都市の基盤を作る総合技術ですと・・
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土木と市民社会をつなぐ活動

CNCP 常務理事 土木学会連携部門長 田中 努


「土木学会連携部門」では、土木学会のシビルNPO推進小委員会と協働で、「土木と市民社会をつなぐ活動」をしています。
現在は、@「土木と市民社会をつなぐフォーラム」の設立準備と、A土木学会の「土木コレクション」のボランティアガイドの呼びかけと組織化の2つに取り組んでいます。

■土木と市民社会をつなぐフォーラム
「土木と市民社会をつなぐフォーラム」については、CNCP通信のVol.55、59、63に書きましたが、その後の進展をご紹介します。
現在は、冒頭の小委員会の他の土木学会委員会とCNCPの賛同者と共に、「土木と市民社会をつなぐフォーラム準備会」を設立して、活動をしています。
シビルNPO推進小委員会の外から加わった方たちは、皆、既に「土木と市民社会をつなぐ活動」を実践されている方たちですが、皆、それぞれ自分たちの活動を展開する先に、市民や子供が居たという状態なので、自ら「土木と市民社会をつなごう」と考えていた訳ではありません。そのため、この「フォーラムがめざす姿(つながった結果、どうなれば良いのか)」についての認識は、共有されていませんでした。
そこで、準備会を立ち上げた7月のキックオフは「ワールドカフェ方式」のWSで、@土木と市民社会の間に溝がある事例とA溝が無い事例をあげて、意見交換をしました。

その結果、次のような「フォーラムがめざす姿」にまとまりました。
◎市民が土木の全体を(事業も人も、良いところも悪いところも)概ね正しく理解し、様々なことに、市民が自分の意見を言えて、それらがある程度、インフラ整備(維持・更新)や防災・環境整備等の事業に反映されていく状態。
◎さらに、土木のファンがいて、楽しんだり、自ら土木に関係する仕事に就く人が居る状態。
「土木と市民社会をつなぐ」という活動は、わが国の土木界の全ての組織・人(国・自治体・大学・企業・NPO・市民組織・個人等々)と全ての国民をつなぐことを考えているので、このような広い言い方になります。
しかし、フォーラムの仲間になってくれる人に説明し共感してもらうために、もう少しブレイクダウン&具体化した説明も必要と考えています。例えば、
【イメージ】「土木」への誤解や「知らない」がなく、概ね正しくイメージされている。
【インフラ】インフラの見学会やメンテ活動に参加したり、インフラの計画や設計に関する市民の意思決定の場に参画している。
【防災】地域の避難計画やヒヤリマップの作成、災害復旧を通じた土木施設やまちづくりへの関心・理解が高まっている。
【コミュニケーション】土木界の技術者個人が、周囲の市民・子供に、土木事業の事実を分かり易く、また土木界で働く想いなどを、伝わるように話し、市民の興味や疑問、誤解の実態を理解している。
【観光や趣味の対象】インフラツーリズムや、ダムマニアやマンホーラーなどの活動に、土木界の人が参画し、質的・量的に拡大している。
【土木教育】土木学会の長年の働きかけで、学習指導要領に「防災」が加わり、教科書に土木の関わりが記述されるようになったが、これを機に、記述範囲が拡大し、子供たちの土木に対する認識が変わってきている。
【土木界への就労】大学に「土木工学科」が復活しなくても良いが、「土木工学」を学ぶ学生が増え、土木界や関連する仕事に就こうとする若者が増えている。
「フォーラム」では、こんな社会をめざそうと考えています。次のステップでは、「それでは、フォーラムでは何をするのが良いか」を整理すること、その次はそれを実行することです。
CNCPに参画されている皆さま、一緒に活動しませんか?

■「土木コレクション」のボランティアガイド
「土木コレクション」については、CNCP通信のVol.60に書きました。
来週の11/14(木)〜17(日)の8〜21時に、新宿駅西口広場イベントコーナーで開催されます。昨年まで、広場を東京都の建設局と半々で使用しましたが、今年は、全域、土木学会の「土木コレクション」です。したがって、「土木」の分かる説明を必要とし、CNCPに協力を依頼されました。
CNCPでは、先のCNCP通信Vol.60とメールで協力を呼びかけましたが、残念ながらどなたからも応募や問い合わせがありませんでした。そこで、個人的な伝を使って、JR東と首都高と都立大のOB会と前職の会社と土木学会の委員会の仲間が少し、協力してくれることになりました。
「土木と市民社会をつなぐ」は、土木界にとっても市民にとっても重要な活動だと思います。そして、労働人口が減って世界一の高齢社会になった今、「土木と市民社会をつなぐ活動」を現役に期待して見守るのではなく、土木関係のOB・OGが、自ら可能な範囲で支援をすべきではないでしょうか。しかし、暇なシニアでも出来ることは限られています。本業を持つ人は割ける時間が限られています。だから、「みんなで・寄って集って・少しずつ」です。
例えば、この「土木コレクション」。朝8時から夜9時まで4日間もあります。とても1人では無理ですが、1人が3時間だけなら出来ますよね。17人集まればOKです。地域で活動している多くのNPOの仕事も似ていると思います。

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夏のリコチャレ2019を開催 建設産業界の技術を見て触れて体感! 「数学と理科が暮らしをつくる!!〜わたしの住むまちをデザインする仕事〜」開催!

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実行委員会:応用地質(株)、(株)建設技術研究所、日本工営(株)
パシフィックコンサルタンツ(株)、(株)安井建築設計事務所、(株)日刊建設通信新聞社
シビルNPO連携プラットフォームサポーター
(株)日刊建設通信新聞社 田嶋 千文


子どもたちに、建設産業界の技術のおもしろさと奥深さを知ってほしい――。そのような願いから、鞄刊建設通信新聞社は、内閣府・文科省・経団連が主導している「夏のリコチャレ」に2017年から参加し、主体となって子ども向けのイベントを開催しています。ことしのタイトルは、「数学と理科が暮らしをつくる!!〜わたしの住むまちをデザインする仕事〜」。その名のとおり、私たちが生活する中で建設産業界の技術がなくてはならないこと、そしてその技術は子どもたちが学んでいる「数学と理科」でなりたっていることを知ってもらう構成としました。今回は、フォロワー数20万の人気教育系YouTuber(理数系)のヨビノリたくみさんの特別講演「科学の眼鏡で世界を見れば」も開催、結果、日本だけでなく海外も含めて多くの大学生や高校生が来場しました。内閣府や国土交通省、東京都、企業、女性活躍団体など32者が一堂に会しテーマに沿ってブースを出展、331人が来場するビッグイベントとなりました。
8月2日に開かれた今回のイベントの来場者は、理工系に興味のある大学生や高校生、中学生が多かったため、企業等のブースの技術に興味津々。パスタとマシュマロでタワーを造ったり、電気の流れを作ってみたり、液状化現象や対策工法を実験したり、地下数bのボーリングサンプルを間近で観察するなど、「建設産業界の技術を見て・触れて・体感!」していました。また、幼稚園生や小学生からも大好評な実験が多かったため「夏休みの宿題にします」「また、来年も来たい」という意見を寄せられました。とにかく、各ブースには人がたくさん詰めかけ、出展者も建設産業界を知ってもらう良い機会とばかりに展示作品も力作ばかりでした。

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一方、ヨビノリたくみさんの特別講演では、「なぜ勉強するのか、それは人生を豊かにするため――」と切り出し、“科学の眼鏡”を掛ければ日常生活のあらゆるものが科学的に見えてくるという自身の体験について“ある1日”を振り返りながら紹介しました。独特の切り口にギャグを交えなるなど終始笑いと熱気に包まれていました。また、たくみさんと技術者とのトークセッションでは、技術と数学・理科のつながりをわかりやすく紹介し、理数系嫌いの人でも「おもしろい」と感じる内容でした。
他にも抽選会、リコチャレ◯×ウルトラクイズなども企画し、終始賑やかな雰囲気で進められました。
大人も子どもも楽しめる、アミューズメントパーク、「子供版・建設産業技術の見本市」のようなノリで1日が過ぎていきました。
*リコチャレ:理工系分野に興味がある女子中高生・女子学生が、将来の自分をしっかりイメージして進路選択(チャレンジ)することを応援するため、内閣府が中心となって行っている取り組み。

◇展示ブース
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◇ヨビノリたくみさん特別講演◇たくみさんと技術者のトークセッション ◇抽選会で豪華?景品を受け取る来場者
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◇リコチャレ◯×ウルトラクイズは大賑わい  ◇企業説明会・大学進学説明会も開催
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講演会報告「シビルエンジニアリングに求めるもの」

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NCP 常務理事 土木学会連携部門長
土木学会 教育企画・人材育成委員会 シビルNPO推進小委員会 委員長
メトロ設計梶@技術顧問
田中 努


先月10月1日、CNCPの「令和元年度通常総会」に続いて、講演会を開催しましたので、ご報告します。

【日時】令和元年10月1日(火)
15:30〜17:00
【場所】土木学会講堂
【題目】シビルエンジニアリングに求めるもの ―時代はどこへ向かっているのか―
【講師】青山彰久氏(ジャーナリスト/中央大学経済学部非常勤講師・総務省過疎問題懇談会委員・土木学会論説委員会アドバイザー/元読売新聞東京本社編集委員)
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■講演内容
青山さんから詳しいレジュメを頂きましたので、全文を載せます。講演の内容や話の展開がうかがえると思います。
1.はじめに
(1)混迷する大都市・東京の目指す姿――五輪・パラリンピック後に何が残るのか
(2)総合的な「知」としてのCivil Engineering のミッション
2.住み心地のいい都市を求めて
(1)渋谷の再開発は何を表現したいのか
(2)都市の再生とは高層ビルを建てることか
・都市再生特別措置法のもたらした都市空間
(3)人口増から人口減へという「歴史の峠」
・「工業化・人口増・都市化」から「ポスト工業化・人口減・逆都市化」へ
・「もっとお金を、もっと便利に」から「もっと美しく、もっと充実した生を」へ
・「コンクリートと鉄」から「水・土・緑」へ、「拡大型社会」から「定常型社会」へ、「従属」から「自治」へ
(4)都市とは何かを考える
・Lewis Mumford(1895-1990)のCulture of Cities(1938)では
アクセプト 都市は、人間が意識してつくった芸術作品、都市は、言語と並んで人類が作り上げた偉大な芸術作品
アクセプト 人間の精神は都市において形成される。都市の様式が人間の精神のありようを決める
アクセプト 都市とは、集団で生活するための物理的施設であると同時に、人々が好ましいと感じる環境の下で、人々が集団として掲げた目標と合意の象徴である
(5)歴史の地層を大切にする
・明治神宮の森と神宮外苑、関東大震災後の隅田川の架橋、築地卸売市場、多摩ニュータウン、新宿西口広場
(6)現代都市をめぐる2つの潮流を考える
・世界都市(Global City)……グローバル化した世界経済の司令塔を目指す(ニューヨーク、ロンドン)
・維持可能な都市(Sustainable City)……地球環境保全を足元から考える(フライブルク、ポートランド)

3.「グリーン・インフラ」への共感
(1)玉川上水の再発見
・江戸に水を供給した玉川上水(1653年完成)を皇居の外濠と内濠に連結させる計画へ
(2)宮城・気仙沼の津波防潮堤
・1500人の死者を出しながら「海と生きる」と掲げた気仙沼。最も歴史ある内湾地区の防潮堤を、4年にわたる住民参加の議論の末にT.P.4.1m(平時には閉まっている1mのフラップゲートをつけて)に抑えた
(3)グリーン・インフラという思想の登場
・1993年の米国ミシシッピ川の大氾濫で米政府が提起(人口的な構造物に頼りすぎず湿地帯を回復する)
・2004年のインド洋大津波で国連が提起(マングローブやサンゴ礁の生態系を津波から守る盾として再生する)
・2013年に欧州連合が「グリーン・インフラストラクチャー戦略」として都市整備への発展を提起(都市農地・緑地帯・遊水池など、自然・生態系の機能を使い、災害時には被害抑制に、平時には景観・アメニティの向上に)
(4)生物学・社会学・歴史学・政治学との横断的な協働
・歴史遺産・地形・自治を重視し、旧来型のインフラ(グレー・インフラ)技術を補完する新しい技術思想に期待

■講演の感想
青山さんは、早大の仏文科を出られたジャーナリストですが、地方自治、地域政策、都市問題・農山漁村問題にお詳しいだけでなく、人が暮らす都市や鉄道での旅が好きな土木に関心をお持ちの方で、「土木」に対する期待も大きいものでした。現在、土木学会の論説委員会のアドバイザーもされておりますが、「土木と市民をつなぐ」をメインテーマに掲げるCNCPとも、意見交換をさせて頂きたい方です。

「1.はじめに」でお話しされた2点が、「土木」への問題提起と期待です。
私たち(高齢者)が若かった1964年の東京オリンピックの頃は、高速道路・新幹線・高層ビル街など、先進国並の都市基盤ができるのをワクワク見ていましたが、2020年のオリンピックを前に、今の現役の若者達が期待することは異なるのでは?という問いかけです。最先端の施設のある都市を作るのではなく、人々にとって住み心地の良い都市をつくることではないかと。
「2.住み心地のいい都市を求めて」では、渋谷や丸の内の最近の再開発などに見られる問題点、「工業化・人口増・都市化」は1つの現象の3つの側面であること、人間の精神は都市において形成されることなど、「土木屋」は、普通考えないような視点に気づかされました。さらに「歴史の地層」という言葉で、先人たちが、何を考え何を想って都市を構造物をつくって来たか・・、建設時の人々の住まい方や都市のあり方を考えてみる大切さをお話しされました。
「3.グリーン・インフラへの共感」の「グリーンインフラ」とは、自然が持つ機能を社会における様々な課題解決に活用しようとする考え方で、海外では既に取組まれています。日本でも検討されつつあり、玉川上水の流れを復活させて日本橋川を浄化させようという案や、気仙沼の市民が「海と生きる」という選択をしたことなどが紹介されました。「土木」が、技術を駆使して困難な工事を実現させ、便利な施設や都市をつくるだけでなく、生物学・社会学・歴史学・政治学等との横断的な協働を考え、旧来型の「グレー・インフラ」技術を補完する新しい技術思想として期待されていました。
総合的な「知」としての「土木」=「Civil Engineering」は、心地よい都市の基盤を作る総合技術ですと・・
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第19回 国語辞典の「土木」の「土と木」

『大辞林第四版』(2019年9月)の「土木」の第一語義は「@土と木。また、飾り気のないことのたとえ。→形骸(けいがい)を土木にす(「形骸」の句項目)。」である。『大辞林第三版』(2006年10月)に中国の故事・成語の「土木形骸」の説明が追加された。参照先の「【形骸】」の句項目は「形骸を土木(どぼく)にす〔晋書嵆康伝〕身なりを全く飾らない。」となっている。
「土木形骸」は、竹林の七賢人の容姿を形容した『世説新語・容止』(5世紀頃)「劉伶身長六尺、貌甚醜悴、而悠悠忽忽、土木形骸」(「悠悠忽忽」は何もせずにのんびりすること)と『晉書・嵇康傳』(648年頃)「身長七尺八寸、美詞氣、有風儀、而土木形骸、不自藻飾」にあり、晋の劉伶と魏の嵇康のように「自然の土や木のように、飾らずありのままの姿でいること」の意味である。

このほか、白居易が官吏を退いて草堂にて詠んだ『白氏文集・重題』(817年)「豈止形骸同土木、兼將壽夭任乾坤。」は「我が身を土や木と同じくして、飾ることをしないだけでなく、我が寿命をも自然にまかせたい。」である。
日本では、正岡子規の『筆まかせ』(1884〜92年)に「陰学士は陽学士を評して『俗だ』とか『名利の為に形骸を土木にするのだ』とか『天下無頼の徒』とか『法螺ふき学問』だとかいひはやして」とあり、竹林の七賢人の逸話が背景にあるものと察せられる。
なお、「土と木。」については、字義のとおり、「土」と「木」のことと解釈するべきであるが、現代の具体的な用例が見当たらないのが残念である。
(土木学会土木広報センター次長 小松 淳)

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台風19号災害の被災地・水戸の現場から

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シビルNPO連携プラットフォーム 理事
茨城の暮らしと景観を考える会 代表理事
               三上 靖彦


大型で強い勢力を保ったまま上陸した台風19号は、東海、関東地方を中心に激しい雨を長時間降らせ、日降水量の国内1位を更新、各地で記録的な豪雨となった。その影響で、河川の氾濫や土砂災害など、広範囲に大きな傷痕を残した。
台風19号は10月12日(土)午後7時前、伊豆半島に上陸、その後は関東地方と福島県を縦断し、13日(日)正午に三陸沖東部で温帯低気圧に変わった。
茨城県内では12日から13日未明にかけ、大雨特別警報が発表される記録的な豪雨が降った。那珂川や久慈川などが堤防決壊や越水などで氾濫し、大規模な浸水被害が発生した。水戸市でも那珂川に流れ込む藤井川や田野川が溢れ、那珂川沿岸の飯富町や岩根町の広い範囲が浸水、水戸北スマートIC付近では最大7m以上の浸水で、知り合いの中華料理店も水没した。
茨城県測量・建設コンサルタント協会(茨測協)に属する私の会社には、14日(月)の早朝、茨城県水戸土木事務所の河川整備課より災害復旧調査の要請があり、体育の日の休日であったにも関わらず、多くの社員が被災箇所の調査に出向いた。一方で水戸市建設部からも被災道路の応急復旧についての相談があった。そうこうしているうちに、その日の夕刻、茨城県土木部河川課からドローンによる浸水区域の撮影要請があって協議が始まった。
翌15日(火)は早朝より被災道路の応急復旧絡みで国の常陸河川国道事務所と協議。その一方で、茨測協に属する会社に電話にてドローン撮影の協力要請。各社には合計で50機ほどのドローンがあるはずだが、国からの要請で早々に出払っていたり、ドローンはあっても浸水の痕跡調査などに追われ、パイロットを含む撮影チームが編成できない、などの理由で、確保できたのはたったの4班。翌日には少し増えて7班。これでは要請のあった茨城県管理の県内32河川を週末までに撮り切るのは不可能。やっと半分ほどの撮影が終わったところで翌週になり、水位も下がったので今度は浸水区域の撮影ではなく、被災箇所の撮影に要請内容が変わる。対象河川も2倍に増えたところで、21日(月)には茨測協の役員会を開催、体制を強化し、22日(火)以降、10班体制で対応することとなる。
さて、通常、国庫負担対象となる工事費を決定するための災害査定は、災害発生から2ヶ月以内に実施することが原則である。それに先立ち、国への災害報告は、箇所数確定は10日以内、申請額報告は30日以内。しかし、申請額報告は、査定時に著しい差のないようにする必要があるので、査定に必要な資料は概ね30日以内に全て準備しておかなければならない。査定資料準備は、被災施設の管理者(県や市町村)と測量・建設コンサルタント会社などの作業機関で実施することとなる。
茨城県や水戸市では、被災状況の調査結果を踏まえ、16日(水)までに災害査定対象の絞り込みを実施。17日(木)には朝から水戸市道路建設課と、被災道路の災害査定設計に向けた協議。午後は水戸土木事務所の河川整備課と被災堤防の災害査定設計に向けた協議。翌18日(金)の朝から水戸市内、茨城県内の会社との役割分担を決め、その日の夕方に水戸市と水戸土木事務所にそれぞれ体制を報告。各社、担当被災箇所の現況を把握した上で、査定設計に取り掛かる。この際、応急復旧の対象となっている被災箇所については、応急復旧のための図面も必要で、また応急復旧されてしまうと被災状況が確認出来なくなってしまうので、迅速な対応が求められた。19日(土)には水戸土木事務所から国道123号の査定設計の要請もあった。既に応急復旧は済んでいるところである。
21日(月)や23日(水)もドローン撮影を継続しつつ、断続的に茨城県や水戸市と協議。24日(木)の夕方には査定スケジュールが示された。主に県の重要案件が先で、市町村分はその後。少し余裕が生まれる。その間も茨城港湾事務所から大洗港の沖防波堤の、翌25日(金)には日立港の東防波堤の復旧調査・査定設計の要請も舞い込んできた。
ここまでの対応は、県や市、それに私たちコンサルタントも、東日本大震災や関東・東北豪雨での鬼怒川水害の教訓、経験が生かされた。水戸市には早い段階から国のテック・フォースが入り、初動調査から査定設計に向けた段取りは、極めて円滑であった。私たちコンサルタントは、茨城県や水戸市と災害協定を結んでおり、大規模災害発生時には協会へ被害調査の要請が入ることになっている。査定設計についても、各社とも経験済みのスタッフを抱えている。

また、東日本大震災の時は、調査や査定設計をする私たちも被災者であったので、それこそ大変であった。しかし今回は、多くの会社や社員が被災者ではない。その反面、弊害もある。通常業務、通常イベントが、当たり前のように「通常」に進められていることだ。一方で災害対応を進めながら、一方でお祝い事や懇親会、水戸漫遊マラソン、業務打ち合わせなどが予定通り実施される。地域全体として当事者意識が希薄だ。それ故、個人個人の日頃からの志の様なものが試される。社員一人ひとりの、この危機に対する心の持ちよう、行動に感謝したい。
と、ここまで書いたところで、関東では25日(金)、千葉県を中心に災害級の大雨となった。雨が降ればドローンは飛べないが、それ以上に冠水や河川の増水、土砂災害への警戒が続いた。茨城県でも鹿行、県南、県西方面の河川で新たな氾濫が発生した。浸水区域の把握のため、急遽、26日(土)、27日(日)にもドローンを飛ばした。
『巨大台風、「堤防神話」崩す』というタイトルの記事を見た。『今回のように甚大な被害をもたらす巨大台風は今後も恒常的に襲来する恐れがあり、専門家は「堤防神話」からの脱却を訴える・・』。原発の『安全神話』とか、水害が防げるはずという『堤防神話』とか。そもそも「神話」なんて、おとぎ話みたいなものだから、信じてはいけない。明治維新以降、私たちが築いてきた近代土木技術の限界・・。そんな事を考えながら、まだまだ災害対応は続く。

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水戸北スマートIC周辺の様子(令和元年10月13日)
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