2020年03月01日

第2回 花畑運河は荒川放水路の土木遺産

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シビルNPO連携プラットフォーム 理事
(日本河川協会 理事)三井 元子


はじめに
花畑川は、東京足立区の北東部にある中川と綾瀬川をつなぐ運河である。荒川放水路が開通すると舟運の渋滞が起こる事が予想されたため、昭和6年に開削された。開削当時の景観を残しているこの運河が、今、壊わされようとしている。花畑川を荒川放水路の土木遺産として推薦したい。

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1.なぜ運河開削が決まったか?
明治43年に東京・埼玉大水害があり、荒川の破堤箇所数十か所、死者369名、被災者150万人、流失・全壊家屋1679戸、浸水家屋27万戸、被害総額は国民総所得の約4.2%であった。そこで政府は、荒川放水路開削を決意。明治44年から19年の歳月をかけ、昭和5年に幅500mの荒川放水路が完成する。
ところが東京都心部への貨物の重要な舟運路であった中川は、放水路と並行して、大きく迂回して、木下川水門または小名木川水門を通過しなければならなくなり、閘門(ロックゲイト)で船が渋滞することが懸念された。そこで、大正10年に花畑運河開削が決定される。中川と綾瀬川をつなぐ運河を開削すれば、綾瀬川からは、放水路を横切って墨田川水門に入れることから、「約4里(16km)の短縮になるばかりか、屈曲が少ないので、時間と労力が省ける。船だけのためではなく、市場における物資供給の円滑化となり、地方への輸出入の運輸が敏活になると共に、陸上物資の停滞を緩和する他、経済上に及ぼす利益は少なくないと認め」花畑運河開削を計画した。

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そして、昭和6年、幅33.6m延長1,485mの運河が完成した。葛西用水は伏越で運河を横断させ、中川口には逆流を防ぐため水門をもうける形にした。工費は、36万7650円。(現在の約3億5千万円).東京府の大正10年の調査によると、東京市における貨物の集散量全体の3割は水運により集積され、市内河川・運河で取り扱われたものは年1,800万tに達していたという。
中川舟運は、ほとんどすべてが東京への輸出入で、花畑川では、1年間に下り貨物42,000t、米穀、醤油、粗砕、縄莚類。上り貨物 8,000t、雑貨、木材、石炭、豆粕、他に人糞尿40万荷。これを運搬する船は日に212艘もあった。

<参考文献>
(※「日本土木史 大正元年〜昭和」:日本土木学会)
(※「荒川下流史」:(財)リバーフロント整備センター)
(※「新修足立区史」下巻:足立区)
(※「東京府史 行政編」 第4巻:東京都)
(※『都史資料集成」第7巻◎震災復興期の東京A』)

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2.国の「都市計画法」制定後、関東で初めて完成した開削運河
日本土木史に拠れば 「大正8年(1919)の都市計画法制定後、全国的にも都市計画事業として新たに開削された運河は少なく、大阪の城北運河、名古屋の中川運河、富山の富岩運河など、きわめて少ない例であるといえる。」とある。

令和1年になって足立区は、川幅を半分の17mにして、両岸に8mの河津桜並木を作る計画を進めようとしている。
戦後、陸運が活発になり、たい肥も化学肥料の台頭によって使われなくなり、舟運は昭和31年頃に姿を消した。が、現代は、水面の価値に対する理解が深まり、かつて蓋掛けした川を開いたり、観光のための舟運を見直したりしている時代である。

今も開削当初の運河の景観が残っている花畑川は、歴史的にも経済史的にも、極めて貴重な河川である。時代に逆行する改修はやめるべきだ。水質が良くなり、魚影もみえるようになった花畑川を一度、ぜひ散策してみてほしい。

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グリーンインフラのすすめ

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シビルNPO連携プラットフォーム
副代表理事 花村 義久


皆さんすでにご承知ように、我々は今社会資本の老朽化や高齢化・人口減少、気候変動による自然災害激甚化など、様々な社会的な課題を抱えています。最近これを乗り切るのに、社会資本整備や土地利用において、自然環境が有する多様な機能を活用しようと云う考えが生まれています。この考えは自然との共生をベースにしたもので、グリーンインフラ(GI)として、従来の社会資本の枠を超えて自然資本を活用することによって、行き詰っている現在のインフラ問題を克服しようとするものです。
今までの緑地・緑化は、環境の保全や生活の安定、地域の活性化などの意味から取り組まれており、都市における公園、緑地・農地等のオープンスペースは多面的な機能を発揮するとともに、防災機能や景観形成、生活の憩いの場などを提供しています。国では、これをさらに充実させるべく、「集約型都市構造化」と「都市と緑・農の共生」という考えでもって、平成29年、都市緑地法、都市公園法、生産緑地法などの改正を行いました。
みどりによる社会基盤、グリーンインフラGIは、みどりすなわち生態系等自然環境の多機能を活用するという考えですが、上に述べた従来の緑地に対する考え方をよりダイナミックにとらえ、持続可能な社会、経済発展をもたらすインフラや土地利用計画を進めようとするものです。地球の温暖化砂漠化問題・エネルギ再生への取り組み、河川・ダム・都市環境に対する森の保全・樹木植生等都市緑化、インフラの老朽化対策や防災への備え、人口減少社会での新たな土地利用、投資・人材・オフィスなど活力ある都市空間の形成、そして景観・教育・健康・コミュニティ・安らぎの場等文化・生活空間の創出など、幅広い分野がその対象になります。
GIは、地方自治体での実現に期待されています。私が住む船橋市では、現在緑化問題を「船橋市緑の基本計画」という形で進めています。この計画書では、緑の機能として、健康維持・安らぎの場、防災、景観形成、生物多様性の保全、都市環境の保全を柱としています。これらは要素的にみるとかなりGIと重なっています。個人的なことになりますが、私も市の緑化推進委員会の委員であることから、また今までNPOとして校庭の芝生化や中国での砂漠の植樹など緑化問題に微力ながら関わったものとして、地域でのGIの推進が図られたらと考えるものです。
現在国土交通省では、国土形成計画にGIを取り込み、またグリーンインフラ懇談会の設置やポータルサイトの開設を行い、2019年にはグリーンインフラ推進戦略を発表しました。このテーマはいろいろな分野が関わりあうことから、それぞれの関係組織、関係者が連携してGIの推進が図られることを願うものです。

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第23 回 「社会インフラ」とは

「インフラ」と「社会インフラ」とはどちらが広い意味のことばだろうか。
「インフラ」は「社会資本」や「社会基盤」と言い換えられる。これをGoogle翻訳すると、それぞれ“social capital”と“social infrastructure”になる。逆方向に翻訳すると前者は「社会資本」に、後者は「社会インフラ」になる。
本来、“social capital”は社会学における「社会関係資本」であって、日本で「インフラ」 を意味する「社会資本」とは異なり、「社会・地域における人々の信頼関係や結びつきを表す概念」である。一方、“social infrastructure”には特に明確な定義はなく、英国圏では、社会保障、公衆衛生、住宅政策、教育政策を含む“social services”に関する施策や施設のことである。

内閣府の平成25年度年次経済財政報告第3章第3節「社会インフラの供給基盤」に「社会インフラの範囲は広く、道路、港湾、空港、上下水道や電気・ガス、医療、消防・警察、行政サービスなど多岐に渡る」とある。英文の概要版は「社会インフラ」を“social infrastructure”と訳しており、これで諸外国に本来の意図が正しく伝わるか大いに疑問である。同様の混乱は、平成25年度国土交通白書「はじめに」の注にも引用されていて、白書で「社会インフラ」を「インフラ」よりも広い意味で使っているとしている。
ここに「社会インフラ」が広い意味を示そうとした造語だとして、辞書にないこの新語は既存の語の組合せによる機械的な翻訳で“social infrastructure”になってしまう。多言語で紛れなく伝えるためには注意が必要である。
(土木学会土木広報センター次長 小松 淳)
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日本初の建設系NPO専門クラウドソーシング「シビルマッチ」

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シビルマッチの登録はお済でしょうか?法人正会員、個人正会員、賛助会員・サポーターの全ての会員にご登録をお願いしております。ご登録は下記シビルマッチのURLにアクセスし、メールアドレスとパスワードを送信してください。その後、事務局から仮登録の返信が来ますので改めてログインして頂き登録の手続きをお願いします。ログイン後の手続きは以下の通りです。レジメ登録およびクライアント情報登録までして頂かないと登録は完了いたしませんのでご注意ください。
ログイン後
●受注希望の方は、得意分野やスキルを明記した、レジュメ(履歴書)を登録して下さい。
●発注をご希望の方は、クライアントに切り替えて「組織情報」を登録して下さい。
※レジュメを登録されるまで、メンバーとして検索されませんのでご注意下さい。
※組織情報を登録されるまで、クライアントとして検索されませんのでご注意下さい。
CIVIL MATCH シビルマッチ  http://www.civil-match.org/
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アーカイブ分析

CNCP通信は、今回が71号です。1号から70号までの掲載記事をアーカイブとしてHPに掲載しています。
アーカイブでは表と図に示すように9つの分野に分類しています。記事によっては重複して分類されています。
70号までのアーカイブを整理してみました。表は10号毎の分類、図は1〜70号までの合計の分野別の割合です。分類と分析は、有岡正樹元常務理事にお願いしました。

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タグ:NPOの技術
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エーヤワディ川堤防天端の道路のアクセス改善

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シビルNPO連携プラットフォーム法人正会員
NPO法人道普請人理事 福林 良典


筆者が直近に担当した,ミャンマーのエーヤワディ川(旧称イラワジ川)デルタ地帯での道直しを紹介する.
この事業は,キリスト教系で人道支援の観点から災害時の緊急対応などの活動をしている,国際NGOとの連携事業である.「自分たちの道は自分たちで直す」という意識を広め世界の貧困削減に貢献しよう,と小規模インフラ整備を行ってきた私たちの活動に関心を持っていただき,協力を要請されて実現した.
土地を持たない住民は,雨季には浸水するとわかっていても川表側に住居を構えざるを得ない(写真1).一方で,携帯電話のアンテナが近くに設置されており(写真2),スマホが使える環境が整っている.筆者も現場に居ながらにして,メールをチェックしたり地図アプリを使うことができた.
堤防は粘性土の盛土構造で,現地の行政により管理上,舗装も含めて構造物の設置は認められていない.洪水による河岸浸食も問題となっていて,現在の堤内地に別のルートで堤防が設置されることも検討されている.現在,河川そばの村に住む人々は,堤防の天端を道路として利用している.乾季には乾燥し路面は固くトラックなどの車両も通行可能になるが(ただし,ほこりがひどい),雨季には泥濘化し大人でも足を取られたり滑ったりするほどで,歩行すらままならない(写真3).

周辺の村での対策も参考にし,設置・撤去が人力で可能なコンクリートパネルの作成を支援することとした.材料代の負担と,村の人々が組織的に施工できるように技術支援をした(写真4).
雨季にはパネルが設置され,歩行が容易になった(写真5).子供を一人で学校に行かせることができ家業に時間を割くことができた,助産士が来てくれるようになった,市場まで行ける回数が増えたなど,村の人々の生計向上に効果があったようである.

乾季には,パネルを端に寄せ車両の通行幅を確保している(写真6).一枚40 kg程度のパネルを約2,000枚作成し1.3 kmの範囲に設置したが,村人が家庭ごとに担当範囲を決めて,撤去作業を行った.雨季が来れば,同じ体制で設置される予定である.

筆者にとって,堤防天端での道路整備は初めての経験であった.連携先NPOの事業地であり,この事業を通して新たな実績を得ることができた.異分野で活動するNPOとの連携も,いい経験になった.社会基盤整備を担う建設系NPOにとって,社会科学系など他分野のNPOとの協働の機会は多いのではないかと思う.
持続可能な開発(SDGs)が認知され,産官学が各々その目標の達成に向けた活動をしている.上記で紹介したようなインフラ整備は,「新しい公共」のNPOだからこそ,実施することができた事業のように思える.よそ者の国際開発NPOではあるが,相手国の持続的な発展に向けて事業の担い手を現地化するなどして,積極的に役割を果たすことができると手応えを感じている.

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私の市民活動 地域の水に係ること

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シビルNPO連携プラットフォーム
個人正会員 駒田 智久


東久留米市に隣町から転居して20年近くになる。暫く経ってから仕事の一線を退き、時間の余裕が生じた。間もなく、土木学会では、CNCPも含んだ今に繋がる活動が起動し、多く係わったが、同じ頃、ある機縁で地域デビュー(のようなもの)を果たした。
分野は技術者としての現役時代は殆ど縁の無い「水環境」、というよりもそれを支える「水循環」に係るものであった。水循環という概念・言葉が社会的に認知・認識されたのは平成10年代の冒頭との話であるが、ほぼ10年遅れで自身も水循環という言葉を標題に用いて地域の水文状況に係るデータの収集・整理結果を纏めている。
その背景には東久留米市が湧水と清流に恵まれた街であることがある。当市には、ほぼ市内を湧出源とする黒目川と落合川が流れている。湧出直後であることから流れの透明度は高く、水質も良い(特に落合川は東京都の水質基準で南北多摩地区では唯一の最上級AAとされている)。副都心・池袋駅から僅か18km、そこで水に親しむ子供たちの姿は咋年8月の「アド街ック天国」(テレビ東京系)でも紹介された。(写真は市役所から遠くない落合川の毘沙門橋のすぐ下流での水遊び。) 市では平成23年に全国的にも珍しい「湧水・清流保全都市宣言」を発している。
一方、国は平成26年に到って水を国民共有の財産とする「水循環基本法」を定め、翌27年には水循環に関する施策の基本的な方針や具体項目を挙げた「水循環基本計画」を策定した。

このような動きを背景に、地域の良好な水環境が今後末永く保全され向上することを願って、平成28年に、座長に芝浦工大・守田優教授を迎えて「東久留米の水循環を勉強する会」を立ちあげた(自身は事務局長)。その後2年有余の活動成果を纏めた報告書を「東久留米・黒目川流域の水の今とこれから」として昨年夏・水の日に刊行した(上の写真はその表紙から)。内容を表に示す。前半の4章までは東久留米市を主とする流域の水に関係した状況であり、後半はその維持向上に係る取組みに関するものである。

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特筆すべきは、両川合流後の都県境での日10万トン近い流量、これは武蔵野礫層からの湧出であるが、この流量は水系としての黒目川流域の降雨〜地下浸透ではとても賄いきれず、その多くの部分を後背地である小平市など武蔵野台地のそれに依存していることの知見である。
問題はこれからである。これまで「お勉強」をしてきた。今後それを踏まえて実際に役立つどのような活動をすればいいか、現在調整中である。
大きなテーマは、後背地も含めた雨水の地下浸透の確保、具体には農地・緑地の保全であろう(特に「農地の保全」が、近年の都市農業振興施策があると言え危惧される)。農地という専ら農業者が保有する土地の保全に市民サイドで何ができるのか?また属している自治体を超えた広域的な取組みをどう推進していくのか?まるで風車に立ち向かうドンキホーテのようなものかもしれないが、仲間と共に、電池の切れかかった体と頭を使って努める他はない。(農地については農業者の方々が地域の水に係る貢献について必ずしも意識されていないのが歯がゆい。)
なお、健全な水循環に向けての実際は全体として行政の事項となる。そのため、上記の報告書を関係機関に進呈し、それを踏まえて説明会を開いた。結論から言うと、徒労感に満ちて帰ってくることが少なくなかった。国は兎も角、都県や市レベルでは水循環に係る横断的な取組みは全く無いようで、所掌事務に関することしか承知しない感があった。
 
水循環勉強会は有期の任意団体であり、その先に別途想定している、良好な水環境〜健全な水循環を目指す新たな活動を担う団体もNPOの認証を受けるかどうか?ある限られた地域で活動するとき、ベースで必要なのはその団体、それを構成している個人の信頼であり、多少公的な絡みが出てきても、形としてはその団体の規約や会員名簿が有れば事足りることになるからであるが、これらの活動は「シビルNPO」から見てどう位置付けされるのか?また、基本的に河川の平時流量の確保を目指すこのような活動はインフラメンテナンス国民会議・市民参画フォーラムからみてどうなのか?共に一定の位置付けが期待されうるのであろうが、余りこれらに関して意識していないのが実情である。
 
つくづく人生は偶然と縁だと感ずる。東久留米に転居しなければ決してこのような活動はしていなかった。もしあの正月に地元の氷川神社に参拝しなければ、また、その後で神社の傍を流れる落合川の水辺を散歩しなければ、同級の尾田栄章氏が我が街の集会に講師として来ることも知らず、その集会にも参加しなかっただろう。それで多少の縁ができて、その年に発足した市民環境会議にも参加しなかっただろう。参加しなれば、水循環に係るデータ整理もするわけがないのである。これからも偶然と縁を大事にしていきたい。
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グリーンインフラのすすめ

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シビルNPO連携プラットフォーム
副代表理事 花村 義久


皆さんすでにご承知ように、我々は今社会資本の老朽化や高齢化・人口減少、気候変動による自然災害激甚化など、様々な社会的な課題を抱えています。最近これを乗り切るのに、社会資本整備や土地利用において、自然環境が有する多様な機能を活用しようと云う考えが生まれています。この考えは自然との共生をベースにしたもので、グリーンインフラ(GI)として、従来の社会資本の枠を超えて自然資本を活用することによって、行き詰っている現在のインフラ問題を克服しようとするものです。
今までの緑地・緑化は、環境の保全や生活の安定、地域の活性化などの意味から取り組まれており、都市における公園、緑地・農地等のオープンスペースは多面的な機能を発揮するとともに、防災機能や景観形成、生活の憩いの場などを提供しています。国では、これをさらに充実させるべく、「集約型都市構造化」と「都市と緑・農の共生」という考えでもって、平成29年、都市緑地法、都市公園法、生産緑地法などの改正を行いました。
みどりによる社会基盤、グリーンインフラGIは、みどりすなわち生態系等自然環境の多機能を活用するという考えですが、上に述べた従来の緑地に対する考え方をよりダイナミックにとらえ、持続可能な社会、経済発展をもたらすインフラや土地利用計画を進めようとするものです。地球の温暖化砂漠化問題・エネルギ再生への取り組み、河川・ダム・都市環境に対する森の保全・樹木植生等都市緑化、インフラの老朽化対策や防災への備え、人口減少社会での新たな土地利用、投資・人材・オフィスなど活力ある都市空間の形成、そして景観・教育・健康・コミュニティ・安らぎの場等文化・生活空間の創出など、幅広い分野がその対象になります。
GIは、地方自治体での実現に期待されています。私が住む船橋市では、現在緑化問題を「船橋市緑の基本計画」という形で進めています。この計画書では、緑の機能として、健康維持・安らぎの場、防災、景観形成、生物多様性の保全、都市環境の保全を柱としています。これらは要素的にみるとかなりGIと重なっています。個人的なことになりますが、私も市の緑化推進委員会の委員であることから、また今までNPOとして校庭の芝生化や中国での砂漠の植樹など緑化問題に微力ながら関わったものとして、地域でのGIの推進が図られたらと考えるものです。
現在国土交通省では、国土形成計画にGIを取り込み、またグリーンインフラ懇談会の設置やポータルサイトの開設を行い、2019年にはグリーンインフラ推進戦略を発表しました。このテーマはいろいろな分野が関わりあうことから、それぞれの関係組織、関係者が連携してGIの推進が図られることを願うものです。

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考える研修 やってます

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シビルNPO連携プラットフォームサポーター 
未来構想PF事務局長 土井 博己


未来構想PF(一般社団法人未来のまち・交通・鉄道を構想するプラットフォーム)では、9年前の設立時から継続してワークショップ(WS)研修を実施している。対象者はJR東日本及びグループ会社の建設部門若手中堅社員で、研修テーマにより運輸総合研究所や鉄道・運輸機構からの特別参加もある。
JR東日本では、安全や設計等様々な研修が行われているが、プロジェクトの企画調査計画に関する講座は無い。確かに企画調査計画の業務は総合力を必要とする分野であり、そのことを「冠」に講座を組むことは難しい。そこで、未来構想PFの設立に際しては「考える力とプロジェクト企画力の再構築」が一番のミッションとなった。将来構想に関する技術力の継承と向上については、自主研究、講演会、見学会などのメニューもあるが、まずWS研修を優先して実施することとした。

大丸2WS研修の目的と進め方
WS研修は、メンバー共通の構想・計画をまとめることが目的ではない。専門性、立場、関心の違うメンバーとの自由な意見交換を通して、考えることとプロジェクトを進める上での全体フローを理解することが目的である。
(カリキュラムの事例:上野駅の将来構想)
第1回 特別講義(山本会長)と課題図書を読んだ感想
第2回 首都圏の都市計画・交通計画の長期的な課題を考慮した上で、鉄道の将来ビジョンをどのように考えるべきか
第3回 駅の基本構想を考える上で、重要なことは何か(10項目程度を示す)
第4回 現在の上野駅を理解する
第5回 上野駅の将来構想をまとめる
第6回 上野駅の将来構想を踏まえた施設計画(長期計画と当面の計画)
第7回 上野駅の当面の施設計画の具体化
第8回 まとめ(将来構想から具体的な計画立案までの全体フローを整理)

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大丸2考えるメニュー
1. 毎回の課題、何を求められているのか
各回の課題は、ファシリテーターから事前に提示される。まず、何を求められているのか考える。

2.A4(裏表可)1枚に考えをまとめる
簡潔に考えをまとめることは大切で、その練習もあり用紙の制限を設けた。他のメンバーのまとめ方を参考にしていると、初回はともかく、最終回頃には皆さん上手になるから不思議だ。

3.発表する、発表を聞く
発表(プレゼン)の持ち時間は1人5分。わかりやすく、的確に発表しなければならない。それ以上に大切なのが「聞く」ことで(通常の会話でも話す3割聞く7割と言われている)、発表を聞きながら何を言いたいのか考え、不明な点があればそれが質問となる。

4.質問する、意見を言う
WS研修の最大の特徴は参加することである。質問や意見を出し合い、それぞれの提案をブラッシュアップしていく。その意味でもファシリテーターの役割は重要で、出来るだけ多くの「考え」が出るようにリードすることが期待される。

5.アドバイザーの話を聞く
一通りの議論が終わったらアドバイザー(参加している上司や先輩)から気付いたことが述べられ、最後に講評も含め山本会長からの話しがある。メンバーはこれらのコメントを熱心に聞いて次回以降の参考にしているようだ。

6.研修後の懇親会は毎回開催
研修は1シリーズ7〜8回で終了時間が20時前後。そのあと必ず行うのが2000円会費の懇親会で自由参加だ。その日のテーマはもちろん、仕事の話、最近の話題、むかし話、とにかくワイワイ賑やかだ。みんなの関心が高いのは山本会長の話で、貴重な体験や“その時々の考え”に聞き入る。楽しいひとときだが、各自の思考回路に知らず知らず染み込んでいる、そんな印象だ。

7.課題図書を読んで感想文を書く
各研修ごとに「課題図書」を設定し、読んだ感想をまとめ発表する。課題図書はPFからの提案や参加メンバーからの推薦で決定する。紙の本を年間1冊も読まない人が60%以上とのデータもある昨今だが、まとまった1冊を“読み切る”ことで、研修の目的である「考える」ことのツールとなっている。

■これまでに実施したWS研修の成果
以下に示す18シリーズを実施、参加者は延べ190人である。各テーマとも、当時JR東日本で具体的な検討が進んでいたわけではないが、いずれ将来構想が議論されると思われる案件を選択してきた。
・将来構想(池袋駅、大崎駅、上野駅、八王子駅、四ツ谷駅、空港アクセス、首都圏鉄道20年ビジョン、首都圏鉄道30年ビジョン、20年後の鉄道の将来像)・施工計画(浜松町駅、我孫子駅、橋本駅、金町駅、藤沢駅)
・地方創生(地域と生きる:仙台、東北地方で新規事業をやるとしたら何を:仙台、地方公共交通の将来像:高崎)
これらの成果は“190の提案”としてファイリングされている。これまでに、いくつかの駅改良計画の参考となっており、研修と実務の一体化という初期の目的は達成されている。また研修参加者190人は、ほとんどがプロジェクト企画リーダー、組織リーダーとして社内で活躍しており、技術力継承と人材育成の面でも成果を上げている。

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土木と市民社会をつなぐ活動

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シビルNPO連携プラットフォーム常務理事 土木学会連携部門長
土木学会 教育企画・人材育成委員会 シビルNPO推進小委員会 委員長
メトロ設計梶@技術顧問
田中 努


「土木学会連携部門」では、土木学会のシビルNPO推進小委員会と一体になって、「土木と市民社会をつなぐ」の具体化をめざし、■土木と市民社会をつなぐフォーラムの設立準備と、■Facebookで同様の活動をしている人たちとつながる試みに取り組んでいます。

■土木と市民社会をつなぐフォーラム
「土木と市民社会をつなぐフォーラム」については、CNCP通信のVol.55、59、63、67に書きましたが、その後の進展をご紹介します。
私たちは「フォーラムがめざす姿」を次の枠内のようにまとめました。「土木と市民社会をつなぐ」という活動は、わが国の土木界の全ての組織・人(国・自治体・大学・企業・NPO・市民組織・個人等々)と全ての国民をつなぐことを考えているので、このような広い言い方になります。

=============================
◎市民が土木の全体を(事業も人も、良いところも悪いところも)概ね正しく理解し、様々なことに、市民が自分の意見を言えて、それらがある程度、インフラ整備(維持・更新)や防災・環境整備等の事業に反映されていく状態。
◎さらに、土木のファンがいて、楽しんだり、自ら土木に関係する仕事に就く人が居る状態。
=============================


私たちは、次に、この姿の具体事例と、この姿を実現させるために何をすべきかを考え、検討を重ねています。
【めざす姿の具体例】
フォーラムの仲間になってくれる人に説明し共感してもらうために、めざす姿の具体を例示します。例えば、@土木のイメージ(誤解や「知らない」がない)、Aインフラの認識、整備・維持への関わり、B防災への関心・理解、C土木技術者個人とのコミュニケーション、Dインフラツーリズムやダムマニアなどと土木界の人の関わり、E教育を通じた子供たちの土木に対する認識、F土木を学ぶ学生・土木関連の仕事に就く若者・・など。
【実現させるためにすべきこと】
@[つなぐ活動のDB&HP]:つなぐ活動のDBとHPのプロトタイプを作成し、使いながら、ブラッシュアップとコンテンツ(事例と参加メンバー)の増加を図る。
A「優れた活動の抽出と広報」:「つなぐ活動」の優れた部分として、何を仲間に紹介するかを検討しつつ、まずは、準備会に参加している土木学会の「土木広報大賞」とCNCPの「建設大賞(CNCPアワード)」の着目点の位置づけや両者の連携・協働の在り方などを検討する。
B「Q&A」:市民の生の疑問・質問を集める。まずは、個人の頑張りに依存せずに、システマチックに継続的に集める方法の検討。集まった質問とそれに対する回答は、CNCP通信のQ&Aに掲載し、併せてフォーラムのHPに掲載する。
C「TV会議の試行」:全国にフォーラムの仲間ができても、いつも四谷に来てもらうのは困難なため、土木学会の機器を利用して、普通に使えるTV会議・Web会議のスキルと環境を整える。
D「土木インタープリターの養成」:国立公園のネーチャーセンターにいる「インタープリター」の土木版を作る。まず「土木インタープリター」の要件(必要な知識・スキル・マインド等)を明らかにし、力量評価と養成講座を企画する。CNCPの協働推進部門で実施している「ファシリテーター養成講座」と連携させたい。

■Facebookで仲間たちとつながる試み
土木の分野に限りませんが、SNSを通じて自分たちの活動をリアルタイムに発信している組織/グループ/個人が世の中にたくさんいます。私たちは、昨年立ち上げた「シビルNPO推進小委員会Facebookページ」等を使い、「これは土木と市民社会をつないでいる!」と思われる活動を、フォロワー(「土木と市民社会をつなぐこと」に関心をもっている皆さん)へ紹介しています。また、コメント欄を通じた意見交換や、SNSで知ったイベントへの参加等を通じて、「土木と市民社会をつなぐ」という同じ志をもつ仲間とのつながりを少しずつ広げていこうとしています。読者の皆さんもぜひ、シビルNPO推進小委員会Facebookページをフォローし、このつながりに加わってください! 
シビルNPO推進小委員会Facebookページ
https://www.facebook.com/jsce.civil.npo/

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エーヤワディ川堤防天端の道路のアクセス改善

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シビルNPO連携プラットフォーム法人正会員
NPO法人道普請人理事 福林 良典


筆者が直近に担当した,ミャンマーのエーヤワディ川(旧称イラワジ川)デルタ地帯での道直しを紹介する.
この事業は,キリスト教系で人道支援の観点から災害時の緊急対応などの活動をしている,国際NGOとの連携事業である.「自分たちの道は自分たちで直す」という意識を広め世界の貧困削減に貢献しよう,と小規模インフラ整備を行ってきた私たちの活動に関心を持っていただき,協力を要請されて実現した.
土地を持たない住民は,雨季には浸水するとわかっていても川表側に住居を構えざるを得ない(写真1).一方で,携帯電話のアンテナが近くに設置されており(写真2),スマホが使える環境が整っている.筆者も現場に居ながらにして,メールをチェックしたり地図アプリを使うことができた.
堤防は粘性土の盛土構造で,現地の行政により管理上,舗装も含めて構造物の設置は認められていない.洪水による河岸浸食も問題となっていて,現在の堤内地に別のルートで堤防が設置されることも検討されている.現在,河川そばの村に住む人々は,堤防の天端を道路として利用している.乾季には乾燥し路面は固くトラックなどの車両も通行可能になるが(ただし,ほこりがひどい),雨季には泥濘化し大人でも足を取られたり滑ったりするほどで,歩行すらままならない(写真3).

周辺の村での対策も参考にし,設置・撤去が人力で可能なコンクリートパネルの作成を支援することとした.材料代の負担と,村の人々が組織的に施工できるように技術支援をした(写真4).
雨季にはパネルが設置され,歩行が容易になった(写真5).子供を一人で学校に行かせることができ家業に時間を割くことができた,助産士が来てくれるようになった,市場まで行ける回数が増えたなど,村の人々の生計向上に効果があったようである.

乾季には,パネルを端に寄せ車両の通行幅を確保している(写真6).一枚40 kg程度のパネルを約2,000枚作成し1.3 kmの範囲に設置したが,村人が家庭ごとに担当範囲を決めて,撤去作業を行った.雨季が来れば,同じ体制で設置される予定である.

筆者にとって,堤防天端での道路整備は初めての経験であった.連携先NPOの事業地であり,この事業を通して新たな実績を得ることができた.異分野で活動するNPOとの連携も,いい経験になった.社会基盤整備を担う建設系NPOにとって,社会科学系など他分野のNPOとの協働の機会は多いのではないかと思う.
持続可能な開発(SDGs)が認知され,産官学が各々その目標の達成に向けた活動をしている.上記で紹介したようなインフラ整備は,「新しい公共」のNPOだからこそ,実施することができた事業のように思える.よそ者の国際開発NPOではあるが,相手国の持続的な発展に向けて事業の担い手を現地化するなどして,積極的に役割を果たすことができると手応えを感じている.

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第2回 花畑運河は荒川放水路の土木遺産

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シビルNPO連携プラットフォーム 理事
(日本河川協会 理事)三井 元子


はじめに
花畑川は、東京足立区の北東部にある中川と綾瀬川をつなぐ運河である。荒川放水路が開通すると舟運の渋滞が起こる事が予想されたため、昭和6年に開削された。開削当時の景観を残しているこの運河が、今、壊わされようとしている。花畑川を荒川放水路の土木遺産として推薦したい。

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1.なぜ運河開削が決まったか?
明治43年に東京・埼玉大水害があり、荒川の破堤箇所数十か所、死者369名、被災者150万人、流失・全壊家屋1679戸、浸水家屋27万戸、被害総額は国民総所得の約4.2%であった。そこで政府は、荒川放水路開削を決意。明治44年から19年の歳月をかけ、昭和5年に幅500mの荒川放水路が完成する。
ところが東京都心部への貨物の重要な舟運路であった中川は、放水路と並行して、大きく迂回して、木下川水門または小名木川水門を通過しなければならなくなり、閘門(ロックゲイト)で船が渋滞することが懸念された。そこで、大正10年に花畑運河開削が決定される。中川と綾瀬川をつなぐ運河を開削すれば、綾瀬川からは、放水路を横切って墨田川水門に入れることから、「約4里(16km)の短縮になるばかりか、屈曲が少ないので、時間と労力が省ける。船だけのためではなく、市場における物資供給の円滑化となり、地方への輸出入の運輸が敏活になると共に、陸上物資の停滞を緩和する他、経済上に及ぼす利益は少なくないと認め」花畑運河開削を計画した。

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そして、昭和6年、幅33.6m延長1,485mの運河が完成した。葛西用水は伏越で運河を横断させ、中川口には逆流を防ぐため水門をもうける形にした。工費は、36万7650円。(現在の約3億5千万円).東京府の大正10年の調査によると、東京市における貨物の集散量全体の3割は水運により集積され、市内河川・運河で取り扱われたものは年1,800万tに達していたという。
中川舟運は、ほとんどすべてが東京への輸出入で、花畑川では、1年間に下り貨物42,000t、米穀、醤油、粗砕、縄莚類。上り貨物 8,000t、雑貨、木材、石炭、豆粕、他に人糞尿40万荷。これを運搬する船は日に212艘もあった。

<参考文献>
(※「日本土木史 大正元年〜昭和」:日本土木学会)
(※「荒川下流史」:(財)リバーフロント整備センター)
(※「新修足立区史」下巻:足立区)
(※「東京府史 行政編」 第4巻:東京都)
(※『都史資料集成」第7巻◎震災復興期の東京A』)

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2.国の「都市計画法」制定後、関東で初めて完成した開削運河
日本土木史に拠れば 「大正8年(1919)の都市計画法制定後、全国的にも都市計画事業として新たに開削された運河は少なく、大阪の城北運河、名古屋の中川運河、富山の富岩運河など、きわめて少ない例であるといえる。」とある。

令和1年になって足立区は、川幅を半分の17mにして、両岸に8mの河津桜並木を作る計画を進めようとしている。
戦後、陸運が活発になり、たい肥も化学肥料の台頭によって使われなくなり、舟運は昭和31年頃に姿を消した。が、現代は、水面の価値に対する理解が深まり、かつて蓋掛けした川を開いたり、観光のための舟運を見直したりしている時代である。

今も開削当初の運河の景観が残っている花畑川は、歴史的にも経済史的にも、極めて貴重な河川である。時代に逆行する改修はやめるべきだ。水質が良くなり、魚影もみえるようになった花畑川を一度、ぜひ散策してみてほしい。

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