2020年07月01日

”検体採取用綿棒”すら足りなくて大丈夫か

PCR検査「1日2万件体制」を実現したとの厚労省発表に医療現場から疑問の声

シビルNPO連携プラットフォーム 理事
元金沢大学大学院教授 世古 一穂
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新型コロナウイルスの感染の有無を調べるPCR検査について厚生労働省は5月15日、国内における1日当たりの実施可能数が約2万2000件と発表した。
安倍晋三首相が4月6日、その時点で1日あたり約1万2800件とされていた実施可能数をほぼ2倍にあたる1日2万件まで拡充するとした目標が数字上では発表されている。
だが実態はどうか。この「目標1日2万件」に対しては人員のほか防護服や医療用マスクなどの不足を指摘する声が当初からあり、表向きの数字が発表された。
現在も有効性を疑問視する声が現場からは上がっている。最大のネックとなるのがPCR検査用の「鼻咽頭ぬぐいよう綿棒」の不足というのだ!
実際にPCR検査を行なう某大学病院の検査室で働く40代の臨床検査技師は次のように説明する。
「検査では1検査につき1本の綿棒が必要。1日に全国で2万件の検査を行なうには月に約60万本が必要になりますが、業者によればPCR検査用の綿棒と容器のセット(主にイタリア製)は輸入しており日本では生産していないと思われます」
同じく大学病院で働く50代のベテラン臨床検査技師も「PCR検査が保険医療報酬になかなか認められないような状況では病院内に技術や機器が定着するわけもない」と普及に懐疑的。むしろコロナウイルスの検査も早期にインフルエン新型コロナウイルスの感染の有無を調べるPCR検査について厚生労働省は5月15日、国内における1日当たりの実施可能数が約2万2000件と発表した。
安倍晋三首相が4月6日、その時点で1日あたり約1万2800件とされていた実施可能数をほぼ2倍にあたる1日2万件まで拡充するとした目標が数字上では発表されている。
だが実態はどうか。この「目標1日2万件」に対しては人員のほか防護服や医療用マスクなどの不足を指摘する声が当初からあり、表向きの数字が発表された。
現在も有効性を疑問視する声が現場からは上がっている。最大のネックとなるのがPCR検査用の「鼻咽頭ぬぐいよう綿棒」の不足というのだ!
実際にPCR検査を行なう某大学病院の検査室で働く40代の臨床検査技師は次のように説明する。
「検査では1検査につき1本の綿棒が必要。1日に全国で2万件の検査を行なうには月に約60万本が必要になりますが、業者によればPCR検査用の綿棒と容器のセット(主にイタリア製)は輸入しており日本では生産していないと思われます」
同じく大学病院で働く50代のベテラン臨床検査技師も「PCR検査が保険医療報酬になかなか認められないような状況では病院内に技術や機器が定着するわけもない」と普及に懐疑的。むしろコロナウイルスの検査も早期にインフルエン新型コロナウイルスの感染の有無を調べるPCR検査について厚生労働省は5月15日、国内における1日当たりの実施可能数が約2万2000件と発表した。
安倍晋三首相が4月6日、その時点で1日あたり約1万2800件とされていた実施可能数をほぼ2倍にあたる1日2万件まで拡充するとした目標が数字上では発表されている。
だが実態はどうか。この「目標1日2万件」に対しては人員のほか防護服や医療用マスクなどの不足を指摘する声が当初からあり、表向きの数字が発表された。
現在も有効性を疑問視する声が現場からは上がっている。最大のネックとなるのがPCR検査用の「鼻咽頭ぬぐいよう綿棒」の不足というのだ!
実際にPCR検査を行なう某大学病院の検査室で働く40代の臨床検査技師は次のように説明する。
「検査では1検査につき1本の綿棒が必要。1日に全国で2万件の検査を行なうには月に約60万本が必要になりますが、業者によればPCR検査用の綿棒と容器のセット(主にイタリア製)は輸入しており日本では生産していないと思われます」
同じく大学病院で働く50代のベテラン臨床検査技師も「PCR検査が保険医療報酬になかなか認められないような状況では病院内に技術や機器が定着するわけもない」と普及に懐疑的。むしろコロナウイルスの検査も早期にインフルエンザと同様の抗原検査に移行させ、町の病院で行なえるようにすべきだと説く。
厚労省の専門委員会も先にPCR検査が日本で拡充されなかった理由として、保健所の業務過多や機材のほか「民間検査会社などに検体を運ぶための特殊な輸送機材」の不足などを挙げた。だが「綿棒」という検体採取に不可欠なものすら自給できない日本の状況まで、同委員会では把握していたのか? コロナ対策のみならず、従来の社会の歪みを是正し、最低限、生命に関わるものは自給できる社会の構築へと地域や企業が向かうチャンスとして今を捉えるべきではなかろうか。

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土木インタープリター

CNCP 常務理事 土木学会連携部門長
土木学会 教育企画・人材育成委員会 シビルNPO推進小委員会 委員長
メトロ設計梶@技術顧問
田中 努
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「土木学会連携部門」では、土木学会のシビルNPO推進小委員会と一体になって、「土木と市民社会をつなぐ」の具体化をめざし、フォーラムの設立準備と、Facebookで同様の活動をしている人たちとつながる試みをしています。今回は、この活動の1つ「土木インタープリター」について紹介します。
1.土木技術者とインタープリター                           
「土木インタープリター」は、辞書的には、「土木を市民に解説する人」という意味になります。@行政の技術者や建設コンサルタントが市民に事業の説明をしたり、A建設技術者が市民に工事現場を案内したりする場合、分かり易い言葉やツールを工夫した説明で、市民に理解してもらえる人です。
このような場面は、他にもあります。例えば、Bインフラツーリズム、C小中高大学生向けの出前講座・イベント、DNPO等市民団体の会合等で、インフラや防災・環境整備に関する問題を扱う場面、E自治体が行う市民協働事業など。
伝えたい内容は、その事業が如何に生活の快適さや経済効率や防災や環境に役立つのか、何故こういう考え・構造・施工・方法なるのか、如何に調査・研究を重ね工夫を凝らして難しいことを可能にしているかなど。土木の専門的な部分に踏み込んだ内容ですから、相手の市民の基礎知識や理解力や関心事を分かっていないと、伝わりません。
しかし、今は、それぞれの場面で、担当した土木技術者が、個々に自己流の工夫と努力で、上手くいったり行かなかったりでしょう。上手い説明ができ、優秀な「土木インタープリター」だなと思う人が居ますが、そうでない人もいます。

できる人とできない人、この差は何でしょう。何を学べば優秀な「土木インタープリター」になれるのでしょう。それを調査・検討しています。
2.インタープリターとその回り
「インタープリター」が行うことを「インタープリテーション」と言いますが、「総合技芸」であるとも言われます。自然科学や教育をはじめ、デザイン、アート、歴史、民族など、さまざまな分野に見られるそうです。さらにインタープリターの回りに、コミュニケーター、ファシリテーター、ガイドなど似たものがあります。何が同じで、何が違うのでしょう。少し紹介します。

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3.インタープリター                
日本で最も古く広く活動している「インタープリター」は、環境省系の、自然公園やミュージアムなどで行われている、参加者の楽しさや体験を重視した教育的なコミュニケートをする人たちのようです。
1980年代後半に日本のビジターセンターやネイチャーセンターを先駆的に運営していた人たちが創っていた「ネイチャーセンター研究会」が中心になり、環境教育に関する学会やフォーラムでインタープリテーションの研究集会の開催、ニュースレターの発行等をしていましたが、1994 年に「日本インタープリテーション協会」が作られ、インタープリター・トレーニング・セミナー(自然教育研究センターと共同)の開催やインタープリテーションに関する種々のワークショップを開催しています。

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4.科学技術インタープリター                              
文科省系で、東京大学と北海道大学と早稲田大学が協働で、2005〜2007年に科学技術振興調整費を得た活動が続いています。
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東京大学の「科学技術インタープリター養成プログラム」は、在学中の主に大学院生を対象とした毎年10名前後の少数精鋭の副専攻プログラムです。科学コミュニケーションの最重要課題は、難しい専門知識を分かりやすく、かつ親しみやすく伝える方法論のみでなく、「社会の中に科学がある」という共通認識のもとで広い視野で科学技術を捉え、問題点を掘り下げて探ることのできる人材の育成を目標としているとのことです。

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北海道大学の「科学技術コミュニケーター養成プログラム」は、科学技術の専門家と一般市民との間で、科学技術をめぐる社会的諸課題について双方向的なコミュニケーションを確立する人材を養成するものです。
科学技術コミュニケーターが修得すべき理論とスキルについて体系的にカリキュラムが組まれ、実習や演習を通して、サイエンスライティングの基礎、映像メディアの作り方、サイエンスイベントの実施など実践的なスキルも学ぶことになっています。

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早稲田大学の「ジャーナリズムコース」は、自立的な批判性を持つ科学ジャーナリストの育成を目指して、2005年度に始まりました。2010年度に日本初のジャーナリズム大学院に統合され、「科学技術ジャーナリズム・プログラム」という専門認定プログラムとして継続しています。
講義や演習では批判的思考力を養うことを重視して方法論科目を充実させており、ジャーナリズムやメディアの構造・歴史・理論などを学び、他学部の協力も得て政治・国際・経済・社会・文化・科学技術の各分野の専門知に深く根ざした講義を展開しています。

5.海洋インタープリター
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国際海洋自然観察員協会という組織が、海洋の自然体験活動を通じて、広く自然を大切にするリーダーを養成し、プロとして社会的に自立できる、海洋の自然をガイドしエコツアーを行う人たちを育てようと、2006年から「インタープリター入門講座」を開催しています。

6.ファシリテーター
ファシリテーターとは、ファシリテーションの役割を担う人で、会議で言えば進行役です。ファシリテーションとは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすることです。集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味しています。
これは、我々CNCPでも2018年から養成講座を開講し、初級・中級・上級・コーディネーターと充実したカリキュラムを用意していますね。
ファシリテーションの歴史は、マネジメントと同様、世界中で発生したと私は思いますが、「日本ファシリテーション協会(FAJ)」のHPによると、アメリカで、1960年代の体験学習を通じてメンバーやグループの成長を働きかける流れ、同時期に始まったコミュニティの問題を話し合う技法として体系化された流れ、また1970年代の会議を効率的に進める方法として開発された流れ、さらに日本では「世田谷まちづくり活動」のように独自に進化した流れがあるとされます。

7.ガイド
ガイドも、町や施設の歴史や特徴、見どころを来訪者に解説し、その情報を付加することにより、観光旅行をより面白く楽しくする役割で、「インタープリター」に通じるものがあります。
例えば「京都市ビジターズホスト」。これは,京都市・宇治市・大津市に関する奥深い知識と専門性を備えた通訳ガイドを育成し、通訳ガイドのスペシャリストとして活躍していただくことで、外国人観光客の京都市近郊への周遊や長期滞在の促進、外国人観光客の満足度の向上、旺盛な消費意欲の取込み強化を図るものです。
「インフラツーリズム」のガイドは、「土木インタープリター」に近い気がします。「インフラツーリズム」とは、橋・ダム・港などのインフラを地域固有の財産と位置づけて、観光を通じた地域振興に資するインフラ活用の取組です。一般の観光との違いは、建設中のダムや監査廊など、普段なかなか入る機会のない施設内部を公開・開放して、見て・聞いて・触って体感する「非日常」を楽しめるイベントです。国交省や自治体、インフラ事業者の他、民間旅行会社も企画し、人気があります。

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8.土木学会でも
土木学会では「土木偉人かるた」を作成し、販売しています。土木偉人を題材に、かるたの形式にした「土木史」の入門資料で、楽しく遊びながら、土木偉人が行ってきた功績と土木事業への熱い思いを知って貰おうという狙いです。学校での土木史教育の副読書として、また土木系サークルや家庭の教育ツールとして、土木系学科を専攻する学生・先生・土木偉人に関心がある方なら、誰でも楽しく学ぶことができそうです。

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また、土木学会では、「ポケドボ」カードゲームというのも作成し、販売しています。対戦相手と戦うのではなく、自分の「まち」のインフラを事前対策や応急復旧で災害から守るゲームです。簡単でかつ楽しみながら土木のことを知ってもらえるようなルールとゲームの流れになっていて、私の孫たちも面白がっていました。

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さらに土木学会では「実験で学ぶ 土砂災害」という本を出版しています。この本は「土砂災害の起こり方」や「土砂災害を防ぐ方法」を模型実験見せて学んでもらうようになっています。土砂災害が起きるメカニズム、被害予測と非難方法などを、専門的な知識を基に、小学生高学年・中学生にも理解しやすいように、イラストや模型を使ってわかりやすく説明しています。
これらも、土木技術者だけでなく、「土木インタープリター」が介在しないと、子供や市民に、土木の役割が面白く伝わらないでしょう。

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第 6 回 時を紡ぐ美しき隧道

滋賀の観光・イベント・情報サイト
「滋賀ガイド!」「チェキポン」「しがトコ」所属フォトライター
雲林院 ゆみ
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思えば子供の頃から、トンネルを通るとワクワクしていた。ごく普通の一般的な道路トンネルだったが、秘密基地のような、また、どこかへワープするような、漠然とではあるが何か「特別」なもののように感じていた。
大人になって、そんなワクワクも忘れかけていた頃、車で滋賀から京都へ抜ける山林の鬱蒼とした道を走行していた時、道の右奥になぜかそこだけ陽が射した、鮮やかな緑の一角が見えた。走行中のためそれは一瞬だったが、その明るい場所の正体が何なのか知りたく、すぐにいま来た道を引き返した。車を降り、薄暗い草むらを光の方向へと歩く。―――息をのんだ。“トンネル”が目の前に現れたのだ。藪を分け入ればすぐに光の正体に辿り着けるという考えを覆されただけでなく、予想外にもトンネルが現れたのだ。(写真1・2)
忘れていた子供の頃のあの感覚が、一気に溢れ出すように蘇った。
しかしそれは、私の知っているコンクリートの“トンネル”ではなかった。緻密に積み上げられた煉瓦、利便性のためだけならば不要であろう装飾的なポータル、使われなくなってどれほどの年月が経ったのだろうか、植物を纏ったその姿を見た時、私は初めて隧道に対し「美しい!」という感覚を抱いた。
圧倒的な存在に、しばし立ち尽くす。その時の私は、きっと目を見開いていたに違いない。そして吸い込まれるように湿った坑内へ入る。坑内は真っ暗なはずだが、好奇心で瞳孔が開いていたのだろうか(笑)、素掘りの痕をまじまじと見ながら歩いた記憶がある。その暗闇をぬけると、緑に覆われたかつての車道に、陽が燦燦と降り注いでいた。数分前に視界の端で捕らえた、あの鮮やかな緑の一角の正体だ。
「奥山田隧道」。これこそが以降、私が隧道に夢中になると同時に“廃隧道”の存在を知るキッカケとなった。

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私の住む滋賀にも明治や大正時代の古い隧道・鉄道隧道が多く、幾つかは今も現役隧道として残っている。それらを探索するうちに、滋賀の隧道に於いて「村田鶴」という名前を目にする事になる。大正から昭和にかけ、県の隧道設計に携わった土木技師で、谷坂隧道・佐和山隧道・横山隧道・観音坂隧道・湖北隧道などを手掛けた。土木遺産にも指定されているそれらは、時々その姿を見るためだけに出かけたくなるほど美しい。(写真3〜8)
隧道探索では、扁額やポータル全体を一通り眺めたあと、中へ入る。途中何度も振り返り、坑内から見える「外」の景色を楽しむ。そして坑内の煉瓦や石をまじまじと見ながら通り抜ける。その後も隧道を2、3回往復し、登れる所は登ってみる・・・不審な動きに見えなくもないので、少し周りを気にしながら(笑)。旧道や埋もれた廃隧道などは、地図を頼りに行ったり来たり・・・隧道に辿り着くまでの道のりも楽しみのひとつで、その時点から既にワクワクが始まっている。

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しかし「隧道」というカテゴリーは、まだまだ私の周りではマイナー分野で、“隧道”と言ってもまず通じない。それで“トンネル”と言い換えると、高確率で「え〜。心霊スポットが好きなん?」と返ってくる。やはり一番に「トンネル=怖い」というイメージなのだろうか。ことに廃隧道ともなれば・・。私は1人で探索に出るのが特に楽しくて好きなのだけれど、「オバケ怖くないの?」と聞かれる事が多い。今まで隧道に対し「キレイ!かっこいい!神秘的!」と目を輝かせる事はあっても、怖いと思った事はない。正確には「霊的に」怖いと思った事はない。ただ、百数十年も在り続ける姿に畏怖の念・畏敬の念という意味で“畏れる”事は、しばしば。
それにしてもなぜ隧道に惹かれるのか。しかも古い隧道に。
これまで峠を苦労して越え、時間をかけて谷を迂回していた場所が便利に行き来できる様になった事に喜び、かつては人々が行き交い栄えていたであろうその場所も、新しいトンネルや道路が出来たとたん、人の気配はなくなる。ひっそりと佇む真っ暗な穴は恐れられ、時に忌み嫌われ、やがて忘れ去られる。そのような背景や、長く時の流れを背負ってきた廃隧道は、とても力強く美しいものへと「成し遂げた」ように感じる。
「廃」は「死」ではない。・・・と、私は思う。それを見る者に美しい、素晴らしい、等の感情さえも与えてくれる。見る人によっては怖かったり、悲しかったり・・・。「廃」の物に対して何かを感じ、心が動くのは、むしろ今もなお「生き続けている」からなのかも知れない。私はそこに「廃の美」をも感じる。
私は単なる「隧道好き」で、専門的な知識も無いけれど、重機の無い(または充分ではない)時代に山を掘削し、土を運び出し、切り石や煉瓦を運び・・・その労力や技術に、ただただ圧倒される。これまで探索した中でも印象的だったのは明治18年に穿たれた旧長野隧道(三重県)。廃隧道ではあるが、約140年経った今もその姿はとても美しく、堂々としている。(写真9・10)

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古い隧道に見られる“利便性のためだけならば不要であろう装飾”には、念願だった隧道への思いや敬意、喜び等が込められているようで、現代のトンネルとは位置づけが少し違うのも興味が湧く一因なのかも知れない。
とは言え隧道の、トンネルの、どこが好きなのか、何に惹かれるのか。考えたこともあったが的確な答えは出ないままだ。理屈ではなく心がワクワクする。心の赴くまま、興味が湧くまま、瞳孔の開くまま(笑)、また探索へと向かおう。
好奇心が原動力!

●私の「隧道」紹介サイトです!
1.三重県「長野隧道」探索日記(Facebook)https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=854503321548462&id=100009664055757
2.「滋賀の隧道」動画“くものすけ副隊長”https://www.webaminchu.jp/news/?creator=kumonosuke-vice-president
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土木インタープリター

CNCP 常務理事 土木学会連携部門長
土木学会 教育企画・人材育成委員会 シビルNPO推進小委員会 委員長
メトロ設計梶@技術顧問
田中 努
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「土木学会連携部門」では、土木学会のシビルNPO推進小委員会と一体になって、「土木と市民社会をつなぐ」の具体化をめざし、フォーラムの設立準備と、Facebookで同様の活動をしている人たちとつながる試みをしています。今回は、この活動の1つ「土木インタープリター」について紹介します。
1.土木技術者とインタープリター                           
「土木インタープリター」は、辞書的には、「土木を市民に解説する人」という意味になります。@行政の技術者や建設コンサルタントが市民に事業の説明をしたり、A建設技術者が市民に工事現場を案内したりする場合、分かり易い言葉やツールを工夫した説明で、市民に理解してもらえる人です。
このような場面は、他にもあります。例えば、Bインフラツーリズム、C小中高大学生向けの出前講座・イベント、DNPO等市民団体の会合等で、インフラや防災・環境整備に関する問題を扱う場面、E自治体が行う市民協働事業など。
伝えたい内容は、その事業が如何に生活の快適さや経済効率や防災や環境に役立つのか、何故こういう考え・構造・施工・方法なるのか、如何に調査・研究を重ね工夫を凝らして難しいことを可能にしているかなど。土木の専門的な部分に踏み込んだ内容ですから、相手の市民の基礎知識や理解力や関心事を分かっていないと、伝わりません。
しかし、今は、それぞれの場面で、担当した土木技術者が、個々に自己流の工夫と努力で、上手くいったり行かなかったりでしょう。上手い説明ができ、優秀な「土木インタープリター」だなと思う人が居ますが、そうでない人もいます。

できる人とできない人、この差は何でしょう。何を学べば優秀な「土木インタープリター」になれるのでしょう。それを調査・検討しています。
2.インタープリターとその回り
「インタープリター」が行うことを「インタープリテーション」と言いますが、「総合技芸」であるとも言われます。自然科学や教育をはじめ、デザイン、アート、歴史、民族など、さまざまな分野に見られるそうです。さらにインタープリターの回りに、コミュニケーター、ファシリテーター、ガイドなど似たものがあります。何が同じで、何が違うのでしょう。少し紹介します。

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3.インタープリター                
日本で最も古く広く活動している「インタープリター」は、環境省系の、自然公園やミュージアムなどで行われている、参加者の楽しさや体験を重視した教育的なコミュニケートをする人たちのようです。
1980年代後半に日本のビジターセンターやネイチャーセンターを先駆的に運営していた人たちが創っていた「ネイチャーセンター研究会」が中心になり、環境教育に関する学会やフォーラムでインタープリテーションの研究集会の開催、ニュースレターの発行等をしていましたが、1994 年に「日本インタープリテーション協会」が作られ、インタープリター・トレーニング・セミナー(自然教育研究センターと共同)の開催やインタープリテーションに関する種々のワークショップを開催しています。

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4.科学技術インタープリター                              
文科省系で、東京大学と北海道大学と早稲田大学が協働で、2005〜2007年に科学技術振興調整費を得た活動が続いています。
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東京大学の「科学技術インタープリター養成プログラム」は、在学中の主に大学院生を対象とした毎年10名前後の少数精鋭の副専攻プログラムです。科学コミュニケーションの最重要課題は、難しい専門知識を分かりやすく、かつ親しみやすく伝える方法論のみでなく、「社会の中に科学がある」という共通認識のもとで広い視野で科学技術を捉え、問題点を掘り下げて探ることのできる人材の育成を目標としているとのことです。

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北海道大学の「科学技術コミュニケーター養成プログラム」は、科学技術の専門家と一般市民との間で、科学技術をめぐる社会的諸課題について双方向的なコミュニケーションを確立する人材を養成するものです。
科学技術コミュニケーターが修得すべき理論とスキルについて体系的にカリキュラムが組まれ、実習や演習を通して、サイエンスライティングの基礎、映像メディアの作り方、サイエンスイベントの実施など実践的なスキルも学ぶことになっています。

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早稲田大学の「ジャーナリズムコース」は、自立的な批判性を持つ科学ジャーナリストの育成を目指して、2005年度に始まりました。2010年度に日本初のジャーナリズム大学院に統合され、「科学技術ジャーナリズム・プログラム」という専門認定プログラムとして継続しています。
講義や演習では批判的思考力を養うことを重視して方法論科目を充実させており、ジャーナリズムやメディアの構造・歴史・理論などを学び、他学部の協力も得て政治・国際・経済・社会・文化・科学技術の各分野の専門知に深く根ざした講義を展開しています。

5.海洋インタープリター
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国際海洋自然観察員協会という組織が、海洋の自然体験活動を通じて、広く自然を大切にするリーダーを養成し、プロとして社会的に自立できる、海洋の自然をガイドしエコツアーを行う人たちを育てようと、2006年から「インタープリター入門講座」を開催しています。

6.ファシリテーター
ファシリテーターとは、ファシリテーションの役割を担う人で、会議で言えば進行役です。ファシリテーションとは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすることです。集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味しています。
これは、我々CNCPでも2018年から養成講座を開講し、初級・中級・上級・コーディネーターと充実したカリキュラムを用意していますね。
ファシリテーションの歴史は、マネジメントと同様、世界中で発生したと私は思いますが、「日本ファシリテーション協会(FAJ)」のHPによると、アメリカで、1960年代の体験学習を通じてメンバーやグループの成長を働きかける流れ、同時期に始まったコミュニティの問題を話し合う技法として体系化された流れ、また1970年代の会議を効率的に進める方法として開発された流れ、さらに日本では「世田谷まちづくり活動」のように独自に進化した流れがあるとされます。

7.ガイド
ガイドも、町や施設の歴史や特徴、見どころを来訪者に解説し、その情報を付加することにより、観光旅行をより面白く楽しくする役割で、「インタープリター」に通じるものがあります。
例えば「京都市ビジターズホスト」。これは,京都市・宇治市・大津市に関する奥深い知識と専門性を備えた通訳ガイドを育成し、通訳ガイドのスペシャリストとして活躍していただくことで、外国人観光客の京都市近郊への周遊や長期滞在の促進、外国人観光客の満足度の向上、旺盛な消費意欲の取込み強化を図るものです。
「インフラツーリズム」のガイドは、「土木インタープリター」に近い気がします。「インフラツーリズム」とは、橋・ダム・港などのインフラを地域固有の財産と位置づけて、観光を通じた地域振興に資するインフラ活用の取組です。一般の観光との違いは、建設中のダムや監査廊など、普段なかなか入る機会のない施設内部を公開・開放して、見て・聞いて・触って体感する「非日常」を楽しめるイベントです。国交省や自治体、インフラ事業者の他、民間旅行会社も企画し、人気があります。

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8.土木学会でも
土木学会では「土木偉人かるた」を作成し、販売しています。土木偉人を題材に、かるたの形式にした「土木史」の入門資料で、楽しく遊びながら、土木偉人が行ってきた功績と土木事業への熱い思いを知って貰おうという狙いです。学校での土木史教育の副読書として、また土木系サークルや家庭の教育ツールとして、土木系学科を専攻する学生・先生・土木偉人に関心がある方なら、誰でも楽しく学ぶことができそうです。

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また、土木学会では、「ポケドボ」カードゲームというのも作成し、販売しています。対戦相手と戦うのではなく、自分の「まち」のインフラを事前対策や応急復旧で災害から守るゲームです。簡単でかつ楽しみながら土木のことを知ってもらえるようなルールとゲームの流れになっていて、私の孫たちも面白がっていました。

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さらに土木学会では「実験で学ぶ 土砂災害」という本を出版しています。この本は「土砂災害の起こり方」や「土砂災害を防ぐ方法」を模型実験見せて学んでもらうようになっています。土砂災害が起きるメカニズム、被害予測と非難方法などを、専門的な知識を基に、小学生高学年・中学生にも理解しやすいように、イラストや模型を使ってわかりやすく説明しています。
これらも、土木技術者だけでなく、「土木インタープリター」が介在しないと、子供や市民に、土木の役割が面白く伝わらないでしょう。

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コロナ過で感じた日本の脆弱さ―そしてこれからの土木

シビルNPO連携プラットフォーム 代表理事
山本 卓朗
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コロナ非常事態宣言が避けられなくなった3月末から私も引きこもりの生活が始まった。以来3か月、連日報道されるあらゆるコロナ情報を自分なりに分析して、変革を求められるこれからの生活に思いをはせながら過ごしてきた。
宿命的に自然災害の猛威にさらされている私たちは、阪神淡路大震災や東日本大震災と2度にわたって“想定外”を経験し、いまや首都直下や東南海での巨大地震も現実味を帯びてきた。こういう事態になっても多くの日本人はその対策を政府や専門家に任せて、起こった時は仕方がないという感じで日常生活をおくっているようだ。しかし3度目の想定外は、思いもしない方向からやってきた。子供の頃に結核が死病でなくなったし、自分の人生でパンデミックを経験することになるなんて想像もしなかったから、心の備えが全く出来ていないことに気付かされた。という次第で、防戦一方に見えるコロナ対策を不安に駆られながら見ているうちに、改めて日本のそして日本人の脆弱さを思い知ることとなった。

●市民力・民間力の弱さ―“お上”に頼りすぎる日本人
明治維新以来今日に至るまで、日本は強力な官僚機構を軸にして発展してきたことは明らかである。狭い国土に1億以上の人口を抱える小さな日本が世界に伍して頑張る一つの姿であり、それが悪いとは思わない。しかし官僚機構にも多くの弱点があり(例えば縦割りの権力構造や複雑な手続きなど)、今回のような危機管理に際してマイナスに作用することは、PCR検査騒ぎでもはっきりしている。あえて市民力・民間力と書いてみたが、PCR検査サポートは専門的過ぎて市民力・災害ボランティアの流れではまず無理かなと考えた。しかし医師会や大学医学関係、民間の医療機関が結束すれば、これを民間力として、もっと早く保健所中心主義から脱出できたのではと思ったが、遺憾ながら動きが遅すぎた。まずは“お上”に頼る、陳情するという姿は随所にみられ、“お上”もそれに応えなければ・・・とする上から目線の施策がしばしば登場する。2枚のマスク騒ぎも根っこのところは、“お上”に頼りすぎる日本社会が生んだ珍奇な出来事ではなかったかと思う。蛇足ながらマスクについて一言。子供の頃は、何でも自分で作るのが当たり前だったから、風邪に備えて持っているマスクが枯渇すれば、手ぬぐいで作ろうと考えていた。不織布マスクも煮沸して再利用しているので、未だ買ったことが無い。マスクに関して政府のなすべきは、命がけで任務を果たしている医療関係や福祉施設向けに特化すべきだったということであろう。

●すべてのスピードを阻害しているコンプライアンス・思考停止社会
10万円給付金の申請手続きと振込までの手続きをめぐって、図らずもお役所仕事の煩雑な仕組みを実感することとなった。慣れている人にはそれほど複雑ではないが、便利がうたい文句のマイナンバーの使い勝手が悪かったり、普通は自宅にコピー機などない人たちに、申請の免許証などのコピー添付が必要だったり、申請者の不満が高まっている。ことお金に関わる話だから、絶対にミスは許されないという基本原則が立ちはだかるので、どう簡素化すればいいか、お役所も頭が痛いと思う。実は情報化社会になって、様々な仕組みがものすごく便利になった半面、情報管理という面で、がんじがらめの安全対策が必要になっている。加えてコンプライアンス:法令遵守が過度に働くから、ミスを犯さないためのマニュアル強化や徹底した教育がなされている。一番の問題は、ネット社会で、中傷・誹謗が社会問題化するほどエスカレートしていることであろう。他者を攻撃し非難することで、自己の立場を強くしようとするのは、今に始まったことではないが、ネットで炎上するレベルになると、大きな組織・企業ほど防衛策を強固にせざるを得なくなる。過度のコンプライアンスが思考停止社会を生み出し、スピード感のある施策がどんどん減少することとなる。パンデミックにおいては、その結果、死者の激増という最悪の答えが待っていることになる。

●パンデミックとこれからの土木
先日、土木学会から「パンデミックの時代に土木の世界がどう対応していくか」について検討会を始めたいとのことで、スタートに当たって意見を求められた。今回のコロナについて様々な事を考えてきたが、土木の世界との関わりを意識したことはなかったので、とても新鮮な問いかけであった。
皆さんからは、コロナより邪悪なウィルスの発生も予想するならば、長期的に社会生活の在り方も大きく変わることを考えなければならない。自然災害と防災の面では、土木世界は深くかかわってきたが、パンデミックも自然災害の一つとして、防疫を考慮したインフラを加える必要がある等の意見が出された。具体的には、都市計画や地域計画、交通計画などに、防疫の仕組み付加していく。そしてCNCPとしては、「土木と市民社会をつなぐ」議論の中でも、新型ウィルスや防疫、そして新しい生活について取り上げていく必要を感じたところである。

<閑話休題>世界と比較してみよう。
 添付の表は世界の感染状況の国別比較である。日本の感染者数と死亡者数の少ないことは、かねてから海外でも議論になっていて、データを過少に発表しているのではないかと不信を持たれたこともあった。京都大学の山中教授がこのよくわからない原因を「ファクターX」と呼んでから、冷静な議論がなされるようになった。しかしインフルエンザウィルスが年ごとに変異していくことは経験済みであり、次なるコロナがアジアそして日本に脅威となる悪玉コロナに変異しないとは言えない。欧米と比較して圧倒的に小規模で済んでいる今の状況は、我が国にとってまことに幸運であり、この与えられた余裕時間を使って次なる悪玉コロナに万全の備えをしなければならないとおもう。

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高速道路上で停止させる行為を「危険運転」に法改正

(特非)シビルNPO連携プラットフォーム 法人正会員
特定非営利活動法人 道路の安全性向上協議会
専務理事 吉川 良一
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1.東名高速道路「あおり運転」事故判決
CNCP通信Vol57(平成31年1月8日発行)において、次のとおり意見を述べた。
「2017年6月5日に起きた東名高速道路「あおり運転」事故で、横浜地裁は12月14日、自動車運転死傷行為処罰法で定められた危険運転致死傷罪の成立を認め、懲役18年の判決を出した。この判決には、全く異議は無いものの、判決理由の中で、高速道路上の停止させる行為が、危険運転には当たらないとするところは、全く間違っており、決して納得できるものではない。」それは、危険運転致死傷罪の「危険運転」が、車を運転していることを要件としていたため、停止させる行為は運転には当たらないとの判断であった。
2.高速道路上での停止は、最も危険な運転
高速道路上で停止することが、いかに危険な行為であるかは、図-1の「2019年NEXCO中日本管内交通死亡事故件数」を見れば分かるように、死亡事故の1/3が対停止車両である。死亡事故の形態では、最大値を占めている。

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3.改正自動車運転死傷行為処罰法の成立
令和2年6月5日、改正自動車運転死傷行為処罰法が成立した。最高刑が懲役20年の危険運転致死傷罪の「危険運転」に、高速道路などで停車するなどの方法で走行中の車を停止または徐行させる行為が追加された。
また、あおり運転については、改正道路交通法の「あおり運転罪」も6月2日に成立した。これは、事故の有無に関係なく、違反者には「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」と一発で免許取り消しの行政処分が行われることとなった。
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コロナ過で感じた日本の脆弱さ―そしてこれからの土木

シビルNPO連携プラットフォーム 代表理事
山本 卓朗
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コロナ非常事態宣言が避けられなくなった3月末から私も引きこもりの生活が始まった。以来3か月、連日報道されるあらゆるコロナ情報を自分なりに分析して、変革を求められるこれからの生活に思いをはせながら過ごしてきた。
宿命的に自然災害の猛威にさらされている私たちは、阪神淡路大震災や東日本大震災と2度にわたって“想定外”を経験し、いまや首都直下や東南海での巨大地震も現実味を帯びてきた。こういう事態になっても多くの日本人はその対策を政府や専門家に任せて、起こった時は仕方がないという感じで日常生活をおくっているようだ。しかし3度目の想定外は、思いもしない方向からやってきた。子供の頃に結核が死病でなくなったし、自分の人生でパンデミックを経験することになるなんて想像もしなかったから、心の備えが全く出来ていないことに気付かされた。という次第で、防戦一方に見えるコロナ対策を不安に駆られながら見ているうちに、改めて日本のそして日本人の脆弱さを思い知ることとなった。

●市民力・民間力の弱さ―“お上”に頼りすぎる日本人
明治維新以来今日に至るまで、日本は強力な官僚機構を軸にして発展してきたことは明らかである。狭い国土に1億以上の人口を抱える小さな日本が世界に伍して頑張る一つの姿であり、それが悪いとは思わない。しかし官僚機構にも多くの弱点があり(例えば縦割りの権力構造や複雑な手続きなど)、今回のような危機管理に際してマイナスに作用することは、PCR検査騒ぎでもはっきりしている。あえて市民力・民間力と書いてみたが、PCR検査サポートは専門的過ぎて市民力・災害ボランティアの流れではまず無理かなと考えた。しかし医師会や大学医学関係、民間の医療機関が結束すれば、これを民間力として、もっと早く保健所中心主義から脱出できたのではと思ったが、遺憾ながら動きが遅すぎた。まずは“お上”に頼る、陳情するという姿は随所にみられ、“お上”もそれに応えなければ・・・とする上から目線の施策がしばしば登場する。2枚のマスク騒ぎも根っこのところは、“お上”に頼りすぎる日本社会が生んだ珍奇な出来事ではなかったかと思う。蛇足ながらマスクについて一言。子供の頃は、何でも自分で作るのが当たり前だったから、風邪に備えて持っているマスクが枯渇すれば、手ぬぐいで作ろうと考えていた。不織布マスクも煮沸して再利用しているので、未だ買ったことが無い。マスクに関して政府のなすべきは、命がけで任務を果たしている医療関係や福祉施設向けに特化すべきだったということであろう。

●すべてのスピードを阻害しているコンプライアンス・思考停止社会
10万円給付金の申請手続きと振込までの手続きをめぐって、図らずもお役所仕事の煩雑な仕組みを実感することとなった。慣れている人にはそれほど複雑ではないが、便利がうたい文句のマイナンバーの使い勝手が悪かったり、普通は自宅にコピー機などない人たちに、申請の免許証などのコピー添付が必要だったり、申請者の不満が高まっている。ことお金に関わる話だから、絶対にミスは許されないという基本原則が立ちはだかるので、どう簡素化すればいいか、お役所も頭が痛いと思う。実は情報化社会になって、様々な仕組みがものすごく便利になった半面、情報管理という面で、がんじがらめの安全対策が必要になっている。加えてコンプライアンス:法令遵守が過度に働くから、ミスを犯さないためのマニュアル強化や徹底した教育がなされている。一番の問題は、ネット社会で、中傷・誹謗が社会問題化するほどエスカレートしていることであろう。他者を攻撃し非難することで、自己の立場を強くしようとするのは、今に始まったことではないが、ネットで炎上するレベルになると、大きな組織・企業ほど防衛策を強固にせざるを得なくなる。過度のコンプライアンスが思考停止社会を生み出し、スピード感のある施策がどんどん減少することとなる。パンデミックにおいては、その結果、死者の激増という最悪の答えが待っていることになる。

●パンデミックとこれからの土木
先日、土木学会から「パンデミックの時代に土木の世界がどう対応していくか」について検討会を始めたいとのことで、スタートに当たって意見を求められた。今回のコロナについて様々な事を考えてきたが、土木の世界との関わりを意識したことはなかったので、とても新鮮な問いかけであった。
皆さんからは、コロナより邪悪なウィルスの発生も予想するならば、長期的に社会生活の在り方も大きく変わることを考えなければならない。自然災害と防災の面では、土木世界は深くかかわってきたが、パンデミックも自然災害の一つとして、防疫を考慮したインフラを加える必要がある等の意見が出された。具体的には、都市計画や地域計画、交通計画などに、防疫の仕組み付加していく。そしてCNCPとしては、「土木と市民社会をつなぐ」議論の中でも、新型ウィルスや防疫、そして新しい生活について取り上げていく必要を感じたところである。

<閑話休題>世界と比較してみよう。
 添付の表は世界の感染状況の国別比較である。日本の感染者数と死亡者数の少ないことは、かねてから海外でも議論になっていて、データを過少に発表しているのではないかと不信を持たれたこともあった。京都大学の山中教授がこのよくわからない原因を「ファクターX」と呼んでから、冷静な議論がなされるようになった。しかしインフルエンザウィルスが年ごとに変異していくことは経験済みであり、次なるコロナがアジアそして日本に脅威となる悪玉コロナに変異しないとは言えない。欧米と比較して圧倒的に小規模で済んでいる今の状況は、我が国にとってまことに幸運であり、この与えられた余裕時間を使って次なる悪玉コロナに万全の備えをしなければならないとおもう。

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”検体採取用綿棒”すら足りなくて大丈夫か

PCR検査「1日2万件体制」を実現したとの厚労省発表に医療現場から疑問の声

シビルNPO連携プラットフォーム 理事
元金沢大学大学院教授 世古 一穂
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新型コロナウイルスの感染の有無を調べるPCR検査について厚生労働省は5月15日、国内における1日当たりの実施可能数が約2万2000件と発表した。
安倍晋三首相が4月6日、その時点で1日あたり約1万2800件とされていた実施可能数をほぼ2倍にあたる1日2万件まで拡充するとした目標が数字上では発表されている。
だが実態はどうか。この「目標1日2万件」に対しては人員のほか防護服や医療用マスクなどの不足を指摘する声が当初からあり、表向きの数字が発表された。
現在も有効性を疑問視する声が現場からは上がっている。最大のネックとなるのがPCR検査用の「鼻咽頭ぬぐいよう綿棒」の不足というのだ!
実際にPCR検査を行なう某大学病院の検査室で働く40代の臨床検査技師は次のように説明する。
「検査では1検査につき1本の綿棒が必要。1日に全国で2万件の検査を行なうには月に約60万本が必要になりますが、業者によればPCR検査用の綿棒と容器のセット(主にイタリア製)は輸入しており日本では生産していないと思われます」
同じく大学病院で働く50代のベテラン臨床検査技師も「PCR検査が保険医療報酬になかなか認められないような状況では病院内に技術や機器が定着するわけもない」と普及に懐疑的。むしろコロナウイルスの検査も早期にインフルエン新型コロナウイルスの感染の有無を調べるPCR検査について厚生労働省は5月15日、国内における1日当たりの実施可能数が約2万2000件と発表した。
安倍晋三首相が4月6日、その時点で1日あたり約1万2800件とされていた実施可能数をほぼ2倍にあたる1日2万件まで拡充するとした目標が数字上では発表されている。
だが実態はどうか。この「目標1日2万件」に対しては人員のほか防護服や医療用マスクなどの不足を指摘する声が当初からあり、表向きの数字が発表された。
現在も有効性を疑問視する声が現場からは上がっている。最大のネックとなるのがPCR検査用の「鼻咽頭ぬぐいよう綿棒」の不足というのだ!
実際にPCR検査を行なう某大学病院の検査室で働く40代の臨床検査技師は次のように説明する。
「検査では1検査につき1本の綿棒が必要。1日に全国で2万件の検査を行なうには月に約60万本が必要になりますが、業者によればPCR検査用の綿棒と容器のセット(主にイタリア製)は輸入しており日本では生産していないと思われます」
同じく大学病院で働く50代のベテラン臨床検査技師も「PCR検査が保険医療報酬になかなか認められないような状況では病院内に技術や機器が定着するわけもない」と普及に懐疑的。むしろコロナウイルスの検査も早期にインフルエン新型コロナウイルスの感染の有無を調べるPCR検査について厚生労働省は5月15日、国内における1日当たりの実施可能数が約2万2000件と発表した。
安倍晋三首相が4月6日、その時点で1日あたり約1万2800件とされていた実施可能数をほぼ2倍にあたる1日2万件まで拡充するとした目標が数字上では発表されている。
だが実態はどうか。この「目標1日2万件」に対しては人員のほか防護服や医療用マスクなどの不足を指摘する声が当初からあり、表向きの数字が発表された。
現在も有効性を疑問視する声が現場からは上がっている。最大のネックとなるのがPCR検査用の「鼻咽頭ぬぐいよう綿棒」の不足というのだ!
実際にPCR検査を行なう某大学病院の検査室で働く40代の臨床検査技師は次のように説明する。
「検査では1検査につき1本の綿棒が必要。1日に全国で2万件の検査を行なうには月に約60万本が必要になりますが、業者によればPCR検査用の綿棒と容器のセット(主にイタリア製)は輸入しており日本では生産していないと思われます」
同じく大学病院で働く50代のベテラン臨床検査技師も「PCR検査が保険医療報酬になかなか認められないような状況では病院内に技術や機器が定着するわけもない」と普及に懐疑的。むしろコロナウイルスの検査も早期にインフルエンザと同様の抗原検査に移行させ、町の病院で行なえるようにすべきだと説く。
厚労省の専門委員会も先にPCR検査が日本で拡充されなかった理由として、保健所の業務過多や機材のほか「民間検査会社などに検体を運ぶための特殊な輸送機材」の不足などを挙げた。だが「綿棒」という検体採取に不可欠なものすら自給できない日本の状況まで、同委員会では把握していたのか? コロナ対策のみならず、従来の社会の歪みを是正し、最低限、生命に関わるものは自給できる社会の構築へと地域や企業が向かうチャンスとして今を捉えるべきではなかろうか。

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土木インタープリター

CNCP 常務理事 土木学会連携部門長
土木学会 教育企画・人材育成委員会 シビルNPO推進小委員会 委員長
メトロ設計梶@技術顧問
田中 努
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「土木学会連携部門」では、土木学会のシビルNPO推進小委員会と一体になって、「土木と市民社会をつなぐ」の具体化をめざし、フォーラムの設立準備と、Facebookで同様の活動をしている人たちとつながる試みをしています。今回は、この活動の1つ「土木インタープリター」について紹介します。
1.土木技術者とインタープリター                           
「土木インタープリター」は、辞書的には、「土木を市民に解説する人」という意味になります。@行政の技術者や建設コンサルタントが市民に事業の説明をしたり、A建設技術者が市民に工事現場を案内したりする場合、分かり易い言葉やツールを工夫した説明で、市民に理解してもらえる人です。
このような場面は、他にもあります。例えば、Bインフラツーリズム、C小中高大学生向けの出前講座・イベント、DNPO等市民団体の会合等で、インフラや防災・環境整備に関する問題を扱う場面、E自治体が行う市民協働事業など。
伝えたい内容は、その事業が如何に生活の快適さや経済効率や防災や環境に役立つのか、何故こういう考え・構造・施工・方法なるのか、如何に調査・研究を重ね工夫を凝らして難しいことを可能にしているかなど。土木の専門的な部分に踏み込んだ内容ですから、相手の市民の基礎知識や理解力や関心事を分かっていないと、伝わりません。
しかし、今は、それぞれの場面で、担当した土木技術者が、個々に自己流の工夫と努力で、上手くいったり行かなかったりでしょう。上手い説明ができ、優秀な「土木インタープリター」だなと思う人が居ますが、そうでない人もいます。

できる人とできない人、この差は何でしょう。何を学べば優秀な「土木インタープリター」になれるのでしょう。それを調査・検討しています。
2.インタープリターとその回り
「インタープリター」が行うことを「インタープリテーション」と言いますが、「総合技芸」であるとも言われます。自然科学や教育をはじめ、デザイン、アート、歴史、民族など、さまざまな分野に見られるそうです。さらにインタープリターの回りに、コミュニケーター、ファシリテーター、ガイドなど似たものがあります。何が同じで、何が違うのでしょう。少し紹介します。

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3.インタープリター                
日本で最も古く広く活動している「インタープリター」は、環境省系の、自然公園やミュージアムなどで行われている、参加者の楽しさや体験を重視した教育的なコミュニケートをする人たちのようです。
1980年代後半に日本のビジターセンターやネイチャーセンターを先駆的に運営していた人たちが創っていた「ネイチャーセンター研究会」が中心になり、環境教育に関する学会やフォーラムでインタープリテーションの研究集会の開催、ニュースレターの発行等をしていましたが、1994 年に「日本インタープリテーション協会」が作られ、インタープリター・トレーニング・セミナー(自然教育研究センターと共同)の開催やインタープリテーションに関する種々のワークショップを開催しています。

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4.科学技術インタープリター                              
文科省系で、東京大学と北海道大学と早稲田大学が協働で、2005〜2007年に科学技術振興調整費を得た活動が続いています。
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東京大学の「科学技術インタープリター養成プログラム」は、在学中の主に大学院生を対象とした毎年10名前後の少数精鋭の副専攻プログラムです。科学コミュニケーションの最重要課題は、難しい専門知識を分かりやすく、かつ親しみやすく伝える方法論のみでなく、「社会の中に科学がある」という共通認識のもとで広い視野で科学技術を捉え、問題点を掘り下げて探ることのできる人材の育成を目標としているとのことです。

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北海道大学の「科学技術コミュニケーター養成プログラム」は、科学技術の専門家と一般市民との間で、科学技術をめぐる社会的諸課題について双方向的なコミュニケーションを確立する人材を養成するものです。
科学技術コミュニケーターが修得すべき理論とスキルについて体系的にカリキュラムが組まれ、実習や演習を通して、サイエンスライティングの基礎、映像メディアの作り方、サイエンスイベントの実施など実践的なスキルも学ぶことになっています。

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早稲田大学の「ジャーナリズムコース」は、自立的な批判性を持つ科学ジャーナリストの育成を目指して、2005年度に始まりました。2010年度に日本初のジャーナリズム大学院に統合され、「科学技術ジャーナリズム・プログラム」という専門認定プログラムとして継続しています。
講義や演習では批判的思考力を養うことを重視して方法論科目を充実させており、ジャーナリズムやメディアの構造・歴史・理論などを学び、他学部の協力も得て政治・国際・経済・社会・文化・科学技術の各分野の専門知に深く根ざした講義を展開しています。

5.海洋インタープリター
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国際海洋自然観察員協会という組織が、海洋の自然体験活動を通じて、広く自然を大切にするリーダーを養成し、プロとして社会的に自立できる、海洋の自然をガイドしエコツアーを行う人たちを育てようと、2006年から「インタープリター入門講座」を開催しています。

6.ファシリテーター
ファシリテーターとは、ファシリテーションの役割を担う人で、会議で言えば進行役です。ファシリテーションとは、人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすることです。集団による問題解決、アイデア創造、教育、学習等、あらゆる知識創造活動を支援し促進していく働きを意味しています。
これは、我々CNCPでも2018年から養成講座を開講し、初級・中級・上級・コーディネーターと充実したカリキュラムを用意していますね。
ファシリテーションの歴史は、マネジメントと同様、世界中で発生したと私は思いますが、「日本ファシリテーション協会(FAJ)」のHPによると、アメリカで、1960年代の体験学習を通じてメンバーやグループの成長を働きかける流れ、同時期に始まったコミュニティの問題を話し合う技法として体系化された流れ、また1970年代の会議を効率的に進める方法として開発された流れ、さらに日本では「世田谷まちづくり活動」のように独自に進化した流れがあるとされます。

7.ガイド
ガイドも、町や施設の歴史や特徴、見どころを来訪者に解説し、その情報を付加することにより、観光旅行をより面白く楽しくする役割で、「インタープリター」に通じるものがあります。
例えば「京都市ビジターズホスト」。これは,京都市・宇治市・大津市に関する奥深い知識と専門性を備えた通訳ガイドを育成し、通訳ガイドのスペシャリストとして活躍していただくことで、外国人観光客の京都市近郊への周遊や長期滞在の促進、外国人観光客の満足度の向上、旺盛な消費意欲の取込み強化を図るものです。
「インフラツーリズム」のガイドは、「土木インタープリター」に近い気がします。「インフラツーリズム」とは、橋・ダム・港などのインフラを地域固有の財産と位置づけて、観光を通じた地域振興に資するインフラ活用の取組です。一般の観光との違いは、建設中のダムや監査廊など、普段なかなか入る機会のない施設内部を公開・開放して、見て・聞いて・触って体感する「非日常」を楽しめるイベントです。国交省や自治体、インフラ事業者の他、民間旅行会社も企画し、人気があります。

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8.土木学会でも
土木学会では「土木偉人かるた」を作成し、販売しています。土木偉人を題材に、かるたの形式にした「土木史」の入門資料で、楽しく遊びながら、土木偉人が行ってきた功績と土木事業への熱い思いを知って貰おうという狙いです。学校での土木史教育の副読書として、また土木系サークルや家庭の教育ツールとして、土木系学科を専攻する学生・先生・土木偉人に関心がある方なら、誰でも楽しく学ぶことができそうです。

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また、土木学会では、「ポケドボ」カードゲームというのも作成し、販売しています。対戦相手と戦うのではなく、自分の「まち」のインフラを事前対策や応急復旧で災害から守るゲームです。簡単でかつ楽しみながら土木のことを知ってもらえるようなルールとゲームの流れになっていて、私の孫たちも面白がっていました。

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さらに土木学会では「実験で学ぶ 土砂災害」という本を出版しています。この本は「土砂災害の起こり方」や「土砂災害を防ぐ方法」を模型実験見せて学んでもらうようになっています。土砂災害が起きるメカニズム、被害予測と非難方法などを、専門的な知識を基に、小学生高学年・中学生にも理解しやすいように、イラストや模型を使ってわかりやすく説明しています。
これらも、土木技術者だけでなく、「土木インタープリター」が介在しないと、子供や市民に、土木の役割が面白く伝わらないでしょう。

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posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | 教育研修、広報等

第 6 回 時を紡ぐ美しき隧道

滋賀の観光・イベント・情報サイト
「滋賀ガイド!」「チェキポン」「しがトコ」所属フォトライター
雲林院 ゆみ
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思えば子供の頃から、トンネルを通るとワクワクしていた。ごく普通の一般的な道路トンネルだったが、秘密基地のような、また、どこかへワープするような、漠然とではあるが何か「特別」なもののように感じていた。
大人になって、そんなワクワクも忘れかけていた頃、車で滋賀から京都へ抜ける山林の鬱蒼とした道を走行していた時、道の右奥になぜかそこだけ陽が射した、鮮やかな緑の一角が見えた。走行中のためそれは一瞬だったが、その明るい場所の正体が何なのか知りたく、すぐにいま来た道を引き返した。車を降り、薄暗い草むらを光の方向へと歩く。―――息をのんだ。“トンネル”が目の前に現れたのだ。藪を分け入ればすぐに光の正体に辿り着けるという考えを覆されただけでなく、予想外にもトンネルが現れたのだ。(写真1・2)
忘れていた子供の頃のあの感覚が、一気に溢れ出すように蘇った。
しかしそれは、私の知っているコンクリートの“トンネル”ではなかった。緻密に積み上げられた煉瓦、利便性のためだけならば不要であろう装飾的なポータル、使われなくなってどれほどの年月が経ったのだろうか、植物を纏ったその姿を見た時、私は初めて隧道に対し「美しい!」という感覚を抱いた。
圧倒的な存在に、しばし立ち尽くす。その時の私は、きっと目を見開いていたに違いない。そして吸い込まれるように湿った坑内へ入る。坑内は真っ暗なはずだが、好奇心で瞳孔が開いていたのだろうか(笑)、素掘りの痕をまじまじと見ながら歩いた記憶がある。その暗闇をぬけると、緑に覆われたかつての車道に、陽が燦燦と降り注いでいた。数分前に視界の端で捕らえた、あの鮮やかな緑の一角の正体だ。
「奥山田隧道」。これこそが以降、私が隧道に夢中になると同時に“廃隧道”の存在を知るキッカケとなった。

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私の住む滋賀にも明治や大正時代の古い隧道・鉄道隧道が多く、幾つかは今も現役隧道として残っている。それらを探索するうちに、滋賀の隧道に於いて「村田鶴」という名前を目にする事になる。大正から昭和にかけ、県の隧道設計に携わった土木技師で、谷坂隧道・佐和山隧道・横山隧道・観音坂隧道・湖北隧道などを手掛けた。土木遺産にも指定されているそれらは、時々その姿を見るためだけに出かけたくなるほど美しい。(写真3〜8)
隧道探索では、扁額やポータル全体を一通り眺めたあと、中へ入る。途中何度も振り返り、坑内から見える「外」の景色を楽しむ。そして坑内の煉瓦や石をまじまじと見ながら通り抜ける。その後も隧道を2、3回往復し、登れる所は登ってみる・・・不審な動きに見えなくもないので、少し周りを気にしながら(笑)。旧道や埋もれた廃隧道などは、地図を頼りに行ったり来たり・・・隧道に辿り着くまでの道のりも楽しみのひとつで、その時点から既にワクワクが始まっている。

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しかし「隧道」というカテゴリーは、まだまだ私の周りではマイナー分野で、“隧道”と言ってもまず通じない。それで“トンネル”と言い換えると、高確率で「え〜。心霊スポットが好きなん?」と返ってくる。やはり一番に「トンネル=怖い」というイメージなのだろうか。ことに廃隧道ともなれば・・。私は1人で探索に出るのが特に楽しくて好きなのだけれど、「オバケ怖くないの?」と聞かれる事が多い。今まで隧道に対し「キレイ!かっこいい!神秘的!」と目を輝かせる事はあっても、怖いと思った事はない。正確には「霊的に」怖いと思った事はない。ただ、百数十年も在り続ける姿に畏怖の念・畏敬の念という意味で“畏れる”事は、しばしば。
それにしてもなぜ隧道に惹かれるのか。しかも古い隧道に。
これまで峠を苦労して越え、時間をかけて谷を迂回していた場所が便利に行き来できる様になった事に喜び、かつては人々が行き交い栄えていたであろうその場所も、新しいトンネルや道路が出来たとたん、人の気配はなくなる。ひっそりと佇む真っ暗な穴は恐れられ、時に忌み嫌われ、やがて忘れ去られる。そのような背景や、長く時の流れを背負ってきた廃隧道は、とても力強く美しいものへと「成し遂げた」ように感じる。
「廃」は「死」ではない。・・・と、私は思う。それを見る者に美しい、素晴らしい、等の感情さえも与えてくれる。見る人によっては怖かったり、悲しかったり・・・。「廃」の物に対して何かを感じ、心が動くのは、むしろ今もなお「生き続けている」からなのかも知れない。私はそこに「廃の美」をも感じる。
私は単なる「隧道好き」で、専門的な知識も無いけれど、重機の無い(または充分ではない)時代に山を掘削し、土を運び出し、切り石や煉瓦を運び・・・その労力や技術に、ただただ圧倒される。これまで探索した中でも印象的だったのは明治18年に穿たれた旧長野隧道(三重県)。廃隧道ではあるが、約140年経った今もその姿はとても美しく、堂々としている。(写真9・10)

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古い隧道に見られる“利便性のためだけならば不要であろう装飾”には、念願だった隧道への思いや敬意、喜び等が込められているようで、現代のトンネルとは位置づけが少し違うのも興味が湧く一因なのかも知れない。
とは言え隧道の、トンネルの、どこが好きなのか、何に惹かれるのか。考えたこともあったが的確な答えは出ないままだ。理屈ではなく心がワクワクする。心の赴くまま、興味が湧くまま、瞳孔の開くまま(笑)、また探索へと向かおう。
好奇心が原動力!

●私の「隧道」紹介サイトです!
1.三重県「長野隧道」探索日記(Facebook)https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=854503321548462&id=100009664055757
2.「滋賀の隧道」動画“くものすけ副隊長”https://www.webaminchu.jp/news/?creator=kumonosuke-vice-president
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第3回 橋の種類

路橋、鉄道橋、人道橋などあります。橋の長さは支間(スパン)で示します。支間とは橋を支える支点間の長さですがこれが長くなると桁高が高くなります。支間の短いものは板を渡せば渡れますが、支間が長くなるとタワミが大きくなるので、桁高を高くしていきます。橋桁を渡すのが桁橋です。桁をどんどん高くしてその不要部分をくりぬいたと考えると理解しやすいのがトラス橋やアーチ橋です。更に桁高を高くしたものが斜張橋や吊橋になると考えると理解し易いと思います。
橋梁形式と標準適用支間長は一般社団法人日本橋梁建設協会の表を、イメージ図はbomperson「土木のこれから」から転用させて頂きました。
以上

(理事・事務局長 内藤 堅一)

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