2019年01月01日

第1回 シリーズ開始にあたって

(特非)シビルNPO連携プラットフォーム代表理事 山本 卓朗


CNCPを設立して3年を過ぎたところで活動の見直しを行い、今後の基本テーマとして「土木と市民社会をつなぐ」を掲げた。本来、密接な関係が無ければいけない両者の間にさまざまな“かい離”があるというのは、筆者が長年強く感じているところであり、土木界にとってそのかい離を埋めることが最も大事であると思う次第である。
本シリーズを始めるに当たり、今後の議論の種として何点か述べてみたい。
(以下、市民と一般社会を“市民”、市民社会“、企業や団体・組織を”企業“、土木界・建設界を“土木界”、“土木”などと略して述べている)。

1.企業と市民社会の対立はなぜ起こる?
行政組織や団体、企業はすべて一般市民である私たちがその一員となって成り立っている。にもかかわらず、組織の立場になった途端にその立場を優先し(優先せざるを得なくなって)、市民社会の動き(反対運動など)に対抗する(対抗せざるを得なく)なる。大企業も環境破壊などで長期の闘争に直面することもある。このような対立は常にあり得るから、平時から組織を挙げて対処方を勉強していないと急場の間に合わないことになる。次節で述べるように、欧米に始まる企業と社会とのかかわりを研究し改善する努力には、長い歴史があることがわかる。

2.企業が社会貢献や社会への責任を意識してきた歴史は?
企業が社会貢献とかステークホルダーとかを意識して活動するようになったのは、欧米では20世紀の半ばからであるが、我が国ではおよそ30年前(1990年代)位からといわれる。フィランソロピー、メセナなど慈善事業や寄付を中心とした動きに始まり、企業が大型化するにつれて、環境問題や不祥事などが社会に与える影響が顕在化し、企業の社会的責任が議論されるようになった。企業がどういう形でそれを具現化するか、さまざまな考え方や手法が開発されてきた。すなわち既に多くの企業が取り組んでいるCSR(企業の社会的責任)さらにSB(ソーシャルビジネス)などへと進化し、現在はCSV(共通価値の創造)がその主流になりつつある。(野村総研「CSV事業の先進事例分析を通じた支援の枠組みに関する調査研究事業」報告書 平成26.3参照)。

3.土木と市民社会の関係の特徴は?
商品を販売する会社は、顧客である市民と直接接しているので、よほどのことが無いかぎり対立が生じることはない。しかし土木の顧客は発注者であり、しばしば、発注者(主に行政機関)の立場を代弁して市民社会と対立することになる。“市民が直接の顧客ではない”ために、土木界がよほど努力しないと市民社会との間に横たわる壁を突破出来ない所以である。

4.土木界の社会貢献への取り組みの現状は?
前述の社会貢献や企業の社会的責任について、土木界でも同様な取り組みが行われ、CSRまではほとんどの企業がレポートを発行するなど定着している。
また現場サイトでの住民交流や地域の環境維持などで地道な活動が行われている。しかし本来的に土木界では、公共事業の請負がその大半であり、昔から曾野綾子さんの無名碑の気概を良しとする“本業を通じて社会貢献をしている”という意識が強く、直接の顧客ではない市民社会への働きかけを強める活動に及んでいない。このために公共事業の枠外へと広がっている社会的な課題解決への取り組み、さらにその取り組みからも企業収益を生み出していく、すなわち社会と価値を共有するというCSVの考え方については、他の業界に比して遅れが目立っていると思われる。

5.土木界が市民社会に理解を求めてきた努力の歴史は?
社会に貢献するという概念とは別に、土木界では、土木技術への理解促進、公共事業への理解促進について、極めて熱心に取り組んできた。産学官それぞれの組織が実行する広報活動、子供や家族を対象にした土木やその技術を理解してもらう取り組み、業界が連携して長年取り組んできた現場見学会さらに産学官が協力する形での土木学会の広報活動も大きな広がりを見せている。

6.土木と市民社会をつなぐ運動をめざしてーCNCPからの提言
情報化技術の急激な発展が世界そして社会を大きく変化させており、政府が取り組む未来投資会議やそれに呼応する大学から様々な構想が打ち出されている。そのキーワードの中に、企業の取り組むべき課題として、SDG’s(Sustainable Development Goals)やCSV(Creating Shared Value)が織り込まれている。
私たちが今まで個々に進めてきた様々な取り組みを情報として集約共有し、土木界全体を巻き込んだ運動へと発展させることで、市民社会への距離を近づけるとともに、その社会的課題の解決に土木界の持つ専門力を活用して具体的に取り組む活動を進めたいと思う。
現在私たちが取り組みつつあるのが
●CNCPにおける「土木と市民社会をつなぐ事業研究会」
●土木学会教育企画・人材育成委員会シビルNPO推進小委員会における
「土木と市民社会をつなぐフォーラム準備会」
の発足である。その具体的な活動はこれからであるが長年の懸案であり、今後の息の長い運動として、大きく広がることを期待しつつ進める所存である。
posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | シビルNPOの現況と課題
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