2019年05月14日

第13回 文選の「土と木」

「令和」の典拠は『万葉集』の「于時、初春令月、氣淑風和」。中国の『文選』(蕭統、530年頃)に張衡(78年〜139年)の『歸田賦』「於是、仲春令月、時和氣C」があり、その影響も指摘されている。『文選』は歴代の名文、詩歌を集めた中国の文人の必読書で、日本にも天平以前に渡来して広く愛読された。
張衡には、この『歸田賦』のほか、長安の都を描いた『西京賦』(107年)が『文選』にあり、寵臣の大邸宅についての「木衣綈錦、土被朱紫」は「木には綈錦(ていきん)を衣(き)せ、土には朱紫(しゆし)を被(かうむ)らしめ」と読む。また『後漢書』(范曄、432年以降)の宦者列傳が収められており、「狗馬飾彫文、土木被緹繡」は「狗馬(くば)は彫文(ていぶん)を飾り、土木は緹繡(ていしう)を被(かうむ)る」と読む。これらは、『漢書』(班固、80年頃)の東方朔傳「木土衣綺繡、狗馬被繢罽」(木や土にきらびやかな繍(ぬいとり)を被い、犬や馬に五彩の毛織を着せ)や佞倖傳:董賢「木土之功、窮極技巧、柱檻衣以綈錦」(土木の工に技巧をきわめつくし、柱や欄干(てすり)を厚絹や錦で被(おお)うた)を下敷きとしており、技巧と贅を尽くした邸宅の「木」は柱、欄干に厚絹、錦や刺繍を被せた、「土」は壁に朱紫を塗ったり、刺繍を被せたりした。ここで「木・土」も「土・木」も建物構造の「柱」と「壁」を表しており、「土木」の一つの典拠といえるのではないか。
参考文献:新釈漢文大系「文選」(明治書院)、小竹武夫訳「漢書」(筑摩書房)
(土木学会土木広報センター次長 小松 淳)
posted by CNCP事務局 at 10:00| Comment(0) | 人文等
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