東南アジア最後のユートピアといわれるベトナムに、日本技術士会海外活動支援員会の一員として今年の2〜3月に出張する機会を得た。ベトナムでは、ホーチミン市、ダナン市、クワンガイ省、フエ市、ハノイ市を視察した。そこで感じたことは、ベトナムの朝は早く、道路はバイクと車で溢れ、路面が見えないくらいの交通量の多さに驚いた。各都市に共通していることは、道行く人のほとんどが若く、街の市場は活気にあふれ、経済が好調であることを実感した。
(1)ベトナムの概況
ベトナムは南北に1,650q、東西方向は北部で500q、中部の狭いところで約50q、国土の面積は34万ku、日本の総面積から九州を除いた面積に相当する。2017年上期のデータによると、ベトナムの人口は9,370万人、人口ピラミッドは釣鐘型の形状をしており、若い労働者が豊富に供給できる環境にある。
世界的な貿易自由化の進展により、労働賃金が安く豊富な労働力を求めて多くの企業が中国に進出した。その後、中国は目覚しい経済発展を遂げ、それに伴って労働賃金が高騰した。この状況に直面した企業は、生産コストの低減を図り国際競争力の優位性を確保するため、電力が安く低賃金で優秀な人材を求めてベトナムに進出する企業が増加している。

(2)ベトナムの経済概要
ベトナムの2018年の成長率は7.08%、一人あたりの名目GDPは2,587 USDを記録した。貿易収支をみると、2003〜2011年は45〜180億USDの赤字が続いていたが、2012年に7億9000万USDの黒字を記録、2015年に赤字に転落したものの、その後は25億USDの黒字、2017年は72億USDの黒字を記録した。外貨準備高をみると、2006年から100億USDを常時超えるようになった。雇用状況を表す2018年の失業率は2%で推移しており、ファンダメンタルズは堅調である。

(3)ベトナムの経済成長を支える人材育成の必要性
ベトナムは、TTPなどグローバル化の進展により国際競争力の強化に取り組んでいるが、裾野産業の育成が喫緊の課題となっている。裾野産業が抱える技術的課題の解決を図るため、技術水準の向上に力が注がれている。ベトナムの企業は、最初は国営企業が先行していたが、最近では民間企業がかなり力をつけている。これまでの企業は「技術は無償で支援を受けられるもの」と考えていたが、最近では「必要な技術はカネを支払っても獲得する。」という考え方に変わってきた。今後、国際的な企業間の競争が激しくなることが予想され、競争力強化に必要な専門技術者の人材育成が喫緊の課題となっている。このような状況の中、今回、ダナンの大学で講演を行って分かったことは、ダナン市人民委員会及び大学が日本との関係強化を強く望んでいるということである。その一環として、人民委員会及び大学では日本語教育を推進しており、さらに経済発展を支えるための人材育成について日本に協力を求めている。
以上の要望に応えるには、専門的な技術者の人的資源の支援が必要であり、そこには、ベトナムの経済発展に資するシニア世代の技術者の新たな活躍の場が広がっている。

