2019年09月01日

エコで持続可能な「空石積み」の技術

img847.jpg
有限会社鐵五郎企画代表
週末農民/弁当マイスター
大矢 みか


生きた知恵としての
農家の土木技術


最近、「石積み」に関心があります。中山間地域の棚田・段畑(段畑)の石垣、沖縄のサンゴの石垣、八丈島の玉石垣など、景観の美しさだけでなく、生業や生活を守るために生まれた技術の奥深さを感じています。週末にわか農民を二十数年つづけていることもあって、とくに惹かれるのは農家の土木作業として行われてきた棚田・段畑の「空石積み」です。
私の知る関東平野の水郷地帯には石垣棚田はなく、田んぼ周りの養生として行われるのは、田植え前の「畦塗り」。畦塗りは、田んぼの周りに土の壁を作って水が外にもれるのを防ぐ作業で、いわば畦(畦畔)の舗装です。田の土を持ち上げて法面を固めるので、環境への負荷はほとんどありません。また、人力であれ機械力であれ、生産者自らの手で行え、修復・再生ができることも良い点です。

石積みを
自分で積むことはできる?

中山間地で目にする棚田・段畑も環境に負荷をかけない農家の土木技術ではないかと思い、以前調べたことがあります。そのときは棚田の持つ多様な機能や文化的価値、景観の美しさ、耕作放棄地の増加などについて書かれたものか研究論文で、棚田の造成や維持管理についてはわかりませんでした。素人が棚田・段畑を作れるのか、工事業者に頼むとしたらそれは農家の土木技術ではないのか……、疑問を残したまま時が経ちました。
今年に入り、石積みの風景とそれを支える技術の継承を目的として活動している「石積み学校」をインターネットで知り、疑問が解けてきました。

img848.jpg
石積みの棚田(福岡県八女市星野村)。西日本に多い法面を野面石で積んだ棚田。


この石積み学校を立ち上げた真田純子さんは、石積みの技術を知る人が減り修復が困難になっている現代に、徳島県の山あいの村で石積み技術を習得した研究者。その真田さんが昨年末に出版した『図解 誰でもできる石積み入門』(農文協)によると、農地の石積みは、敵の浸入を防ぐためすき間をつくらない城郭の石垣とは異なり、農地の空石積みはすき間を空けたまま積むそうです。また、その土地にある野面石を材料とし、修復の際は崩した石を再利用するため地域資源を循環させる持続可能な工法であること。しかも棚田・段畑がある地域では地域の人たちが石積みをしてきたので、職人でなくてもルールとコツをつかめば習得可能な技術であること、地域の人たちがグループできる小さな工事であることなどが語られています。

持続可能な土木技術の
普及を

もちろん本を読むだけで実際的な技術を習得できるわけではないので、石積み学校が開催しているワークショップに近々参加したいと思います。
石積み学校はもともと「石積みを習いたい人、技術を持つ人、直してほしい人をマッチングし、直してほしい人の田んぼや畑を修復しながら技術の継承を行う仕組み」として2013年に設立されたそうです。ワークショップの開催数、参加者の広がりに市民の関心の高さがうかがえます。他人任せ、公共任せの消費から生産・創造へと市民の思考がシフトしてきているのではないでしょうか。
持続可能な地球環境や社会システムについて、その価値が人々に共有されている今、生業や生活の中で営々と培われてきた土木技術は、今後も市民から注目されていくと思います。経済合理性を名目に護岸をコンクリートで固めるのを止め、環境への負荷の少ない持続可能な技術を研究・普及してくださることを望みます。

img849.jpg
土坡の棚田(千葉県鴨川市大山千枚田)。関東では野面石が少ないため、土で法面を固めた棚田が多い。
posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | 人文等
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: