2019年09月01日

第17回 「土木工学」ということば(つづき)

「土木工学」は『東京開成學校一覧』(明治八年(1875年)二月)の「土木工學(シビールエンジニール)及實験」が初出と前回書いた。
明治十年(1877年)、東京開成学校は東京大学となり、理学部工学科課程の最後学年に機械工学科と土木工学科に分かれる学科編成となった。翌年(1878年)に第二回卒業式があり、三名が初めての「土木工学」科卒業生となった。
工部大学校の第一回卒業式は明治十二年(1879年)、南清と石橋絢彦が初めての「土木学」工学士となった。證書は「工部大學校ニ於テ土木學ヲ修メ定規ノ如ク其業ヲ卒ヘ試験高點ヲ得テ第一等ノ科第ニ登ル乃チ授クルニ工學士ノ位ヲ以テス因テ名ヲ署シ印ヲ鈴シ以テ永ク其榮譽ヲ證ス」とあり、第一等の成績優秀者だけが工学士を授与された。
明治十九年(1886年)『帝國大學令』が公布され、前年に工部省から文部省に移管されていた工部大学校も東京大学に合併された。法科、医科、工科、文科、理科の五分科大学の工科大学学科課程に「土木工学」科が設置され、同時期の専門英和辞典『工学字彙』には「Civil engineering. 土木工學」と記述され、教育制度と同じく用語の統一がなされることとなった。
後の『大日本国語辞典』(大正六年(1917年))では、「【土木學】(名)土木に關する事項を研究する學問。【土木工學】(英 Civil engineering)(名)工學の一科。道路・橋梁・鐡道・港湾・河川・運河・衛生工学等、公共的性質の工事に關するもの。」とされ、「土木学」ということばは徐々に衰退していった。

(土木学会土木広報センター次長 小松 淳)
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