道路橋で、今、一番注目されているのは、鋼橋の床版である。
これまで、橋梁は、「長い」「高い」「新しい」が、技術の最先端であり、床版は単なる2方向のコンクリート板であって、教科書の計算式でも容易に設計できる。橋梁にとっては、死荷重であることから、その重量を減らす、即ち、床版厚を薄くすることが自然であった。しかし、道路橋の損傷の最も激しいのが、床版であり、平成26年1月に発表された我が国の高速道路の大規模更新計画3兆円(表―1)のうち、その6割が床版の取替等に充てられている。土工、トンネル、橋梁の橋脚、橋桁等に比べて、その額が抜きん出ている。
考えて見れば、冬に塩が撒かれるのは床版の上であり、重車両の荷重を直接受けるのも床版である。だが、これほど損傷し易い床版全般を対象にした書物は土木学会の床版マニュアル等を除いて殆んど見当たらない。そこで、当NPOの理事で、土木学会鋼構造委員会にて道路橋床版の小委員会委員長を2期8年に亘って務めてきた大田孝二が、これまでの知見を集約した書物を昨年の11月に出版した。(図―1)大きな反響があり、増刷が必要となったので、現在は全国の高速道路の床版取替の現場を見て廻っている。現場では、ループ継手内への鉄筋挿入方法、ループ継手に替わるエンドバンド工法、現場打設部を数センチとする橋軸方向へのプレストレス導入の床版など、実に種々の工夫がなされている。これらを取り纏めて、第2版を出す予定である。

表―1 高速道路の大規模更新計画

図―1 Bridge Slabs
(購入申込は、http://www.ersc-npo.jp より)