筆者が直近に担当した,ミャンマーのエーヤワディ川(旧称イラワジ川)デルタ地帯での道直しを紹介する.
この事業は,キリスト教系で人道支援の観点から災害時の緊急対応などの活動をしている,国際NGOとの連携事業である.「自分たちの道は自分たちで直す」という意識を広め世界の貧困削減に貢献しよう,と小規模インフラ整備を行ってきた私たちの活動に関心を持っていただき,協力を要請されて実現した.
土地を持たない住民は,雨季には浸水するとわかっていても川表側に住居を構えざるを得ない(写真1).一方で,携帯電話のアンテナが近くに設置されており(写真2),スマホが使える環境が整っている.筆者も現場に居ながらにして,メールをチェックしたり地図アプリを使うことができた.
堤防は粘性土の盛土構造で,現地の行政により管理上,舗装も含めて構造物の設置は認められていない.洪水による河岸浸食も問題となっていて,現在の堤内地に別のルートで堤防が設置されることも検討されている.現在,河川そばの村に住む人々は,堤防の天端を道路として利用している.乾季には乾燥し路面は固くトラックなどの車両も通行可能になるが(ただし,ほこりがひどい),雨季には泥濘化し大人でも足を取られたり滑ったりするほどで,歩行すらままならない(写真3).
周辺の村での対策も参考にし,設置・撤去が人力で可能なコンクリートパネルの作成を支援することとした.材料代の負担と,村の人々が組織的に施工できるように技術支援をした(写真4).
雨季にはパネルが設置され,歩行が容易になった(写真5).子供を一人で学校に行かせることができ家業に時間を割くことができた,助産士が来てくれるようになった,市場まで行ける回数が増えたなど,村の人々の生計向上に効果があったようである.
乾季には,パネルを端に寄せ車両の通行幅を確保している(写真6).一枚40 kg程度のパネルを約2,000枚作成し1.3 kmの範囲に設置したが,村人が家庭ごとに担当範囲を決めて,撤去作業を行った.雨季が来れば,同じ体制で設置される予定である.
筆者にとって,堤防天端での道路整備は初めての経験であった.連携先NPOの事業地であり,この事業を通して新たな実績を得ることができた.異分野で活動するNPOとの連携も,いい経験になった.社会基盤整備を担う建設系NPOにとって,社会科学系など他分野のNPOとの協働の機会は多いのではないかと思う.
持続可能な開発(SDGs)が認知され,産官学が各々その目標の達成に向けた活動をしている.上記で紹介したようなインフラ整備は,「新しい公共」のNPOだからこそ,実施することができた事業のように思える.よそ者の国際開発NPOではあるが,相手国の持続的な発展に向けて事業の担い手を現地化するなどして,積極的に役割を果たすことができると手応えを感じている.





