2020年03月01日

第23 回 「社会インフラ」とは

「インフラ」と「社会インフラ」とはどちらが広い意味のことばだろうか。
「インフラ」は「社会資本」や「社会基盤」と言い換えられる。これをGoogle翻訳すると、それぞれ“social capital”と“social infrastructure”になる。逆方向に翻訳すると前者は「社会資本」に、後者は「社会インフラ」になる。
本来、“social capital”は社会学における「社会関係資本」であって、日本で「インフラ」 を意味する「社会資本」とは異なり、「社会・地域における人々の信頼関係や結びつきを表す概念」である。一方、“social infrastructure”には特に明確な定義はなく、英国圏では、社会保障、公衆衛生、住宅政策、教育政策を含む“social services”に関する施策や施設のことである。

内閣府の平成25年度年次経済財政報告第3章第3節「社会インフラの供給基盤」に「社会インフラの範囲は広く、道路、港湾、空港、上下水道や電気・ガス、医療、消防・警察、行政サービスなど多岐に渡る」とある。英文の概要版は「社会インフラ」を“social infrastructure”と訳しており、これで諸外国に本来の意図が正しく伝わるか大いに疑問である。同様の混乱は、平成25年度国土交通白書「はじめに」の注にも引用されていて、白書で「社会インフラ」を「インフラ」よりも広い意味で使っているとしている。
ここに「社会インフラ」が広い意味を示そうとした造語だとして、辞書にないこの新語は既存の語の組合せによる機械的な翻訳で“social infrastructure”になってしまう。多言語で紛れなく伝えるためには注意が必要である。
(土木学会土木広報センター次長 小松 淳)
posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | 人文等
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