(株)熊谷組常務執行役員 国際本部長
山崎 晶

4月に所属会社の国際部門の責任者に就任した。その矢先のコロナウイルスである。渡航者や帰国者の隔離措置、入国や渡航の制限や禁止措置、定期航空便の減少や就航中止、都市封鎖や国内便・国際便の発着禁止、日本の政府開発援助の窓口である国際協力機構の現地日本人職員の帰国、こうした状況が各国で起きている。我々の主な事業展開先であるアジア諸国、各国はどのようにコロナウイルスに適切に対処するのか、現地の医療事情の貧弱さをどのようにリスクヘッジするかなど、今後の避けて通れない様々な問題が懸念される。
国内でも緊急事態宣言が発令され、外出自粛が要請され、テレワークによる在宅勤務、訪問や出張禁止など、業務を取りまく状況が激変している。在宅勤務実施のため各人の業務内容や役割を確認したら、特にそうしたものは決めていなかったなどの笑えない話も聞く。往来でのコミュニュケーションが取れなくなり、ウエッブ会議などが日常化して、食べず嫌いのICT技術も使ってみると中々のものであることにも気づかされている。今まで当たり前だと思っていた仕事やそのやり方も見直すべき機会と感じる。
日常の生活も大きく変わった。飲み会が減り血液検査の結果が劇的に向上した、GWに家族の元に帰れず単身赴任先で引きこもっている、など些細なこともある。しかし、今まで同様に皆で豊かさを求めて、与えられた仕事を良かれと思ってこなし、やりがいと給料を得て、衣食住や旅行などを楽しむ生活を満喫する、こうした日常のあり方を再考する人もいるのではないだろうか。生きるとはなにか、繁栄とはなにか、幸福とはなにか、そして仕事とはなにか・・、にまで繋がっていく問いのようにも感じる。
「苦境にあっても、天を恨まず、運命に耐え、助け合って生きていく事が、これからのわたくしたちの使命です」、これは東日本大震災直後の被災地のある中学校の卒業式での卒業生代表の答辞だ。当時の状況は今の状況とは比べ物にならないくらい厳しいものであり、この言葉は今の我々に大きな勇気を与えると共に、与えられた状況で精一杯がんばれとの覚悟を要求してくる。
経営学者Druckerは「既に起こっている未来を見過ごさず、その兆候を仕事や組織に取り込め、それが指導者の役割だ」と言っている。これに従うと、我々の営為や仕事でも、今回のリスクを放置して結果の悪さをコロナウイルスに転嫁し責任逃れをするのではなく、リスクをチャンスと捉えて、新しい取組みを構築する必要があると感じる。しかしながら、自分の経験や実力不足のために、中々具体的な考えや取り組みに結び付いていないもどかしさを感じる。
コロナがある程度収束したら、CNCPの先輩諸氏とこうしたことを様々意見交換して、ご指導を頂きたいと考えている。
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