2020年02月01日

情報プラットフォーム構築に関する取り組み

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情報プラットフォーム構築に関する取り組み

シビルNPO連携プラットフォーム サポーター
株式会社エックス都市研究所  土井 麻記子


昨年、CNCPアワードに応募して賞をいただいたことが切掛けでサポーター登録をさせていただき、今回の執筆機会をいただきました。アワードへの申請事業名は、「住環境リスク評価」と「住環境リスク情報プラットフォーム」の構築、です。事業目的は、地方自治体の化学物質管理における「住環境リスク評価」と「住環境リスク情報プラットフォーム」の導入により、地域固有の環境情報を市民向けに提供するもの。この申請事業のアイデアには前身があります。千葉市沿岸から内陸側10km圏内にある我が家で、洗濯物や部屋が黒い砂で汚れることに対し、その原因を探る研究を自主的に行ってきたことを議会にインプットすることができました。これを切掛けに、自治体での環境調査事業、検討会設置、企業との対話、改善といったプロセスを経て市民対話のコミュニケーションの場を形成されました。アワードへの申請事業の趣旨は、「未知・未規制の物質」を中心として地域固有の情報をタブー視せずに情報収集、調査検討を行い、市民生活への参考情報を提供する仕組みを構築すること。地域の関係者が信頼をベースに地域課題に取り組むという意思があるなら、未規制物質に対する環境政策として、これが答えになりうるのでは、との考えでの提示です。アワード受賞後、千葉市の議員殿にご報告しました。その後の進展はいまのところありませんが、本アイデアの千葉市民からの、オファーを期待している、といったところです。
さて、アワードの申請提案で「プラットフォーム」を扱いましたが、プラットフォーム構築に意義は、情報研究と情報活用基盤を整備することにより、計画策定や政策評価におけるエビデンスベースの議論が促進される点にあると思っています。現在、資源循環の分野でもプラットフォームの検討に係っておりますのでご紹介いたします。それは、計画策定や政策評価のための情報活用基盤として活用できるようにするための「資源循環一体データのプラットフォーム」です。
この件等の背景には、日本版資源循環の確立が急務となっている点が挙げられます。EUにおけるサーキュラーエコノミーの掲揚や、中国の大量消費社会をささえる相対的な品質管理に適応したダイナミックな循環思想をベースにした資源循環に対応して、製品企画の基準化の波が押し寄せつつあることが挙げられます。日本でも、緻密で絶対品質を追求するモノづくりが根付く日本に合った、資源循環の姿を構築する意義があるのではと思われます。
資源循環型社会の構築においては、これまで、廃棄物処理におけるこれまでの静脈インフラ構築の設計思想は、大量生産・大量消費・大量廃棄による負の側面を抱えることを“やむなし”とするものでした。しかし、今後は静脈インフラ構築後の思想では、構築したインフラを最適なレベルで活用・維持するために、静脈側の段階はもとより製造・流通・使用といった動脈側の段階に対しても、必要な情報を求めていくこととなります。
ここでのポイントは、「情報が必要」とは言え、製品情報をすべて開示してもらう必要はなく、処理・処分側のインフラで処理するために必要としている情報が得られれば良いという点です。つまり、必要項目は、下流が必要だと思う事項を遡上させてデータを貰ってくる、ということです。

資源循環実態データのプラットフォームのイメージを図にしまします。この図は、サプライチェーンの流れとそこで発生する各段階でのやり取り、それらのDBを集約し、設定した課題に応じてデータを活用する基盤としてプラトフォームを設置することを表しています。各段階でやりとりされる施設間の円滑性を左右する必要項目(キーアイテム)を把握し、集めることによって、何がキーで施設間連携が円滑になっているかを把握し、今後強化すべき推進技術の抽出、計画策定、政策評価に役立てられるようになるというものです。
リサイクル素材の“質”を高めるマネジメントを構築し、製品から製品を作り、有用金属は徹底的に回収し、最終残渣を完全に土木資材化することで、日本式の徹底的資源循環が作られると思いますが、そのために必要と考えられる要素を3つ挙げます。一つ目は『情報の研究』、二つ目は『情報の翻訳』、三つ目は『情報共有ツールの整備』です。3要素が揃うことで、情報源がシステムで活用され、情報源からDBへの進化が加速されると考えます。
本検討は、廃棄物処理・リサイクルIoT導入促進協議会の低炭素化ワーキンググループの活動として展開しており、各種施設間連係実証等の事例から集めた有用項目を抽象化して、整理する作業を進める予定です。まだまだイメージにすぎませんので形は変わっていくと思いますが、地に足を付けた形で、プラットフォームの概念を明確にできればと思っています。これを通して動・静脈連携による情報活用の円滑化に役立てるよう、頑張りたいと思います。

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土木と市民社会をつなぐ事業研究会報告(その1)

CNCP通信Vol66で本研究会の発足のご報告致しましたが、本研究会も早いもので発足から1年が経過しようとしております。発足当初の第1回〜第3回研究会では主としてソーシャルビジネス(SB)や企業のCSV事業やCNCPが過去実施してきたアワード事業の学習をして参りました。

そして、第4回研究会では「土木の視点での取り組むべき社会的課題」をテーマにワールドカフェ方式によるブレーンストーミングを行いました。当日は90分程度の限られた時間にも関わらず下記の一覧に示す86枚ものポストイットに様々な切り口で社会的課題が出されました。

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本研究会は運動論としてゼネコンが取り組むべき社会的課題解決をCSVの視点で探るものであり、第5回において今後の研究会はブレーンストーミングの結果を受けて「インフラメンテ」,「災害対応」,「地球環境・エネルギー問題・廃棄物対応」「中央と地方との格差対応」,「国や地域の将来ビジョン」を社会的課題として一つずつ取り上げてこれらの課題をCSVの視点で探って行く方向が明確に示されました。そして、第6回研究会は「インフラメンテ」の課題解決をCSVの視点で探る検討を行いました。討議の「主な論点」は単なる従来の建設界の延長線(常識解)だけでは終わらせないよう、「研究会としての新機軸」を打ち出せるよう留意しております。今後の本研究会の活動にご注目下さい。
注釈:共通価値の創造(CSV)とは社会的課題を工夫のある事業で解決を図ると共に合わせて企業価値の向上を図る事業を称します。
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2020年01月01日

「土木と市民社会をつなぐ」シリーズをふり返って

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シビルNPO連携プラットフォーム
副代表理事 花村 義久


◆ はじめに
CNCPで基本にすえた「土木と市民社会をつなぐ」に対し、より広くより深く運動を進めるために、CNCP通信ではこれをシリーズとして連載をすることになった。ここでは、投稿をふり返るのに先立ち、創立時の趣意書、見直しでの議論、現在でのCNCPの活動状況、土木学会の考え方などにも触れた。執筆は、前半はCNCPの運営に当たっている当事者、後半は多方面で活躍しておられる方々にお願いした。

1.CNCP発足に当たってのミッションは
趣意書では、本テーマに関連する部分をあげると、次のように述べている。我が国は少子高齢化や災害の巨大化などに加えて、社会基盤そのものが老朽化してきたという深刻な事態に直面している。多岐にわたる地域の課題に挑戦していくためには、中央に依存してきた20世紀型の社会構造から抜け出し、地方自治体あるいは民間・市民の力を活動の推進力としてより強化することが重要である。CNCPは、サードセクターとしての役割を担おうとしており、行政や企業、教育・研究機関、そして地域・市民組織とのパートナーシップを通じて、より良い地域社会の構築を目指すものである。

2.活動見直しワーキングで示された活動の全体像
CNCPでは、創立来3年間の活動を検証し、あらためて活動の方向を見定めるべく、「活動見直しワークングチーム」を立ち上げ議論を進めてきた。ここでは市民社会・地域社会をベースに、行政、建設産業、学会に対応した形で、中間支援等企画サービス、地方自治体・市民団体等との協働推進、建設産業におけるCSR・CSV(企業の共通価値の創造)での事業化、土木学会との連携についての概念をまとめ、「土木と市民社会をつなぐ」を活動の基本に据えた。

3.CNCPの具体的な事業
活動は「土木と市民社会をつなぐ」の考えで貫き通されており、例えば次のような事業が進められている。
●土木と市民社会をつなぐ事業研究会
社会的課題の解決を図る事業手法(特にソーシャルビジネスやCSV事業)を学習するとともに、建設分野における社会的課題の解決を図る事業を広く調査し顕在化させて、これを市民とつなげる形で実現する。また、このような事業を広く社会に公表することで、建設界に対する社会の理解を進める。
●土木と市民社会をつなぐフォーラム
CNCPと土木学会が連携し、土木と市民社会をつなぐ活動をしている人々が集まって協働・連携するための「フォーラム」を設立して、個々の活動をより大きく広げることを目指している。ここではまず、いろいろな形で活動している組織・団体・個人の活動の情報を集約し、ポータルサイトとして共有することなどを検討している。
●インフラメンテナンス国民会議
3年前に発足したインフラメンテナンス国民会議における市民参画フォーラムでは、CNCPが主導的役割を担っている。ここでは、市民参画の重要性の理解促進、協働の支援組織のサポート、多種多様な事例の調査・分析・仕組みの採用という活動を通じて、「土木と市民社会をつなぐ」ことの役割を果たしている。

4.土木学会の取り組み
土木学会では、100周年記念事業で掲げた「社会貢献・市民交流」や土木と社会の100年ビジョン、JSCE2015の基本方針において、「あらゆる境界をひらき、社会と土木との関係強化をはかることをめざす」としている。また、土木広報センターを設けるなど広報機能を強化し、市民への情報発信と市民との交流の形成をさらに具体化する活動を行っている。

5.「土木と市民社会をつなぐ」シリーズの連載
この連載では、それぞれの分野から幅広く参加してもらい、内容にはなるべく事例、方策、提案を盛り込んで頂くことにした。以下に、投稿文の要約を記す。
● シリーズ開始にあたって
このシリーズを始めるにあたって、まず山本代表よりこのテーマを取り上げる意味、背景、課題、取り組みなどについて述べられ、問題提起がなされた。ここでは、企業と市民社会の対立はなぜ起こるのか、土木と市民社会との関係の特徴、土木界での社会貢献の取り組みの現状などについて歴史的考察を含めて述べ、本シリーズの論点を示すとともに、CNCPからの提言を行っている。
● 防潮堤問題にみる土木と市民社会
世古理事は、長年の気仙沼市の市民参加のまちづくりの指導と、その後発生した東日本大震災での被災沿岸部の巨大な防潮堤の建設の問題について述べている。ここからは、行政から示された当初計画に対し、みんなが納得できる合意形成のための根気強い努力が読み取れる。問題発生以前から潜む平素の問題の取り組み、発生した問題解決のための考え方、進め方などを通して、市民と行政が対等な関係で力を発揮しあえる市民参加の大切さを学ぶことができる。
● 土木と市民社会の溝はどうしてできる?
田中常務理事は、建設事業において市民の多くは国や自治体にお任せして、必要な諸施設が存在し常に機能していることが当たり前と思っているようだが、その様な土木と市民社会の溝や土木離れはどこから生まれるのか問いかけている。「土木」は「市民」に簡単には理解できない点、「土木」は「地域」の全体最適を目指しいる点などをあげ、色々な人々や組織が、様々な土木に関係ある情報を発信し、活動しているのに、どうして溝ができるのかを論じている。
●制度設計をも変える市民の科学
三井理事は、新たな河川法の改正、河川と市民団体との関りや成果を紹介している。また、筆者自らも多様な人々が集う荒川における合意形成のための「あらかわ 学会」を創設、荒川に関する調査・研究・体験活動・提言などを行なって、行政に働きかけをしている。川に長く関わり、様々な川及び人々の関わりの歴史を知っている市民団体こそ的確な判断と行動が出来るのであり、その市民科学を活かして、河川管理のパートナーとして活躍していきたいという。
● ファッションの後ろでがんばる土木を伝えたい
奥田Water−n代表理事は、「環境新聞」という専門紙での記者の経験から、一般の人は安心して飲める水の背景に、下水道をはじめとする排水処理設備があることには、なかなか思いをはせてくれないと感じる。だが、 情報の押し売りは市民との溝を深めるだけだ、「土木を知るべきだ」という思いが土木側にあると逆に土木は一般の人には伝わらない。日常生活の身近なところに土木への入り口を作る、というところから「つなぐ」が始まるのではないだろうか、と。
● 防災減災につながる日常的な活動
岩佐常務理事は、自然災害をはじめとする膨大な被害について具体的な数字で示し、そこには市民と協働で活動することが重要だと訴える。そして、市民の参加意識を行動へ導くためには、市民にインフラの現状を伝え、市民が参画する機会を設け、市民に何をしてほしいかを伝えることが大切であるとする。公共との関わり方は、受動的から能動的活動へとシフトするべきであると主張している。

● 当たり前の重み
岡室NPO 研修情報センター理事は、中国を取り上げ、三峡ダム建設、情報公開が明記されるに至った環境保護法など歴史的な動きをリアルに報告している。土木と市民をつなぐという観点からみると、社会主義体制下にある中国での市民と国家の関係においては、接点をさぐり、溝を埋め、しくみや制度の結実させることは「無」から創りだすこと、そこには大変な重みがあると言う。ただこの国特有の激しい動きの中にも、その底流には、多くの中国の人は恐らく今でも、土木 は“国家の大計”と思っているようである。 
● エコで持続可能な「空石積み」の技術
週末にわか農民を二十数年つづけている大矢鐵五郎企画代表は、棚田・段畑など環境に負荷をかけない農家の土木技術に関心を持ち、職人でなくても習得可能な技術であることに価値があるとしている。他人任せ、公共任せの消費から活力ある生産・創造へと市民の思考がシフトすることによって、生業や生活の中で営々と培われてきた土木技術は今後も市民から注目されていくと考える。環境への負荷の少ない持続可能な技術の研究・普及を期待していると述べている。
● 産官学で取り組む 『岡山道路パトロール隊』
狩屋岡山工業高校土木科教諭は、授業の「課題研究」の一環として『岡山道路パトロール隊』を編成し、授業の中で生徒に現実の道路パトロールをさせている。この活動を通じて、市民参加型の社会インフラ維持活動のリーダーとしての人材の養成を行うとともに、現実の社会でのインフラ維持のあり方を学ばせている。学校では、本取り組みが県内土木系高校、さらに中国各県へ、そして全国へと横展開されていくことを期待している。
● 市民の信頼を得るには、理念・哲学の構築と生活感が重要!
NHK社会部記者だった齋藤ジャーナリストは、大災害や老朽化など建設が抱える問題を取り上げ、このテーマでCNCPが掲げる「土木と市民社会とつなぐ」のメッセージが一般市民には伝わっていないのではないかと指摘する。その想いがみんなに伝わらないのは、何のため誰のためのインフラなのか理念・哲学が見えず、大事故や大災害が起きると“想定外”だと困難に立ち向かう気概・覚悟が見られず、さらに肝心のユーザーや生活者の視点がないことにあるという。氏は、土木と市民社会の橋渡し役として期待されるCNCPは、多難な未来が待ち受ける次世代に対し、確固たる理念と哲学の下、安全・安心の指針を示してほしい、とアドバイスしている。
● 土木広報の展開 −土木広報大賞2019から−
土木学会では、暮らしを支えている土木の役割・意義・魅力についての広報として優れているものに対し、「土木広報大賞」を設け表彰している。塚田理事(土木学会専務理事)は、今回第2回となるこの表彰の内容を示し、その中から「土木と市民社会をつなぐ」事例として、受賞した『九州地方整備局の春吉橋「賑わい空間」の試行イベント』と『褐嚼ン技術研究所の江戸東京・川のなぜなぜ舟めぐり』を紹介している。
◆ おわりに
このシリーズでは、土木と市民社会をつなぐにはどうすればよいのか、土木が市民社会からどう見えているのか等を意識して始めたが、寄せられた投稿の対象は非常に幅が広く内容も豊かなものであった。ここでは要約として載せてみたが、内容が深いのでもう一度本文に目を通して頂けたら有難いと思う。こうしてみると、「土木と市民社会をつなぐ」という言葉は奥が深く、常に問題を投げかけ、どうすればいいのかを問いかけているようにも思われる。今後も、多くの事例を知り、掘り下げて考え、いろいろな挑戦がなされれば、と願うものである。
posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | 地域社会等