2020年03月01日

グリーンインフラのすすめ

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シビルNPO連携プラットフォーム
副代表理事 花村 義久


皆さんすでにご承知ように、我々は今社会資本の老朽化や高齢化・人口減少、気候変動による自然災害激甚化など、様々な社会的な課題を抱えています。最近これを乗り切るのに、社会資本整備や土地利用において、自然環境が有する多様な機能を活用しようと云う考えが生まれています。この考えは自然との共生をベースにしたもので、グリーンインフラ(GI)として、従来の社会資本の枠を超えて自然資本を活用することによって、行き詰っている現在のインフラ問題を克服しようとするものです。
今までの緑地・緑化は、環境の保全や生活の安定、地域の活性化などの意味から取り組まれており、都市における公園、緑地・農地等のオープンスペースは多面的な機能を発揮するとともに、防災機能や景観形成、生活の憩いの場などを提供しています。国では、これをさらに充実させるべく、「集約型都市構造化」と「都市と緑・農の共生」という考えでもって、平成29年、都市緑地法、都市公園法、生産緑地法などの改正を行いました。
みどりによる社会基盤、グリーンインフラGIは、みどりすなわち生態系等自然環境の多機能を活用するという考えですが、上に述べた従来の緑地に対する考え方をよりダイナミックにとらえ、持続可能な社会、経済発展をもたらすインフラや土地利用計画を進めようとするものです。地球の温暖化砂漠化問題・エネルギ再生への取り組み、河川・ダム・都市環境に対する森の保全・樹木植生等都市緑化、インフラの老朽化対策や防災への備え、人口減少社会での新たな土地利用、投資・人材・オフィスなど活力ある都市空間の形成、そして景観・教育・健康・コミュニティ・安らぎの場等文化・生活空間の創出など、幅広い分野がその対象になります。
GIは、地方自治体での実現に期待されています。私が住む船橋市では、現在緑化問題を「船橋市緑の基本計画」という形で進めています。この計画書では、緑の機能として、健康維持・安らぎの場、防災、景観形成、生物多様性の保全、都市環境の保全を柱としています。これらは要素的にみるとかなりGIと重なっています。個人的なことになりますが、私も市の緑化推進委員会の委員であることから、また今までNPOとして校庭の芝生化や中国での砂漠の植樹など緑化問題に微力ながら関わったものとして、地域でのGIの推進が図られたらと考えるものです。
現在国土交通省では、国土形成計画にGIを取り込み、またグリーンインフラ懇談会の設置やポータルサイトの開設を行い、2019年にはグリーンインフラ推進戦略を発表しました。このテーマはいろいろな分野が関わりあうことから、それぞれの関係組織、関係者が連携してGIの推進が図られることを願うものです。

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2020年02月01日

情報プラットフォーム構築に関する取り組み

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情報プラットフォーム構築に関する取り組み

シビルNPO連携プラットフォーム サポーター
株式会社エックス都市研究所  土井 麻記子


昨年、CNCPアワードに応募して賞をいただいたことが切掛けでサポーター登録をさせていただき、今回の執筆機会をいただきました。アワードへの申請事業名は、「住環境リスク評価」と「住環境リスク情報プラットフォーム」の構築、です。事業目的は、地方自治体の化学物質管理における「住環境リスク評価」と「住環境リスク情報プラットフォーム」の導入により、地域固有の環境情報を市民向けに提供するもの。この申請事業のアイデアには前身があります。千葉市沿岸から内陸側10km圏内にある我が家で、洗濯物や部屋が黒い砂で汚れることに対し、その原因を探る研究を自主的に行ってきたことを議会にインプットすることができました。これを切掛けに、自治体での環境調査事業、検討会設置、企業との対話、改善といったプロセスを経て市民対話のコミュニケーションの場を形成されました。アワードへの申請事業の趣旨は、「未知・未規制の物質」を中心として地域固有の情報をタブー視せずに情報収集、調査検討を行い、市民生活への参考情報を提供する仕組みを構築すること。地域の関係者が信頼をベースに地域課題に取り組むという意思があるなら、未規制物質に対する環境政策として、これが答えになりうるのでは、との考えでの提示です。アワード受賞後、千葉市の議員殿にご報告しました。その後の進展はいまのところありませんが、本アイデアの千葉市民からの、オファーを期待している、といったところです。
さて、アワードの申請提案で「プラットフォーム」を扱いましたが、プラットフォーム構築に意義は、情報研究と情報活用基盤を整備することにより、計画策定や政策評価におけるエビデンスベースの議論が促進される点にあると思っています。現在、資源循環の分野でもプラットフォームの検討に係っておりますのでご紹介いたします。それは、計画策定や政策評価のための情報活用基盤として活用できるようにするための「資源循環一体データのプラットフォーム」です。
この件等の背景には、日本版資源循環の確立が急務となっている点が挙げられます。EUにおけるサーキュラーエコノミーの掲揚や、中国の大量消費社会をささえる相対的な品質管理に適応したダイナミックな循環思想をベースにした資源循環に対応して、製品企画の基準化の波が押し寄せつつあることが挙げられます。日本でも、緻密で絶対品質を追求するモノづくりが根付く日本に合った、資源循環の姿を構築する意義があるのではと思われます。
資源循環型社会の構築においては、これまで、廃棄物処理におけるこれまでの静脈インフラ構築の設計思想は、大量生産・大量消費・大量廃棄による負の側面を抱えることを“やむなし”とするものでした。しかし、今後は静脈インフラ構築後の思想では、構築したインフラを最適なレベルで活用・維持するために、静脈側の段階はもとより製造・流通・使用といった動脈側の段階に対しても、必要な情報を求めていくこととなります。
ここでのポイントは、「情報が必要」とは言え、製品情報をすべて開示してもらう必要はなく、処理・処分側のインフラで処理するために必要としている情報が得られれば良いという点です。つまり、必要項目は、下流が必要だと思う事項を遡上させてデータを貰ってくる、ということです。

資源循環実態データのプラットフォームのイメージを図にしまします。この図は、サプライチェーンの流れとそこで発生する各段階でのやり取り、それらのDBを集約し、設定した課題に応じてデータを活用する基盤としてプラトフォームを設置することを表しています。各段階でやりとりされる施設間の円滑性を左右する必要項目(キーアイテム)を把握し、集めることによって、何がキーで施設間連携が円滑になっているかを把握し、今後強化すべき推進技術の抽出、計画策定、政策評価に役立てられるようになるというものです。
リサイクル素材の“質”を高めるマネジメントを構築し、製品から製品を作り、有用金属は徹底的に回収し、最終残渣を完全に土木資材化することで、日本式の徹底的資源循環が作られると思いますが、そのために必要と考えられる要素を3つ挙げます。一つ目は『情報の研究』、二つ目は『情報の翻訳』、三つ目は『情報共有ツールの整備』です。3要素が揃うことで、情報源がシステムで活用され、情報源からDBへの進化が加速されると考えます。
本検討は、廃棄物処理・リサイクルIoT導入促進協議会の低炭素化ワーキンググループの活動として展開しており、各種施設間連係実証等の事例から集めた有用項目を抽象化して、整理する作業を進める予定です。まだまだイメージにすぎませんので形は変わっていくと思いますが、地に足を付けた形で、プラットフォームの概念を明確にできればと思っています。これを通して動・静脈連携による情報活用の円滑化に役立てるよう、頑張りたいと思います。

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土木と市民社会をつなぐ事業研究会報告(その1)

CNCP通信Vol66で本研究会の発足のご報告致しましたが、本研究会も早いもので発足から1年が経過しようとしております。発足当初の第1回〜第3回研究会では主としてソーシャルビジネス(SB)や企業のCSV事業やCNCPが過去実施してきたアワード事業の学習をして参りました。

そして、第4回研究会では「土木の視点での取り組むべき社会的課題」をテーマにワールドカフェ方式によるブレーンストーミングを行いました。当日は90分程度の限られた時間にも関わらず下記の一覧に示す86枚ものポストイットに様々な切り口で社会的課題が出されました。

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本研究会は運動論としてゼネコンが取り組むべき社会的課題解決をCSVの視点で探るものであり、第5回において今後の研究会はブレーンストーミングの結果を受けて「インフラメンテ」,「災害対応」,「地球環境・エネルギー問題・廃棄物対応」「中央と地方との格差対応」,「国や地域の将来ビジョン」を社会的課題として一つずつ取り上げてこれらの課題をCSVの視点で探って行く方向が明確に示されました。そして、第6回研究会は「インフラメンテ」の課題解決をCSVの視点で探る検討を行いました。討議の「主な論点」は単なる従来の建設界の延長線(常識解)だけでは終わらせないよう、「研究会としての新機軸」を打ち出せるよう留意しております。今後の本研究会の活動にご注目下さい。
注釈:共通価値の創造(CSV)とは社会的課題を工夫のある事業で解決を図ると共に合わせて企業価値の向上を図る事業を称します。
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