2020年01月01日

「土木と市民社会をつなぐ」シリーズをふり返って

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シビルNPO連携プラットフォーム
副代表理事 花村 義久


◆ はじめに
CNCPで基本にすえた「土木と市民社会をつなぐ」に対し、より広くより深く運動を進めるために、CNCP通信ではこれをシリーズとして連載をすることになった。ここでは、投稿をふり返るのに先立ち、創立時の趣意書、見直しでの議論、現在でのCNCPの活動状況、土木学会の考え方などにも触れた。執筆は、前半はCNCPの運営に当たっている当事者、後半は多方面で活躍しておられる方々にお願いした。

1.CNCP発足に当たってのミッションは
趣意書では、本テーマに関連する部分をあげると、次のように述べている。我が国は少子高齢化や災害の巨大化などに加えて、社会基盤そのものが老朽化してきたという深刻な事態に直面している。多岐にわたる地域の課題に挑戦していくためには、中央に依存してきた20世紀型の社会構造から抜け出し、地方自治体あるいは民間・市民の力を活動の推進力としてより強化することが重要である。CNCPは、サードセクターとしての役割を担おうとしており、行政や企業、教育・研究機関、そして地域・市民組織とのパートナーシップを通じて、より良い地域社会の構築を目指すものである。

2.活動見直しワーキングで示された活動の全体像
CNCPでは、創立来3年間の活動を検証し、あらためて活動の方向を見定めるべく、「活動見直しワークングチーム」を立ち上げ議論を進めてきた。ここでは市民社会・地域社会をベースに、行政、建設産業、学会に対応した形で、中間支援等企画サービス、地方自治体・市民団体等との協働推進、建設産業におけるCSR・CSV(企業の共通価値の創造)での事業化、土木学会との連携についての概念をまとめ、「土木と市民社会をつなぐ」を活動の基本に据えた。

3.CNCPの具体的な事業
活動は「土木と市民社会をつなぐ」の考えで貫き通されており、例えば次のような事業が進められている。
●土木と市民社会をつなぐ事業研究会
社会的課題の解決を図る事業手法(特にソーシャルビジネスやCSV事業)を学習するとともに、建設分野における社会的課題の解決を図る事業を広く調査し顕在化させて、これを市民とつなげる形で実現する。また、このような事業を広く社会に公表することで、建設界に対する社会の理解を進める。
●土木と市民社会をつなぐフォーラム
CNCPと土木学会が連携し、土木と市民社会をつなぐ活動をしている人々が集まって協働・連携するための「フォーラム」を設立して、個々の活動をより大きく広げることを目指している。ここではまず、いろいろな形で活動している組織・団体・個人の活動の情報を集約し、ポータルサイトとして共有することなどを検討している。
●インフラメンテナンス国民会議
3年前に発足したインフラメンテナンス国民会議における市民参画フォーラムでは、CNCPが主導的役割を担っている。ここでは、市民参画の重要性の理解促進、協働の支援組織のサポート、多種多様な事例の調査・分析・仕組みの採用という活動を通じて、「土木と市民社会をつなぐ」ことの役割を果たしている。

4.土木学会の取り組み
土木学会では、100周年記念事業で掲げた「社会貢献・市民交流」や土木と社会の100年ビジョン、JSCE2015の基本方針において、「あらゆる境界をひらき、社会と土木との関係強化をはかることをめざす」としている。また、土木広報センターを設けるなど広報機能を強化し、市民への情報発信と市民との交流の形成をさらに具体化する活動を行っている。

5.「土木と市民社会をつなぐ」シリーズの連載
この連載では、それぞれの分野から幅広く参加してもらい、内容にはなるべく事例、方策、提案を盛り込んで頂くことにした。以下に、投稿文の要約を記す。
● シリーズ開始にあたって
このシリーズを始めるにあたって、まず山本代表よりこのテーマを取り上げる意味、背景、課題、取り組みなどについて述べられ、問題提起がなされた。ここでは、企業と市民社会の対立はなぜ起こるのか、土木と市民社会との関係の特徴、土木界での社会貢献の取り組みの現状などについて歴史的考察を含めて述べ、本シリーズの論点を示すとともに、CNCPからの提言を行っている。
● 防潮堤問題にみる土木と市民社会
世古理事は、長年の気仙沼市の市民参加のまちづくりの指導と、その後発生した東日本大震災での被災沿岸部の巨大な防潮堤の建設の問題について述べている。ここからは、行政から示された当初計画に対し、みんなが納得できる合意形成のための根気強い努力が読み取れる。問題発生以前から潜む平素の問題の取り組み、発生した問題解決のための考え方、進め方などを通して、市民と行政が対等な関係で力を発揮しあえる市民参加の大切さを学ぶことができる。
● 土木と市民社会の溝はどうしてできる?
田中常務理事は、建設事業において市民の多くは国や自治体にお任せして、必要な諸施設が存在し常に機能していることが当たり前と思っているようだが、その様な土木と市民社会の溝や土木離れはどこから生まれるのか問いかけている。「土木」は「市民」に簡単には理解できない点、「土木」は「地域」の全体最適を目指しいる点などをあげ、色々な人々や組織が、様々な土木に関係ある情報を発信し、活動しているのに、どうして溝ができるのかを論じている。
●制度設計をも変える市民の科学
三井理事は、新たな河川法の改正、河川と市民団体との関りや成果を紹介している。また、筆者自らも多様な人々が集う荒川における合意形成のための「あらかわ 学会」を創設、荒川に関する調査・研究・体験活動・提言などを行なって、行政に働きかけをしている。川に長く関わり、様々な川及び人々の関わりの歴史を知っている市民団体こそ的確な判断と行動が出来るのであり、その市民科学を活かして、河川管理のパートナーとして活躍していきたいという。
● ファッションの後ろでがんばる土木を伝えたい
奥田Water−n代表理事は、「環境新聞」という専門紙での記者の経験から、一般の人は安心して飲める水の背景に、下水道をはじめとする排水処理設備があることには、なかなか思いをはせてくれないと感じる。だが、 情報の押し売りは市民との溝を深めるだけだ、「土木を知るべきだ」という思いが土木側にあると逆に土木は一般の人には伝わらない。日常生活の身近なところに土木への入り口を作る、というところから「つなぐ」が始まるのではないだろうか、と。
● 防災減災につながる日常的な活動
岩佐常務理事は、自然災害をはじめとする膨大な被害について具体的な数字で示し、そこには市民と協働で活動することが重要だと訴える。そして、市民の参加意識を行動へ導くためには、市民にインフラの現状を伝え、市民が参画する機会を設け、市民に何をしてほしいかを伝えることが大切であるとする。公共との関わり方は、受動的から能動的活動へとシフトするべきであると主張している。

● 当たり前の重み
岡室NPO 研修情報センター理事は、中国を取り上げ、三峡ダム建設、情報公開が明記されるに至った環境保護法など歴史的な動きをリアルに報告している。土木と市民をつなぐという観点からみると、社会主義体制下にある中国での市民と国家の関係においては、接点をさぐり、溝を埋め、しくみや制度の結実させることは「無」から創りだすこと、そこには大変な重みがあると言う。ただこの国特有の激しい動きの中にも、その底流には、多くの中国の人は恐らく今でも、土木 は“国家の大計”と思っているようである。 
● エコで持続可能な「空石積み」の技術
週末にわか農民を二十数年つづけている大矢鐵五郎企画代表は、棚田・段畑など環境に負荷をかけない農家の土木技術に関心を持ち、職人でなくても習得可能な技術であることに価値があるとしている。他人任せ、公共任せの消費から活力ある生産・創造へと市民の思考がシフトすることによって、生業や生活の中で営々と培われてきた土木技術は今後も市民から注目されていくと考える。環境への負荷の少ない持続可能な技術の研究・普及を期待していると述べている。
● 産官学で取り組む 『岡山道路パトロール隊』
狩屋岡山工業高校土木科教諭は、授業の「課題研究」の一環として『岡山道路パトロール隊』を編成し、授業の中で生徒に現実の道路パトロールをさせている。この活動を通じて、市民参加型の社会インフラ維持活動のリーダーとしての人材の養成を行うとともに、現実の社会でのインフラ維持のあり方を学ばせている。学校では、本取り組みが県内土木系高校、さらに中国各県へ、そして全国へと横展開されていくことを期待している。
● 市民の信頼を得るには、理念・哲学の構築と生活感が重要!
NHK社会部記者だった齋藤ジャーナリストは、大災害や老朽化など建設が抱える問題を取り上げ、このテーマでCNCPが掲げる「土木と市民社会とつなぐ」のメッセージが一般市民には伝わっていないのではないかと指摘する。その想いがみんなに伝わらないのは、何のため誰のためのインフラなのか理念・哲学が見えず、大事故や大災害が起きると“想定外”だと困難に立ち向かう気概・覚悟が見られず、さらに肝心のユーザーや生活者の視点がないことにあるという。氏は、土木と市民社会の橋渡し役として期待されるCNCPは、多難な未来が待ち受ける次世代に対し、確固たる理念と哲学の下、安全・安心の指針を示してほしい、とアドバイスしている。
● 土木広報の展開 −土木広報大賞2019から−
土木学会では、暮らしを支えている土木の役割・意義・魅力についての広報として優れているものに対し、「土木広報大賞」を設け表彰している。塚田理事(土木学会専務理事)は、今回第2回となるこの表彰の内容を示し、その中から「土木と市民社会をつなぐ」事例として、受賞した『九州地方整備局の春吉橋「賑わい空間」の試行イベント』と『褐嚼ン技術研究所の江戸東京・川のなぜなぜ舟めぐり』を紹介している。
◆ おわりに
このシリーズでは、土木と市民社会をつなぐにはどうすればよいのか、土木が市民社会からどう見えているのか等を意識して始めたが、寄せられた投稿の対象は非常に幅が広く内容も豊かなものであった。ここでは要約として載せてみたが、内容が深いのでもう一度本文に目を通して頂けたら有難いと思う。こうしてみると、「土木と市民社会をつなぐ」という言葉は奥が深く、常に問題を投げかけ、どうすればいいのかを問いかけているようにも思われる。今後も、多くの事例を知り、掘り下げて考え、いろいろな挑戦がなされれば、と願うものである。
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2019年12月01日

高齢化社会の住みやすさを求める会(CCRC)の取組み

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特定非営利活動法人建設技術監査センター 代表理事
成岡建築設計・技術士事務所 所長 
成岡 茂


団塊の世代が75歳を迎える5年後には、首都圏で大量に高齢者難民が発生すると言われている。そこでCNCPの事業部門に「南房総CCRC研究会」を立ち上げた。今年はその研究会の3年目を迎えている。今年度は過去2年間の研究成果を如何に実践の取組みに結び付けるかが課題だ。
南房総に着目したのは首都圏で土地も安く豊かな自然に恵まれた地に元気な高齢者が「生涯活躍できるまち」で老齢期を、生きがいを持って過ごせる場として考えた。南房総CCRCはオリジナルの「生涯活躍のまち」構想の日本版CCRC「Council on Comfortable & Recreative Community」の意味から、当会では、Countryside & City Reconstruct Community」と翻訳し、地域と都市のコミュニティの再構築と位置付けた。
当初は、廃業したゴルフ場の再生としてここに関連施設を建築しゴルフなどを楽しみながら過ごすといったイメージを描いたが、千葉のゴルフ場は意外と健在でそのよう場所は見つからなかった。そこで、バブル期にリゾー住宅地として開発された御宿や勝浦のリゾート住宅地を訪れ現状を視察した。これらは超郊外別荘型住宅地と考えられ、二地域居住や定住地として居住している高齢者もおられる。東急リゾート勝浦(1990年東急不動産滑J発分譲地、720戸200ha、ゴルフ場が隣接)、ミレーニア勝浦(1992年三井不動産滑J発分譲地、939区画105ha)、御宿台グリーンタウン(1988年西武不動産滑J発分譲地、1,500区画167ha)、大原西部グリーンタウン(1981年西武不動産滑J発分譲地、937区画227ha、ゴルフ場隣接)がある。この他に視察したのは、季美の森(1994年東急不動産梶E潟Gルカクエイが開発分譲、1855区画約200ha、ゴルフ場併設)の住宅地だ。ここは東金市と大網白里市にまたがっている。都市型団地で千葉市や都内への高速バスも運行している。
一般に南房総というと地元では、館山市、南房総市、勝浦市のエリアを指すが、当会の認識としては広く房総半島全域を視野に入れている。
今回の台風15号、19号、21号で強風による長期停電、水害など房総半島は未曽有の災害に見舞われた。しかし、先日、会のメンバーによる南房総一泊二日の視察で分かったことは、この地域は海の幸山の幸に恵まれた温暖で豊かな地域だということだ。南房総市では2地域居住や観光などで何らかの形で地域と交流した人を「関係人口」ととらえ地域の活性化の呼び水として期待を寄せている。
今後、これらの取組みをベースに高齢化社会の住みやすさを求める会「Council on Comfortable & Recreative Community」は地域との連携のもと地域の活性化と高齢者が快適に暮らせる街を目指したい。    以上

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土木広報の展開 -土木広報大賞2019から

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シビルNPO連携プラットフォーム理事
(公益社団法人土木学会専務理事)  塚田 幸広


土木学会では、日本全国の各地域で展開されている様々な広報のうち、暮らしを支えている土木の役割・意義・魅力について広報を行っている活動または作品などで他団体の模範となるもの、他団体への展開が期待されるものなどを取り上げ、顕彰することを目的として「土木広報大賞」を創設し、展開している。
第2回となる今回は、日本全国から122件の応募が寄せられ、選考委員会(委員長:田中里沙 事業構想大学院大学 学長)による厳正な選考を経て、最優秀賞1件、優秀部門賞6件、準優秀部門賞10件の合計17件を選出した(下表参照)。最優秀賞は、東京都下水道局の“東京地下ラボ(若者向け東京下水道発信事業)”が受賞した。

今回の受賞の中から、「土木と市民社会をつなぐ」の色合いが濃い(あくまで個人的モノサシ)と考えられる2つの活動を以下に紹介する。
(1)春吉橋「賑わい空間」の試行イベント
国土交通省九州地方整備局福岡国道事務所では、一般国道202号線「春吉橋架替事業」の国道本線の切替えに先立ち、地域等への事業に対する理解の促進を図ることとあわせ、迂回路橋を将来の賑わい創出空間として活用したイベントを実施した。実行委員会は福岡国道事務所、福岡市のほか、地元の自治会等(中洲町連合会、春吉・冷泉校区自 治協議会)を巻き込み構成している。約1ヶ月と短い準備期間であったものの、実行委員会と連携し広報活動を幅広く展開したことや、隣接する企業との連携、各媒体を駆使した広報活動を実施したことで、予想を上回る約14万人もの多くの市民の入場があった(写真-1参照)。また、アンケートの結果からは、イベント前まで架替事業を「知らなかった」約7割の市民に対して認知度を高めることができ、さらに、賑わいイベントへのリピート意向・満足度については、約8割が満足し、「また来たい」と回答している。身の丈で地域市民を巻き込んだ「賑わい空間の創出」の好事例といえる。

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(2)「大人の社会科見学 江戸東京・川のなぜなぜ舟めぐり〜シビルエンジニアから聞く川にまつわる話〜」および関連セミナー(写真-2参照)
褐嚼ン技術研究所の国土文化研究所では、東京都中央区のNPO法人などと連携し、東京都心の中小河川をめぐるクルーズ「お江戸日本橋舟めぐり」を2009年より継続的に実施し、年間200便前後運航している。このクルーズでは、専属のガイドが主に水辺を中心とする江戸・東京のまちの発展の歴史などを案内している。体験後のアンケートの結果からは、案内内容やコース全体等の満足度は、「非常に満足」、「満足」が大半を占め、ほとんどの方がまた機会があれば参加したいと回答している。また、自由回答からも、普段なかなか目にすることのない川からの視点で、その役割・機能が必ずしも十分に理解されていない堤防、護岸、水門、排水機場、橋梁などの土木構造物について、実際に目の前で見ながら専門家からの解説を聞くことで、改めて「都市にはどのようなインフラがあるか」、「そのインフラが災害対策、環境保全、利便性向上などにどのように貢献しているのか」、「インフラがその機能を確実に果たすためには市民の正しい理解がいかに大切か」を知ったとの回答を得ている。すなわち、市民に対して土木の役割を考えていただくきっかけに直接つながる好事例である。

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