2020年09月01日

市民参画によるインフラメンテナンスの前進に向けて

市民参画フォーラム・事例WG  駒田 智久


インフラメンテナンス国民会議・市民参画フォーラムの3つのWGのうちの市民協働調査・分析WG (略称;事例WG) において実施した市民参画事例の収集と分析について記す。
〇事例収集の考え方と方法
・収集対象;「インフラ施設」の「維持管理」に係る活動を対象とした。「維持管理」としては、直接的には、点検・補修等の他、管理運営や維持更新計画等も含め、間接的には、維持管理に係わる教育・研修、市民啓発、技術支援、社会的発信等も含めるものとした。インフラメンテナンスは、最終的には「(施設の)点検・補修」という実践行為に至るが、市民参画の観点からは、対象範囲を拡げて考えることが重要であるとしている。なお、「市民参画」の「市民」には、団体・個人を問わず、多様なものが含まれると考えている。
・収集内容;必須事項として〔実施場所/市民活動の主体/活動の概略内容〕、また追加事項として〔協働行政部署/実施時期・期間/協働の経緯/協働の種類(領域と役割)/協働事業の段階/費用負担の具体/コーディネーター〕とした。
・収集方法;自主的な収集と、土木学会アンケート調査結果の利用の2つの方法に依った。前者は、主として市民参画フォーラム、特に事例WGのメンバーに情報提供を求めた。主としてマークした情報は、国民会議インフラメンテ大賞等の受賞、土木学会表彰(市民普請関係)などであり、一般メディアも含めた。一方で、土木学会シビルNPO推進小委員会は、各地域の市民協働の活動の中で、シビルNPOが有効に活かされることを願って、地方自治体、シビルNPO及び大学・高専を対象に、市民協働に関するアンケート調査を平成29年度に実施しており、その成果を利用させて頂くこととした。その内、地方自治体回答の438件(自治体数としては258件)を対象とした。
〇収集結果
対象施設と活動分野ごとに収集結果を表−1に示す。学会アンケートのうち、何らかの形でインフラメンテナンスに係る件数は全173件であったが、環境美化・清掃のみの活動も少なくなく、それらは一応除くこととし、その結果が78件である。そのうち整理対象としたのが17件、自主収集36件と併せて全53件となった。
・水・河川系;市民が係りやすい河川分野以外に、湖沼、水路やダム分野でも事例が挙がった。河川分野では実際の維持補修も実践している事例があるのは注目されよう。

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・道路系;道路分野では点検・情報が半数以上となっているが、一般維持管理や除雪、更には道路整備が挙がっている。橋梁分野でも、高欄の塗装とは言え、実際の補修作業が含まれている。
・地域・まちづくり系;公園や公共施設もここに含めた。公園では市民が参加しやすい維持管理分野が多くを占める。公共施設関係は1例である。まち・地域関係ではまちづくり分野が多く、他の計画対応や指針づくり、防災関係も数は少ないが挙がっている。 
〇横断的考察
・活動主体;参画する「市民」の分類と事例を表−2に示す。活動団体にも種々あることが分る。団体の種別で活動の分野は大きく変わることはないとみられる。特に道路を対象にした教育機関の関与が注目されよう。市民・事業者については特定の認定等を受ける場合や、何の資格も無くて登録するだけで参加できるものもある。地域住民の事例として単なる通報ではなく、福島県天栄村や南会津町のように一定の力が必要なもの(道路等の補修作業)もあり、注目される。

・学の関与について
事例には大学・高専および工業高校が専門的知識をもって参加・関与しているものもある。表−2のうち、福島県南会津町の橋梁に係る事例については「ふくしまインフラ長寿命化研究会」が関与している。同会の会長の日本大学工学部土木工学科の岩城一郎教授の主導のもと、橋に限定されず、道路も含んで、住民と学生の協働により多彩な活動を展開している。長崎大学の道守養成ユニットや、岐阜大学における「社会基盤メンテナンスエキスパート(ME)養成講座」も同様な事例と考えられる。継続性に心配がある市民団体に比し、大学等の場合はその懸念が小さく、活動の継続性を考える上では、学の関与は大きな意味を持つといえよう。

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・背景としての行政側の制度・事業
団体、個別の市民・事業者を問わず、活動を継続するうえで、重要であるのは管理者の支援である。表−3はその支援の内容ごとに制度的な事例を示す。一般市民の参画を得るためには、前提となるサービス提供が当然であり、DやEの支援は必須と言えるが、団体として期待するのはA〜Cの即物的な支援であろう。図−1はAの国交省のプログラムのスキームである。
ここで注目されるのはBであるが、土木学会でいう「市民普請」を促進するものと言える。このような取組みは農水省関係に多いと見られる(写真)。
なお、京都市では、「公共土木施設の維持管理に係る市民協働指針 みんなで守る“道・川・みどり”京のまち」を平成29年に策定している。

〇今後に向けて
事例WGが目指す姿は「インフラメンテナンスの事例や社会実験から新しい効率的な仕組みがつくられ、全国の自治体で採用され効果を上げている」である。事例収集はその第一歩的なものであるといえるが、先ずは、このように様々な市民参画の展開事例が有ることの社会的な発信が考えられる。
また、今回の分析は、多く、先に示した「必須事項」に基づくものである。「追加事項」については、収集方法の限界から一部の事例でしか把握できなかった。今後、幾つかの事例に絞り込んで、その活動組織および関係自治体にコンタクトして、核心的な情報の獲得を図り、現地での調査も行った上、さらにそれらの自治体や団体との協働についても、その可能性を検討する考えである。
なお、土木学会では「市民団体との協働活動促進のための方策検討」会議がスタートしている。また、このような動きを学問の対象とした研究もある。それらの動きとの関連も見据えた今後の活動とする必要が有ろう。

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第4回 鉄道の話―国鉄の民営化―

1872年(明治5年)新橋・横浜間に鉄道が開通し、明治維新の急速な近代化に拍車がかかりました。この時代の土木技術者は鉄道、港湾、河川を中心とした近代的なインフラ整備に邁進していました。鉄道事業は利用者から運賃を取って旅客や貨物を輸送することから、港湾整備、河川改修、道路整備などの公共事業と趣を異にしています。
日本の鉄道建設は、当初から国による建設と民間による建設が混在し、時に競争しながら進められました。そして1906年、全国的なネットワークを構成するため、骨格となる路線網を国有化しました。第二次世界大戦後の1949年、復員者の受け入れなどで肥大化した組織を立て直すために、運輸省管轄から独立採算経営とすべく公共企業体の国鉄へと移行しました。しかし、鉄道のインフラ整備には膨大な資金が必要であり、独力で新幹線や都市鉄道を整備することは大変難しく、現在でも様々な国の交付金や補助金の制度が組み込まれています。国鉄は財政面から独立採算を建前とした公共企業体という形が破たんし、経営面での法的な制約も多く、労働問題の多発やサービス面での遅れが重なり、1987年、民営分割されて現在のJR体制となり、以来30年、大きな発展を遂げてきました。
日本の鉄道がお手本としてきたヨーロッパの鉄道に、国鉄が貢献したビッグプロジェクトが二つあります。その一つは新幹線です。1964年、東京オリンピックに合わせて開業した東海道新幹線の成功は、斜陽化したヨーロッパの鉄道再生に強いインパクトを与え、鉄道ルネッサンスと呼ばれるようになりました。二つ目が国鉄の民営化です。そのほとんどが国営・公営であるヨーロッパの鉄道に、再生に向けた大きなインパクトを与え、各国で民間企業の参入など活性化施策が相次いでいます。JR発足から30年を経て、本年2020年1月にフランス国鉄も市場開放も含めた新しい体制へと移行を始めました。 (代表理事 山本 卓朗)
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2020年08月01日

『インフラツーリズムの体験』

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シビルNPO連携プラットフォーム 常務理事 協働推進部門担当
日本ファシリティマネジメント協会 インフラマネジメント研究部会副部会長
インフラメンテナンス国民会議 市民参画フォーラムリーダー
アイセイ(株) 代表取締役 岩佐 宏一


コロナ禍の自粛要請から県をまたぐ移動の自粛が解除されたころ、群馬県内横川から軽井沢間の信越本線新線跡地で開催されている『廃線ウォーク』に参加した。この廃線ウォークはJRから譲り受けた跡地を所有する安中市と安中市観光機構がインフラツーリズムとして活用しているイベントである。
浅間山、榛名山、妙義山に囲まれた急峻な地形でアプト式ラックレールの旧線は、鉄道を知る方々には非常に有名な場所である。
これだけではぱっとイメージが付かないだろうと思い、この地のもう一つのキーワード「峠の釜めし」も紹介。高崎のだるま弁当、群馬のソウルフードである登利平の鳥めし弁当。これらに並ぶ「おぎのやの釜めし」の誕生の地である。益子焼の窯に炊き込みご飯、鶏肉、ウズラの卵、栗、杏子..が昔から変わらずの配置で納まっており、箸休めでキュウリやワサビ漬けといった漬物が添えられている。思い出すだけで空腹になる。

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廃線ウォークはその横川で始まる。安中市の峠の湯で参加者が集まり、ここから軽井沢までの最大急こう配66.7‰の碓井峠を越える旅がスタートする。当時のままの状態で残る線路を歩くのでスタンドバイミー気分である。枕木の上や歩きづらいバラストの上を歩き、まず短いトンネル(下り第1ずい道)に到着、縦長馬蹄形のトンネルは当時を思い出させるほど趣がある。職業柄トンネル覆工面の損傷を気にしてしまうが、大きな損傷がないのは国鉄の施工の良さと感じた。さて次に見えるは延長1.2kmほどある、下り第2ずい道だ。ガイドがひたすら歩くイベントを敷設された信号や照明を当時のように稼働させ、急こう配を下るトンネル内の運転は、先が見えないため恐ろしいほどの緊張感があったなど運転手の気持ちを話し飽きさせない。見どころも満載だ。第2ずい道と第3ずい道の間には、重要文化財の碓井第三橋梁、通称めがね橋が見える。国道18号旧道から見ためがね橋とは異なり、普段立ち入りができない場所からの眺めは抜群である。今回は生憎の雨だったが、モヤがかかるトンネルの中、橋梁からの眺めは梅雨ならでは風情を感じる。このような廃線ウォークは一人6,500円(峠の釜めし付き)、中間地点の旧熊ノ平駅からさらに上り軽井沢を目指すこともよし。折り返して重要文化財が並ぶアプトの道で戻るのもよし10km以上の徒歩で1日を満喫できるのは価値がある。公共インフラに関わるものとして、生活の利便性だけでなく愛着を持てる地域に根差した公共インフラの在り方を学んでいきたいと改めて感じた。
最後に横川駅22時45分発、長野駅行特急あさま37号、最終日となった1997年9月30日の時刻表を眺める。

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