2020年09月01日

第4回 鉄道の話―国鉄の民営化―

1872年(明治5年)新橋・横浜間に鉄道が開通し、明治維新の急速な近代化に拍車がかかりました。この時代の土木技術者は鉄道、港湾、河川を中心とした近代的なインフラ整備に邁進していました。鉄道事業は利用者から運賃を取って旅客や貨物を輸送することから、港湾整備、河川改修、道路整備などの公共事業と趣を異にしています。
日本の鉄道建設は、当初から国による建設と民間による建設が混在し、時に競争しながら進められました。そして1906年、全国的なネットワークを構成するため、骨格となる路線網を国有化しました。第二次世界大戦後の1949年、復員者の受け入れなどで肥大化した組織を立て直すために、運輸省管轄から独立採算経営とすべく公共企業体の国鉄へと移行しました。しかし、鉄道のインフラ整備には膨大な資金が必要であり、独力で新幹線や都市鉄道を整備することは大変難しく、現在でも様々な国の交付金や補助金の制度が組み込まれています。国鉄は財政面から独立採算を建前とした公共企業体という形が破たんし、経営面での法的な制約も多く、労働問題の多発やサービス面での遅れが重なり、1987年、民営分割されて現在のJR体制となり、以来30年、大きな発展を遂げてきました。
日本の鉄道がお手本としてきたヨーロッパの鉄道に、国鉄が貢献したビッグプロジェクトが二つあります。その一つは新幹線です。1964年、東京オリンピックに合わせて開業した東海道新幹線の成功は、斜陽化したヨーロッパの鉄道再生に強いインパクトを与え、鉄道ルネッサンスと呼ばれるようになりました。二つ目が国鉄の民営化です。そのほとんどが国営・公営であるヨーロッパの鉄道に、再生に向けた大きなインパクトを与え、各国で民間企業の参入など活性化施策が相次いでいます。JR発足から30年を経て、本年2020年1月にフランス国鉄も市場開放も含めた新しい体制へと移行を始めました。 (代表理事 山本 卓朗)
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2020年08月01日

『インフラツーリズムの体験』

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シビルNPO連携プラットフォーム 常務理事 協働推進部門担当
日本ファシリティマネジメント協会 インフラマネジメント研究部会副部会長
インフラメンテナンス国民会議 市民参画フォーラムリーダー
アイセイ(株) 代表取締役 岩佐 宏一


コロナ禍の自粛要請から県をまたぐ移動の自粛が解除されたころ、群馬県内横川から軽井沢間の信越本線新線跡地で開催されている『廃線ウォーク』に参加した。この廃線ウォークはJRから譲り受けた跡地を所有する安中市と安中市観光機構がインフラツーリズムとして活用しているイベントである。
浅間山、榛名山、妙義山に囲まれた急峻な地形でアプト式ラックレールの旧線は、鉄道を知る方々には非常に有名な場所である。
これだけではぱっとイメージが付かないだろうと思い、この地のもう一つのキーワード「峠の釜めし」も紹介。高崎のだるま弁当、群馬のソウルフードである登利平の鳥めし弁当。これらに並ぶ「おぎのやの釜めし」の誕生の地である。益子焼の窯に炊き込みご飯、鶏肉、ウズラの卵、栗、杏子..が昔から変わらずの配置で納まっており、箸休めでキュウリやワサビ漬けといった漬物が添えられている。思い出すだけで空腹になる。

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廃線ウォークはその横川で始まる。安中市の峠の湯で参加者が集まり、ここから軽井沢までの最大急こう配66.7‰の碓井峠を越える旅がスタートする。当時のままの状態で残る線路を歩くのでスタンドバイミー気分である。枕木の上や歩きづらいバラストの上を歩き、まず短いトンネル(下り第1ずい道)に到着、縦長馬蹄形のトンネルは当時を思い出させるほど趣がある。職業柄トンネル覆工面の損傷を気にしてしまうが、大きな損傷がないのは国鉄の施工の良さと感じた。さて次に見えるは延長1.2kmほどある、下り第2ずい道だ。ガイドがひたすら歩くイベントを敷設された信号や照明を当時のように稼働させ、急こう配を下るトンネル内の運転は、先が見えないため恐ろしいほどの緊張感があったなど運転手の気持ちを話し飽きさせない。見どころも満載だ。第2ずい道と第3ずい道の間には、重要文化財の碓井第三橋梁、通称めがね橋が見える。国道18号旧道から見ためがね橋とは異なり、普段立ち入りができない場所からの眺めは抜群である。今回は生憎の雨だったが、モヤがかかるトンネルの中、橋梁からの眺めは梅雨ならでは風情を感じる。このような廃線ウォークは一人6,500円(峠の釜めし付き)、中間地点の旧熊ノ平駅からさらに上り軽井沢を目指すこともよし。折り返して重要文化財が並ぶアプトの道で戻るのもよし10km以上の徒歩で1日を満喫できるのは価値がある。公共インフラに関わるものとして、生活の利便性だけでなく愛着を持てる地域に根差した公共インフラの在り方を学んでいきたいと改めて感じた。
最後に横川駅22時45分発、長野駅行特急あさま37号、最終日となった1997年9月30日の時刻表を眺める。

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第4回 アーチの話

第4回はアーチの話です。前回アーチ橋が出てきましたが、アーチについて少し詳しくお話しします。

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アーチは上から荷重がかかると部材の中に圧縮力(反対は引張力、押される力)だけが作用するという特徴があります。そのためにローマの水道橋では石積みのアーチ橋が延々と続いています。古いトンネルの覆工にレンガを積んだものもあります。これは全て部材に圧縮力だけが作用するので可能な構造です。

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アーチ橋は支点に鉛直力と水平力が作用します。山間部のアーチ橋は岩盤がこの水平力を受けるので、きれいな姿を表します。この水平力が働かないようにアーチの両端を結んだものがタイドアーチです。支点に水平力が作用しないので都市内の軟弱地盤でも使えます。

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昔のアーチ橋はアーチだけで設計していましたが、全ての部材を設計上考慮したものがローゼ橋です。アーチ橋の適用は120mと前回書きましたが150mぐらいに広がります。更にこの部材を斜めにするともっと支間を長くできるというのがニールセン橋です。適用支間は170mぐらいになります。これを組み合わせたのがニールセンローゼ橋です。設計技術が進歩して全ての部材を設計に取り込んだおかげですが、構造物としての余裕は少なくなっています。写真はアーチ橋写真集から借用しました。

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以上
(理事・事務局長 内藤堅一)


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