2019年01月01日

共通価値の創造(CSV)とは

世の中の社会課題を本業で解決するCSV事業

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第3回となるCNCPサロンは、12月11日(火)17時20分から神田錦町の「ちよだプラットフォームスクェア」で、野村総研の西尾紀一氏を講師に迎えて、CSVについて解説していただいた。
CSV(共通価値の創造=Creating Shared Value)というコンセプトは、2011年にハーバード大のマイケル・E・ポーター教授により提唱された。企業活動において、社会課題の解決と企業の利益創出を両立させて、企業に新たなビジネスチャンスをもたらそうというものである。社会的価値と経済的価値は企業活動において離れていると思われていたが、重なる部分もあり、そこをCSV活動領域=共通価値が創造される領域ととらえる。

社会課題に対応することで社会的価値を創造し、同時に経済価値も創造できるアプローチである。これは、慈善活動ではなく、あくまでも収益モデルを持つ事業として取り組むことで創造される。CSR(企業の社会的責任)が社会に負の影響を及ばさないようにする予防=守りの取り組みに対して、CSVは事業を通じた社会課題解決活動=攻めの取り組みといえる。
CSV事業の国内事例として、伊藤園の茶産地育成事業(コンセプト:産地と伊藤園の共栄、背景:茶葉の需要増大なるも茶農家の減少、実施した活動:契約栽培と新産地事業)が紹介された。ここでの共通価値は、■社会的価値:農村部の地域振興(農業発展)、担い手不足の解消 ■企業にとっての価値:国産茶葉(原料)の安定供給、品質向上、とのことである。
つぎに講師より、国家レベルの課題「増大する国民医療費」の対応として、企業の健康経営(健康管理を経営課題としてとらえ、従業員の健康の維持・増進と会社の生産性向上をめざす経営手法)とCSVをからめてアプローチする概念図が提起された。
今回、なじみのない概念であったCSVの概略を教えていただいて、我われNPO活動に携わるものとして、社会貢献のあり方についてより多面的に知ることができた。私事であるが、筆者の属する団体は事業型NPOとして活動してきたが、CSVと競合ではなく協働できることもわかった。
一方で、事業として取り組む企業の信用と信頼をえるために、我われも実績をあげ組織を整えなければならないと思った。
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2018年09月01日

NSW州道路局とのワークショップ

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NPO法人SLIM Japan 理事長 有岡 正樹


これまで9回に分けて連載してきた経緯からも分かるように、今回5日間のシドニー視察旅行もいよいよ最終日である。その日の夜行便で帰国するというあわただしいスケジュールで、今回の中でも重要視していたNSW州道路海事庁(Roads and Maritime Services:RMS)とのワークショップが、シドニー西部パラマッ中核都市パラマッタの州政府付属施設で開催された。

1.ワークショップの概要
日本側からは訪豪者8名、オーストラリア側は3名の日本人 駐在員含め10名の、計19名で右表に示すスケジュールでの5時間のワークショップである。
話題提供テーマ(右表黒太字)としては、オーストラリア側からは、RMSのColin Langford部長による「州の自動車道と橋梁のアセットマネジメント」および国際コンサルタントKPMG取締役のRuth Lawrence女史の「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)と社会的インパクト」と題しての2つの講演と、日本側からは筆者が「インフラメンテナンス国民会議活動」、皆川勝東京都市大教授(現副学長)が「インフラマネジメントにおける市民組織の関与」という2課題を分担して、日本のインフラメンテの現況を報告した。

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ワークショップというと4, 5人で小机を囲み、ポストイットを用いてとなるが、言語の問題もあり講演後は1,2の質問のみとして、表の朱字で示すように、我々による日本の地方自治体や市民組織による活動紹介のあとは立食のサンドイッチを片手に、Ruthの講演の後はアフタヌーンティーを楽しみながら、それぞれセミナー室と隣り合う部屋で、45分ほど時間をかけて意見交換を行うように手配してくれた。途切れることなく5時間を有効に使っての、オージー流の合理性を垣間見ることができたのではと思っている。

2.オーストラリアにおけるソーシャルキャピタルとソーシャルインパクト
オーストラリア側の2つの話題の内、最初のColin Langford氏の州道路のアセットマネジメントについては、これまでのシリーズの関係で前回(9)で皆川先生が寄稿されているので、筆者については後者のDr. Ruth Lawrence(次ページ右上写真)のとくにソーシャルインパクトボンド(SIB)に関連して触れておきたい。CNCPでは2016年よりNPOファイナンス研究会において、とくに社会的起業に対する新しい資金調達の仕組みとして注目され出しているSIBについて勉強し、CNCPのNPO法人会員が関係している事業に適用できないかの検討を始めていた。
一方、2017年3月横浜で開催された「ソーシャルインパクト・フォーラム 横浜2017」に参加して、KPMGオーストラリア重役のLth Lawrence女史の‘Trends, Performance and Challenges of SIB in Australi’という講演を聞いたが、それが終わって休憩時間に彼女に話し掛け、“いまCNCPではNPO事業にSIBが適用できないか研究しているので、また機会がればぜひ意見交換を願いたい”と自己紹介しておいたのが始まりである。

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そしてその機会は意外と早くやってきて、このシリーズで書いている視察旅行で11月に訪豪し、インフラメンテをテーマにセミナーを行うので、その機会にぜひ講演をお願いしたいとメールで持ち掛けていた。同年6月末に彼女が再度国際会議で来日した際に具体的な打ち合わせをして、上述した今回のテーマで講演を依頼していたのである。
  このテーマはいわゆる土木屋にとっては耳慣れない用語ではある。ただ、NPOファイナンス研究会での検討や、最近はインフラメンテ国民会議に関連してソーシャルインパクト評価の適用などもあって、認識を共有できる概念ではあるが、当初は私も含めて、日本で外国でのことを学んでも馬の耳に念仏といったところであった。せっかく知り合った世界でのその道のプロであるDr Ruth Lawrebceとの縁もあってよい機会であるので話を聞いてみようとなった訳である。紙面の関係でその内容について触れることはできないが、話の流れは以下の通りである。
1. インパクト投資の定義
2. マーケットの状況
3. 取引のタイプ
4. オ―ストラリアでの市場
5. ソーシャルインパクトボンド(SIB)
6. 事業化調査(FS)
7. ソーシャルキャピタル(社会関係資本)
このうちSIBについては、本CNCP通信の  「NPOファイナンスシリーズ」で何回か触れている。また、ソーシャルキャピタルについては本通信Vol.18(平成17年10月号)「用語としての『ソーシャル・キャピタル』の偶然」で書いている。参照願いたい。

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3.そしてその後
  今回のワークショップのコーディネーターであったDr John BlackもSIBの話を具体的に聞くのは初めてということで、そのあとの意見交換会で彼女を捕まえて結構長く話をしていたが、SLIMとして何か具体的な検討をしているのであれば彼女と意見交換してみたいとの事であった。早速CNCPのNPOファイナンス研究会で議論している、電線の地中化、バイオマス発電、さらには津波がれき処理(Green Hill)事業などのPPTスライドを送ってそれについて説明した。
  彼は後日彼女に会って、当方が提案したテーマは “今いきなり言われても”とのことだったが、例えばということで、高齢化社会の日本の‘高齢者運転と交通事故’に対し、運転免許の返上とそれに対するサービスの提供といったスキームとしてあり得るという点で合意したようだ。オーストラリアでも関心のあるテーマで、キャンベラ政府やシドニー大学でも調査が行われており、共同研究もあり得るということだ。‘瓢箪から駒’とはいくまいが、これからもこうした繋がりは保ちたい。
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2018年07月01日

豪州における公共事業民営化・道路PPP

〜熱い息吹を実感〜

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NPO法人SLIMジャパン理事
熊谷組執行役員 大島 邦彦


昨年(2017年)の11月9日より15日までの7日間、CNCP・SLIM合同メンバーによるシドニー視察旅行に参加した。昨年は熊谷組が手掛けた海外PPP(BOT)道路事業である香港イースタンハーバートンネル(EHC)事業の調査で2回香港を訪問したが、シドニーハーバートンネル(SHT)事業は今まで訪問の機会がなく、今回、本事業の組成および建設期間中の責任者であった有岡SLIMジャパン理事長からお誘い頂き、SHT事業の運営責任者であるKGオーストラリの橋爪所長ともお会いできる絶好の機会と思い参加した。
実のところ、行程曜日の関係から半分は観光気分であったが、本視察(旅行)記をまとめる上で、豪州の施策、動向等についての文献を整理し、今回の視察を振り返ってみると、最近我が国でもそういう動きが加速化しつつあるが、民営化やPPP、IoT技術の活用等を中心とする公共事業改革の世界的な大きな潮流の最前線に触れることが出来た、誠に有意義な視察であったと思えて来た。以下、視察報告として、豪州全体での公共事業民営化、PPPの動向、シドニー都市圏における有料道路PPPの状況及びSHT事業について、豪州PPP全体の中での位置づけや香港EHCとの対比における特長等について概要を述べる。
1.豪州及びNSW州の民営化、PPP実施状況
豪州政府の報告書(※文献)によると、豪州では1990年代から公共事業の民営化と民間資金によるインフラ整備、運営(PPP)並びに類似のスキームによる事業が相次いで実施されており、報告書記載の事業総数は2017年時点で200を超えており、その内訳は民営化(129件)、PPP(24件)、Franchaise(運営部分の権利を民間に譲渡するもの。18件)等となっている。また、分野別では電力(61件)、公共交通(34件)、航空・空港(30件)、道路(24件)等となっており、ほぼ全ての経済インフラが対象となっている。用語の定義が異なるが、道路分野のPPP及び空港民営化は、我が国ではコンセッション(公共施設等運営権)事業と整理されており、実施件数が空港(9件)、道路(1件)、下水道(1件)であることと較べれば、豪州では実施件数、内容とも我が国より圧倒的に先行している。我が国ではPPPやコンセッションは公共事業を補完し、その一部に過ぎないが、豪州では、民営化やPPPが主流となっている。今回の視察でシドニー空港、地下鉄、フェリー等の公共交通、SHTを始めとするいくつかの有料道路を利用したが、そのほぼ全てが民営化、PPP事業であることを改めて認識した。また、このような環境の中で、グローバルなインフラPPP事業を展開している豪州含む海外企業勢に我が国企業が互角に張り合うのは難しいのではとも感じた。

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図-1 豪州のインフラ民営化、PPP実施状況

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豪州のインフラ民営化、PPP実施状況(分野別)

※文献 Infrastructure and Transport PPPs and Privatisation in Australia, Australia Government BITRE ,August 2017

2.シドニー都市圏における有料道路PPP事業
今回、視察の主な目的はシドニーハーバートンネル(SHT)事業の視察であったが、シドニー都市圏では現在下記8事業が運営中であり、さらにM2と北部エリアを繋ぐNorth Connex事業とM4を拡幅、東進、M5を新設し、西部エリアと空港を結び、さらに第2のシドニー湾横断トンネル(West Harbour Tunnel)を建設する大規模事業であるWest Connex事業が進展中である。SHT事業は、これらシドニー都市圏の有料道路PPPの最初の事業であるだけでなく、前述した豪州PPP全体の創世事業として位置づけられ、その後のPPPスキームのモデルとなっている。数年前、日本で開催された日豪経済委員会で豪州・NSW州政府の代表による豪州PPPについて講演の中でSHT事業とそれを手掛けた熊谷組が何度か紹介され感激した記憶があるが、今回改めて文献レビューする中でそのことが実感、確認することが出来た。
なお、豪州道路PPP事業については、Cross CITY Tunnel事業の破綻・再生に見られるように実績交通量が需要予測を大幅に下回る事例が相次ぎ、需要リスクについての官民分担の見直しが行われており、実施ペースがスローダウンしているようであるが、シドニー都市圏を見る限り、事業スキームを見直しながら道路PPPは今後も積極的に導入されると思われる。また、道路PPP事業の最近の課題として、事業獲得の激しい競争の中で事業会社の寡占化が進行しており、その弊害が懸念されている。表にあげた8つの事業においても、SHT事業の運営会社を除いては事業会社は全てTransUrbanとなっている。TransUrbanはQld州の全有料道路路線を独占し、豪州全体の道路PPP事業の占有率は73%となっている。

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表-2 シドニー都市圏有料道路PPP事業

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図-2 シドニー都市圏有料道路PPP事業路線

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図-3  West Connex事業

3.香港EHC事業とシドニーハーバートンネル(SHT)事業の比較
冒頭でも述べたが、昨年別の機会で熊谷組が手掛けたもう一つの道路PPP(BOT)事業である香港EHC事業の総括調査のための視察に参加した。香港EHC事業は2016.8.6に30年間のBOT契約が終了し、施設所有権、運営権は香港政庁に返還され、現在はMOM(Maitenance,Operation and Management)という運営維持包括委託契約に移行している。

香港EHC事業とシドニーSHT事業は、同じBOT方式(民間による設計・施工、資金調達、維持管理、運営)であり、事業スキーム上の共通点も多いが、異なる点も多い。共通点の1つは、両事業とも民間提案である点であるが、香港EHCでは複数グループ参加の国際入札、SHTの場合は、他の応募者はなく提案内容が縦覧、承認され、事業者選定されている。最も大きな相違点は香港EHC事業は完全独立採算であり、民間事業者は料金設定を含む運営権を得る代わりに運営期間中の需要リスクの一切を負う。一方、SHT事業は、料金設定は州政府の権限であり、その代わりに最低交通量・収入は保証される。需要リスクとリターン(収益)の構造で言えば、香港EHCハイリスク・ハイリターン、SHT事業はローリスク・ロー(またはミドル)リターンであり、このことが両事業の資金調達構造に明確に現れている。結果として、香港EHC事業は料金改定に係わる協議、仲裁等で苦労したが、高いリターン(配当)を確保して、事業は大成功と評価されている。SHT事業についても、事業会社の橋爪所長へのヒアリングによると順調のようであり、4年余後成功裏の事業終了が期待できる。また、施設、システム面での大きな相違は、香港EHCでは料金所での有人及びEHCゲートでの料金徴収であり、車種別料金制であるが、豪州ではSHTはもちろん前頁図のシドニー都市圏有料道路PPP事業路線の有料道路では、一般道路との出入りを含め路上のゲートポイントからの信号を車載またはフロントガラスに張ったタグ(etag)で受信課金するETCシステムとなっている。SHTの料金はハーバーブリッジと同一で南行きのみ徴収、車種によらず均一であるが、ラッシュ時は4AS$、それ以外の時間帯は2.5〜3AS$に割引される。なお、公共交通機関で利用されるOPALカードも時間帯毎に料金が異なりデマンドコントロールが実施されている。(日本のSUICAやPASMOとはこの点が異なる。)

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表-3  香港EHCとシドニーSHT事業の比較

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図-4 香港EHC(料金所)

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図-5 シドニーハーバートンネル

まとめ
いつもながらであるが後悔先に立たずで、視察前に十分な事前調査をしておけばと反省しているが、百聞一見で今回の視察は大変に楽しく有意義でした。企画、段取り頂いた有岡理事長、橋爪所長、現地でアテンド頂いた秦泉寺様、参加メンバーの皆様ありがとうございました。次回も企画あれば参加致します。
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