2019年02月01日

休眠預金について考える

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シビルNPO連携プラットフォーム
理事・事務局長 内藤 堅一


シビルNPO連携プラットフォーム(CNCP)の事務局長をしています。CNCP通信を編集している立場ですが、急遽今月の巻頭言を書くことになりました。
今回は休眠預金について少し書いてみたいと思います。きっかけは、当NPOが入会している日本NPOセンターのメールマガジンVol.012(2019年1月31日)の見出しで「休眠預金という暴風がやってきて、NPOらしさが問われている」の記事でした。この記事はメールで会員及びサポーターに回付しています。
CNCP通信ではVol.46(2018年2月13日発行)のトピックスで当時の有岡正樹常務理事が「動き出した(略称)休眠預金等活用法」と題して1.法制化の経緯 2.活用の意義と仕組み 3.今後の方向 として取り上げています。毎年700億円程度になる休眠預金を民間公益活動に活用しようとするもので、「預金保険機構」から「指定活用団体」、「資金分配団体」を通して「民間公益活動を行う団体」に助成・寄付・出資を行うというものです。
前述のメルマガによると、現在の状況は「指定活用団体」の公募があり、1月11日に一般財団法人「日本民間公益活動連携機構」(JANPIA)が採択され、「資金分配団体」が公募されているとあります。
内閣府が2018年3月に発表した「休眠預金等交付金に係る資金の活用に関する基本方針」では、「国民への還元」「公共性」などとともに「革新性」、「成果」をあげることなどが強調されており、「社会的インパクト評価」で成果を測ることが定められています。「革新性」や「成果」をどのように解釈して反映するのか「資金分配団体」ごとの企画力が問われるところであり、「資金分配団体」を選定する「指定活用団体」の価値観が反映されるとあります。
「社会課題解決」の主体は多様化しており、もはやNPOだけがその担い手ではありません。休眠預金等活動制度によってその傾向はさらに加速するでしょう。そのような状況で、なぜ、NPOとして活動を行っていくのか。「NPOらしさ」とは何かが改めて問われています。寄付や会費などの支援性財源にこだわることが、これまで以上に重要な意味を持ってくるのではないでしょうか。というのが論旨ですが、「休眠預金という暴風がやってきて、NPOらしさが問われている」の演題と直接結びつかず、私には難しい問題です。
CNCPでは、2018年に初めて2件の助成制度に応募しました。結果が出るのは今年の春ですが、大きな活動をするためにはそれなりの資金が必要です。 CNCPが実施してきたアワードでもソーシャルビジネスとしての「革新性」を求めていました。
企画サービス部門では、「新たな財務基盤の構築」の検討が始まります。各部門が「革新性」、「成果」を意識しながら研究活動、インフラメンテナンスの支援方策などを考えていく必要があると強く感じています。
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2019年01月01日

共通価値の創造(CSV)とは

世の中の社会課題を本業で解決するCSV事業

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第3回となるCNCPサロンは、12月11日(火)17時20分から神田錦町の「ちよだプラットフォームスクェア」で、野村総研の西尾紀一氏を講師に迎えて、CSVについて解説していただいた。
CSV(共通価値の創造=Creating Shared Value)というコンセプトは、2011年にハーバード大のマイケル・E・ポーター教授により提唱された。企業活動において、社会課題の解決と企業の利益創出を両立させて、企業に新たなビジネスチャンスをもたらそうというものである。社会的価値と経済的価値は企業活動において離れていると思われていたが、重なる部分もあり、そこをCSV活動領域=共通価値が創造される領域ととらえる。

社会課題に対応することで社会的価値を創造し、同時に経済価値も創造できるアプローチである。これは、慈善活動ではなく、あくまでも収益モデルを持つ事業として取り組むことで創造される。CSR(企業の社会的責任)が社会に負の影響を及ばさないようにする予防=守りの取り組みに対して、CSVは事業を通じた社会課題解決活動=攻めの取り組みといえる。
CSV事業の国内事例として、伊藤園の茶産地育成事業(コンセプト:産地と伊藤園の共栄、背景:茶葉の需要増大なるも茶農家の減少、実施した活動:契約栽培と新産地事業)が紹介された。ここでの共通価値は、■社会的価値:農村部の地域振興(農業発展)、担い手不足の解消 ■企業にとっての価値:国産茶葉(原料)の安定供給、品質向上、とのことである。
つぎに講師より、国家レベルの課題「増大する国民医療費」の対応として、企業の健康経営(健康管理を経営課題としてとらえ、従業員の健康の維持・増進と会社の生産性向上をめざす経営手法)とCSVをからめてアプローチする概念図が提起された。
今回、なじみのない概念であったCSVの概略を教えていただいて、我われNPO活動に携わるものとして、社会貢献のあり方についてより多面的に知ることができた。私事であるが、筆者の属する団体は事業型NPOとして活動してきたが、CSVと競合ではなく協働できることもわかった。
一方で、事業として取り組む企業の信用と信頼をえるために、我われも実績をあげ組織を整えなければならないと思った。
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2018年09月01日

NSW州道路局とのワークショップ

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NPO法人SLIM Japan 理事長 有岡 正樹


これまで9回に分けて連載してきた経緯からも分かるように、今回5日間のシドニー視察旅行もいよいよ最終日である。その日の夜行便で帰国するというあわただしいスケジュールで、今回の中でも重要視していたNSW州道路海事庁(Roads and Maritime Services:RMS)とのワークショップが、シドニー西部パラマッ中核都市パラマッタの州政府付属施設で開催された。

1.ワークショップの概要
日本側からは訪豪者8名、オーストラリア側は3名の日本人 駐在員含め10名の、計19名で右表に示すスケジュールでの5時間のワークショップである。
話題提供テーマ(右表黒太字)としては、オーストラリア側からは、RMSのColin Langford部長による「州の自動車道と橋梁のアセットマネジメント」および国際コンサルタントKPMG取締役のRuth Lawrence女史の「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)と社会的インパクト」と題しての2つの講演と、日本側からは筆者が「インフラメンテナンス国民会議活動」、皆川勝東京都市大教授(現副学長)が「インフラマネジメントにおける市民組織の関与」という2課題を分担して、日本のインフラメンテの現況を報告した。

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ワークショップというと4, 5人で小机を囲み、ポストイットを用いてとなるが、言語の問題もあり講演後は1,2の質問のみとして、表の朱字で示すように、我々による日本の地方自治体や市民組織による活動紹介のあとは立食のサンドイッチを片手に、Ruthの講演の後はアフタヌーンティーを楽しみながら、それぞれセミナー室と隣り合う部屋で、45分ほど時間をかけて意見交換を行うように手配してくれた。途切れることなく5時間を有効に使っての、オージー流の合理性を垣間見ることができたのではと思っている。

2.オーストラリアにおけるソーシャルキャピタルとソーシャルインパクト
オーストラリア側の2つの話題の内、最初のColin Langford氏の州道路のアセットマネジメントについては、これまでのシリーズの関係で前回(9)で皆川先生が寄稿されているので、筆者については後者のDr. Ruth Lawrence(次ページ右上写真)のとくにソーシャルインパクトボンド(SIB)に関連して触れておきたい。CNCPでは2016年よりNPOファイナンス研究会において、とくに社会的起業に対する新しい資金調達の仕組みとして注目され出しているSIBについて勉強し、CNCPのNPO法人会員が関係している事業に適用できないかの検討を始めていた。
一方、2017年3月横浜で開催された「ソーシャルインパクト・フォーラム 横浜2017」に参加して、KPMGオーストラリア重役のLth Lawrence女史の‘Trends, Performance and Challenges of SIB in Australi’という講演を聞いたが、それが終わって休憩時間に彼女に話し掛け、“いまCNCPではNPO事業にSIBが適用できないか研究しているので、また機会がればぜひ意見交換を願いたい”と自己紹介しておいたのが始まりである。

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そしてその機会は意外と早くやってきて、このシリーズで書いている視察旅行で11月に訪豪し、インフラメンテをテーマにセミナーを行うので、その機会にぜひ講演をお願いしたいとメールで持ち掛けていた。同年6月末に彼女が再度国際会議で来日した際に具体的な打ち合わせをして、上述した今回のテーマで講演を依頼していたのである。
  このテーマはいわゆる土木屋にとっては耳慣れない用語ではある。ただ、NPOファイナンス研究会での検討や、最近はインフラメンテ国民会議に関連してソーシャルインパクト評価の適用などもあって、認識を共有できる概念ではあるが、当初は私も含めて、日本で外国でのことを学んでも馬の耳に念仏といったところであった。せっかく知り合った世界でのその道のプロであるDr Ruth Lawrebceとの縁もあってよい機会であるので話を聞いてみようとなった訳である。紙面の関係でその内容について触れることはできないが、話の流れは以下の通りである。
1. インパクト投資の定義
2. マーケットの状況
3. 取引のタイプ
4. オ―ストラリアでの市場
5. ソーシャルインパクトボンド(SIB)
6. 事業化調査(FS)
7. ソーシャルキャピタル(社会関係資本)
このうちSIBについては、本CNCP通信の  「NPOファイナンスシリーズ」で何回か触れている。また、ソーシャルキャピタルについては本通信Vol.18(平成17年10月号)「用語としての『ソーシャル・キャピタル』の偶然」で書いている。参照願いたい。

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3.そしてその後
  今回のワークショップのコーディネーターであったDr John BlackもSIBの話を具体的に聞くのは初めてということで、そのあとの意見交換会で彼女を捕まえて結構長く話をしていたが、SLIMとして何か具体的な検討をしているのであれば彼女と意見交換してみたいとの事であった。早速CNCPのNPOファイナンス研究会で議論している、電線の地中化、バイオマス発電、さらには津波がれき処理(Green Hill)事業などのPPTスライドを送ってそれについて説明した。
  彼は後日彼女に会って、当方が提案したテーマは “今いきなり言われても”とのことだったが、例えばということで、高齢化社会の日本の‘高齢者運転と交通事故’に対し、運転免許の返上とそれに対するサービスの提供といったスキームとしてあり得るという点で合意したようだ。オーストラリアでも関心のあるテーマで、キャンベラ政府やシドニー大学でも調査が行われており、共同研究もあり得るということだ。‘瓢箪から駒’とはいくまいが、これからもこうした繋がりは保ちたい。
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