2018年01月01日

NPOファイナンス(8) SIB研修会(その1)

CNCP 常務理事 有岡 正樹


CNCP通信ではサービス提供部門NPOファイナンス研究会活動に関連して、「NPOファイナンス」シリーズ(1)〜(7)として連載してきた。このうち(4)および(7)については、ソーシャルインパク
トボンド(SIB)に関してであるが、以下の4つのCNCP事業についてその資金調達手法の適用性の検討 に入っている。
@ ウナギ完全養殖インフラ整備事業
A 電線の地中化事業
B インフラメンテナンスの国民理解啓発事業
C インフラメンテナンスの市民との協働事業化
この結果に基づき 10 月 25 日行われた第 6 回研究会では、社会的インパクト評価の専門家である新日本有限責任監査法人パブリック・アフェアーズグループリーダー高木麻美氏を講師に招いた SIB 研修会(その1)と称して、試行した 4 つの事業のロジックモデルの評価、指導を受けた。これには、NPO ファイナンス研究会メンバー以外の CNCP 関係者も加えて 13 名が参加した。概要は以下の通りである。
1.社会的インパックと評価概論
参加者のうち足立会員と筆者を除く 11 名については公に SIB に関する研修の受講経験がないので、具体的事例についての評価に先立ち社会的インパクト評価の概論に関する説明を受けた。その内
容については今期末までに「NPO ファイナンス研究成果報告書」として紹介するので省略するが、その共通認識的な定義と、その分析に用いるロジックモデルの概念図としては以下のとおりである。
‘短期、長期の変化を含め、事業や活動の結果として生じた社会的、環境的な
「アウトカム」を社会的インパクトと称し、その成果を定量的・定性的に把握 し、当該事業や活動につい
て価値判断を加えること。

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CNCP 社会的インパクト評価分析のロジックモデル概念図(研修会資料より)

2.試行事業について検討結果発表と意見交換
4 つの事業についての個々の結果については、次回「SIB 研修会(その2)」と合わせて報告するが、ここでは評価のロジックモデルとして共通する点について触れておきたい。
・インパクト評価の 2 つの視点
1) インパクトの定量評価とその SIB 組成の組み立て
2) アウトカムを論理的に評価するプロセスの明確化
今回の試行的検討では、@,Aの事業が前者に、B,Cの検討が後者に相当する。
・アウトカム評価により事業成果が左右される PFI/PPP この意味でもすごく興味のあるテーマであるので、引き続きその進展について話を聞きたいし、協力できることがあればぜひ一緒したい。
*3 月末ごろ「SIB 研修会(その2)」の開催を予定しているので、関心のある会員の参加を期待したい。
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2017年10月01日

NPOファイナンス(7)社会的インパクト評価について

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(特非)CNCP NPOファイナンス研究会 会員
(特非)社会基盤ライフサイクルマネジメント研究会理事
足立 忠郎


サービス提供部門のNPOファイナンス研究会では、NPO事業に本通信Vol.33で紹介したソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)という資金調達手法の適用可能性を検討しているが、そのメンバーとして社会的インパクト評価の研修に参加した結果を含めて、その活動概要を報告する。
1.社会的インパクト評価について
社会的インパクト評価は、社会的課題解決の担い手であるNPO/NGOやソーシャルビジネスなどの団体が生み出す「社会的な価値」=「社会的インパクト」を可視化する評価の枠組みとして、最近注目を集めている。
内閣府による社会的インパクト評価の定義は、「短期、長期の変化を含め、事業や活動の結果として生じた社会的、環境的なアウトカムを定量的・定性的に把握し、事業や活動について価値判断を加えること」であるが、そのアウトカムの多寡に準じて、事業に投じられた融資に対する返済額が左右されることになり、冒頭に述べたSIBにとって重要な指標となる。
これが注目を浴び出したのは、2013年G8サミットでのSIB推進の呼びかけに端を発するが、
・金融危機をきっかけに、資金の出し手となる助成財団や投資家がより成果を重視している。
・事業や活動の社会的な価値を可視化する必要性が認識されてきている。
といった、21世紀の入ってのグローバルな流れが背景にある(通信Vol.31参照)。

2.研修の主旨と概要
筆者は、平成29年7月27日終日のスケジュールで開催された褐共経営・社会戦略研究所主催の「社会的インパクト評価研修」に参加した。SIBの日本での第一人者である本研究所代表取締役で明治大学経営学部の塚本一郎教授による講義と、新日本有限責任監査法人高木麻美マネージャーによる実践的ワークショップ研修とを組み合わせて、インパクト評価設計のロジックや実践スキルの向上をめざすのがその主旨である。
講義においては、社会的インパクト評価の2大ツールである、ロジックモデルやインパクトマップについて塚本教授により詳しく説明があったあと、研修に先立って作成、提出していたロジックモデルについて、監査法人のスタッフがそれぞれのテーブルごとのファシリテーターとなり、その作成プロセスを確認していくというグループワークに始まり、インパクトマップの作成実習とその結果発表へと続く、密度の濃い研修となった。

3.CNCP関連事業への適用可能性への挑戦
CNCPサービス提供部門のNPO ファイナンス研究会では、これまで様々な形態の助成金やPPPファイナンス、さらには有限責任事業組合方式などを研究してきたが、社会的インパクト(アウトカム)を指標にして事業投資資金の返済を可能にするSIBを、社会的事業に関わるNPO法人にとって有力な資金調達手法と考えてきている。それらの初期FS的なCNCP関係事業として、以下の5つの事業についてその適用性を具体的に検討することにした。
@ インフラメンテナンスの国民理解啓発事業
A インフラメンテナンスの市民との協働事業化
B ウナギ完全養殖インフラ整備事業
C 電線の地中化事業
D 里山整備と木質バイオマス発電事業

4.研修での初期FS事例の紹介(インフラメンテナンスの市民との協働事業化)
研修において筆者が取り上げたテーマは、上記のうちAインフラメンテナンスの市民との協働事業化である。この事業は、@と共にインフラメンテナンス国民会議「市民参画フォーラム」のワーキンググループのデーマで、ワークショップ(WS)を数回開催してその具体化に入っているが、種々提起される活動(インプット)から結果(アウトプット)への移行は見通せても、それが短期、中期、長期(最終)の各段階でのインパクト(アウトカム)の評価にどう結びついていくのか、相関関係は見通せなかったのである。
今回の研修でそのテーマに本事業を選び、評価目的を「住民との協働活動への参加を促進すること」とし、ステイクホルダーを市民、行政(議会、首長、職員)、インフラメンテナンス国移民会議としてロジックモデルを作成した。
ロジックモデルは、事業の設計図として実施に必要な「資源」、具体的な「活動」、その活動がもたらす「結果」(下図の左側大枠)や、それが社会的インパクトである「社会・環境の変化」の短期〜長期(最終)的なアウトカム群(右大枠)にどう関係をしていくかを示し、事業目標に至るまでの論理的道筋(ロジック)を可視化するものであり、評価実施の前提となるものである。
ここでは「日常的に市民と行政が協働でインフラメンテナンスに関わっている」最終的な成果として、そこから逆説的に、中期、短期へとロジックを展開して行く手法を採用した。

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この事業の実行のためには、最終アウトカムから遡って列記された短期のうち最も効果的なインパクトに結びつく活動から、優先順位を付けて実施していくことになるのが理解される。また、WS等を何回か繰り返しながらこのロジックモデルを共有することにより、事業の途中段階で次善の策に変えていく際にも有用となろう。
一方インパクトマップは、これらの期別のアウトカムごとに、期待される変化、関わるステイクホルダー、評価の指標、データ源を列記、一覧表として作成するが、それを数値として具体化することが課題で、このマップがSIBの成否に関わってくることになる。
今後上記5つの事業に対し、社会的インパクト評価プロセスと、SIBの適用可能性を検討し折を見てサービス提供部門の活動成果として報告したい。
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2017年03月01日

NPOファイナンス(6)CNCP中間支援組織としての助成金制度への関わり方

CNCPサービス提供部門 NPOファイナンス研究会


1月30日(月)開催の第2回NPOファイナンス研究会では、12名のメンバーのうち8名が参加して、NPO法人活動での助成金制度提供について議論した。その中で、平成15年来その制度を利用して活動し成果を上げてきた、NPO法人「茨城の暮らしと景観を考える会」の三上靖彦代表理事に話題提供してもらったが、内容のうち@まちづくりの現場の事情、A当事者としての主体的実績づくり、B活動資金・助成金の獲得、C立場を強化すること、D助成金の種類、E助成金をゲットする、といった総論的な部分については、本CNCP通信の先月号で「NPOファイナンス(5)シビルNPOに対する助成金適用」と題して投稿して貰っている。
ただその報告では、話題提供後の意見交換内容と、本研究会に先立ってCNCP関連NPO法人に対して行ったアンケート結果、さらには中間支援組織としての今後の助成金制度への関わり方等については触れていないので、この機会に整理、報告しておきたい。
1.「茨城の暮らしと景観を考える会」の助成金事業へのアプローチ
(1)事例紹介とエントリーシート
以下に示す事業概要と右図のようなエントリーシート実例の紹介があった。
@アートによる街の再生のための地域教育支援
Aセントラルビル創業支援プロジェクト
Bオセロでまちづくりを!
C天心が思い 大観が描き 雨情が詠んだ感度の故郷北茨城復興支援プロジェクト
D水戸城跡での歴史的会館づくり(→水戸城周辺歴史まちづくり完成記念式典)
E水戸市の市街地活性化
Fまちなかブランディング『粋な水戸っぽまちづくり』プロジェクト((株)まちみとラボの設立)
        *本通信p5〜6掲載記事参照
また、「映画づくりを起爆剤とした地域活性化」プロジェクトは11億円の自主事業で、桜田門のセット(3年間一般公開)を作ったり、北大路欣也など有名俳優などが参加する映画づくりやイベントなども紹介され、楽しいNPO活動の実態が紹介された。

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(2)まちづくり事業等の助成金事業への挑戦
地域の委員会活動などにも関わり、NPO活動は仲間との役割分担で、事業単位で関わることが多い。
・右図は平成15年NPO法人設立後の主要な活動を列記しているが、赤字は事業提案や具体的な事業推進に関わる活動を、また黒字は市の商工会議所や、国及び県の委員会等、地域への貢献に関わる活動を記している。
・そんな機会にいろいろの人とのつながりができ、‘三上に任せれば’という信頼関係ができて、行政からの予算を得やすくなるという相乗効果が期待される。

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・もちろんその背景として、成熟した実績と、リスクを取って思いを達成しようというアウトロール的なチャレンジマインドが必要である。
・これに対して立ち上げて間もない経験の浅いNPO法人等が提案型で助成金を得たとしても、助成金を出す側の思いに左右される(目的、範囲等の制限)ことになり、実施する側の思いを貫くことは難しい。
2.インフラメンテナンス事業での対応
インフラメンテナンス国民会議でも、自治体支援フォーラムが立ち上げられていることに関連して以下のような意見交換がなされたが、まちづくりとは分野が異なり、その難しさが再認された。
・道路橋の維持管理についてNPOとしての支援をある市に提案をしたが、結果的には体の良い門前払い同然であったことに対しては、まちづくりとは上部組織との関係で基本的に違いがあると思う。まちづくりでは、「景観と観光」といったテーマで国自身が新しい公助・共助の原則を打ち出しており、民間の事業化意識(ひいては提案)が求められているのとは大きな背景の違いがある。
・自治体としては、予算、発注、契約、検査・確認が回れば役目を果たしたことになるという実績優先のルーチンから出ようとはしない。その背景としては、困っているという意識がなく、担当者も2,3年で変わるといった現実がある。こうした商習慣(行政の事業遂行パターン)を変えていくのは容易ではない。

3.CNCPでの支援の可能性と逼迫度
NPOファイナンス研究会では、その設立準備会段階の平成27年4月および今回の第2回研究会開催前の29年1月の2回に分けて、CNCP会員関連のNPO法人に対し「助成金制度の適用状況」についてアンケートを行った。その結果は右図の通りであるが、とくに直近の結果では、過半が助成金制度には全く依存していないことが判明した。また、「Aあるが活動の主体ではない」と答えた4法人のうち2つは、今後対応する方針ではないとのことで、今回の調査に関する限り、CNCPが中間支援組織として助成金制度適用で会員NPO法人を支援することのニーズをくみ取ることができなかったことになる。

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4.CNCP NPOファイナンス研究会の今後の対応
土木学会小委員会レベルを含め、これまで8年余に及ぶシビルNPO法人活動の議論では、常にその活動資金の調達が課題の一つとなってきた。今回の助成金適用を含め今後とも研究会で議論を進めていく予定であるが、その方針について、以下に要約しておきたい。
(1) 助成金
上述の様に現況ではさらなる議論は行わないが、今後の活動状況に応じて助成金適用が具体化した場合には、本研究会として三上会員等それに通じた会員等からのアドバイスを受けて案件ごとに対応することにする。
(2) ソーシャルファイナンス手法の適用
これまでも本通信でNPOファイナンス・シリーズとして紹介してきたSIB(ソーシャルインパクト・ボンド)の適用等を含め、右図に示すCNCP独自の「会員シビルNPO向け助成制度」の創設を含め、引き続きシビルNPO活動に相応しいハイブリッドな資金調達について、議論を継続していきたいと考えている。

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