2018年02月01日

動きだした(略称)休眠預金等活用法

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CNCP常務理事・サービス提供部門長 有岡 正樹


この1月より「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」(平成28年法律第101号として2016年12月2に成立、以下休眠預金等活用法)が施行され、内閣府が民間公益活動促進のための休眠預金等活用に関する業務を担当し、金融庁が 休眠預金等の各金融機関から預金保険機構への移管、預金者への返還に係る部分を所管することになった。2009年1月1日以降10年以上取引のない預金等(休眠預金等)は、民間公益活動に活用されることとなる。
CNCPでは「休眠預金等活用の基本方針策定に向けた地方公聴会」に参加する機会があったので、法が施行されたのを機に、NPOファイナンスシリーズのテーマとしてその概要を紹介しておきたい。
1.法制度化の経緯
2014年4月休眠預金の社会的活用の重要性への認識を共有する国会議員が集い、その法制化を推進するため「休眠預金活用推進議員連盟」を設立し議論を重ねて、2016年5月に議員立法法案として国会に提出、衆議院財務金融委員会で審議され、同年11月可決、12月に法として成立したものである。
その後休眠預金等活用審議会によりその施行に必要な基本方針策定の検討がなされ、2017年9月にまとめられた「議論の中間整理」に基づき上記の地方公聴会が、9月20日〜10月2日にかけて東京、大阪他5都市で開催された。その後2ヶ月で6回の審議会が集中開催され、12月26日の第10回審議会でその施行案がまとまられ、本年1月の施行に至った。

2.活用の意義と仕組み
諸外国では、休眠預金を国庫に組み入れたり、福祉事業等に限って活用している例もあるが、我が国においては、払戻額を差し引いても毎年 700 億円程度にものぼる休眠預金等は、@預金の公共的役割等に照らし、A「人口急減・超高齢化社会」到来に備えて、それを活用し、広く国民一般に還元することとしている。
休眠預金等の移管・管理・活用の仕組みは上記議員連盟ウェブサイト「法律案概要」によれば右図の通りである。その活用分野としては、
@ 子ども及び若者の支援に係る活動
A 日常生活又は社会生活を営む上での困難を有する者の支援に係る活動
B 地域社会における活力の低下その他の社会的に困難な状況に直面している地域の支援に係る活動
の3分野と、それに準ずるものとして内閣府令で定める活動を上げている。

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3.今後の方向
法の施行は基本方針の確定後が通常だが、それがずれて3月末になるとの予定でもあり、まだ社会の関心は大きくない。ガイドラインの作成などを得て動きだすまでには、いま少し時間が掛かりそうである。民間公益活動の範囲、「顔の見えない」貸し手、指定活用団体の役割と位置付け等、試行錯誤的な段階を経て、外部資金や社会的投資の呼び水となるような制度化を期待したい。
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2018年01月01日

NPOファイナンス(8) SIB研修会(その1)

CNCP 常務理事 有岡 正樹


CNCP通信ではサービス提供部門NPOファイナンス研究会活動に関連して、「NPOファイナンス」シリーズ(1)〜(7)として連載してきた。このうち(4)および(7)については、ソーシャルインパク
トボンド(SIB)に関してであるが、以下の4つのCNCP事業についてその資金調達手法の適用性の検討 に入っている。
@ ウナギ完全養殖インフラ整備事業
A 電線の地中化事業
B インフラメンテナンスの国民理解啓発事業
C インフラメンテナンスの市民との協働事業化
この結果に基づき 10 月 25 日行われた第 6 回研究会では、社会的インパクト評価の専門家である新日本有限責任監査法人パブリック・アフェアーズグループリーダー高木麻美氏を講師に招いた SIB 研修会(その1)と称して、試行した 4 つの事業のロジックモデルの評価、指導を受けた。これには、NPO ファイナンス研究会メンバー以外の CNCP 関係者も加えて 13 名が参加した。概要は以下の通りである。
1.社会的インパックと評価概論
参加者のうち足立会員と筆者を除く 11 名については公に SIB に関する研修の受講経験がないので、具体的事例についての評価に先立ち社会的インパクト評価の概論に関する説明を受けた。その内
容については今期末までに「NPO ファイナンス研究成果報告書」として紹介するので省略するが、その共通認識的な定義と、その分析に用いるロジックモデルの概念図としては以下のとおりである。
‘短期、長期の変化を含め、事業や活動の結果として生じた社会的、環境的な
「アウトカム」を社会的インパクトと称し、その成果を定量的・定性的に把握 し、当該事業や活動につい
て価値判断を加えること。

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CNCP 社会的インパクト評価分析のロジックモデル概念図(研修会資料より)

2.試行事業について検討結果発表と意見交換
4 つの事業についての個々の結果については、次回「SIB 研修会(その2)」と合わせて報告するが、ここでは評価のロジックモデルとして共通する点について触れておきたい。
・インパクト評価の 2 つの視点
1) インパクトの定量評価とその SIB 組成の組み立て
2) アウトカムを論理的に評価するプロセスの明確化
今回の試行的検討では、@,Aの事業が前者に、B,Cの検討が後者に相当する。
・アウトカム評価により事業成果が左右される PFI/PPP この意味でもすごく興味のあるテーマであるので、引き続きその進展について話を聞きたいし、協力できることがあればぜひ一緒したい。
*3 月末ごろ「SIB 研修会(その2)」の開催を予定しているので、関心のある会員の参加を期待したい。
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2017年10月01日

NPOファイナンス(7)社会的インパクト評価について

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(特非)CNCP NPOファイナンス研究会 会員
(特非)社会基盤ライフサイクルマネジメント研究会理事
足立 忠郎


サービス提供部門のNPOファイナンス研究会では、NPO事業に本通信Vol.33で紹介したソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)という資金調達手法の適用可能性を検討しているが、そのメンバーとして社会的インパクト評価の研修に参加した結果を含めて、その活動概要を報告する。
1.社会的インパクト評価について
社会的インパクト評価は、社会的課題解決の担い手であるNPO/NGOやソーシャルビジネスなどの団体が生み出す「社会的な価値」=「社会的インパクト」を可視化する評価の枠組みとして、最近注目を集めている。
内閣府による社会的インパクト評価の定義は、「短期、長期の変化を含め、事業や活動の結果として生じた社会的、環境的なアウトカムを定量的・定性的に把握し、事業や活動について価値判断を加えること」であるが、そのアウトカムの多寡に準じて、事業に投じられた融資に対する返済額が左右されることになり、冒頭に述べたSIBにとって重要な指標となる。
これが注目を浴び出したのは、2013年G8サミットでのSIB推進の呼びかけに端を発するが、
・金融危機をきっかけに、資金の出し手となる助成財団や投資家がより成果を重視している。
・事業や活動の社会的な価値を可視化する必要性が認識されてきている。
といった、21世紀の入ってのグローバルな流れが背景にある(通信Vol.31参照)。

2.研修の主旨と概要
筆者は、平成29年7月27日終日のスケジュールで開催された褐共経営・社会戦略研究所主催の「社会的インパクト評価研修」に参加した。SIBの日本での第一人者である本研究所代表取締役で明治大学経営学部の塚本一郎教授による講義と、新日本有限責任監査法人高木麻美マネージャーによる実践的ワークショップ研修とを組み合わせて、インパクト評価設計のロジックや実践スキルの向上をめざすのがその主旨である。
講義においては、社会的インパクト評価の2大ツールである、ロジックモデルやインパクトマップについて塚本教授により詳しく説明があったあと、研修に先立って作成、提出していたロジックモデルについて、監査法人のスタッフがそれぞれのテーブルごとのファシリテーターとなり、その作成プロセスを確認していくというグループワークに始まり、インパクトマップの作成実習とその結果発表へと続く、密度の濃い研修となった。

3.CNCP関連事業への適用可能性への挑戦
CNCPサービス提供部門のNPO ファイナンス研究会では、これまで様々な形態の助成金やPPPファイナンス、さらには有限責任事業組合方式などを研究してきたが、社会的インパクト(アウトカム)を指標にして事業投資資金の返済を可能にするSIBを、社会的事業に関わるNPO法人にとって有力な資金調達手法と考えてきている。それらの初期FS的なCNCP関係事業として、以下の5つの事業についてその適用性を具体的に検討することにした。
@ インフラメンテナンスの国民理解啓発事業
A インフラメンテナンスの市民との協働事業化
B ウナギ完全養殖インフラ整備事業
C 電線の地中化事業
D 里山整備と木質バイオマス発電事業

4.研修での初期FS事例の紹介(インフラメンテナンスの市民との協働事業化)
研修において筆者が取り上げたテーマは、上記のうちAインフラメンテナンスの市民との協働事業化である。この事業は、@と共にインフラメンテナンス国民会議「市民参画フォーラム」のワーキンググループのデーマで、ワークショップ(WS)を数回開催してその具体化に入っているが、種々提起される活動(インプット)から結果(アウトプット)への移行は見通せても、それが短期、中期、長期(最終)の各段階でのインパクト(アウトカム)の評価にどう結びついていくのか、相関関係は見通せなかったのである。
今回の研修でそのテーマに本事業を選び、評価目的を「住民との協働活動への参加を促進すること」とし、ステイクホルダーを市民、行政(議会、首長、職員)、インフラメンテナンス国移民会議としてロジックモデルを作成した。
ロジックモデルは、事業の設計図として実施に必要な「資源」、具体的な「活動」、その活動がもたらす「結果」(下図の左側大枠)や、それが社会的インパクトである「社会・環境の変化」の短期〜長期(最終)的なアウトカム群(右大枠)にどう関係をしていくかを示し、事業目標に至るまでの論理的道筋(ロジック)を可視化するものであり、評価実施の前提となるものである。
ここでは「日常的に市民と行政が協働でインフラメンテナンスに関わっている」最終的な成果として、そこから逆説的に、中期、短期へとロジックを展開して行く手法を採用した。

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この事業の実行のためには、最終アウトカムから遡って列記された短期のうち最も効果的なインパクトに結びつく活動から、優先順位を付けて実施していくことになるのが理解される。また、WS等を何回か繰り返しながらこのロジックモデルを共有することにより、事業の途中段階で次善の策に変えていく際にも有用となろう。
一方インパクトマップは、これらの期別のアウトカムごとに、期待される変化、関わるステイクホルダー、評価の指標、データ源を列記、一覧表として作成するが、それを数値として具体化することが課題で、このマップがSIBの成否に関わってくることになる。
今後上記5つの事業に対し、社会的インパクト評価プロセスと、SIBの適用可能性を検討し折を見てサービス提供部門の活動成果として報告したい。
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