CNCPサービス提供部門 NPOファイナンス研究会
1月30日(月)開催の第2回NPOファイナンス研究会では、12名のメンバーのうち8名が参加して、NPO法人活動での助成金制度提供について議論した。その中で、平成15年来その制度を利用して活動し成果を上げてきた、NPO法人「茨城の暮らしと景観を考える会」の三上靖彦代表理事に話題提供してもらったが、内容のうち@まちづくりの現場の事情、A当事者としての主体的実績づくり、B活動資金・助成金の獲得、C立場を強化すること、D助成金の種類、E助成金をゲットする、といった総論的な部分については、本CNCP通信の先月号で「NPOファイナンス(5)シビルNPOに対する助成金適用」と題して投稿して貰っている。
ただその報告では、話題提供後の意見交換内容と、本研究会に先立ってCNCP関連NPO法人に対して行ったアンケート結果、さらには中間支援組織としての今後の助成金制度への関わり方等については触れていないので、この機会に整理、報告しておきたい。
1.「茨城の暮らしと景観を考える会」の助成金事業へのアプローチ
(1)事例紹介とエントリーシート
以下に示す事業概要と右図のようなエントリーシート実例の紹介があった。
@アートによる街の再生のための地域教育支援
Aセントラルビル創業支援プロジェクト
Bオセロでまちづくりを!
C天心が思い 大観が描き 雨情が詠んだ感度の故郷北茨城復興支援プロジェクト
D水戸城跡での歴史的会館づくり(→水戸城周辺歴史まちづくり完成記念式典)
E水戸市の市街地活性化
Fまちなかブランディング『粋な水戸っぽまちづくり』プロジェクト((株)まちみとラボの設立)
*本通信p5〜6掲載記事参照
また、「映画づくりを起爆剤とした地域活性化」プロジェクトは11億円の自主事業で、桜田門のセット(3年間一般公開)を作ったり、北大路欣也など有名俳優などが参加する映画づくりやイベントなども紹介され、楽しいNPO活動の実態が紹介された。

(2)まちづくり事業等の助成金事業への挑戦
地域の委員会活動などにも関わり、NPO活動は仲間との役割分担で、事業単位で関わることが多い。
・右図は平成15年NPO法人設立後の主要な活動を列記しているが、赤字は事業提案や具体的な事業推進に関わる活動を、また黒字は市の商工会議所や、国及び県の委員会等、地域への貢献に関わる活動を記している。
・そんな機会にいろいろの人とのつながりができ、‘三上に任せれば’という信頼関係ができて、行政からの予算を得やすくなるという相乗効果が期待される。

・もちろんその背景として、成熟した実績と、リスクを取って思いを達成しようというアウトロール的なチャレンジマインドが必要である。
・これに対して立ち上げて間もない経験の浅いNPO法人等が提案型で助成金を得たとしても、助成金を出す側の思いに左右される(目的、範囲等の制限)ことになり、実施する側の思いを貫くことは難しい。
2.インフラメンテナンス事業での対応
インフラメンテナンス国民会議でも、自治体支援フォーラムが立ち上げられていることに関連して以下のような意見交換がなされたが、まちづくりとは分野が異なり、その難しさが再認された。
・道路橋の維持管理についてNPOとしての支援をある市に提案をしたが、結果的には体の良い門前払い同然であったことに対しては、まちづくりとは上部組織との関係で基本的に違いがあると思う。まちづくりでは、「景観と観光」といったテーマで国自身が新しい公助・共助の原則を打ち出しており、民間の事業化意識(ひいては提案)が求められているのとは大きな背景の違いがある。
・自治体としては、予算、発注、契約、検査・確認が回れば役目を果たしたことになるという実績優先のルーチンから出ようとはしない。その背景としては、困っているという意識がなく、担当者も2,3年で変わるといった現実がある。こうした商習慣(行政の事業遂行パターン)を変えていくのは容易ではない。
3.CNCPでの支援の可能性と逼迫度
NPOファイナンス研究会では、その設立準備会段階の平成27年4月および今回の第2回研究会開催前の29年1月の2回に分けて、CNCP会員関連のNPO法人に対し「助成金制度の適用状況」についてアンケートを行った。その結果は右図の通りであるが、とくに直近の結果では、過半が助成金制度には全く依存していないことが判明した。また、「Aあるが活動の主体ではない」と答えた4法人のうち2つは、今後対応する方針ではないとのことで、今回の調査に関する限り、CNCPが中間支援組織として助成金制度適用で会員NPO法人を支援することのニーズをくみ取ることができなかったことになる。

4.CNCP NPOファイナンス研究会の今後の対応
土木学会小委員会レベルを含め、これまで8年余に及ぶシビルNPO法人活動の議論では、常にその活動資金の調達が課題の一つとなってきた。今回の助成金適用を含め今後とも研究会で議論を進めていく予定であるが、その方針について、以下に要約しておきたい。
(1) 助成金
上述の様に現況ではさらなる議論は行わないが、今後の活動状況に応じて助成金適用が具体化した場合には、本研究会として三上会員等それに通じた会員等からのアドバイスを受けて案件ごとに対応することにする。
(2) ソーシャルファイナンス手法の適用
これまでも本通信でNPOファイナンス・シリーズとして紹介してきたSIB(ソーシャルインパクト・ボンド)の適用等を含め、右図に示すCNCP独自の「会員シビルNPO向け助成制度」の創設を含め、引き続きシビルNPO活動に相応しいハイブリッドな資金調達について、議論を継続していきたいと考えている。
