2020年04月01日

昨年の台風15号による電柱倒壊を受けての調査

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シビルNPO連携プラットフォーム法人正会員
NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク
 理事兼事務局長 井上 利一


昨年末から、全世界へと広がっている新型ウィルスに負けじと、無電柱化の推進を全国津々浦々に啓発していますが、遅々として、進んでいません。こういったなかで、新しい動きが出始めています。
例えば、電力会社の監督官庁である経済産業省が昨年の台風15号での電柱倒壊を受けて、事故調査チームを発足、その報告書が出ています。
これによると、鉄塔2基、電柱約2,000本が倒壊し、約94万戸が停電し、全面復旧まで2週間を要したとあります。
架空線と電柱は災害時の復旧が早いというのが、無電柱化反対派の論拠でしたが、それがそうではなかったことが判明。世論は、「それなら、無電柱化じゃないの!?なんで、日本は電柱なの??」という声が多く聞かれました。
さらに、「台風15 号の最大風速は、神津島村(東京都)で43.4m/s を観測するなど伊豆諸島と関東地方南部の6地点で最大風速30 m/s 以上の猛烈な風を観測し、関東地方を中心に19 地点で最大風速の観測史上1位の記録を更新しました。更に最大瞬間風速は神津島村で、58.1 m/s を観測するなど伊豆諸島と関東地方南部の3地点で最大瞬間風速50 m/s 以上を観測し、関東地方を中心に19 地点で最大瞬間風速の観測史上1位の記録を更新した。」と報告しています。
こうした、大型で強い台風は今後頻発するだろうという専門家の予想もあります。私たちは改めて、ライフラインの強靭化を進める必要があるのです。
また、2月25日に電気事業法の一部改正が閣議決定されました。今後、通常国会への提出を経て施行となると思います。その中に、「送配電網の強靭化」がうたわれており、「@レジリエンス強化の観点から、プッシュ型のネットワーク整備計画(広域系統整備計画)の策定業務を電力広域機関の業務に追加するとともに、送配電事業者に既存設備の計画的な更新を実現するための義務を課します。A送配電網の強靱化等の実現のため、経済産業大臣が事業者の投資計画等を踏まえて収入上限を定期的に承認し、その枠内でコスト効率化を促す託送料金制度を創設します。」となっています。@は経費削減が進められたことにより、既存設備の更新が疎かになっていた状況を改善するというもので、この中に、無電柱化も含まれています。残念ながら、概要資料には、「無電柱化」という言葉は出てきませんが、同時に公開されている補足説明資料には、「既存設備の計画的な更新」というタイトルで、「送配電設備の老朽化の程度を把握しつつ必要な投資をタイムリーに行わせるため、送配電事業者に対し、無電柱化の推進を含め、送配電設備の計画的な更新を求める制度を整備」と書かれています。

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要するに、これまでコストを抑えるために設備更新を先延ばししてきました、ということです。これではいけないので、無電柱化を含めて、更新していくということになります。ここでいう無電柱化は、単独地中化のことだと思いますが、実際のところは、今後の詳細が発表されるまで不明です。
ここで賢明な諸兄は、電柱は電力会社だけでなく、「NTT柱もあるのでは?NTTを監督する総務省は何をするのだろう?」と思ったはずです。残念ながら、総務省から、無電柱化への取り組みは聞こえてきません。実際、NTT柱は電力柱よりも背が低いということや本数が少ない(と言われているが実際の正確な本数は発表していない。)こともあり、被災状況は電力柱より少ないのだろうが、架空電線の本数でいえば、通信線の方が圧倒的に多いのが現状です。実際に北海道の郊外道路では、電力柱に共架していた通信線が増え過ぎて、強度がもたなくなって、新たに、電力柱と電力柱の間にNTT柱を建てて補強するといった事態が起きています。そのことで景観も悪くなっています。今回の台風災害を受けて、国民の目は、露出しているライフラインとしての電柱・電線に注がれるのは間違いないと思います。総務省の早期の対策を期待します。

無電柱化が進まない大きな要因の一つに高コストがあります。さらにその要因のなかに整備期間が長い。というのがあります。これらにはいくつか要因があります。
@夜間工事が多い。(進捗<施工性>が悪い)
A交通管理者の安全に対する要求が高すぎる。(安全はもちろん最優先だが、猫一匹入れないような過剰な安全対策が果たして必要か?)
B既存の埋設物が多く、また、不明管も頻出して工事が進捗しない。(日本は道路が狭い上に地中埋設物が多く、何がどこに入っているかかも、整備延長は2.1qの両側4.2qもあるのです!それを、見事に1年で抜柱まで完了させたのです。住民の協力もさることながら、24時間体制での施工は相当な困難を伴ったと思います。これを北海道でNo.1の施工会社が見事にやり切りました!
これには、北海道初の角形FEP管(ポリエチレン管)を使用するなど、あらゆる可能性を追求しての施工完了だったようです。無電柱化は期間が長い、大変だとよく言われます。しかし、可能思考でやれば、設計から抜柱まで1年でできるんですね!久しぶりに勇氣と元氣をいただける好事例でした!
無電柱化はやればできる!ぜひ、全国の自治体の無電柱化担当者は諦めないでいただきたいと思います!

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危機において指揮者に対する信頼が不十分であるとき

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シビルNPO連携プラットフォーム 副代表理事
(東京都市大学副学長) 皆川 勝


専門に関する事柄は素人には理解が難しく、専門家であっても専門外のことを理解することは難しいので、専門家が誠実、公正であることが求められます。また、説明する者を説明される者が信頼をしていなければ、説明責任を果たすことはできません。そこで、専門家の能力や知見に基づく判断は適切であるという市民の持つ信頼と、それに基づいて安心して社会生活を送ることができているという市民の感覚がそれを委ねる基本となります。信頼とは道徳的秩序に対する期待であり、それは専門家の能力に対する期待と、専門家の意図に対する期待からなると言われています。能力に対する期待とは専門家としての知見の有用性に関係しています。一方の意図に対する期待とは、公平性、公正性、客観性、一貫性、正直性、透明性、誠実性、思いやりといったものです。」
この文章は、著者が“科学技術者あるいは科学技術に関して執筆した文章(公正研究推進協会によるe-ラーニング教材より.出典:山岸俊男:信頼の構造 こころと社会の進化ゲーム、東京大学出版会、1998年5月)について、”科学者・技術者“を”専門家“などと置き換えてみたものです。また、“専門家”を“政治家”としても、新型コロナウイルス禍が世界を覆っている状況で、自粛要請などが発出されるときの発出した者の意図は何かを考える時の参考になるように思います。

桜を見る会に関わる情報の遺棄や、森友問題に関わっての自殺者の出現など、政治がかかわったとの疑念が持たれている様々な事柄に対して説明が十分なされなかったり、調査が不十分なまま放置されたりしている状況は目に余るものがあります。そういった状況で、新型ウイルスが蔓延し、多くの犠牲者が出ている中で、権力を行使できる個人の意思により学校の一斉休校が要請されました。ところが、どのような科学的な根拠か不明なまま一斉休校要請は4月には解除となるそうです。また、オリンピックの開催が1年程度延期との方針が出た途端、感染爆発や重大局面との危機を訴える言葉がしきりと発せられるようになっているように思ってしまうのは私だけではないだろうと思います。
これらの動きの底にある意図が取りざたされるのは、ごく自然なことであると思います。政治における金や選挙にまつわる疑惑などに対する説明責任をしっかり果たしているとは言えないとの批判がある中で、政治家の意図に対して期待を持つことができるでしょうか。結局は、医療に関する専門性も、政治を動かす権力も持たない我々市民は、自衛をせざるを得ないということになるのでしょうか。大学では、遠隔授業の活用が不可欠な状況となってきました。新型コロナウイルス禍を教訓とできたと言えるように、社会の変革を実現する機会とする、強い意志と実現する力が問われています。
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2020年02月01日

情報プラットフォーム構築に関する取り組み

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情報プラットフォーム構築に関する取り組み

シビルNPO連携プラットフォーム サポーター
株式会社エックス都市研究所  土井 麻記子


昨年、CNCPアワードに応募して賞をいただいたことが切掛けでサポーター登録をさせていただき、今回の執筆機会をいただきました。アワードへの申請事業名は、「住環境リスク評価」と「住環境リスク情報プラットフォーム」の構築、です。事業目的は、地方自治体の化学物質管理における「住環境リスク評価」と「住環境リスク情報プラットフォーム」の導入により、地域固有の環境情報を市民向けに提供するもの。この申請事業のアイデアには前身があります。千葉市沿岸から内陸側10km圏内にある我が家で、洗濯物や部屋が黒い砂で汚れることに対し、その原因を探る研究を自主的に行ってきたことを議会にインプットすることができました。これを切掛けに、自治体での環境調査事業、検討会設置、企業との対話、改善といったプロセスを経て市民対話のコミュニケーションの場を形成されました。アワードへの申請事業の趣旨は、「未知・未規制の物質」を中心として地域固有の情報をタブー視せずに情報収集、調査検討を行い、市民生活への参考情報を提供する仕組みを構築すること。地域の関係者が信頼をベースに地域課題に取り組むという意思があるなら、未規制物質に対する環境政策として、これが答えになりうるのでは、との考えでの提示です。アワード受賞後、千葉市の議員殿にご報告しました。その後の進展はいまのところありませんが、本アイデアの千葉市民からの、オファーを期待している、といったところです。
さて、アワードの申請提案で「プラットフォーム」を扱いましたが、プラットフォーム構築に意義は、情報研究と情報活用基盤を整備することにより、計画策定や政策評価におけるエビデンスベースの議論が促進される点にあると思っています。現在、資源循環の分野でもプラットフォームの検討に係っておりますのでご紹介いたします。それは、計画策定や政策評価のための情報活用基盤として活用できるようにするための「資源循環一体データのプラットフォーム」です。
この件等の背景には、日本版資源循環の確立が急務となっている点が挙げられます。EUにおけるサーキュラーエコノミーの掲揚や、中国の大量消費社会をささえる相対的な品質管理に適応したダイナミックな循環思想をベースにした資源循環に対応して、製品企画の基準化の波が押し寄せつつあることが挙げられます。日本でも、緻密で絶対品質を追求するモノづくりが根付く日本に合った、資源循環の姿を構築する意義があるのではと思われます。
資源循環型社会の構築においては、これまで、廃棄物処理におけるこれまでの静脈インフラ構築の設計思想は、大量生産・大量消費・大量廃棄による負の側面を抱えることを“やむなし”とするものでした。しかし、今後は静脈インフラ構築後の思想では、構築したインフラを最適なレベルで活用・維持するために、静脈側の段階はもとより製造・流通・使用といった動脈側の段階に対しても、必要な情報を求めていくこととなります。
ここでのポイントは、「情報が必要」とは言え、製品情報をすべて開示してもらう必要はなく、処理・処分側のインフラで処理するために必要としている情報が得られれば良いという点です。つまり、必要項目は、下流が必要だと思う事項を遡上させてデータを貰ってくる、ということです。

資源循環実態データのプラットフォームのイメージを図にしまします。この図は、サプライチェーンの流れとそこで発生する各段階でのやり取り、それらのDBを集約し、設定した課題に応じてデータを活用する基盤としてプラトフォームを設置することを表しています。各段階でやりとりされる施設間の円滑性を左右する必要項目(キーアイテム)を把握し、集めることによって、何がキーで施設間連携が円滑になっているかを把握し、今後強化すべき推進技術の抽出、計画策定、政策評価に役立てられるようになるというものです。
リサイクル素材の“質”を高めるマネジメントを構築し、製品から製品を作り、有用金属は徹底的に回収し、最終残渣を完全に土木資材化することで、日本式の徹底的資源循環が作られると思いますが、そのために必要と考えられる要素を3つ挙げます。一つ目は『情報の研究』、二つ目は『情報の翻訳』、三つ目は『情報共有ツールの整備』です。3要素が揃うことで、情報源がシステムで活用され、情報源からDBへの進化が加速されると考えます。
本検討は、廃棄物処理・リサイクルIoT導入促進協議会の低炭素化ワーキンググループの活動として展開しており、各種施設間連係実証等の事例から集めた有用項目を抽象化して、整理する作業を進める予定です。まだまだイメージにすぎませんので形は変わっていくと思いますが、地に足を付けた形で、プラットフォームの概念を明確にできればと思っています。これを通して動・静脈連携による情報活用の円滑化に役立てるよう、頑張りたいと思います。

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posted by CNCP事務局 at 00:00| Comment(0) | 災害、危機管理等