2020年01月01日
千葉県の台風被害について考える
シビルNPO連携プラットフォーム(CNCP)の事務局長をしています。CNCP通信を編集している立場ですが、急遽今月のコラムを書くことになりました。
今回は千葉県の受けた台風の被害とその復旧について少し書いてみたいと思います。私は千葉県の北西部にある松戸市に住んでいますが、今回の台風の被害は全く受けませんでしたが、千葉県の南部は台風15号では強風による被害、台風21号では茂原市等が大雨による甚大な被害を受けました。
台風15号は9月9日(月)未明に千葉県に上陸しました。千葉県はそれまであまり台風の被害を受けていませんでしたが、15号では強風により市原市でゴルフ練習場のフェンスの鉄骨が民家側に倒れましたし、君津市の山間部では送電線の鉄塔が2基倒壊しました。これらはテレビでも報道されましたので、記憶に残っている方も多いと思います。強風で7万5千棟の住家に被害が出て、年末になっても屋根の修理の順番待ちでブルーシートがかけられたままの住宅が多いと報道されていました。電柱が多数倒れて、ピーク時には約93万5千戸が停電し、山武市では1カ月近く停電しました。大量の杉が倒木したのも、停電の要因に加えて、新たな課題を突き付けました。
台風15号での長期間の停電に対し、東京電力の復旧見込みの甘さを指摘する報道も多くありましたが、山間部で多くの樹木や電柱が倒れて、電線が切断されたことが原因で、被害の全体を把握できなかったことが復旧見込みの大幅なずれにつながったのだと思います。
この被害を見て、電線の地中化のことが、まず頭に浮かびました。CNCPの法人正会員の「電線のない街づくり支援ネットワーク」が電線の地中化を熱心に推進しています。その主張は、入会当時は京都の街並みから電線をなくして良い景観を確保しようということだったと思いますが、最近では大地震時の電柱の倒壊による家屋や人への防災の観点から推進を図っているように思われます。台風による山間部での電柱の倒壊は想定外で、活動の範疇の中にはないように思いますが、新たな課題として提起したいと思います。
電気の重要性は誰もが認識していると思います。市民生活も電気が来なければ照明だけでなく、水道も供給できなくなりました。スマホの充電場所ができたりしたことなどは、従来は見られなかった光景でした。
電線の地中化も市街地と山間部では当然異なってくると思います。CNCPも大災害時にNPOの力を発揮できるようにと設立されたと考えていまましたが、今回の台風被害に対しても直接的な支援は何もできませんでした。長期的な課題として今回の災害を踏まえて市街地と山間部の電線の地中化への提言が纏まれば良いと思います。
国土強靭化といった国土整備が、借金財政の中でも重要になっていくものと思います。CNCPがその一翼を担えるようになることを期待します。
以上
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2019年12月01日
花畑川を活かしたまちづくりの推進 ワークショップ「川とまちをつなげるのは誰?」報告
足立区立第十三中学校の総合学習を提案し、足立区まちづくりトラストの助成金を得て、中学2年生に対する3年間の授業を行ってきた。3年目の最後の授業が11月29日に行われ、雑誌「ソトコト」の編集長 指出一正さんにご登壇いただいた。
釣りが大好きで、頭の中には釣りのことしかない。みんなも好きなものが頭の真ん中にあるような
大人になってほしい。妻子を連れて日帰りで九州まで釣りに連れていくこともある。私たちは東京にいて、そこで見ているものに縛られすぎている。広い世界、多くの生物と触れ合って、人間はちっぽけなんだという事を知らないと、バランスの取れた人間になれない。
花畑川にタナゴ(タイリクバラタナゴ)釣りに来たことがある。花畑川は、釣り好きなら一度は行ってみたいと思っているほどすてきな川。そんな川の前に学校があるって幸せなことだと思う。地域に何があるか、小さな視界から見つめ続けることで、自分だけの宝物が見えてくる。

指出さんは、「観光人口ではなく、関係人口を増やすことが大事だと思っている」と福井県大野市の『水を食べるレストラン』と滋賀県長浜の『湖北のどんどん橋プロジェクト』、島根県の『田んぼで金魚』の事例を紹介。地域の人たちを喜ばせようとしたこと、地域の宝を活用したことが、たくさんの人を呼び寄せ、世界からも認められるようなことになったということ話してくれた。


花畑川WS「川とまちをつなげるのは誰?−アイデアと行動−」に対してのヒントは、
1)川の関係人口を増やす
2)未来を作る手応えがあること
3)「自分ごと」として楽しいことを考えよう
その後、生徒たちは14人ずつ12グループに分かれてディスカッションし、タイトルを決め、壇上で発表をした。タイトルには、「ユーモア溢れる町」「映える川」「水族館のある川」などが挙がった。
これらの発表を聞いて指出さんは、「汚いと思っている川でも自慢したくなる川に変えることは可能」「12のプランは全部実現可能。言い続けているとできるんだよ。僕も関係人口案内所を作ろうと言い続けていたら、国が補助金制度http://www.soumu.go.jp/kankeijinkou/index.htmlを作ってくれた。」と講評をし、主催者としてエコロジー夢企画の三井元子から、「この3年間で、延べ600人の生徒たちに計12回の総合学習を行ってきた。自分で体験して、調べて、自分の意見を言える人になってほしいとの思いで3年間のプログラムを組んできた。花畑川を活かしたまちづくりを通して学んだことを後輩たちにも伝えていってほしい。」と述べ、こどもたちからは、「おとなになってもずっと花畑川を思い続けていく」との宣言が飛び出した。
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| 災害、危機管理等
2019年11月01日
「市民の信頼を得るには、理念・哲学の構築と生活感が重要!」
2016年の震度7を観測した熊本地震、2017年には九州北部豪雨、2018年は7月に西日本豪雨、9月に北海道胆振東部地震、そして今年は9月に千葉県に大きな被害を与えた台風15号、10月に平成最悪の水害という台風19号に台風21号と、この4年間、地震と台風・豪雨災害に限っても大災害が頻発、大災害時代の幕開けのような不気味さを覚えます。
折しも今年に入り、オーストラリアのシンクタンクが「気候変動で、2050年には最悪の場合、人類文明が終焉に向かうかも知れない」という衝撃的な報告書を発表したのを始め、「2055年には世界の人口が100億人を超え資源枯渇・食糧難が深刻に」、さらに国内でも「今後30年以内にマグニチュード8クラスの南海トラフ地震が発生する確率は70〜80%、その間、マグニチュード7クラスの地震が頻発」、インフラの老朽化も一気に進み、「2033年には建設後50年以上経過する道路橋が約67%、トンネルが約50%、下水道管きょが約50%に」と、先行き不安な予測が次々に出ています。
こうした中で、「土木と市民社会とつなぐ」ことを目的に、地域社会・市民社会の様々な課題解決をめざすCNCPは、こうした時代の動きを読み解き、そのためにはどんな対策が必要なのか、一般市民に向けて訴えかけたのでしょうか。少なくとも私にはメッセージが届いていません。なぜなのか、約40年近くにわたる取材体験を踏まえ、まとめてみました。
私とインフラとの出会いは、コンクリート。人間が作ったものは一体、どの位持つのかというのが動機でした。1982年に社会部記者として初めて取材、1983年にNHK土曜リポート「警告!コンクリート崩壊・忍び寄る腐食」、1984年にNHK特集「コンクリート・クライシス」、1985年から3年間、旧建設省記者クラブに常駐、1993年にNHKスペシャル「テクノパワー〜知られざる建設技術の世界〜」5回シリーズを制作、2000年にはNHKスペシャル「コンクリート高齢化社会への警告」を解説委員として監修。この間、土木学会を始め、旧建設省や、大学、建設会社、セメント業界、鉄筋製造会社、砂利採取現場、生コン工場、施工現場などを取材、なぜ半永久的に持つはずのコンクリートが異常に早く劣化するのか、徹底的に調べました。しかし問題の核心に迫ろうとすると、はぐらかされたり、取材を拒否されたりの連続でした。
また日本では起こりえないとされた「アルカリ骨材反応によるひび割れ」が全国で続発、阪神・淡路大震災では絶対に倒壊しないはずの高速道路が横倒しになるなど新幹線やビルなどコンクリート構造物が大きな被害を受けました。更に東海道新幹線を設計した国鉄幹部からは「ルートは人家のないところ。30年持てばというのが、当時の雰囲気だった」、大手建設会社のトップからは「地価高騰の影響で建設費が削られ、大地震が起きたら建物が大丈夫か心配だ」、大手住宅メーカーのトップからは「30年以上持つものを作ったら我々の業界はやっていけない」など、耳を疑うような生の声も直に聞き、衝撃を受けました。
2012年の笹子トンネルの天井板落下事故は構造的欠陥が原因なのにも関わらず知らんふり。今回の台風19号でも、被害がなぜ増大したのか、治山治水・市街化・下水処理能力・気候変動等を踏まえ総合的に解説する専門家はいませんでした。
また高齢者の運転ミスによる人身事故の急増に対しては、高齢ドライバーに対する批判はあってもインフラの構造上の問題を指摘する声はありません。首都高中央環状線山手トンネルは、照明が暗い上に情報が乏しく、高齢者や外国人のドライバーには運転が容易ではありません。
昨今、凍結防止剤の散布量が増えるのに伴い、道路橋の劣化だけではなく周辺への塩害が深刻になりつつありますが、大きな社会問題になっていません。
なぜなのか、私は主な理由として3つあげたいと思います。第一に、何のため誰のためのインフラなのか理念・哲学が見えず、しかも生活に身近なインフラに関心が薄いことです。

阪神淡路大震災 横転した高速道路
10月に亡くなった日本人初の国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子さんがこだわったのが「現場主義」。「橋守」はまだ一部の地域に過ぎません。これでは説得力がなく心に響きません。第二に、大事故や大災害が起きると“想定外”だと言い訳したり、“不都合な真実”に目をつぶったり、困難に立ち向かう気概・覚悟が見られないことです。第三は、公共事業の目的はインフラを作ることではなく、所要のサービスの提供ですが、肝心のユーザーや生活者の視点がないことです。こうしたことが積み重なって、皆さんの思いが市民に届かないのだと思います。
「萬象二天意ヲ覚ル者ハ幸ナリ」「人類ノ為メ国ノ為メ」は、信濃川補修工事竣工記念碑(1931年に建立)に刻まれた、土木技術者・青山士さんの言葉です。
土木と市民社会の橋渡し役として期待されるCNCP。多難な未来が待ち受ける次世代に対し、確固たる理念と哲学の下、安全・安心の指針を示してほしいと思います。(了)

阪神淡路大震災 横倒しのビル

阪神淡路大震災 落下した橋梁
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