2020年03月01日

エーヤワディ川堤防天端の道路のアクセス改善

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シビルNPO連携プラットフォーム法人正会員
NPO法人道普請人理事 福林 良典


筆者が直近に担当した,ミャンマーのエーヤワディ川(旧称イラワジ川)デルタ地帯での道直しを紹介する.
この事業は,キリスト教系で人道支援の観点から災害時の緊急対応などの活動をしている,国際NGOとの連携事業である.「自分たちの道は自分たちで直す」という意識を広め世界の貧困削減に貢献しよう,と小規模インフラ整備を行ってきた私たちの活動に関心を持っていただき,協力を要請されて実現した.
土地を持たない住民は,雨季には浸水するとわかっていても川表側に住居を構えざるを得ない(写真1).一方で,携帯電話のアンテナが近くに設置されており(写真2),スマホが使える環境が整っている.筆者も現場に居ながらにして,メールをチェックしたり地図アプリを使うことができた.
堤防は粘性土の盛土構造で,現地の行政により管理上,舗装も含めて構造物の設置は認められていない.洪水による河岸浸食も問題となっていて,現在の堤内地に別のルートで堤防が設置されることも検討されている.現在,河川そばの村に住む人々は,堤防の天端を道路として利用している.乾季には乾燥し路面は固くトラックなどの車両も通行可能になるが(ただし,ほこりがひどい),雨季には泥濘化し大人でも足を取られたり滑ったりするほどで,歩行すらままならない(写真3).

周辺の村での対策も参考にし,設置・撤去が人力で可能なコンクリートパネルの作成を支援することとした.材料代の負担と,村の人々が組織的に施工できるように技術支援をした(写真4).
雨季にはパネルが設置され,歩行が容易になった(写真5).子供を一人で学校に行かせることができ家業に時間を割くことができた,助産士が来てくれるようになった,市場まで行ける回数が増えたなど,村の人々の生計向上に効果があったようである.

乾季には,パネルを端に寄せ車両の通行幅を確保している(写真6).一枚40 kg程度のパネルを約2,000枚作成し1.3 kmの範囲に設置したが,村人が家庭ごとに担当範囲を決めて,撤去作業を行った.雨季が来れば,同じ体制で設置される予定である.

筆者にとって,堤防天端での道路整備は初めての経験であった.連携先NPOの事業地であり,この事業を通して新たな実績を得ることができた.異分野で活動するNPOとの連携も,いい経験になった.社会基盤整備を担う建設系NPOにとって,社会科学系など他分野のNPOとの協働の機会は多いのではないかと思う.
持続可能な開発(SDGs)が認知され,産官学が各々その目標の達成に向けた活動をしている.上記で紹介したようなインフラ整備は,「新しい公共」のNPOだからこそ,実施することができた事業のように思える.よそ者の国際開発NPOではあるが,相手国の持続的な発展に向けて事業の担い手を現地化するなどして,積極的に役割を果たすことができると手応えを感じている.

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2019年09月01日

ベトナム技術者が語る建設分野での外国人活用の現況と課題

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CNCPサポーター企画コアメンバー会議・南房総CCRC研究会委員
特定非営利活動法人建設技術監査センター代表理事
成岡 茂


去る7月10日午後港区南麻布の慨S会議室で実際に来日して活躍している若手外国人に登場いただきどんな課題と成果があるのか聞いた。テーマは『たくましいい外国人材の活躍を見る「若手外国人の活躍を語る懇談会」〜外国人の活躍が日本を変える、地域を変える〜』ということで、今年の4月に「改正入国管理法」が施行され今日的話題として報告したい

1.講演「外国人材を取り巻く環境」
鶴野祐二氏(行政書士法人シンシアインターナショナル代表取締役)
在留外国人は昭和60年の85万人から平成29年では256万と劇的に増加している。人口の2%だ。ただ欧米での外国人は人口の10%〜15%と言われている。在留外国人の国籍は、その数でみると中国、韓国、ベトナム、フィリピン、ブラジルの順となっている。平成30年に入管法が改正され「入国管理局」が「出入国在留管理庁」に格上げされた。また、新たな在留資格として「特定技能」が創設され特定の産業14分野で人手不足に対応するため外国人労働者に門戸を開いた。外国人を採用しようとする会社は「適切な在留資格」を保有する外国人を雇用し「適切な活動をさせる」ことが非常に重要となる。特定技能の受け入れ見込み数は、介護8万人、外食業5万3千人、建設業4万人などとなっている。

2.パネルディスカッション
「日本での生活〜教えて欲しい日本のこと」と題してベトナムの若手技術者が登壇した。
25歳のファン・バン・フックさんは、ホーチミン市建設短期大学で建設工学を学び卒業後8か月の研修を経て2016年に来日し宮崎のアース建設コンサルタント鰍ノ勤務している。測量機器の操作やCADも行う。在留資格は技術・人文知識・国際業務だ。
23歳のファン・ゴック・アンさんは、フックさんと同じ大学で建設工学を学び女性で初めて2018年に来日し宮崎の旭建設鰍ノ勤務している。施工管理を担当し来日1年足らずで担当技術者を務めている。在留資格はフックさんと同じだ。31歳のチャン・ホン・キエンさんは、ホーチミン市技術師範大学で機械製造を学びベトナムで半年間日本語を学び、東京都青梅市の葛g本製作所にて機械部品設計に従事し旋盤を扱える貴重な人材だ。在留資格はフックさんやヤンさんと同じだ。彼は結婚していて間もなく父になる。

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24歳のブイ・フー・ザンさんは、2015年に来日し大阪府寝屋川市の竃ホ広組で3年間足場組立の技能実習を受け、一旦帰国し建設就労者として再来日し、茂広組で足場組立の仕事をしている。玉掛などの資格も取得した。
4人とも、職場の方々とのさらなるコミュニケーションを求めているが、言葉の壁が大きいようだ。ゆくゆくは国に帰るという。会終了後、「青春を過ごした日本を、第2の故郷として大事にし、頑張れ!」と思わずアドバイスしてしまった。
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2019年06月11日

ベトナムの近況

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シビルNPO連携プラットフォーム個人正会員 坂本 文夫


東南アジア最後のユートピアといわれるベトナムに、日本技術士会海外活動支援員会の一員として今年の2〜3月に出張する機会を得た。ベトナムでは、ホーチミン市、ダナン市、クワンガイ省、フエ市、ハノイ市を視察した。そこで感じたことは、ベトナムの朝は早く、道路はバイクと車で溢れ、路面が見えないくらいの交通量の多さに驚いた。各都市に共通していることは、道行く人のほとんどが若く、街の市場は活気にあふれ、経済が好調であることを実感した。
(1)ベトナムの概況
ベトナムは南北に1,650q、東西方向は北部で500q、中部の狭いところで約50q、国土の面積は34万ku、日本の総面積から九州を除いた面積に相当する。2017年上期のデータによると、ベトナムの人口は9,370万人、人口ピラミッドは釣鐘型の形状をしており、若い労働者が豊富に供給できる環境にある。
世界的な貿易自由化の進展により、労働賃金が安く豊富な労働力を求めて多くの企業が中国に進出した。その後、中国は目覚しい経済発展を遂げ、それに伴って労働賃金が高騰した。この状況に直面した企業は、生産コストの低減を図り国際競争力の優位性を確保するため、電力が安く低賃金で優秀な人材を求めてベトナムに進出する企業が増加している。

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(2)ベトナムの経済概要
ベトナムの2018年の成長率は7.08%、一人あたりの名目GDPは2,587 USDを記録した。貿易収支をみると、2003〜2011年は45〜180億USDの赤字が続いていたが、2012年に7億9000万USDの黒字を記録、2015年に赤字に転落したものの、その後は25億USDの黒字、2017年は72億USDの黒字を記録した。外貨準備高をみると、2006年から100億USDを常時超えるようになった。雇用状況を表す2018年の失業率は2%で推移しており、ファンダメンタルズは堅調である。

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(3)ベトナムの経済成長を支える人材育成の必要性
ベトナムは、TTPなどグローバル化の進展により国際競争力の強化に取り組んでいるが、裾野産業の育成が喫緊の課題となっている。裾野産業が抱える技術的課題の解決を図るため、技術水準の向上に力が注がれている。ベトナムの企業は、最初は国営企業が先行していたが、最近では民間企業がかなり力をつけている。これまでの企業は「技術は無償で支援を受けられるもの」と考えていたが、最近では「必要な技術はカネを支払っても獲得する。」という考え方に変わってきた。今後、国際的な企業間の競争が激しくなることが予想され、競争力強化に必要な専門技術者の人材育成が喫緊の課題となっている。このような状況の中、今回、ダナンの大学で講演を行って分かったことは、ダナン市人民委員会及び大学が日本との関係強化を強く望んでいるということである。その一環として、人民委員会及び大学では日本語教育を推進しており、さらに経済発展を支えるための人材育成について日本に協力を求めている。
以上の要望に応えるには、専門的な技術者の人的資源の支援が必要であり、そこには、ベトナムの経済発展に資するシニア世代の技術者の新たな活躍の場が広がっている。

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