2018年07月01日

豪州における公共事業民営化・道路PPP

〜熱い息吹を実感〜

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NPO法人SLIMジャパン理事
熊谷組執行役員 大島 邦彦


昨年(2017年)の11月9日より15日までの7日間、CNCP・SLIM合同メンバーによるシドニー視察旅行に参加した。昨年は熊谷組が手掛けた海外PPP(BOT)道路事業である香港イースタンハーバートンネル(EHC)事業の調査で2回香港を訪問したが、シドニーハーバートンネル(SHT)事業は今まで訪問の機会がなく、今回、本事業の組成および建設期間中の責任者であった有岡SLIMジャパン理事長からお誘い頂き、SHT事業の運営責任者であるKGオーストラリの橋爪所長ともお会いできる絶好の機会と思い参加した。
実のところ、行程曜日の関係から半分は観光気分であったが、本視察(旅行)記をまとめる上で、豪州の施策、動向等についての文献を整理し、今回の視察を振り返ってみると、最近我が国でもそういう動きが加速化しつつあるが、民営化やPPP、IoT技術の活用等を中心とする公共事業改革の世界的な大きな潮流の最前線に触れることが出来た、誠に有意義な視察であったと思えて来た。以下、視察報告として、豪州全体での公共事業民営化、PPPの動向、シドニー都市圏における有料道路PPPの状況及びSHT事業について、豪州PPP全体の中での位置づけや香港EHCとの対比における特長等について概要を述べる。
1.豪州及びNSW州の民営化、PPP実施状況
豪州政府の報告書(※文献)によると、豪州では1990年代から公共事業の民営化と民間資金によるインフラ整備、運営(PPP)並びに類似のスキームによる事業が相次いで実施されており、報告書記載の事業総数は2017年時点で200を超えており、その内訳は民営化(129件)、PPP(24件)、Franchaise(運営部分の権利を民間に譲渡するもの。18件)等となっている。また、分野別では電力(61件)、公共交通(34件)、航空・空港(30件)、道路(24件)等となっており、ほぼ全ての経済インフラが対象となっている。用語の定義が異なるが、道路分野のPPP及び空港民営化は、我が国ではコンセッション(公共施設等運営権)事業と整理されており、実施件数が空港(9件)、道路(1件)、下水道(1件)であることと較べれば、豪州では実施件数、内容とも我が国より圧倒的に先行している。我が国ではPPPやコンセッションは公共事業を補完し、その一部に過ぎないが、豪州では、民営化やPPPが主流となっている。今回の視察でシドニー空港、地下鉄、フェリー等の公共交通、SHTを始めとするいくつかの有料道路を利用したが、そのほぼ全てが民営化、PPP事業であることを改めて認識した。また、このような環境の中で、グローバルなインフラPPP事業を展開している豪州含む海外企業勢に我が国企業が互角に張り合うのは難しいのではとも感じた。

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図-1 豪州のインフラ民営化、PPP実施状況

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豪州のインフラ民営化、PPP実施状況(分野別)

※文献 Infrastructure and Transport PPPs and Privatisation in Australia, Australia Government BITRE ,August 2017

2.シドニー都市圏における有料道路PPP事業
今回、視察の主な目的はシドニーハーバートンネル(SHT)事業の視察であったが、シドニー都市圏では現在下記8事業が運営中であり、さらにM2と北部エリアを繋ぐNorth Connex事業とM4を拡幅、東進、M5を新設し、西部エリアと空港を結び、さらに第2のシドニー湾横断トンネル(West Harbour Tunnel)を建設する大規模事業であるWest Connex事業が進展中である。SHT事業は、これらシドニー都市圏の有料道路PPPの最初の事業であるだけでなく、前述した豪州PPP全体の創世事業として位置づけられ、その後のPPPスキームのモデルとなっている。数年前、日本で開催された日豪経済委員会で豪州・NSW州政府の代表による豪州PPPについて講演の中でSHT事業とそれを手掛けた熊谷組が何度か紹介され感激した記憶があるが、今回改めて文献レビューする中でそのことが実感、確認することが出来た。
なお、豪州道路PPP事業については、Cross CITY Tunnel事業の破綻・再生に見られるように実績交通量が需要予測を大幅に下回る事例が相次ぎ、需要リスクについての官民分担の見直しが行われており、実施ペースがスローダウンしているようであるが、シドニー都市圏を見る限り、事業スキームを見直しながら道路PPPは今後も積極的に導入されると思われる。また、道路PPP事業の最近の課題として、事業獲得の激しい競争の中で事業会社の寡占化が進行しており、その弊害が懸念されている。表にあげた8つの事業においても、SHT事業の運営会社を除いては事業会社は全てTransUrbanとなっている。TransUrbanはQld州の全有料道路路線を独占し、豪州全体の道路PPP事業の占有率は73%となっている。

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表-2 シドニー都市圏有料道路PPP事業

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図-2 シドニー都市圏有料道路PPP事業路線

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図-3  West Connex事業

3.香港EHC事業とシドニーハーバートンネル(SHT)事業の比較
冒頭でも述べたが、昨年別の機会で熊谷組が手掛けたもう一つの道路PPP(BOT)事業である香港EHC事業の総括調査のための視察に参加した。香港EHC事業は2016.8.6に30年間のBOT契約が終了し、施設所有権、運営権は香港政庁に返還され、現在はMOM(Maitenance,Operation and Management)という運営維持包括委託契約に移行している。

香港EHC事業とシドニーSHT事業は、同じBOT方式(民間による設計・施工、資金調達、維持管理、運営)であり、事業スキーム上の共通点も多いが、異なる点も多い。共通点の1つは、両事業とも民間提案である点であるが、香港EHCでは複数グループ参加の国際入札、SHTの場合は、他の応募者はなく提案内容が縦覧、承認され、事業者選定されている。最も大きな相違点は香港EHC事業は完全独立採算であり、民間事業者は料金設定を含む運営権を得る代わりに運営期間中の需要リスクの一切を負う。一方、SHT事業は、料金設定は州政府の権限であり、その代わりに最低交通量・収入は保証される。需要リスクとリターン(収益)の構造で言えば、香港EHCハイリスク・ハイリターン、SHT事業はローリスク・ロー(またはミドル)リターンであり、このことが両事業の資金調達構造に明確に現れている。結果として、香港EHC事業は料金改定に係わる協議、仲裁等で苦労したが、高いリターン(配当)を確保して、事業は大成功と評価されている。SHT事業についても、事業会社の橋爪所長へのヒアリングによると順調のようであり、4年余後成功裏の事業終了が期待できる。また、施設、システム面での大きな相違は、香港EHCでは料金所での有人及びEHCゲートでの料金徴収であり、車種別料金制であるが、豪州ではSHTはもちろん前頁図のシドニー都市圏有料道路PPP事業路線の有料道路では、一般道路との出入りを含め路上のゲートポイントからの信号を車載またはフロントガラスに張ったタグ(etag)で受信課金するETCシステムとなっている。SHTの料金はハーバーブリッジと同一で南行きのみ徴収、車種によらず均一であるが、ラッシュ時は4AS$、それ以外の時間帯は2.5〜3AS$に割引される。なお、公共交通機関で利用されるOPALカードも時間帯毎に料金が異なりデマンドコントロールが実施されている。(日本のSUICAやPASMOとはこの点が異なる。)

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表-3  香港EHCとシドニーSHT事業の比較

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図-4 香港EHC(料金所)

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図-5 シドニーハーバートンネル

まとめ
いつもながらであるが後悔先に立たずで、視察前に十分な事前調査をしておけばと反省しているが、百聞一見で今回の視察は大変に楽しく有意義でした。企画、段取り頂いた有岡理事長、橋爪所長、現地でアテンド頂いた秦泉寺様、参加メンバーの皆様ありがとうございました。次回も企画あれば参加致します。
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2018年06月01日

〜シドニーハーバートンネル〜

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〜日本企業として巨大PFI(BOT)事業に参加して30年〜
CNCPサポーター、SLIMジャパン国際会員
熊谷オーストラリア所長 橋爪 伸浩


今回のCNCP・SLIM合同メンバーによるシドニー視察旅行も4日目の11月13日は、早朝からシドニー近郊のPFI高速道路を車で視察した後、午前11時半にシドニーハーバートンネル(以下、SHT)事務所で、SHT事業体の総括責任者(GM)であるBob Allen(下記写真左奥)と面談、日本語のトンネルプレゼン用ビデオを視聴してから、トンネルの現状について質疑応答が行われた。その後、熊谷オーストラリア事務所で昼食懇談会が行われ、SHT建設当時有岡CNCP常任理事の右腕として働き、また後述のSHTの政府への返還に伴う諸課題の対応のために再び熊谷オーストラリアに戻ってきて頑張ってくれているNigel Bowraなども交えて、SHT運営の問題の他、昨今のオーストラリアの社会インフラ整備、PFI事業等に関して意見交換会とほぼ丸1日のSHTデイであった。なお、事務所前での集合写真の背景として写されているSHTロゴは30年を経て、絵葉書などにも使われている。
ここではその際に出た話題等を中心に、視察に立ち会ったものとしてその概要を報告しておきたい。

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1.SHT事業の概要
SHTは、オーストラリア初の海底トンネルであり、シドニーのポートジャクソン湾を横断する全長2,280m(海底部960m)の4車線道路専用海底トンネルである。鉄筋コンクリート造の函体8函をつなぎあわせる沈埋工法によって、日本企業である株式会社熊谷組がPFI事業として現地建設会社と協同で建設、1992年8月に竣工、開通した。その後2003年10月に熊谷組が会社分割され、新設された日本企業であるニューリアルプロパティ株式会社(以下、NRP)が、SHTの施設整備及び維持管理、運営まで含めた事業展開をしている。交通体系としては、右写真にもあるようにシドニーハーバーブリッジ(本視察旅行記(5)で詳述)の交通緩和を目的とするバイパス(写真右側の黄色線)として、重要な役割を果たしている。
2.維持管理・運営の仕組み
冒頭に記したBob Allenは、トンネル開通当初からトンネル事務所で働いており、最初はトンネルコントローラーとしてスタートし、やがてその維持管理・運営の総括責任者として活動し続けている。シドニーでは高速道路の区間ごとに正式名称がつけられているが、通称その区間を統括する人の名で呼ぶようで、SHTも「ボブトンネル」として知られているようだ。ちなみに私も2005年から取締役メンバーとして関与しているが、建設当時から関与している現地スタッフが多く、相手パートナー側には過去30年トンネルに関与しているJohn Favaloroと言う生き字引も居るので、まさにトンネル事業プロ集団といえる。最初のBOT事業であったので、例えば右写真の事故防止対策設備であるウォーターカーテン(緊急時、トンネル入り口に水の壁を作り、そこにレーザー光線でストップサインを照らすシステム。当たっても濡れるだけなので二次災害を防止出来る)設置等新しい技術を導入するのに必要な財源や大規模な設備投資には、1992年8月のトンネル開通当初から存在するトンネル維持管理積立預金(MSF:Maintenance Sinking Fund)が適用されてきた。25年間トンネル内事故ゼロの実績は大きい。

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3.5年後の返還に向けて課題対応
とくに午後のミーティングでは、‘SHT事業体が2022年8月の政府への返還に向けて今何を行っているのか’についての関心が強く、その現況について簡単に触れておきたい。SHTは100年のデザインライフと30年のコンセッション期間と言う契約であり、開通してから30年後の2022年8月に、「このトンネルのデザインライフは後70年大丈夫です」と政府に論理的に証明する必要がある。この様な状況下で2022年8月にスムーズな政府へのトンネル返還を行う為、すでに2010年代に入ってから、大手国際コンサルタント会社2社に長期トンネル維持管理プログラム(EAMP:Enhanced Asset Management Plan)作成の提案を依頼し、
(1) SHTは1987年6月に政府と締結した契約通りのスペックで建設されている
(2) このプログラム通り維持管理すれば、トンネルはデザインライフ通り存続出来る
といった第三者の専門家によるお墨付きを得ると共に、昨今のテロ対策、自然災害予防の為、政府がトンネルをアップグレードすることに対する幾つかのシナリオも、このプログラムの中で提案して貰うことになっている。当該業務を発注してから既に約5年経過したが、トンネル全部を写真に撮りコンピューターグラフィックで表面や修繕部分等がわかるマッピングは完成、現在修繕作業を行う度に写真等をアップデートしている。トンネルの構造上、耐久性の各レポートも完成、後は技術屋では無い行政担当者が読んでもわかり易い様にレポートを全てまとめる作業を行っている。レポート完成後は実際にプログラム通りに維持管理を行い、政府の担当者を招待して一緒に作業を行い、スムーズな政府へのトンネル返還を目指す方針である。
4.日本のPFI関連事業者の関心
今回の視察の様に年数回、日本から訪問者が絶えない(右写真は2006年北側国土交通省大臣の視察)。これもトンネル返還を間近に迎え、日本の社会インフラ整備業界が高い関心を示している証拠と考えられる。尚、現在政府はシドニーウェスタンハーバートンネル(第二のSHT)及びビーチリンクトンネル(シドニー北部沿岸へのバイパス)の新規工事入札募集を計画している。SHTの2022年8月以降のコンセッション契約も含めた大規模な事業計画になると予想され、今後政府機関や世界中のPFI事業会社、ゼネコン等から当社又はSHT事業体への問い合わせが更に増えると思われる。
私がシドニー大学留学中だった1980年代後半SHTが建設中で、それに興味を持ったのが機会となって当時の熊谷組有岡豪州副支店長に面接して頂いてから30年もたったが、今日本ではやっと愛知県道路公社の事業がコンセッション方式でPFI道路事業本格化の初弾と聞いて、彼我(日本とオーストラリア)の差を感じている。2022年8月にスムーズな政府へのトンネル返還に尽力したい。

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最近のPFI/PPPの動向について思うこと

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(特非)シビルNPO連携プラットフォームサポーター
京都大学防災研究所 大西 正光


1999年に、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律、いわゆるPFI(Private Finance Initiative)法が成立して、20年が経とうとしている。PFIは、民間事業者が設計から建設、維持管理まで一括して責任をもち受託する方式である。PFIでは提供すべきサービス水準が規定される。設計、建設や運営に係る意思決定は民間企業の裁量に任されるため、市場競争を通じて創意工夫のインセンティブを与え、従来型より効率的に公共サービスが提供できるとの期待がある。わが国におけるPFIという用語は、当初、英国で適用されていた類型が基本となっていたが、より民間の裁量を認めるそれ以外の類型が現れるようになり、PPP(Public Private Partnership)と呼ばれるようになっている。紙面の都合上、PFIとPPPの違いに関する詳細な説明は割愛し、混乱を招かない限り区別することなくPFI/PPPと称す。本稿では、わが国における昨今のPFI/PPPを巡る動きについて、筆者が思うところを整理しておきたい。
現在、わが国では平成25年から平成34年の間に、21兆円という事業規模目標が設定され、PFI/PPPの事業対象分野の拡大と普及が政府主導で進められている。事業規模の目標設定により、新たなPFI/PPP市場の模索し、民間企業の定着を狙っている。平成23年にはPFI法の改正によりコンセッション方式が法的に位置づけられ、仙台空港や新関空をはじめとして、特に空港分野での適用が進んでいる。内閣府では、毎年、PFI/PPP推進アクションプランを策定し、事業規模目標をクリアすべく、PFI/PPP導入のための施策を打ち出している。PFI法の施行により、さまざまな公共サービスの分野において、新たな官と民のインターフェイスの模索が行われてきたが、現在のPFI/PPP推進アクションプランを見ると、20年近く経った現在においても、一定の形が定着した段階には至っておらず、その模索が続いていると考えられる。わが国におけるPFI/PPP政策にかかる現在のフェーズが依然、定着モデル探求の模索的段階にあると考えれば、これまでに実施されてきたPFI/PPP事業を社会実験として捉え、経験をより良い定着モデルの探求に活かすための制度的仕組みが必要である。特に、PFI/PPPがあらゆる事業にとって望ましい方式であると断定できない限り、PFI/PPPと相性が良い事業分野とそうでない事業分野の見極めが重要であると考える。また、定着モデルの中には、どの事業分野にPFI/PPPを適用すべきかといったことだけではなく、事業分野ごとの技術的、社会環境的特性に応じた規制や契約も含む。
定着モデルの探求において、もう1つ重要なのがVFM (Value for Money) 評価である。VFMは、従来型で調達した場合に比べてPFI/PPPによる調達がどれだけ望ましいかを示す指標である。通常、提供されるサービス内容は同一として、PFI/PPPで実施した場合のライフサイクル費用と従来型で実施した場合のライフサイクル費用の差額が定量的なVFM指標として用いられる。国、自治体は、PFI/PPPの適用を検討する際に、事前にVFM評価を行うが、私の知る限り、その評価方法は必ずしも頑強性があるロジックに基づいているものではなく、アドホックな前提条件に依拠しているのが現状である。そのため、行政の担当者も、PFI/PPP適用のメリットを理解することが難しいのが現実である。その本質的問題は、上で指摘したことと同じく、事業の実施経験をこれから実施する事業に対して、フィードバックするための仕組みが欠如している点にあると考える。
筆者は、大学というところに身を置いていることもあり、これまで少なからず留学生とともに研究を行ってきた。これは個人的経験であるが、私のところにくる留学生のほとんどがPFI/PPPを研究テーマとしており、海外における現状に触れることも多い。海外では、特に途上国において、「財源がないからPPP*」との考え方が根深く存在している。しかし、行政がサービス対価を支払う場合、結局、税が財源であり、利用料を徴収しても、市民が負担を免れるわけではない。こうした政府にとって、「PPP=打ち出の小槌」という誤った理解に基づいて進められる事業では、政府が自らの支出を可能な限り小さくすることが目的となり、民に過剰なリスク負担を求める契約としているケースも少なくない。その結果、応札者が現れなかったり、結局、民間事業者がリスク負担に耐えられなくなったりすることも少なくない。また、英国では、PPP事業における長期にわたるサービス対価支払い分を政府会計の債務からオフバランスすることにより、隠れ借金が作られてきたとの批判が渦巻いたことがあった。こうした現状を鑑みると、PPPは財源の問題ではなく、あくまでも民間の裁量を拡大と競争的インセンティブを通じた効率化が本質的価値であるとの理解にたどり着く。
「なぜPFI/PPPなのか?」はPFI/PPP政策の最も基本的な問いであり、財源としてのPFI/PPPという誤解は、わが国でもあり得る話である。特に、近年では、対象となる事業分野の拡大、類型の多様化が進んでおり、これらをすべて同じ土俵(ロジック)で議論することが難しくなっている。また、実際に実施まで至ったPFI事業において、その適用の是非が政治的争点となり混乱状態に陥る事例などを聞くと、PFI/PPPに関する社会的共通理解の必要性と経験から学ぶことの重要性を改めて認識されされる。世界的にも模範となるようなPFI/PPPのモデルがわが国に定着することを目指して、私自身、研究を重ねていきたい。

*細かいことで恐縮だが、英国、日本以外では必ずしもPFIという用語が用いられておらず、PPPが一般的に用いられるので、単にPPPと称する。


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