2020年02月01日

そもそも土木とは何なのか

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シビルNPO連携プラットフォーム 理事         
NPO法人州都広島を実現する会 事務局長 野村 吉春


■はじめに CNCP通信の「土木ということば」という連載に敬意を表明します。今回は、その上で「いまさら何を言うのかね?」と、疑問に思われる方もおられるでしょう。ここでは、土木と市民社会をつなぐための第一歩として、「そもそも土木とは何なのか」を、改めて我々建設界に問いかけます。

■土木と市民社会との乖離 私は只今、CNCPの「土木と市民社会をつなぐ事業研究会」と、土木学会の「同・フォーラム(準備会)」という2つの会議に参加し、其々でワールドカフェ(ブレーンストミングの一方法)を行い、「土木と市民社会をつなぐ」うえでの問題点や不満を、参加者から吐き出して頂いた。
私は、その結果に驚きを隠せない。これを風景画で表現すれば、「建設界の前にある山の背後には、厚い雲がたなびき、遥か彼方に市民社会の峰々が聳えている・・」そんな印象を抱いた。要するに、建設界の有識者から見て「土木と市民社会が如何に乖離しているか!」を、改めて再確認した。

■認識の乖離は何処に? 前掲の2つの会議で出された、百数十に登る問題点の指摘を読んでいるうちに、「そもそも土木とは何なのか」という一丁目一番地の出発点への問いかけに至った次第である。
解りやすい例を挙げると、土木とは「建設工事の土木作業員のことでしょう?」「ああ公共事業で無駄な税金使っている?」「インフラの話は聞きたくない!」「政治家と賄賂で繋がる利権業界?」「だって、優美な橋を造るのは建築家でしょう?」・・・100%は否定しないが、理解がかなり偏向していると感じた。
要するに「土木」とは、「泥や埃にまみれる工事現場のイメージ」であって、その施工法とか技術管理も、ましてや設計やデザイン、更には計画、構想などは「これらは土木ではない」と思われているようだ。
そこで、モグラ叩きのごとく「違いを訂正する?」・・・そんな対処療法では効果が上がらないだろう。

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■私の経験から 私の「NPO」では、構成員の8〜9割が非土木なので、一部に前掲の傾向はあるものの、如何なるプロジェクトにも、「話の中心は建設工事ではない」「土木技術ばかりを強調しない」「住民や利用者の目線に立つ」「生活・経済・文化などの面から捉える」「地域政策や地政学の観点から考える」・・・というスタンスを貫くことで、多くの一般市民との「普通の会話」が出来るようになった。
つまり、現在の国内外の社会情勢を踏まえつつ、事業の意義や目的を問い、よって「広島や中四国地域の課題解決」を、共に考えようと呼び掛けてきた。これはある種の「インタープリテーション能力」が必要かもしれない。
■建設界の理解度 近年は「土木とは何か」という問いに、建設界自身が答え難くなっているようだ。
「土木」は総合性を有すると意識しつつも、「国と地方」「行政と議会」「建設界の所属セクター」「設計施工の分離」「請負・委託」「入札・契約制度」などで、個々の業務が「専門・細分化」されて「焼畑農業」の状況にある。その結果、「土木と市民社会をつなぐ」さまざまな場面で、土木の全体像が捉え難くなっている。
しかし、多くの一般市民にとっては、建設セクターや業界事情はどうでもよい話なので、我々には「事業やプロジェクトの全体像」を、市民目線で押さえたうえでのコミュニケーションが必要になろう。

■技術の系譜 ここで話がやや飛躍するようだが、土木の英文字の語源は、軍事Military Engineeringに対する、非軍事(=市民工学)Civil Engineeringという、語源の系譜はご存じだろう。
比較のためそこで軍事の仕組みを右上図に示す。
「1.戦略Strategy」「2.作戦Operation」「3.戦術Tactics」という構成のもと、各々の役割、組織、人事等において混乱を来すことのない体制が執られている。
この仕組みは、企業経営の参考にされることが多く、小さな「戦術」ばかりが議論され、大きな目的、物語、シナリオなどの「戦略」が弱いという指摘が聞かれる。
重要なのは1→2→3の順位である。さて「土木Civil Engineering」の場合はどうだろうか?

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■土木のかたちはどうなっている?
私は、上段から「思い」、中央の「使う」、下段に「造る」という右下の三角形のモデルを想定した。
●まず下段の「造る」とは・・・社会基盤の下部構造として「インフラ=InfraStructure」と呼ばれる。
土木=「社会基盤を造る」、そこには道路、鉄道、河川、上下水・・・と多くの技術分野がある。目に触れる工事現場のシーンだけでなく、各種の調査、設計、施工、維持管理、更新といった「フローの経済」を指します。そこで、私が問題視するのは、「インフラだけが土木か?」という点です。

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●次に中段の「使う」とは・・・社会基盤の上部構造として「スープラ=SupraStructure」と呼ばれる。
国や地域、市民社会、利用者において、生活、経済、文化、観光などで「社会基盤を使う」という利活用のシーンを指します。
しかし、建設企業は造った後の「ストックの経済」には関心なし。そこに大きな問題があり、同時に巨大な商機を逃しています。

●最上段の「思い」とは・・・・国や地域戦略として「ストラテジー=StrategyStructure」と呼んでみた。
これは地域政策、地政学、企画構想など、行政内部や議会で審議されるシーンである。だが、そこが未熟で、市民には解り難く、非常に問題が多い。そのため、私のNPOは、しばしば議会支援や市民との意見交換等を行っている。
最上段の部分は、「どのような社会を目指して?」「そこから何を得るために?」「土木は何のために?」という、地域への強い「思い」がなくては、「土木と市民社会をつなぐ」ことは難しいだろう。
なので、土木の三角形の頂点は、「この国かたち」であり、「地域のかたち」を示します。

■最後にひとこと 今年元旦の新聞全面広告の「トヨタはどこへ向かうのか」というタイトルに、私は強いショックを受けました。世界に冠たる大企業にしてこれは凄い広告です。
まさに「土木はどこに向かうのか」と置き換えて、更に考察したいと思います。
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生涯現役・シニア活動の展望

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(特非)シビルNPO連携プラットフォーム常務理事
(特非)シビルサポートネットワーク代表理事 辻田 満


マスコミなどではシニア世代の活躍が広く取り上げられて、世はまさに“生涯現役時代”とも言われるほどです。確かに、生涯現役でいたいと願っている方は多いようです。生涯現役を貫く方法は、起業からボランティアまでさまざまです。シニア世代の活躍は、すでに珍しいことではなくなりつつあります。シニアで活躍されている方は、口をそろえて「60歳代から本当に自分のライフワークが出来る」とも言っています。すなわち、「会社を退職してからが、本当の意味で自分の人生が始まる」のです。堺屋太一氏の著書「団塊世代の黄金の十年が始まる」では、好きなことを見つけて十年打ち込め!と書かれています。十年かけて取り組めば、その間にできた人脈や情報ルートによってその分野では長老的な存在になれます。職縁社会に縛られた40年間には達成できなかった権威ある生き方が出来るのです。
皆さんは「ソシモ(SOCIMO)」なる言葉をご存知でしょうか?この言葉は人が社会の為に何かしようとする動機「ソーシャルモチベーション」の略語です。人がこの「ソシモ」を持つと、自分でも信じられないほど強くなれるのです。社会と個人がダイレクトにつながるとき、人はこれまでにない大きな力を発揮します。その人の中に湧く社会を動かす力はどこから来るのでしょうか?自分のことだけでなく、社会を良くしたいと思い始めるとそのことに関して敏感になり始めます。そして同じ想いをもった人たちが集まり速い速度でつながり始めます。そのつながりが広がれば広がるほど大きな力を持つ組織に成長して行きます。今、CNCPの活動のベクトルは「土木と市民社会をつなぐ活動」なる「ソシモ(SOCIMO)」の芯柱が据えられました。

リタイアした多くの人は、定年後の人生の生き方として自分の存在意義を認めてくれるところを見つけます。自分の存在意義がある場所こそやりがいのある場所であり居心地の良い場所なのです。
リタイア後の貴重な時間はサラリーマン時代と違って仕事や企業利益に命をかける必要もありません。また守るべき家庭も子供たちも巣立ち夫婦が仲良く平穏に暮らして行けさえすれば良いのです。すなわち何をしても人にとやかく言われる筋合いのものではない自由な時間なのです。では、何をやりたいのかと問われても今まで仕事一筋で突っ走ってきたげの現役時代を振り返っても過去の延長線上には答えはありません。そう今こそじっくりと自分を見つめ何をすべきかを探すワクワクした冒険の旅の始まりなのです。
頭の中で考えているだけでは答えは見つかりません。まずは行動を起こしながら自分のやりたい夢を見つけていくのです。私はNPO活動に従事して既に15年になります。そのキャリアからアドバイスをするとそれは「楽しくやれることを探すこと」に尽きます。NPO活動はやらされ感や人に誘われたからでは長続きは決してしません。「自発性」、「積極性」、「創造性」の3つが少なくとも必要です。そして企業活動では得られないNPO活動の大きな宝物があります。それはストレスからの解放です。CNCPをプラットフォームとした様々な活動が、徐々にではありますが着実に動き出しています。シニア世代の方々の生涯現役の場として、皆様の活躍の場として、CNCPへの自発的な参加を大いに期待しています。
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2020年01月01日

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