2020年01月01日

魅力ある世界一の建設環境の構築を支援

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シビルNPO連携プラットフォーム 個人正会員
NPO法人建設技術監査センター 相談役・理事
土木学会フェロー・特別上級技術者(総合)、
技術士(総合・建設) 、品確技術者 五艘 章



はじめに
令和2年の年頭に当たり会員の皆様の御多幸を御祈りし、併せて今年も変わらぬ御厚誼を御願い申し上げます。
7月24 日から17日間、東京オリンピック(五輪)が開催される。参加国・地域数205. 参加人数12,000人、訪日観光客は4000万人、経済効果は30兆円と推定されている。五輪において「日本は自由と平和を愛する誠実な国家である」事を全世界に伝えたい。大会中に巨大な自然災害・テロが発生しない事を世界の神々に祈りたい。

1.CNCP個人正会員として入会を認められる
昨年6月、NPO法人理事長を勇退し理事・相談役に就任する。長きに渡り御世話に成った方々に心から御礼申し上げます。NPOは公益貢献を目指して平成17年に創設、15年間に受諾事業は初年度のゼロから最大2000万円/年まで成長するも、近年は500万円前後に低迷している。CNCPに入会した数年前にNPO運営の引き継に着手し、令和元年に次世代への引継を実現する。勇退に伴い、内藤事務局長から有岡正樹前常務理事と同じ個人正会員として入会を打診され、感謝の意を持って快諾する。今後も引き続き会員諸兄の変わらぬ御指導を御願いします。

2.自治体の監査委員事務局
監査委員事務局は自治体から独立した首長直属の組織である。首長は議員、弁護士、税理士等に監査委員を委嘱して自治体全体の活動を管理する。財政監査は監査委員に工事監査は技術士に委ねて実施する。工事監査は公共事業に関わる全ての管理資料と現場の施工品質を調査して首長に評価と改善策を提言し、報告書は市民に公開される。
「工事監査には担い手三法(品確法、建設業法、入契法)と最先端技術の知識が必要不可欠である」

3.巨大自然災害に対する千葉県と東電の対応
昨年9月、千葉県は2本の台風と集中豪雨により停電、断水、土砂崩れ、床上浸水1,009棟・床下浸水934棟と、市民11名の尊い命を奪われる。被害総額505億円(農林水産被害368億円)である。最大瞬間風速55m/秒の台風により77万戸が停電する。東電は前例の無い大規模停電の復旧に16,000人で取組むも完全復旧に2週間以上を要する。
台風直後の知事の行動について、「市民を守る事が知事の再優先事項であり知事の初動は私的行動ではないか」として知事の政治家としての適正、人間性についてマスコミ、県庁職員、県内自治体から疑問の声が湧き上がる。

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4.日本技術士会建設部会・千葉県支部 合同講演会
巨大災害を背景に11月20日に行われた日本技術士会建設部会と千葉県支部合同講演会の内容を紹介する。
講演1「千葉県建設行政の今後の施策」    講師;千葉県県土整備部次長 渡邉浩太郎氏
  令和元年の千葉県の当初予算総額1兆8,200億円、河川・道路に1240億円であり、県土整備費はここ数年間、維持されている。今度の被災は道路60件、河川125件、港湾4件、土砂4件、公園7件である。
「復旧・復興費として470億円を12月補正予算に計上し、職員の防災力の向上に努める」
講演2「構造物は100年耐久性が当たり前に」 講師:JR東日本コンサルタンツ(株)技術統括 石橋忠良氏
明治・大正・昭和に建設されたRC橋梁・トンネルは補強により今後100年でも大丈夫である。しっかり設計・施工されたものは充分耐久性がある。建設時の技術力不足や知識不足、新材料や施工技術への対応が不十分なものが問題である。技術者の設計・施工能力が耐久性を決定する。JRの事例から下記の事を強調された。
「全てのコンクリート構造物は鉄筋の被りを大きくする事で100年以上の耐久性を保証できる」
※ 土木技術者として2件の講演内容を謙虚に受け止め、之からの技術者教育、工事監査に活かしたい。

5.CNCPの使命:建設環境と低生産性の改善に寄与する
我が国を取巻く厳しい政治・経済環境・テロの危機と先進7カ国中最下位の生産性が若い政治家、若い技術者により改善される事を期待している。また想定外の巨大自然災害から国民の生命財産を守る事が国家の責任である。多くの若者が土木工事に憧れる建設環境(生涯年収・社会的評価・生き甲斐)の構築が急務である。
「日本の将来の為に世界一の建設環境構築を支援する事がCNCPの使命である」

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「土木と市民社会をつなぐ」シリーズをふり返って

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シビルNPO連携プラットフォーム
副代表理事 花村 義久


◆ はじめに
CNCPで基本にすえた「土木と市民社会をつなぐ」に対し、より広くより深く運動を進めるために、CNCP通信ではこれをシリーズとして連載をすることになった。ここでは、投稿をふり返るのに先立ち、創立時の趣意書、見直しでの議論、現在でのCNCPの活動状況、土木学会の考え方などにも触れた。執筆は、前半はCNCPの運営に当たっている当事者、後半は多方面で活躍しておられる方々にお願いした。

1.CNCP発足に当たってのミッションは
趣意書では、本テーマに関連する部分をあげると、次のように述べている。我が国は少子高齢化や災害の巨大化などに加えて、社会基盤そのものが老朽化してきたという深刻な事態に直面している。多岐にわたる地域の課題に挑戦していくためには、中央に依存してきた20世紀型の社会構造から抜け出し、地方自治体あるいは民間・市民の力を活動の推進力としてより強化することが重要である。CNCPは、サードセクターとしての役割を担おうとしており、行政や企業、教育・研究機関、そして地域・市民組織とのパートナーシップを通じて、より良い地域社会の構築を目指すものである。

2.活動見直しワーキングで示された活動の全体像
CNCPでは、創立来3年間の活動を検証し、あらためて活動の方向を見定めるべく、「活動見直しワークングチーム」を立ち上げ議論を進めてきた。ここでは市民社会・地域社会をベースに、行政、建設産業、学会に対応した形で、中間支援等企画サービス、地方自治体・市民団体等との協働推進、建設産業におけるCSR・CSV(企業の共通価値の創造)での事業化、土木学会との連携についての概念をまとめ、「土木と市民社会をつなぐ」を活動の基本に据えた。

3.CNCPの具体的な事業
活動は「土木と市民社会をつなぐ」の考えで貫き通されており、例えば次のような事業が進められている。
●土木と市民社会をつなぐ事業研究会
社会的課題の解決を図る事業手法(特にソーシャルビジネスやCSV事業)を学習するとともに、建設分野における社会的課題の解決を図る事業を広く調査し顕在化させて、これを市民とつなげる形で実現する。また、このような事業を広く社会に公表することで、建設界に対する社会の理解を進める。
●土木と市民社会をつなぐフォーラム
CNCPと土木学会が連携し、土木と市民社会をつなぐ活動をしている人々が集まって協働・連携するための「フォーラム」を設立して、個々の活動をより大きく広げることを目指している。ここではまず、いろいろな形で活動している組織・団体・個人の活動の情報を集約し、ポータルサイトとして共有することなどを検討している。
●インフラメンテナンス国民会議
3年前に発足したインフラメンテナンス国民会議における市民参画フォーラムでは、CNCPが主導的役割を担っている。ここでは、市民参画の重要性の理解促進、協働の支援組織のサポート、多種多様な事例の調査・分析・仕組みの採用という活動を通じて、「土木と市民社会をつなぐ」ことの役割を果たしている。

4.土木学会の取り組み
土木学会では、100周年記念事業で掲げた「社会貢献・市民交流」や土木と社会の100年ビジョン、JSCE2015の基本方針において、「あらゆる境界をひらき、社会と土木との関係強化をはかることをめざす」としている。また、土木広報センターを設けるなど広報機能を強化し、市民への情報発信と市民との交流の形成をさらに具体化する活動を行っている。

5.「土木と市民社会をつなぐ」シリーズの連載
この連載では、それぞれの分野から幅広く参加してもらい、内容にはなるべく事例、方策、提案を盛り込んで頂くことにした。以下に、投稿文の要約を記す。
● シリーズ開始にあたって
このシリーズを始めるにあたって、まず山本代表よりこのテーマを取り上げる意味、背景、課題、取り組みなどについて述べられ、問題提起がなされた。ここでは、企業と市民社会の対立はなぜ起こるのか、土木と市民社会との関係の特徴、土木界での社会貢献の取り組みの現状などについて歴史的考察を含めて述べ、本シリーズの論点を示すとともに、CNCPからの提言を行っている。
● 防潮堤問題にみる土木と市民社会
世古理事は、長年の気仙沼市の市民参加のまちづくりの指導と、その後発生した東日本大震災での被災沿岸部の巨大な防潮堤の建設の問題について述べている。ここからは、行政から示された当初計画に対し、みんなが納得できる合意形成のための根気強い努力が読み取れる。問題発生以前から潜む平素の問題の取り組み、発生した問題解決のための考え方、進め方などを通して、市民と行政が対等な関係で力を発揮しあえる市民参加の大切さを学ぶことができる。
● 土木と市民社会の溝はどうしてできる?
田中常務理事は、建設事業において市民の多くは国や自治体にお任せして、必要な諸施設が存在し常に機能していることが当たり前と思っているようだが、その様な土木と市民社会の溝や土木離れはどこから生まれるのか問いかけている。「土木」は「市民」に簡単には理解できない点、「土木」は「地域」の全体最適を目指しいる点などをあげ、色々な人々や組織が、様々な土木に関係ある情報を発信し、活動しているのに、どうして溝ができるのかを論じている。
●制度設計をも変える市民の科学
三井理事は、新たな河川法の改正、河川と市民団体との関りや成果を紹介している。また、筆者自らも多様な人々が集う荒川における合意形成のための「あらかわ 学会」を創設、荒川に関する調査・研究・体験活動・提言などを行なって、行政に働きかけをしている。川に長く関わり、様々な川及び人々の関わりの歴史を知っている市民団体こそ的確な判断と行動が出来るのであり、その市民科学を活かして、河川管理のパートナーとして活躍していきたいという。
● ファッションの後ろでがんばる土木を伝えたい
奥田Water−n代表理事は、「環境新聞」という専門紙での記者の経験から、一般の人は安心して飲める水の背景に、下水道をはじめとする排水処理設備があることには、なかなか思いをはせてくれないと感じる。だが、 情報の押し売りは市民との溝を深めるだけだ、「土木を知るべきだ」という思いが土木側にあると逆に土木は一般の人には伝わらない。日常生活の身近なところに土木への入り口を作る、というところから「つなぐ」が始まるのではないだろうか、と。
● 防災減災につながる日常的な活動
岩佐常務理事は、自然災害をはじめとする膨大な被害について具体的な数字で示し、そこには市民と協働で活動することが重要だと訴える。そして、市民の参加意識を行動へ導くためには、市民にインフラの現状を伝え、市民が参画する機会を設け、市民に何をしてほしいかを伝えることが大切であるとする。公共との関わり方は、受動的から能動的活動へとシフトするべきであると主張している。

● 当たり前の重み
岡室NPO 研修情報センター理事は、中国を取り上げ、三峡ダム建設、情報公開が明記されるに至った環境保護法など歴史的な動きをリアルに報告している。土木と市民をつなぐという観点からみると、社会主義体制下にある中国での市民と国家の関係においては、接点をさぐり、溝を埋め、しくみや制度の結実させることは「無」から創りだすこと、そこには大変な重みがあると言う。ただこの国特有の激しい動きの中にも、その底流には、多くの中国の人は恐らく今でも、土木 は“国家の大計”と思っているようである。 
● エコで持続可能な「空石積み」の技術
週末にわか農民を二十数年つづけている大矢鐵五郎企画代表は、棚田・段畑など環境に負荷をかけない農家の土木技術に関心を持ち、職人でなくても習得可能な技術であることに価値があるとしている。他人任せ、公共任せの消費から活力ある生産・創造へと市民の思考がシフトすることによって、生業や生活の中で営々と培われてきた土木技術は今後も市民から注目されていくと考える。環境への負荷の少ない持続可能な技術の研究・普及を期待していると述べている。
● 産官学で取り組む 『岡山道路パトロール隊』
狩屋岡山工業高校土木科教諭は、授業の「課題研究」の一環として『岡山道路パトロール隊』を編成し、授業の中で生徒に現実の道路パトロールをさせている。この活動を通じて、市民参加型の社会インフラ維持活動のリーダーとしての人材の養成を行うとともに、現実の社会でのインフラ維持のあり方を学ばせている。学校では、本取り組みが県内土木系高校、さらに中国各県へ、そして全国へと横展開されていくことを期待している。
● 市民の信頼を得るには、理念・哲学の構築と生活感が重要!
NHK社会部記者だった齋藤ジャーナリストは、大災害や老朽化など建設が抱える問題を取り上げ、このテーマでCNCPが掲げる「土木と市民社会とつなぐ」のメッセージが一般市民には伝わっていないのではないかと指摘する。その想いがみんなに伝わらないのは、何のため誰のためのインフラなのか理念・哲学が見えず、大事故や大災害が起きると“想定外”だと困難に立ち向かう気概・覚悟が見られず、さらに肝心のユーザーや生活者の視点がないことにあるという。氏は、土木と市民社会の橋渡し役として期待されるCNCPは、多難な未来が待ち受ける次世代に対し、確固たる理念と哲学の下、安全・安心の指針を示してほしい、とアドバイスしている。
● 土木広報の展開 −土木広報大賞2019から−
土木学会では、暮らしを支えている土木の役割・意義・魅力についての広報として優れているものに対し、「土木広報大賞」を設け表彰している。塚田理事(土木学会専務理事)は、今回第2回となるこの表彰の内容を示し、その中から「土木と市民社会をつなぐ」事例として、受賞した『九州地方整備局の春吉橋「賑わい空間」の試行イベント』と『褐嚼ン技術研究所の江戸東京・川のなぜなぜ舟めぐり』を紹介している。
◆ おわりに
このシリーズでは、土木と市民社会をつなぐにはどうすればよいのか、土木が市民社会からどう見えているのか等を意識して始めたが、寄せられた投稿の対象は非常に幅が広く内容も豊かなものであった。ここでは要約として載せてみたが、内容が深いのでもう一度本文に目を通して頂けたら有難いと思う。こうしてみると、「土木と市民社会をつなぐ」という言葉は奥が深く、常に問題を投げかけ、どうすればいいのかを問いかけているようにも思われる。今後も、多くの事例を知り、掘り下げて考え、いろいろな挑戦がなされれば、と願うものである。
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これからのボーダレス社会 ―産学官から産学官+民へ―

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シビルNPO連携プラットフォーム代表理事
山本 卓朗


あけましておめでとうございます。
昨年の秋は、長らく台風の直撃から逃れていた千葉県そして東日本各地に大きな災害がもたらされました。家族をなくなされた方々、住宅が大きな被害を受けられた方々が一日も早く元気な姿に立ち返って頂くことを念じながら、新年の一文を綴っています。
令和新時代への移行で平成の30年を振り返る機会が色々ありましたが、もう少し短いスパンで10年を振り返ってみました。アップルがiPhoneを売り出したのが2007年、パソコンがポケットサイズになったわけで、スマホの爆発的な普及が情報化社会の進展をもたらしたと言えると思います。東日本大震災を始めとする巨大災害と防災意識の高まり、インバウンドの急激な伸びと国際化の進展、少子高齢化と担い手不足そしてインフラの老朽化とまさにこの10年は長年の課題が一気に噴き出した“課題顕在化の時代”であったと言えるでしょう。
ではこれからの10年はどうなるでしょう。情報化社会は全ての生活がAIとIOTにつながる段階へ、温暖化による気象変動で災害は凶暴化ともいえる深刻な事態が予想され、日本の人口減少とは反対に世界の人口爆発は食糧や資源不足が顕著になり・・・などもしかしたら平成時代30年の変化に相当する“急速変化の時代”となる予感がします。このような時代にコンプライアンスでがちがちに縛られ、自己責任の薄い我が国が果たして対応出来るでしょうか。我が国の様々な活動は、基本的に“組織で仕事をする”仕組みとなっており、海外での外国企業のコンサルティングが個人または個人のチームでなされるのと顕著な違いがあります。諸官庁を含め企業では、長年の縦割りを打破するとともに、テレワークの導入など組織をフラットにする試みが続いていますが、このような急速な変化が予想される社会、さらに増大する国際社会での活動は自立し自己責任で行動できる若い個人が大きく育つことが期待されます。
日本でのボーダレス社会のイメージとして防災活動を例にとると、自助の中核として一般市民の参画(我々技術者が一市民として活動することも含め)が不可欠です。私の属する土木の世界では、産学官のトライアングルで強力に進めてきた社会資本整備に、市民が深く関わること(この場合も我々技術者が一市民として活動することも含め)ことが、今後の我が国の活性化に大きく資すると考えます。
CNCP活動のキーワード「土木と市民社会をつなぐ」実践活動を今年も続けていきます。
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