2020年11月01日

土木ウォッチング&Discover Doboku/大阪万博のレガシー“太陽の塔”/芸術家岡本太郎がデザインしたSRC 造搭状施設

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東京都市大学名誉教授
吉川 弘道


それは、2014年9月11日夕刻、出張先での出来事でした。
大阪での用務のため、たまたま万博記念公園駅(大阪モノレール)近くのホテルを予約し、太陽の塔に期せずして再会したのです。駅を降りてホテルに向かって歩いていましたが、背後に何か気配を感じ振りむいたら、この塔がこちらを見ていたのです。かなり上空からの目線でした。
『生きていたんだ、太陽の塔』。本当にそう思ったのです。
(岡本太郎ファンの皆様、地元に慣れ親しんでいる方々には失礼ないい様ですが、本当にそう思ったのです)。高校3年の時、関西修学旅行で訪れた大阪万博(正式名称は日本万国博覧会:1970年3月15日〜9月13日開催)以来なので、40年振りの再会でしょうか。
『元気だった?』と尋ねたら、黄金の顔がコクンとうなずいていた(ような気がした)ので、
『(私は)こんな大人(?)になりました』と報告しました。
思いもかけない半世紀ぶりの会話(微妙に大袈裟になっています)で、何か目頭が熱くなるのを感じながらも、ホテルのチェックインに急ぎました。
さて、この太陽の塔は、1970年開催の大阪万博のシンボルとして設置された、高さ約70mのSRC造(一部鉄骨)の搭状施設。岡本太郎がデザインしたこの塔は、未来を象徴する頂部の“黄金の顔”、現在を象徴する正面の“太陽の顔”、過去を象徴する背面の“黒い太陽”、の3つ顔を持つ。昭和真っただ中にあって、この塔に見守られながら、それぞれに異彩を放つ外国/企業系のパビリオンを渡り歩き、次々に出っくわすカルチャーショックを享受していました(長い長い待ち行列にもへこたれずに)。上目線ですが、微動だにしない太陽の顔に、当時の様子を懐かしく思い出させてくれました。
‘太陽の塔オフィシャルサイト’https://taiyounotou-expo70.jp/about/project/ によれば、再生事業として、塔の耐震工事の実施と内部展示の「生命の樹」、第4の顔「地底の太陽」を復元し、既に一般公開(事前予約制)しているとのこと(すぐにでも、現地に馳せ参じる所存です)。
 加えて、建設ニュースhttps://www.constnews.com/?p=23315 によれば、塔の構造は、下部がRC造、中央部がSRC造、上部と腕部がS造の地下1階地上2階建て延べ1304m2。改修工事は、下部が内壁増し打ち補強、上部が既存鉄骨に補強鉄骨フレームを設け、既存エスカレーターを撤去するとともに、鉄骨階段を新設するとのこと。
 改めて整理すると、太陽の塔との出会いは1970年(昭和45年)。当時、大学受験を控え、理系とは決めていましたが(先生が決めていた?)、どんな分野どんな学部/学科が良いか逡巡している時期でした。そんな折り、コンクリート建造物(建築物ですが)との邂逅を果たしていたのでした。大学進学後、卒論でコンクリート構造を選択し、(40年ほど途中略)現在に至り、このCNCP通信の原稿ワープロをたたいています。やっぱり、建築の方が良かったのかな?(こら〜、そっちか!!)。

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大阪万博のレガシー“太陽の塔”

 数年前、昭和世代には忘れられない“太陽の塔”に再会し、改めて紹介致します。   
 1970年(昭和45年)開催の大阪万博のシンボルとしてデザインされた高さ70mのSRC造(一部鉄骨造)の搭状施設ですが、多くのレガシーを築きました。
 3つの顔、黄金の顔/太陽の顔/黒い太陽が会場内を見つめ、海外の来訪者にも強烈なインパクトを与えました。高校生の私は、この顔に見守られながら、国内外のパビリオンを巡り歩いたのです。
 最近、耐震改修工事と内部再生事業が完了し、太陽の塔を有する万博記念公園の再出発に大きな期待が高まっています。
▼フレンズコーナーに続く。
(吉川 弘道)

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私が主宰する土木ウォッチングには、このような投稿記事を分類/公開しています(現時点にて1100件1800セッション)。
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2020年10月01日

人生100年社会

前シビルNPO連携プラットフォーム常務理事
(株)アイ・エス・エスグループ本社相談役
NPO法人SLIM Japan理事長
(財)人生100年社会デザイン財団理事
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中村 裕司


■新財団のご紹介とCNCP
2020年10月1日、(財)『人生100年社会デザイン財団』が発足しました。
この財団は、東京大学名誉教授・神野直彦先生(財政学)と東京大学大学院教育学研究科教授・牧野篤先生(生涯教育)のお二人を代表者に頂き、人生100年時代の個人の生き方と社会制度のあり方を構想しようとする財団です。
きっかけは、2年ほど前にCNCP通信に寄稿させて頂いた『Gerontology』でした。日本語では当時『老年学』と訳されていたその研究領域に興味を抱くと同時に、Gerontologyを老年学という医療領域だけでなく、「高齢社会工学」という、ニュアンスがcivil engineeringに近い領域まで広げたいと考えておりました。
そこで行き着いたのが、当時東京大学にできていた「高齢社会総合研究機構」でした。その副機構長であった牧野先生と知己を得、その縁からCNCPサロンに牧野先生をお迎えし講演をして頂きました。
爾来1年余、多くの方々のお知恵とお力を得ながら、牧野先生のご発案により財団設立の機運が盛り上がり、約半年間準備作業を進めた末、10月の発足に漕ぎつけた次第です。

■財団を取り巻く背景
2018年6月内閣府に「人生100年時代構想会議」が設立されて以降、「人生100年時代」を謳う情報が氾濫しています。『Life Shift』の著者リンダ・グラットン教授と小泉進次郎氏の対談の影響もあり、その後「100歳人生」「100年時代」等をタイトルにした本がずらーっと並ぶようになりました。
が、その本の内容は“健康で長生きするための養生訓”であったり、“100年生きるためにいくらお金が必要か”、あるいは“高齢者はどのように残りの時間を充実して生きるべきか”などといったノウハウ本がほとんどです。いわば、長い老後をいかに賢く生き抜くかのための「老後人生の対策」を述べたものが目立ちます。
他方、上の構想会議に呼応するように、「人生100年時代」を取り上げた研究や調査も少なからず見受けられるようになりました。だが、新財団で取り上げる「人生100年社会」は「人生100年時代」とは似て非なる議論となるでしょう。それは「社会」という単語が「時代」という単語と異なるように、です。
■人生100年社会とは?
財団の研究では、「人間の共同生活」の総称を社会ととらえ、人間の集団としての営みや組織的な営みを社会と考えます。つまり人間が一つの共同空間に集まっている状態、またその集まっている人と人とのあいだの結びつきをして社会と称します。
したがって、「人生100年社会」とは100年以上生きることが前提となった人間の集まっている共同空間・組織と、そこに生きる人間の結びつきを議論の対象として取り扱います。「人生100年時代」に対し、「人生100年社会」のほうは有形無形に関わらず“空間・組織”と“むすびつき”を対象にする点が特徴です。
■「ありうる人生100年社会」の構図
未来には、「ありたい未来」「あるべき未来」「ありうる未来」があります。人生100年社会では「ありうる100年社会」の構図を描きます。

逆に、今すぐ思い付く「あってはならない未来」や「今後ありえない未来」については、いろんな書物になかで次のように言われています。カッコ内は著書名です。
@65歳で伐採する社会(シン・ニホン)
AAI-ready化ができていない社会(同)
B3段階一方通行ステージ社会(ライフ・シフト)
Cエイジ=ステージという図式の社会(同)
Dつながらない社会(持続可能な「人生100歳社会」に向けて)
E高齢者対応の諸制度onlyな社会(ライフ・シフト)
Fホワイトカラー志向社会(働き方5.0)
G意識だけ高い系社会(同)

■今後の活動
財団は、アカデミー事業、Re-Viveコミュニティ事業、アクレディテーション事業の三つを軸に、これから活動を進めて参ります。財団にはおよそ20名ほどの著名な先生方、官界の方、産業界の方に名を連ねて頂いております。今後も活動状況についてCNCPの皆様と情報を共有させて頂ければ幸いです。

追記:私は、先の総会において理事を退任させて頂きました。2年間有難うございました。新任は横塚雅実氏です。これからも応援をしていく所存です。

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